セリアン王国への道
ロムスさんは魔道具の組立用の小屋としてかなり大きな小屋を用意してくれていた。
流石、領主様である。
小屋に必要な部品を馬車から取り出し、その部品を一つずつ丁寧に確認する。
「なぁ、ニコラ。車輪の数は六つだったよな?」
「ああ、自動車は車輪が六つだ。その方がカタガタ揺れる道でも安定して動けると聞いているよ。」
「そうか……でも車輪は十六個あるぞ。これはあまりにも多すぎないか?」
「いや、数はまったく間違っていないぞ。残りは予備だ。」
「十個も予備なのか!!長い旅では壊れる事もあるだろうけど、それにしても多くないか?」
「何を言っている?予備は二個だぞ?」
「???」
「……ミハイル。僕たちの馬車の分と騎士たちの馬車の分、二台必要だと分かっているよね?」
「え?」
ミハイルは僕たちの分を作る事しか頭になかったようだ。
ただ、幸運?なことにミハイルは部品の数はちゃんと確認していた。
再確認の手間はなかったので僕はホッと一安心した。
自動車を組み立てるのは、一日中トンカントンカン作業を行っても二日かかる。
今回組み立てるのは二台。
僕とミハイル、マロリオン、ゼフィールは油まみれでドロドロになりながらも何とか組み上げた。
この都市、ブロッサムで有名な温泉に少しゆっくりと入れたのは作り終えた日の夜。
出発を明日に控えた最終日だけだった。
当然、十分に温泉を満喫するにはまったく時間が足りない。
僕達(男性陣)は涙を呑んでブロッサムを後にするのだった。
キュアさんが開発した自動車はゴツゴツした岩だらけの道や泥沼の様な酷い悪路でも問題なく進むことが出来た。
六つの車輪がうねうねと動き悪路を攻略していったのだ。
「何だろうこれ、何だかわからないけどものすごい道具の様な気がしてきた。」
ミハイルは悪路を物ともしない自動車にご満悦の様だ。
「当然だろう。キュアさんの作る魔道具はとても見事な物なのだ。自動車が進んだ道をがっちり硬化させ後ろの馬車も楽に通ることが出来る。まさに画期的な魔道具だよ。」
キュアさんの生徒でもあるマロリオンは胸を得意満面の笑みを浮かべた。
自動車はギザギザの車輪、細かい歯車の車輪で固い岩を砕き細かい土に変える。
その後、通った地面を平らにして硬化する。
自動車が通った後にはがっちりと硬い道が出来ているのだ。
この道なら馬車も楽に行き来できる。
がっちりとした道であるが数年後には崩れるかもしれない。
だが、自動車が何台も行き来する様になれば、常に道はがっちりと硬くなり崩れることは無い。
セリアン王国への道程は自動車のおかげでかなり楽な物になった。
その上、移動速度もかなり早い。
通常の三倍以上のとても速い速度で進んでいた。
自動車はまったく休憩する必要がないからだ。
馬やラバの場合、動物自体が疲れる為、何時間かおきに休憩する必要がある。
そして、とてもゆっくりした速度で進む。
自動車は動かしている者が休憩するまで動くことが出来る。
ただ、この自動車、欠点が無いわけではない。
操縦者の精神の消費がとても大きいのだ。
半日操縦した場合、その日は全く操縦できなくなるぐらい消耗する。
ゴッソリと精神を持って行かれる様な感じだ。
マロリオンによると、魔石の消費を少しでも減らすために、自動車に乗っている者の精神でも動かせるようにしているのだそうだ。
僕達がセリアン王国に着く頃にはみんなの体に精神的な疲れがどっぷりと溜まっていた。




