サカイの裏町
僕達がサカイの町で泊まった宿屋は異国情緒あふれる宿屋だった。
玄関の上り口に板張りの廊下があり土足厳禁だった。
板張りの廊下を案内され紙と木でできた扉(障子というものらしい)を開ける。
しかも、水平に横に開けなければならない。
そこは緑色の敷物が一面においてある部屋だった。
「みんな今日はゆっくりと休むように。ニコラ、この後、ここの領主に滞在許可や商業許可書等を貰いに行きます。」
「判った、ジュリア。早く片付けて明日に備えよう。」
僕らが訪れたサカイの領主は気さくな獣人族で快く滞在許可や商業許可等を出してくれた。
商業許可は露店で物を売るときに必要な許可書だ。
紙に店を出してよい場所が記載されていた。
他の許可書も当面必要な物が含まれている。
「ニコラ、この和紙と言う物は薄くて丈夫ですね。」
「そうだね、こんな紙を作る技術はオロールにはまだない。いくつか仕入れた方がいいかもしれない。」
ジュリアと僕は領主の屋敷からの帰り道、
明日からの商いの事やこの町の特産品について話をしながら宿に戻った。
その後は旅の疲れを休める為、一日はゆっくりする予定である。
戻ってみると二人ほどいない、何処へ行ったのだろう?
「ミハイル、ゼフィールとキョウカは?」
「ん?そういえばいないなぁ。マロリオン知らないか?」
「二人ともキョウカの知り合いに会いに行くとか言ってずいぶん前に出かけていったぞ。」
話を聞くとサカイはキョウカの故郷らしい。
なんでも、小さいころサカイからオロールに一家で移り住んだそうだ。
当然、この町に知り合いもいるだろう。
「仕方がない。ここにいる者で明日の商いの打ち合わせをするか。」
そういった時、ドタバタとキョウカとゼフィールが宿に戻ってきた。
二人は部屋に入るなり話たてる。
「「ニコラ!大変だ!」」「鉄鉱石が!」「鍛冶屋が!」「魔道具が!」
二人が口々に叫ぶので何を言っているのか判らない。
「待った!ゆっくりと、一人だけ話してください。二人同時だと判らない。」
そう言うとキョウカとゼフィールは顔を見合わせた。
どうやらキョウカが代表して話すらしい。
「うちは元々ここの町の出やってん……」
-------------------
「たしか、聞こえた金槌の音はこの奥だった気がするけど……今はしないね。」
通りを進むゼフィールとキョウカの耳には金槌の音は聞こえてこなかった。
「この辺りの家屋は人がいないのか家がかなり傷んでいるね。」
ゼフィールの言う通り、通りの奥に行くほど家の傷みが目立つ。
長い間人の住まない、まったく手入れのされていない家の様だ。
家の所々にひび割れがあり、中には草が生えている家もある。
さらに奥に進むと、一軒だけ少しマシな家が見えた。
他の家の様に傷んでいる様子はない。
「キョウカ、あの家だけ他と違うね。誰かいるかも?」
ゼフィールがキョウカに話しかけた時、家の扉がガラリと開き、
クマの様な、いや虎の獣人族が出てきた。
「おっちゃん?!」
虎の獣人を見たキョウカは思わず話しかけていた。




