何故ここに馬車が止まってるんだ?
馬車があるのは国境の峠の頂点付近、
少し高台になった場所だった。
その場所には他にも馬車が数台止まっている。
崩れかけた馬車の数も数えるとその数は五台にも上った。
来た方向からは見えなかったが、
馬車の向こう側には野営地の跡があり、何人かの白骨が散乱している。
その野営地跡の更に向こう側は下り坂になっていて、
野営地よりも多くの白骨がある様だ。
盗賊の仕業だろうか?
余りにも多いため、僕達は手分けして辺りを調べることにした。
ゼフィールとマロリオンは野営地とその周辺、
ジュリアとキョウカ、カエデは馬車と周囲への警戒、
僕とミハイル、シオリは高台の向こう側だ。
高台の向こう側、
この場所には数多くの白骨が見える。
今はまだ日が高いから見えるが、夜だと判らないだろう。
高台の野営地にあった白骨とは違い、皮鎧を身に着けている白骨もある。
中には鎖帷子を着けている白骨もあった。
それらの白骨は剣を腰に帯びている者や槍や弓を手に持つ者もいる。
この連中は兵士ではないとすると、盗賊だろう。
ただ、奇妙なことにそのほとんどが武器を使う間もなく首を落とされている様だった。
三十分後、僕たちはそれぞれの調査結果を伝える為、
自分たちの馬車に集まっていた。
まず、白骨死体についてゼフィールが報告する。
ゼフィールとマロリオンが高台の野営地の周り、
特に地面を注意深く観察していたようだ。
「ここの白骨死体を調べた結果、どの死体も死因は同じだ。
首を一撃で落とされている。
これは凄腕の剣士にしかできない技だ。
服装から判断すると、行方不明の商人達だと思う。
それと、周囲に魔獣の足跡は無い。
マロリオン、他に何か問題があるか?」
「・・・腐肉喰い(スカベンジャー)だ。
死体に集まって来るはずの生き物や魔獣の跡がない。
それに人間だけでなく、馬も白骨化していた。
どの馬も綺麗に首を落とされている。」
野外で死体があった場合、
腐肉喰い(スカベンジャー)と言われる生き物がその死体を食べる。
それらの生物がいない事はないのだ。
そしてマロリオンの言う通り、この場所にいた生き物は全て首を落とされていた。
「でも、何故ここに馬車が止まってるんだ?
死体があれば止まる事は無いだろう?」
ミハイルのいう事はもっともの話だ。
何も好き好んで死体の傍で食事をする者はいない。
それを聞いていたシオリは
「・・・夜なら判らへんのちゃいますか?
丁度ここは高台になってます。
白骨のほとんどは来た方角からは見えまへん。
まして、夕方や夜の暗がりならなおさらや思うわ。」
続いて、キョウカが馬車について報告する。
「馬車は商人たちの物の様や。
積荷は一部残ってるもんもあるけど、食料品なんかは全部痛んどったわ。
貴金属類は手付かずやから盗賊に襲われたわけやないで。」
キョウカの報告でここの馬車の商人が盗賊に襲われた線は完全に消えた。
盗賊は死体はそのまま置いて行っても貴金属をそのままに置くはずはないのだ。
次に僕が高台の向こう側の調査結果を報告する。
「野営地の向こうには何体かの白骨死体が転がっていた。
皮鎧などの鎧を着こみ傍らには剣や槍が落ちていた。
おそらくこの近くを根城にしている盗賊だろう。
どれも首を落とされている。
それ以外の傷は見当たらない。」
「首を斬る何かがいるという事か・・・。」
ゼフィールのつぶやきでみんなが黙り込む。
どの様な敵がいるのか判らないからだ。
その時、僕は少し気になったことがあり指折り数えていた。
するとジュリアが
「ニコラ、何を数えているの?」
「ああ、ジュリア。
ここに居る商人たちがどのくらいの時間をここに居たか考えていたんだ。
最初の犠牲者、
野営地に座った格好でいた人たちは1時間ぐらいだろうか?
他の者でも三十分以内、
盗賊は・・・ 少し判らないが同じぐらいだろうか?」
「僕たちがここを調べ始めて1時間は経つよな?」
ミハイルが不安そうな声を上げ辺りを見回す。
「それを考えると、襲われてもいいはずなのだけど、それらしい影は・・・。」
「うちらが見る限り、周りには何もおらへんよ。」
シオリ達が言うには周りには何もいないらしい。
「という事は、襲われた時と違うのは・・・時間?」
首を斬る何かは夜にならないと出現しない様だ。




