攻撃を防ぐことは出来ますか?
ここにある白骨死体を作り出した奴は夜にならないと出現しない。
仮にそいつを魔物Xとしよう。
魔物Xを無視して魔導帝国へ行くことが出来るのか?
僕は地図から移動時間を考えてみる。
「この場所から、一番近い魔導帝国の町までは一日以上かかりますね。
村があるなら別ですが・・・。」
残念ながら、僕たちの地図に村の場所は書かれていない。
比較的大きな町の場所しか判らないのだ。
”もしこのまま進んだとして、何時、何処で遭遇するのか”
それは考えるだけ無駄だろう。
魔物Xが現在いる場所が判らない上、移動速度も判らないのだ。
「その魔物Xに対応しないと魔導帝国へ行けないのですが・・・」
途中まで言ってジュリアは少し考えこんでしまった。
盗賊とはいえここまで綺麗に首を落とす魔物X相手を出来るのかと言うと微妙な所だ。
この人数で正面から当たるなら勝てるだろう。
だが、魔物Xが出現するのは夜である。
闇夜に紛れて不意を衝くタイプの魔物ならば何人かは怪我をする可能性が高い。
場合によっては死亡するだろう。
「ニコラ。魔物Xの攻撃を防ぐことは出来ますか?」
僕の収納のギフトは取り込む対象を指定しない場合、何も取り込もうとしない。
はじき返すこと無く通り抜ける。
取り込む対象を“武器”と言う大まかな対象にした場合、
展開するまでに時間が掛かりすぎ維持する時間も極めて短い。
対象を“ゼフィールの持つ長剣”の様に細かく設定した場合、
展開は一瞬で維持する時間も極めて長い。
武器を細かく特定できなくても相手に武器を見た後でなら
展開は一瞬で維持する時間も極めて長い。
「魔物Xの武器が判れば、防ぐことが出来る。
でも現状では武器が判らないし、不意打ちを受けた場合、対応は難しいだろう。」
魔物Xは相手の不意をつく攻撃を行う様なので
攻撃される前に武器を見ることは出来ない。
不意打ちを防ぐ手段は無い様に思われた。
その時、ミハイルは白骨の一部を示した。
「武器なら判るぞ。」
ミハイルが示した白骨は切られた首の部分だ。
よく見ると白骨の断面に細かい線のような物が同じ方向に入っている。
「この筋の方向からは考えると引いて斬る武器だ。
魔物の場合こんな切り口にはならない。
切り口が綺麗すぎるんだ。」
「引いて斬る武器? 剣じゃ無くて?」
「そうだ、ニコラ。
後ろから剣で斬った場合、筋は横方向から真直ぐに付く。
剣は叩き割る武器だからな。
でも、この武器の場合、斜め後ろ側からやや円弧を描いている。
これは引いて斬る武器、ナイフのような武器の特徴だ。」
ミハイル白骨の線をなぞる。
同じ様に白骨を見ていたマロリオンは感心したように
「しかし、よくそれだけで武器が判るな。
俺にはさっぱりだ。」
「これでも実家は鍛冶屋だからな。
武器、防具の多少知識はある。」
ミハイルは胸を叩きながらそう答えた。
「引き切る武器か。なら、ここの足跡から間合いが図れるか?」
ゼフィールが示す足跡は、横倒しになった木の後ろに残っている物だ。
27cmぐらいの大きさの物で形からすると左足、
右足は少し離れた所に浅く残っていた。
それを聞いたマロリオンは左足と右足の距離を測る。
「歩幅は85cm、身長は170~180cmと言ったところだな。
だとすると手の長さも85cmぐらいだろう。」
「マロリオンの推測から判断すると刀身の長さは80ぐらい。
引き切る武器で刀身の長さが80となれば考えられるのは一つ。
相手の武器は“サーベル”と言われる曲刀だろう。
鎧は残っている足の形状から考えると金属鎧。
踏み込み足でない方の足方もくっきりついているから全身鎧を着ているな。」
ミハイルの見立てによると魔物Xは
“全身鎧を着てサーベルを持つ者”
となった。
その情報を得て再度、ジュリアが聞いてきた。
「ニコラ。この情報ならどうだ?」
「それだけの情報があればなんとかなると思う。」
「よし、ならここで野営しましょう。
魔物Xを迎え討ちます。」
僕らはこの場所で野営することに決めた。




