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ギルドホームと家族




  しがみ付いてる、ミラーフェアと騒いでる冒険者達に

   カルラは少し戸惑ったが、『まぁ いいか』

   小さく呟いて、ミラーフェアの頭を撫でると


  「それじゃあ、ギルドの申請を終わらせようか」

   ミラーフェアを抱き上げて、セルアル達に告げたのだった。




  受付嬢に引き連れられて、冒険者協会の別室でギルドの申請が

   終わるのに、三時間が過ぎていた。

   

  「これで、終わりだが質問はないか?」

  

  「あの、ギルド設立の際にホームが貸し出されると

    聞きましたけど、家賃は高いのでしょうか?」

 

  「ああ、それなら問題はない」「お前達が借りる家ならそうだな〜

    多分、必要なのはAランクの魔物の魔石一個じゃねぇかな」

  「もしくは、それ同様の魔石でも構わない」

  「例えば、Bランクなら二個、Cランクなら三個」

  「それより高かったとしても、払えない程にはならないから安心しろ」


  カルラの話にセルアル達は、ホッと胸を撫で下ろした。

  

  「他に質問はあるか?」

  「質問がないなら、そのままホームに行ってもらうぞ」

  

  カルラは四人を一瞥すると、受付嬢に目を向けた。

  「それじゃあ、案内を宜しく頼む」


  「はい」「それじゃあ、皆さん行きましょうか」


  カルラに見送られて、受付嬢と共にセルアル達は、ギルドホームに向かった。

   

  セルアル達が他愛のない話しをしながらも、話に参加しない

   ミラーフェアを気にかけながら、歩いていた。

   そしてチラッと視線をミラーフェアに向けると、カルラから貰った

   少し大き目なローブのフードを深く被り、俯いたまま後ろを歩いている

   ミラーフェアの姿を見て、居た堪れなく思えた。


  「な、なあ」「ミラーフェアって長いじゃんか?」

  「今度から、ミラーって呼んでもいいかな?」


  「え?」

   セルアルの言葉に顔を上げた、ミラーフェアの表情が綻んでいたのを

    目にした、スハノとカーシェも会話に参加した。


  「いいんじゃない?」「ミラー」

  「なんか、かっこいいんじゃない?」


  「う、うん」「い、いいと思います」

  「で、でも」「女の子にかっこいいはどうかなと思います」


  「え〜そうかな〜?」「変じゃないないわよね?」

  スハノがセルアルに同意を求めたが・・・


  「イヤ〜」「ダメでしょう」「女の子にかっこいいはないと思う」


  「うわっ」「二人とも酷くない!」

  「ねぇ、ミラーもそう思うわよ・・・」


  スハノがミラーフェアを見て、言葉が途切れたのは、初めて見た

   屈託のない可愛い笑顔をしていたからだった・・・。


  「あ、ごめんなさい」「笑っちゃって」


  「イヤイヤ」「いいよ、いいよ」「今のは、スハノが悪いからね〜」


  そして、ギルドホームまでの道中、ミラーフェアも

   話に加わり四人で楽しく話しながら、ホームに到着したのは

   冒険者協会から徒歩で約二十分後だった。


  「ここが今日から貴方達の住居になります」

  「協会から少し遠いですが、異論なければ…」


  「え〜、結構、立派じゃないですか?」「家賃高いんじゃ!」


  呆然と家を眺めていたのは、セルアルとミラーフェアだった。

  

  「い、いや、普通だと思うわよ」

  スハノの言葉に、カーシェと受付嬢がなん度も頷くのを見て

   セルアルとミラーフェアは、顔を見合わせた。


  「そ、そうなのか…」


  「え〜と、異論はなさそうなので、ホームとして

    登録しても宜しいですか?」


  「俺はいいけど、みんなはどうなのかな?」

  三人に顔を向けると、コクリと頷いていた。


  「それじゃあ、それぞれ一人ずつこの枠に手を当ててください」


  大きな四角形の中に、四等分に区切られた枠に

   セルアルから、順番に手を当てていった。


  「これが、家に入る時の鍵になりますので・・」


  「え〜〜!」「マジで!」「凄いじゃないですか!」

  「信じられない!」

  セルアルが驚嘆している隣で、ミラーフェアも唖然としていた・・・。


  「ね、ねぇねぇ」「今って、鍵閉まってる状態かな?」

 

  ワクワクしながら、受付嬢に問いかけると、少し笑いながら頷いた。


  「だってさ、ミラー」「開けちゃう?」

  「ミラーの手でさ、鍵を開けちゃう?」


  「い、いいの!?」


  「本当は俺が開けたいけど、ここはミラーに譲ってあげよう!」


  「やった〜」「有難う!」


  ミラーフェアが、飛び上がって喜ぶ笑顔に、受付嬢も含めて全員が癒された。


  「うんうん」「いいよ〜」「さあ」「どうぞ〜」


  セルアルに促されて、ミラーフェアが自分の枠に手を当てると

   その枠が光を放ち、『カチッ』と音が聞こえた。


  「鍵が、開いた音ですよ」

  笑いながら、言った受付嬢の言葉に

 

  「やったじゃないか〜」「ミラ〜」

  セルアルがミラーの両脇に手を当てて、持ち上げた時

   嬉しそうに微笑むミラーの姿に、癒された・・・。


  そして、受付嬢が冒険者協会に帰るのを、四人で見送ると

   中に入って、部屋を振り分けることにした。


  「ねぇ、ミラーはどの部屋がいい?」

  スハノに聞かれて、ミラーフェアは驚いて後ずさった。


  「え?」「私の部屋?」

  「私は、その辺で適当に寝るからいらないよ」


  「ねぇ、ミラー」「今まで、とても辛い思いをしたと思う」

  「でもね、もう過去は忘れていいのよ」

  「それと自分が獣人だからって、私達に

   気を遣ってるかもしれないけど、それも不要だからね」

  「今日から、皆んなで一緒に暮らすんだからね」

  「まあ、言ってみれば、家族みたいなものよ」


  「おおおお、たまにはいい事言うじゃないか!」

  

  「何よ、失礼ね!」


  「い、いいですね」「か、家族!」


  その時、ボロボロと大粒の涙を溢しているミラーを見て

   三人は一瞬言葉を失い、固まった…。


  「急に、ど、どうしたのよ」

  スハノが駆け寄ると、声を上げながら泣き出した。


  「だって、だって」「こんな獣人の私を家族だなんて…」「だって」


  スハノが無言で抱きしめると、いつの間にかミラーは

   胸の中で眠っていた。


  「どの部屋も同じ様な造りだし、一番近いこの部屋でいいんじゃないかな?」

  セルアルの提案にスハノとカーシェは頷くと、ベッドにそっと寝かせて

   部屋を出ると、三人もそれぞれの部屋を決めて

   その日はゆっくりと休む事にしたのだった。



  

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