国境の町
道中大した問題もなく獣人族の国、セリアン王国に到着した。
到着したと言っても王国の最北にある国境の町“サカイ”である。
“サカイ”についた時には雲行きが怪しくなり雨が降り出していた。
雨は精神的な疲れに追い打ちをかける様にザアザアと降る。
その上、異国の者である僕らはサカイの町の入り口で止められてしまった。
時間が掛かることが予想され、ゼフィールは思わずため息をついた。
「参ったな。やはりこの自動車が悪かったのかな?」
馬が引かない馬車はとても奇妙で目立つ。
ましてこの辺りでは見て事の無い異国の者だ。
彼らが僕らを怪しむのは無理もない事だと思う。
「まぁ、自動車が原因やけど、悪い事やないで。」
「悪い事じゃない??キョウカ、どういう意味?」
「んー。あいつらからすると自動車ってのは、ごっつう珍しいんや。このまま町に入ったら人が集まって動かん様になるから、人が少ない時間に入れよう思ってるんや。」
キョウカの話ではサカイの人々はとても珍しいもの好きなのだそうだ。
そんな人々が自動車を見た時、物珍しさのあまり人だかりが出来る事が予想された。
人通りの多い所であったら商売や生活の邪魔になる。
それを防ぐ為にここで足止めしているのだ。
「それじゃあ、仕方が無いのか。」
「まぁ、ここの連中は仕事が早いから、もうすぐやで。」
キョウカの言う通り、一時間も待たずに町に入ることが出来た。
ただし、町の衛視たちが自動車を先導し、宿へ向かう。
サカイの町は東側に港を持つ。
通りを進む自動車の窓から木造の小さな漁船が見える。
技術的に僕たちの国と遜色がないように思えた。
「そう言えば、キョウカはこの町にかなり詳しいみたいだけど、故郷か?」
「まぁ、そんな所や。うちは小さい頃までサカイに住んどったんや。うちの家は一旗揚げようとしてオロールまでやって来たんや。」
キョウカはこの町の出身らしい。
セフィールはもっと詳しく堺の町について尋ねてみた。
「そやなぁ。ここは刀鍛冶が多い所やで。ちゃうな、多いところやったんや。」
「刀鍛冶が多かった?じゃあ、今はとても少ない?」
「いや、一人もおらんはずや。帝国に刀作りを禁止されたとったから。包丁一つ打つことが出来んかったんやで。」
今から約10年前、キョウカが5才の時、
魔導帝国はセリアン王国を併合しない条件として、武器の製作、特に刀の制作を禁じた。
キョウカの一家は刀鍛冶だったらしく、刀が打てなくなったセリアン王国を出てオロールに来たのだそうだ。
「あれ、でも今は作れるようになっているんじゃないのか?」
「そやな、打てるようになったかもしれんけど、打つための職人は戻ってきてへんからまだ無理と違うやろうな。」
とキョウカは少し残念そうに眼で通りから続く路地を見つめる。
「ここもな、刀鍛冶のおっちゃんがよくおったんやで。トンカントンカン音がしてな……。」
トンカントンカン
「!!」
かすかだが音がする。
誰か戻って来て、刀を打っている様だ。
キョウカはその音を聞いてそわそわしている。
「誰か戻ってきているみたいだね。気になるんだったら、後でいっしょに見に行ってみるか?」
「うん!」
キョウカはそう言って頷くと嬉しそうに微笑んだ。




