嬉しい時の涙
「いやいや、改めて言われると、照れますにゃ〜」
「な〜セルっち」
また、にゃ〜言葉に戻ってる…。
「そ、そうですね」
「な〜んか、セルっちと距離を感じるにゃ〜」
「え?そ、そうですか…」
困ってるセルアルを見て、カルラが大声で笑い出した。
「その内、慣れるさ」「じゃあ、また明日な〜」
二人はカルラと別れて、ホームへと向かったのだった。
セルアル達のギルド『思い出の場所』のホームは、玄関を入ると
二メートル程の短い廊下があり、その先の扉を開くと
皆んなで寛げるスペースとして、部屋の中央に丸いテーブルを配置して
その周りを囲むように、ソファーが三つ並べられていた。
その直ぐ隣には、小さ目のキッチンが備わっていて、細長いテーブルが
部屋とキッチンの間を区切っていた。
そこから、左に向かうと、左に二部屋。右に二部屋。
と別れていて
左にセルアル。スハノ。右にミラー。カーシェ。
と振り分けられていた。
スハノが物音に気付いて、部屋から出てくると
クレハの存在に驚きの声を上げた。
「え!?どうしてクレハさんがここに居るの?」
「やぁスハりん!久しぶりだにゃ〜」
「あ、あの」「前から言ってますけど、その呼び方やめてもらえませんか?」
「それより、どうしてクレハさんが?」
「ああ、今から話すよ」「そこに座って・・・」
「ちょっと待って下さい」「他の仲間も呼んできますね」
颯爽と歩くスハノの後ろ姿を見ながら
「ああ、そうか」「確か、あと二人だったよね?」
「はい」「そうです」「その内の一人は・・・」
セルアルが言いかけた時、ミラーが真ん中で、その右手をスハノが繋ぎ、
左手をカーシェが繋いで、三人で笑いながら歩いてきた。
三人を(正確にはミラーを)見てクレハが、ソファーに座り
肘をテーブルについて、手の平に顔を乗せたまま呟いた。
「その少女も、メンバーなのかな?」
セルアル達は、その言動に何も思わなかったが、ミラーだけが
敏感に感じ取り、二人の手を振り解くと、クレハの前に
走り寄ってきた。
「わ、私」「ミラーと言います!」
「そうか」「ミラーちゃんか」「私はクレハだ」「宜しくね」
急に走り出して、自ら自己紹介をしているミラーを見て
セルアル達が、不思議そうに見ていると
「私を見て少女って言ってくれて、有難う」
ミラーの言葉で、セルアル達はやっと理解できた。
セルアル達には、ミラーが獣人だと言う認識は薄れていたが
何も知らされてない人がミラーを見れば、獣人と口にする人が大半だろう。
ミラーが、今までそうされてきた様に…。
だからこそ、クレハの『その少女も、メンバーなのかな?』が
ミラーには、とても嬉しかった。
その後、各々が簡単に自己紹介を済ませて、テーブルを囲む様に全員が座ると
クレハが話し始めた。自分が、ここに居る理由を。
そして、話しが終わった時、セルアルは皆んなの顔を見るのが怖かった。
闇ギルドとの紛争に、自分達も巻き込まれるかも知れない。
そう思ってるんじゃないだろうか・・・と。
いや、そう思ってるに違いない。
その時、唐突にスハノが喋り出した。
「そうね〜」「セルアルが単独で狙われたり、私が狙われたとしても
返り討ちにできると思うから、問題はないと思うけど」
「カーシェは、どう思う?」
「そ、そうね」「闇ギルドって言うくらいだから、私かミラーを人質にとか
考るかも知れないってのを考慮すると…」
カーシェの言葉を遮り、セルアルが口を開いた。
「あ、あの」「皆んなは、いいの?」
「セルアルねぇ〜」「アンタ、何言ってるの」
「いや、だから」「俺のせいで皆んなを危険な目に…」
「違うでしょ」「そうじゃないでしょ」
「カーシェは、どう思ってるの?」
「い、いや」「だから、闇ギルドの対処について
今は、話してるんですよね?」
「ミラーはどう思う?」「闇ギルドって言う、とっても怖い人達が
セルアルを狙ってて、私達も巻き込まれるかもしれなかったら」
「え〜」「そうね〜」「私はずっと人間達が、とても怖かったから」
「でも、ここに居る皆んなが私を救ってくれた」
「だから、ここに居る人が、危ないって言うなら、私は頑張るよ!」
「そうよね〜」「ミラーはいい子ね〜」
頭を撫でながらセルアルを睨んだ。
「そう言う事」「わかった?」
睨んだスハノの顔が、驚きの表情に変わったのは
セルアルの頬を涙が一筋の線を引いて、流れ落ちていたからだった。
「ちょっ」「セルアル」「涙が…」
「え?」「あれ?」「ホントだ」「どうしたんだろ」
そう言い終わるや否や、涙がボロボロとこぼれ落ちた。
「何も泣く事ないじゃない」
「セ、セルアルさん、大丈夫ですか?」
「大丈夫?」
「あ〜大丈夫」「ごめん」「嬉しくても、涙って流れるんだね」
笑顔で答えた、セルアルを見てスハノ達三人と、クレハは
自分の目頭が熱くなるのを感じたのだった。




