幸せになろうな
退院パーティーから、数日が経った頃。
早朝に時雨からかかってきた、電話で目が覚めた。
「もしもし」
「氷河が、目を覚ました」
「えっ!!本当に?」
「ああ、夜中に目覚めた。今から、来れる?」
「用意して、すぐでるよ」
そう言って、電話を切って起き上がった。
「誰?」
「時雨が、氷河が目を覚ましたって」
「よかったな。」
「月もくる?」
「うん、着替えるよ」
月が、起き上がった。
夏の月は、二割ましでキュンとするのは上半身裸で寝てるからか、汗をかいているからか、とにかく僕は夏の月が大好きだ。
「ジロジロ見すぎだよ」
「なんで、裸。いつも上半身」
「なんだろ?」
「わからないんだね。」
僕は、洗面所で顔を洗う。
月も、やってきた。
「ねぇねぇ、夏の月はかっこいいね。二割ましです」
「なにそれ」
僕は、月の腰に両手を回した。
「なに?」
「僕だけの月だから」
「いつもだよ。」
「もう、ドキドキさせてどうするの」
「ツンツンしない、行くよ。タクシー呼んどくから」
そう言って、月は行ってしまった。
僕は、服を着替えてリビングに行く。
「行こうか?はい、お水」
そう言ってペットボトル投げてきた。
月も、用意していた。
「うん。」
僕と月は、タクシーに乗った。
星城病院の入り口で、時雨が待っていた。
「星、月君もきてくれたんだね」
「うん。」
「朝一番で、病室がかわるみたい。まだ、ICUだけど行こう」
そう言って、時雨と月と一緒に行く。
氷河のご両親は、さっき帰ったと時雨が言っていた。
月は、外で待ってるねと言って座った。
僕と時雨は、中にはいった。
「氷河、星がきてくれたよ」
氷河は、僕を見て笑うけど言葉がでないようだった。
「氷河、ごめんね。僕のせいでこんな思いをさせて」
泣いた僕の頭を撫でてくれた。
氷河の手が優しく動く度に、生きてるのを感じた。
あの日々と違う。
生きてる、生きてる、生きてる
氷河は、僕の涙を拭ってくれた。
優しい笑顔。
「氷河、よかったよ。本当に」
時雨も泣いてる。
「俺と幸せになろうな。」
氷河は、泣きながら頷いた。
「よかったね、氷河」
氷河は、泣きながら笑ってる。
「また、後でくるな」
時雨の言葉に、氷河は手をふってくれた。
僕と時雨は、病室から出た。
「喋れないんだ。氷河」
出てすぐに、時雨が話す。
「やっぱり、そうなんだ。」
「生きてるだけでも奇跡だから、話せないぐらいたいした事じゃないよな。」
時雨は、泣いてる。
「ショックだったから、話せないの?」
「うん。お医者さんは、そう言ってた。」
「そうなんだね。」
「星、俺頑張るから。氷河が、ずっと笑って生きれる日々をつくっていくから」
「うん」
「じゃあ、俺は氷河の所に行くから」
「うん。時雨、幸せになってね」
「うん、じゃあな」
そう言って、時雨は氷河の元に行った。
「月、帰ろうか」
「うん、行こうか」
そう言って、月の手を繋いだ。
「話せないの?」
「うん、話せなかった。」
「いつか、話せたらいいね」
「うん、そうだよね。」
僕は、月の手をさらに握りしめた。
月がいなくなるのは、嫌だ。
「痛いよ」
柔らかい笑顔。
僕だけに見せる笑顔。
「ごめん。」
手を緩めたら、月が強く握り返してくれた。
「怖いの?」
「うん」
「大丈夫だよ」
僕は、反対の手で月の頬の傷に触れる。
「まだ、残ってる。」
「大丈夫だよ。」
「わかってるよ。それでも、この傷は僕のせいだから」
「気にしすぎだよ。」
「わかってる。」
月が微笑んでくれた。
明日香がつけた傷痕は、根深い。
氷河は、また話せるのかな?
目が覚めただけでも、すごい事なのに人間ってやっぱり欲深い。
声を聞きたいって、思ってしまう。
氷河は、どれだけ回復するのだろうか?
また、元の生活にもどれるのだろうか?
どうか、氷河と時雨が穏やかに過ごせますように…。




