狙われたミラー
スハノが無言で抱きしめると、いつの間にかミラーは
胸の中で眠っていた。
「どの部屋も同じ様な造りだし、一番近いこの部屋でいいんじゃないかな?」
セルアルの提案にスハノとカーシェは頷くと、ベッドにそっと寝かせて
部屋を出ると、三人もそれぞれの部屋を決めて
その日はゆっくりと休む事にしたのだった。
翌日。
カーシェとミラーフェアにホームの掃除と、お金を渡して
身の回りの買い物を、二人にお願いした。
それと念の為、外に出る時はミラーフェアが、町の人達に
獣人だと気づかれない様にと、二人に告げると
セルアルとスハノは、冒険者協会へと向かった。
協会迄の道中、スハノは考え込んでいた。
二人にミラーフェアが、町の人に獣人だとバレない様に告げた事を…
「う〜ん」
小さく唸りながら歩くスハノを見て、セルアルが告げた
「ひょっとして、ミラーに町の人には獣人だと
バレない様に言った事、気にしてる?」
「え!?」「ど、どうして分かったのよ」
「イヤ」「何となくかな」「でも間違って無いと思うよ」
「町の人達は、まだ獣人に対しての認識が正しく無いと思うから
ミラーが、嫌な思いをするかもだし」
「それに、ミラーだって、分かってるよ」
「スハノが自分の為に言ってくれたって事くらいは」
「そ、そうかしら?」「嫌われて無いかしらね?」
「大丈夫だって、心配ならギルマスにも聞いてみればいいんじゃ無いか?」
「まぁ、気に病む事はないと思うよ」
「そ、そうよね」「大丈夫よね」
そして、協会に着いた二人はギルマスの元に向かった。
「失礼します」
ノックをして部屋に入ると、大きめの机に座っているカルラが
意外そうな顔をした。
「おや?」「ミラーは、一緒じゃないの?」
「ミラーとカーシェには、ホームの掃除と買い物を
お願いしてます」
「勿論、外出時にはミラーが獣人だとバレない様に言ってます」
「そうか・・・」「外出するのか」
カルラは立ち上がると、眉を顰めて口に右手を当てたまま
窓から外をジッと見ていた。
「あ、あの」「どうかしましたか?」「外出はダメでしたか?」
スハノが心配そうに聞くと、再び椅子に座った。
「実は昨日の夕刻、獣人の娘を見なかったかと
住民達に聞いて回ってた奴らが居たそうだ」
「え?それってひょっとして・・・」
「多分、奴隷商人が人を雇って探させてるのだろうね」
「でも奴隷は認められてないですよね?」
「バカやろう」「あくまで奴隷商人は裏の顔で、表の顔は
怪しげだが、何か真っ当な仕事をしてるに決まってるだろう」
「は、はあ」「って、それじゃあミラーが、危険ですよ」
「買い物を頼んでますから!」「私が今から帰って…」
「いや俺が今から帰りますよ」
「まぁ二人共落ち着け騎士団の連中が、ミラーの警護をしてくれてる」
「え?」「騎士団が?何故ですか?」
「あ〜昨日の件でな、朝早くに団長が謝罪に来てね
ミラーを探してる連中の話も、そいつから聞いたのさ」
「でもカルラ様、騎士団の輩って信用出来ますかね?」
「昨日だって、ミラーの事を・・・」
「そうだな」「スハノが心配するのも分からなくもない」
「実際、私も心配だからな」
カルラが握りしめてる拳が、震えてるのを見て
スハノは察して頭を下げた。
「そうですよね」「すいません」
「いや、スハノが謝る必要はないさ」
「それにここでジッとしていろと、言うつもりもないしね」
「それじゃあ、俺も行っていいのですか?」
「流石カルラ様!それじゃあ私達が今から…」
「分かったからもう少し待て、ミラーがこの町に居るのを
奴らも嗅ぎつけただろうけど、場所までは特定してない筈だからね」
「それにちょっと、町のガキ共に頼み事をしたからね」
「逆に奴らを見つけ易くなると思う」
その時、部屋の窓を小さな鳥が嘴で突いてるのを見て
カルラが窓を開けると、肩の上に止まって囁く様に
嘴を動かしていた。
「有難うね」
カルラが、頭を撫でると鳥は再び空へと飛んでいった。
「あ、あの」「鳥と話をしてたのですか?」
セルアルが驚いてるのを見て、スハノが自慢げに語った。
「フフフ」「今の鳥は、カルラ様がテイマーしてるのよ!」
「だから、会話も交わせる!」「他にも・・・」
「そんな事より、今すぐ行くぞ!」
「ミラーを探し回ってる奴らを見かけたらしい」
「え?」「分かりました!」
「流石、カルラ様!」「今すぐ、行きましょう」
「騎士団の連中は、やっぱり当てにならないですね!」
「セルアルとスハノは、武器持ってる?」
「俺は、いらないですね」「人間相手なら、素手で十分です」
「そ、そうか」「スハノは、魔法で事足りるから
武器は必要ないか」
「それじゃあ二人共、一応気合い入れて行くよ」
「はい」
「はい」
そして、カルラと共にミラーを守る為と、二度とミラーの様に
辛い思いをする子供達を出させない為、奴隷商人の捕縛に向かったのだった。




