また、冬がきた
氷河さんが目覚めた話から、5ヶ月が経った。
クリスマスまで、後2日の今日。
俺は、悩んでいた。
10月末に届いた招待状。
出席を決めたのに、どっちを誘えばいいか悩んでいた。
「まだ、悩んでるの?お兄さん、予定はいっちゃうよ。」
12月に入り、星に毎日こう言われていた。
「星は、それでいいの?」
「また、それ?いいも悪いもないでしょ?二人で過ごせる機会なんてないんだよ。誘いなよ」
「明日まで悩む」
「クリスマスだよ。悩んだら無理って言われるよ」
俺は、ソファーに横になった。
「それでも、悩む。」
「僕は、お兄さんと行くべきだと思うよ」
そう言って、星はキッチンに行ってしまった。
あれからずっと、星の優しさや穏やかな愛で、心は満たされていた。
今さら、流星とかって考えたらなんか違うのかなって思ったりもしてる。
会わなかったら、化け物は影を潜めている。
だから、常に穏やかでいれた。
「ちょっと、部屋行くね」
「うん」
俺は、星を残して部屋に行った。
スマホで、時雨君を探してかける。
あれから、随分と仲良くなれて
2ヶ月前、俺は、連絡先を聞いた。
「もしもし」
「あの、一つだけお願いがあるんですけど…」
「はい」
「難しいですか?」
「いや、なんとかするよ」
「お願いします。」
俺は、電話を切った。
結婚式の会場は、月の星公園近くにある。
星月式場だった。
この街で、二番目に有名な式場だった。
俺は、部屋から出た。
「あのさ、星」
「うん?」
「クリスマスの日、朝10時、月の星公園のモニュメントで待ち合わせな。」
「結婚式、11時からだよね?」
「うん」
「僕でいいの?」
「うん」
俺は、星に笑った。
「でも、ここから一緒に行けばいいんじゃないの?」
「それは、何か違うんだよ。特別な日だから」
「そうなの?」
「うん、そうだよ。」
「わかった。」
「じゃあ、約束な」
俺は、星と約束をした。
もう、行く相手を決めたから悩む必要もなくなった。
それからは、あっという間だった。
悩んでいた時は、嘘のようにスローモーションだった日々が、悩みがなくなった瞬間。
駆け抜けて、いったのだ。
あっという間に、明日がクリスマスになった。
ブー ブー
「ごめん、電話でてくる」
「うん」
星とリビングで、お喋りしてた俺は部屋にはいった。
時雨君からの電話だった。
「もしもし」
「明日、大丈夫だよ」
「よかった。」
「うん。じゃあまた」
「またね」
俺は、時雨君と電話を切った。
リビングにもどってきた。
「ねー。明日のカッターどれがいいかな?」
星は、カッターシャツを並べていた。
「ピンク似合うだろうな」
「これにしようかな?」
「うん、いいと思うよ」
「ドキドキするね」
「星が、緊張する事か?」
「するよ。」
「そうかな」
俺は、笑って星の頭を撫でる。
相変わらず、この日々は穏やかで幸せな日々。
平凡で退屈って言葉がよく似合うかもしれない。
心をかき乱されない。
胸がザワザワもしない。
化け物は、ぬいぐるみにでもなったのではないかと思うほどに静かで。
もう、消えてなくなったのかもしれないとも思えた。
それなら、それで構わないのだ。
あんなに、激しい感情はなくなったっていいのだ。
「ビール飲む?」
カッターシャツを決めた星が言う。
「うん、飲む」
俺は、ビールを渡された。
並んで、飲む。
「何か、化け物死んだかな?」
星の言葉に、俺は星を見た。
「俺も、そんな気がしてるよ」
「会ってないからわからないよね?」
「ああ、連絡はしてるけど」
「メールじゃ…。ね?」
「うん」
メールのやり取りはしているが、会ってはいなかった。
なぜ会わないのかと聞かれたら会う理由がないとしか言えなかった。
既婚者に会う理由などないのだ。
「会いたいって思わない?」
「そうだな。激しい感情が沸き上がるから」
俺は、そう言って笑ってビールを飲んだ。




