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金貨五百枚の価値




  「お前達、よく召喚に応えてくれたな」「そこに居る男を殺せ!」

  「その後で、この町の住民達を腹一杯喰らうといい」


  

  すると、それぞれが手に大きな斧を握りしめたミノタウルスが

  「フゥ〜」「フゥ〜」と荒い息を吐きながら、セルアルを睨みつけた。


  

  「イヒヒヒ」「さぁ殺せ!そして王都を蹂躙せよ!」


  「ガア〜」

  唸り声を上げながら、太い腕で掴んだ大きな斧をセルアルの

   頭上に振り下ろした。


  「イヒヒヒ」「一体で十分だったか」「まあいい、このまま…」

  言いかけた時、セルアルに斧を振り下ろしたミノタウルスが

   地面に片膝を着いて、妙な呻き声を上げながら、斧を握っていた腕を掴み

   空に掲げていたその腕の先は千切れて、斧を持ったままの腕が

   地面に転がっていた。

   

  「イヒ!?な、なんだ!何が起きた!」

  「お、おい」「お前達、二体で一気に片付けろ!」

  召喚した男が慌てて指示を出すと、二体がセルアル目掛けて

   頭に生えた二本のツノを向けたまま、物凄い速度で突進してきた。

   

  「イヒヒヒ」「今度こそ終わりだ!」


  その突進をセルアルは高く飛び上がってかわすと、両の掌を空に向けたまま

   溜め込んだ気を思いっきり放って、ミノタウルス二体の頭を踏みつけると

  『ゴギャッ』と擬音が聞こえて、頭は砕け散りそのまま動かなくなった。


  その光景を遅れてきたスハノが、唖然と見ていた…

   強いのは分かってたけど、ここまでとは・・・。

   たった一人で二メートル級のミノタウルス三体を…


  「で、終わりか?」「下品な笑いはどうした?」


  セルアルが睨みつけると、ガタガタと震える手で杖を握りながら

   後ずさっていた。

  「ま、待ってくれ!」「お、俺は脅されてやっただけ!」

  「そこに居る奴に、脅されて仕方なくやったんだ」「許してくれ!」


  「あそこで、ミラーを捕まえてる奴に脅されて

    仕方なくやったから、許してくれ・・・と?」


  「あ、ああそうだ」「殺す気はなかった」「あんたを痛めつける程度で

   終わらせるつもりだった」「イヒヒヒ」


  すると、セルアルはその男に何もせず、すれ違いざまに右手を振った。

  「分かったよ」「もうお前に用はないしな」「早く消えろ」


  男はニヤリと笑みを浮かべて、セルアルの背後から後頭部目掛けて杖を振り下ろした。


  「セルアル!後ろ!」「危ない!」


  「ああ、大丈夫だよ」「やっぱそいつ馬鹿だな」「気づいてなかった」


  すると男の首がゴロゴロと地面に転がり落ちた。


  「イ、イヒ?…」


  「見逃すわけないだろ」「殺意には、死を」「暴力には、鉄槌を」

  「さて、残りはお前だけみたいだぞ」


  男はミラーに刃物を向けたまま、震える声で叫んだ。

  「何言ってる!「仲間が町中に居る!」

  「そいつらが、戻ってくれば・・・」


  言い終わらない間に、一瞬で男の前に移動した、セルアルが

   男の腹部に拳を突き出すと、腹を抱えたままその場に崩れ落ちた。


  「迎えが遅くなって悪いな」「もう大丈夫だ」「怪我はないか?」


  泣きながらセルアルに抱きついたミラーの体は、ガタガタ震えていた。


  「もう、大丈夫だ」

  ミラーの頭を撫でるセルアルにスハノが近づいてきた。

 

  「セルアル、あんたって本当に強いのね」


  「え?そうかな?」


  「イヤ、だってあんな二メートル級の…」


  「魔物は知力も低いから、攻撃が単純だしな」

  「それにあんな体がデカいだけの魔物より、ミルセ姉さんと稽古の時の方が、

   何度も死ぬって思えて怖かったな」「子供心にこれが恐怖かって思ったよ〜」

  そう言って笑い飛ばすセルアルを見てスハノは思った。


  恐るべしミルセ様…。


  その時カルラが、完治はしたが万全を期す為と、カーシェを背負い

   その後ろから、ケルト団長率いる団員達が、駆けつけた。


  カルラに背負われてるカーシェを見て、ミラーが叫んだ。


  「ごめんなさい」「私のせいでカーシェさん、怪我は大丈夫ですか?」


  ゆっくりと背中からカーシェを降ろすと、ミラーの頭を撫でながら言った。

  「わ、私は大丈夫よ」「私こそ、守れなくてごめんなさい」


  すると首を横に振りながら、カーシェに抱きついた。

  「そんな事ない」「有難う!」

 

  カルラが微笑ましい光景を目にした後、倒れてるミノタウルス三体に驚いた。

  「おいおい」「これお前らで、やったのか?」


  「イヤ、セルアル一人です」「私が駆けつけた時には、終わってました」


  「おい、本当か?セルアル、お前が一人でやったのか?」


  「え?はい」


  ケルト団長と団員達は信じられないと言った感じで、ミノタウルスの

   死骸を見ていた。


  「セルアル!二メートル級のミノタウルス三体だぞ?」

  「何を当然の様に…」


  「でも、昔ミルセ姉さんにトロールの巣に放り出されて

    死んだら助けてやるから、頑張れって言われた事があって」


  その場にいた者全員が、言葉を失いただ、ジッと佇み固まっていた。

   およそ三分〜五分位、静けさに包まれ、その静けさを破ったのが

   カルラの笑い声だった。


  その笑い声が口火を切り、一斉に笑い声がその場に響き渡った。


  「そりゃ、金貨五百枚の価値がある訳だね」


  「あ〜やっぱミルセ姉さん、俺を売ったんですね!」


  「げ、しまった」「いや、さっきのは言葉のあやで…」


  「いや、いいですよ」「薄々は気づいてましたから」

  「はぁ、今日は疲れたし、お腹も空きました」


  「そう言えば、もう昼時か」「昼食でも、食べに行きますか!」


  「え?カルラさんの奢りですか!」


  「そりゃ、ケルト団長さんの奢りに決まってるでしょ!」

  「なぁ、ケルト!」


  カルラの怖い笑顔を目の当たりにして、ケルトはガクリと項垂れた。

  「分かったよ」「昼飯奢るから、食いに行こうか」


  団員とセルアル達から歓声が上がって、現場の後始末を

   全員で手伝い、捕縛した奴隷商人を連行する為に呼んだ

   馬車が到着するのを待ち、それを見送った後全員で

   食堂に向かったのだった。


   

  

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