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2話

世界が眩しい。

小さい虫が目から離れていく。


そんな気がした。


知らない天井だ。

いや、知ってる。


ごめん一回言ってみたかったんだ。

そんな顔しないで。

どこか行こうとした?やめて。

ちゃんと私を見て欲しいんだ。


私ってなんだろう?

正確に言えば、私は私の見る世界を見てほしい。

また私が出てきた。この私と最初の私は違うのかな?

もしかしたら、私は決められた世界の映像を見てるだけかもしれない。


その場合、君はどうなるんだろう?


知ってるよ。私を見にきてくれたんでしょ?


ここは私の頭の中。私は私の頭の中の私。

あれ?じゃあ私の頭の中にも私は居るのかな?


ごめん。退屈だよね。

でも、仕方がないと思うんだ。

君は私が作ったのかもしれないから、私に従うべきでしょ?


体を起こす。

世界が90度回転した。

暖かかったものが抜けていって、冷たいものが入ってくる。


雲の上に飴玉が浮かんでいる。

檻の蓋を開けると、いろんな色の飴玉が手の中に浮かぶ。


かわいいよね。キュートアグレッションって知ってる?可愛すぎて食べちゃいたいって思う、あの現象。


君は知ってるのかな?


私は食べないとダメな物を可愛くしてるから、順序が逆だね。


あれ?なんで食べないとダメなんだっけ?


そうだった。お母さんに言われたんだ。


頭が回る。そうだ、急がないと。


飴玉を私は口に押し込んだ。


キラキラのギザギザが、喉を滑りながら私になる。


お母さんがご飯をくれた。


お箸を持って、ご飯を掬う。

スプーンがシチューを口に入れ込む。

いつも通りのテレビが流れてる。

今日もまた、挑戦してみようと思った。


階段を一段ずつ上がっていく。

2段飛ばしじゃないよ。一段ずつじゃないとダメ。


廊下の奥にある扉の奥が、私の部屋。

ここはちょっと走りながらじゃないとダメ。

足音は立てすぎないように。


どう?上手かったでしょ?


ドアに手をかける。

金属の冷たい感じがする。


ここが、私の部屋なんだ。

綺麗でしょ?そう思うよね。


何も触らないでね。物にはあるべき場所があって、そこにないとダメだから。


あれ?引き出しが閉まってる。

早く開けて。目を閉じてるから、開けたら言って。


早くしてよ。何も見えないのは怖いんだよ。


...ありがとう。中は変わってないみたいだね。


早く家を出ないと、遅刻しちゃう。

服を着替えて...カバンを持って...


今日も挑戦しよう。


...ズッ...ズッ...ズッ


音が聞こえる。

目の前を地面が通り過ぎていく。


...ズッ...ズッ...ズッ


音が聞こえる。

一歩ずつ、一歩ずつ。


コンクリートから出たらダメ。

草は踏まないように気を付けないとダメ。


誰かが見て居る気がする。

でも、今度は騙されない。前は騙されてやり直しになっちゃったから。


やり直しになったら逃げるんだよ。

そうじゃないと捕まっちゃう。


所で、今って何歩目?


『次で57歩目だよ』


57歩目か。ありがとう。

ちゃんと数えないと、自分を認識出来なくなるかもしれないからね。


意外だな。私って、ちゃんとありがとうって言えたんだ。


見慣れたようで、ふわふわしてて、

確かなようで、不確かな道。


この道を通るのが、私の挑戦。


...ズッ......ズッ...........ズッ.................ズッ...........


足がだんだん地面から離れなくなってきた。

重量が多い。いや、重いか。


うん。まだだ。まだ入っちゃダメだったんだ。

帰らないと。


...なんで止めるの?

ここまで来たのに勿体無いって?

何度でも来ればいいよ。君が居るんだし。来なくてもいいかもしれない。


『なんで帰るの?』


さっきも言ったでしょ?まだ早かったんだよ。

ただ、それだけ。


石を投げる人は、石の痛さを知らないんだよ。

私は知ってる。

ただ、それだけ。


みんながみんな、石を投げて。

ザラザラが、私を削って。


なんでそんな目で見るの?やめて。見ないで。

痛い怖い痛い熱い痛い


私が削られていく。私が剥き出しになっていく。


空を見た。月も星もない。


空が赤い。黒い。

どっちでもいいや。


早く帰って、守らないと。

削られた私を埋めないと。補わないと。


飴が喉を掻きむしりながら落ちていく。


ダメだ。こんなの飴じゃない。


もっともっともっと。

足りない足りない足りない足りない足りない足りない足りない足りない足りない足りない足りない


檻を振っても、手に飴が乗らなくなった。


あぁ大丈夫。私の部屋だ。

あれは飴だったんだ。


飴が飴になって、それが私になっていく。


世界が黒くなる。

端っこから真ん中に、

墨汁の中に雑巾を落としたみたいに。

ゆっくり、ゆっくりと滲んでいく。


それでもいいや。私があって、君が居るんだから。


目をゆっくり開いた。

眩しくない。


外を見る。世界はまだ眠っているのかな?

今、何時だろ?

ねぇ、教えてよ。


時計は見ないで。時間は嘘だから。


...なんで答えないの?


なんで?なんで?さっきは答えてくれたでしょ?

知ってるんでしょ?

なんで答えないの?


ねぇ、教えて。


教えて教えて教えて教えろ教えて教えろ教えろ


そっか。君も私に石を投げるんだ。

君が、私に石を投げてたんだ。

そんな君は君じゃない。

そんな君は私じゃない。


もう傷つくのは嫌だ。

私を傷つけるものはいらない。


早く寝ないと。 




———————————————————————

また、君は失敗した。

また、救えなかった。


おかしいね。助けようとしたのにね。

でも、分かったでしょ?

これじゃ君に私は救えない。


逃げようたってそうはいかないよ。

君がここまで私を連れてきたんだ。

君は私を救わないと。


もう一度、やり直してみて。


次の君なら、私を救えるかもしれない。

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