鉱山へ
キョウカとゼフィール、マロリオンの三人を偵察に向かわせた翌日も露店を開く。
ただ、初日ほどの売り上げは可も無く不可も無くと言ったところだった。
商いの最中にやって来た客から“猫の威勢の良い姉さんはいないのか?”とよく聞かれたことは付け加えておこう。
そしてさらに次の日、鉱山に向けて出発する。
僕やジュリア、シオリが宿の前で待っていると、ミハイルやカエデが眠そうに宿から出てきた。
「ふぁー。おはようニコラ。」
「おはよう、ミハイル。まだ眠そうだな。」
「ああ、昨日はちょっと考え事をしていてね。それで夜遅くなった。」
「考え事?ミハイルにしては珍しい。雨でも降るのちゃうか?」
シオリが横から口を挟む。
「いや、ちょっと報酬についてだな……そうだ、ニコラ俺の報酬は……」
「ちょっと待ってくれミハイル。騎士の人が来たようだ。」
ミハイルが何か言いかけた時、騎士団の紋章を付けた自動車がやって来た。
機能は僕たちが使っている物と大して変わらないが、騎士団らしく王国の紋章が付いている。
自動車は僕たちが待つ宿屋の前に留まると中から二人の騎士が出てきた。
どちらも薄墨色の鎧を着ている。
「おはよう、君たちがアルバート商会の人達だね。私の名前はヒースと言います。」
そう言って金髪の男は手を差し出しニコラと握手する。
「よろしくお願いします。ヒースさん。そちらの方は?」
僕はもう一人の方、赤みがかったショートボブの女性の名前を訊ねる。
「彼女はヘザー、僕の副官に当たる。僕と彼女と二人で交代しながら君たちを送るつもりだ。」
「ヘザーと言います。よろしくお願いする。」
「早速だけど、君たちの荷車と自動車を連結しよう。」
手早くヒースさんたちが乗る自動車と商会の荷車を連結させる。
自動車にはヒースさんとヘザーさん、僕の三人が乗る。
荷車の方にはジュリア、ミハイル、シオリ、カエデの四人が乗った。
さすがに道を作り直す必要はないので道中は普通の走行状態にして走る。
操縦は先にヒースさんが行う様だ。
僕はそんな揺れる車内の中、ヘザーさんに話しかけた。
「すみません。騎士団も忙しい中無理を言って。」
「いやいや、気にすることは無い。私もヒースも気晴らしが出来て喜んでいるよ。」
「そうだな、ヘザーは少しご機嫌斜めだったからな。」
操縦しながらヒースさんが会話に首を突っ込んできた。
「いや、あれはここの連中が狭量なだけで……。」
「ま、仕方ないでしょ。オロールと比べてここサカイというよりセリアンに女騎士は珍しいからね。」
「でも、珍獣を見るような眼は無いと思いますが!」
「いや、それはヘザーが珍しいのではなくて、かわいい女騎士だからじゃないかな?」
「か、かわいい……」
ヒースさんに言われ顔を赤くするヘザーさん。
どうやら二人は気の置けない仲か恋人同士の様な気がした。
それを考えるとこの状況、自分は何かお邪魔蟲の様な気持ちになる。
この自動車よりも後ろの荷車の方が良かったかもしれない。
そんな僕の考えを気にもせず自動車は鉱山めざし進んで行く。
道中、僕の予想通り二人の夫婦漫才を見る羽目になった。




