生かす選択肢
前方に三人、背後に三人。
全身黒づくめで、体格からして男達だろうと思われる者達が飛び出してきて
一瞬にしてセルアルとクレハは、取り囲まれた。
「早速のお出ましかにゃ〜」「仕事が早いって、言われるでしょ〜」
「それは、とてもいい事ですにゃ〜」
「クレハさん、ふざけてる場合じゃ…」
「そうだね」「じゃあ、ちゃっちゃと終わらせますか」
クレハの言葉にセルアルも身構えた。
前方の三人はセルアルが、そして後方の三人はクレハと
それぞれが対峙する形になった。
「そう言えば、セルっち武器持ってないけど大丈夫?」
「多分、問題ないかと」
「そりゃあ、心強いね〜」
セルアルと対峙していた三人の内の一人が、剣をスラっと抜くと
小さく息を吐いて構えながら言った。
「丸腰だろうと容赦はしない」「殺せとのお達しだからな」
言い終わるや否や、地面を思いっきり蹴ってセルアルとの間合いを
一瞬で詰めると、何の躊躇もせずに剣を頭上に振り下ろした。
(ミノタウルス三体を倒したとかデマだったか、一撃で終わりだ)
男はそう思ったが、剣を振り下ろした先にセルアルの姿はなく
剣を振り下ろして、前屈みの姿勢になった男の背後から
セルアルの両手が伸びてきて、自分の右腕と左腕をしっかりと掴むと
そのまま両足を踏ん張って、ブリッジの体制に持っていき
男の後頭部を地面に強かにぶつけると、『ゴキャ』っと
妙な音を立てて、首の骨が折れた。
そしてセルアルはすぐさま、二人目の男に向けて走り出した。
それを見た男がセルアルを狙って突き出した剣を、ゴロリと転がって避けると
背後から両足を男の首に巻きつけ、そのまま体を起こして
男の頭を両手で掴むと、思いっきり捻り、首の骨を折ると
そのまま、男の両肩を足場にして、高く飛び上がり、三人目の男の
後頭部を狙い、勢いよく踵を振り下ろした。
呆然となにも出来ないまま、男の頭は地面に叩きつけられて
頭の骨が粉砕した…
セルアルはのそっと立ち上がり、小さく息を吐いた。
「ふ〜何とか、生き残れたか」
「流石、セルっち〜、やるねぇ〜」
クレハが倒した三人の男の上に座り、余裕で拍手をしていた…。
うわ、もう倒してるし。これでも早かったと思ったけど
やっぱ、まだまだ鍛えないとダメだな…
「いや、流石はクレハさんの方ですよ」
「それより、コイツらどうしましょうか?」
「あ〜直ぐにギルマスが、引き取りに来るってさ」
「え?もう連絡したんですか?」
「まあ、コイツら倒して暇だったからね〜」
その時荷車を引いた馬車が到着して、カルラが飛び出してきた。
「お前ら、無・・事・みたいだな」
「クレハ、その三人は生きてるのか?」
「大丈夫、色々と聞く事もあるだろうと思ってね」
「でも、そっちの三人はダメかな〜」
カルラが口に手を当てて、その惨状を見て首を横に振った。
「セルアル、生かして捕える選択肢はなかったのか?」
「殺しを誰かに命令されて、それを躊躇なくやれる奴は、必ず殺せ」
「そう言われてたので」
「そ、そうか」
ミルセ姉の教えって訳か。
間違いではないと思うが、それにしても・・・。
二人は首の骨を折って、一人は頭蓋骨を粉砕か…。
「ん?じゃあ何故、奴隷商人は殺さなかった?」
「奴も刃物を持ってたと思うけど?」
「だって、俺を殺すつもりだった訳じゃないし
ミラーを無事に取り戻す方が、大事だったから」
「成る程ね」
「後片付けは私らでやるから、帰っていいぞ」
「…とその前にセルアルちょっと待て」
「お〜い、誰かセルアルの服に付着した血痕を、キレイにしてやってくれ」
カルラの計らいで、服に飛び散った血はキレイになくなった。
「カルラさん、有難うございます」
「血だらけの服で帰ったら、大騒ぎになるからな」
「それと、クレハがいてくれて助かったよ」
「お前を呼んで、正解だったよ」
「いやいや、改めて言われると、照れますにゃ〜」
「な〜セルっち」
また、にゃ〜言葉に戻ってる…。
「そ、そうですね」
「な〜んか、セルっちと距離を感じるにゃ〜」
「え?そ、そうですか…」
困ってるセルアルを見て、カルラが大声で笑い出した。
「その内、慣れるさ」「じゃあ、また明日な〜」
二人はカルラと別れて、ホームへと向かったのだった。




