氷雨の化け物とまたね
用意を終わった氷雨、時刻は8時だった。
「ゴミは?」
「ああ、またきて捨てるよ。」
「わかった。」
「離れたくない」
氷雨は、僕を抱き締める。
「ダメだよ。」
「まだ、やだ。こうしてて」
氷雨が、泣いてるのがわかる。
「もう、触れられないんだよ。もっと、求めたくなるのは仕方ないでしょ?」
「でも、帰らなきゃ」
「わかってる。わかってるから」
友達ってどんなん?
抱き締めたりとかは、できんの?
肩かすくらい?
わからない。
友達が、わからない。
「友達ってなに?」
氷雨も同じ事を考えてる。
「本当に、なに?」
「これ、していいの?」
「抱き締めるの?」
「うん」
「わかんない。それぐらいならいいのかな?」
「ドラマとかで抱き合ってるシーンあるよね」
「確かに」
そう言って、氷雨は僕から離れた。
「これは、ないよね」
そう言ってキスをしてきた。
何度も、何度も、キスをした。
軽くしたり、深くしたり。
どれくらいしたかな?
時刻は、10時を回ってる。
「早く帰らないと」
時計を見て、氷雨から離れた。
「嫌だ。」
後ろから抱き締められた。
「嫌じゃないよ、約束したよね」
「嫌だ。」
時間ないのがわかる。
化け物が、またやってくるのか…。
「ダメ、帰るの」
そう言った僕を氷雨は、押し倒した。
「ちゃんとしてないじゃん。お別れ」
「ズボン脱がそうとするのやめて」
「最後までしたくて堪らないんでしょ?」
「だから、ダメだよ」
「ダメじゃないから」
「やめて」
僕は、大きな声をだして氷雨をとめた。
ズボンをあげる。
「なんで、そんな事いうの」
氷雨は、泣きだしてしまった。
「ごめんね」
僕は、氷雨を抱き寄せた。
僕だって氷雨とそうなりたい。
でも、それを化け物は許さない。
喰われたら、元には戻れない。
次は…。
華君の手の傷が、頭に浮かんだ。
「ごめんね」
僕は、氷雨をまた抱き締めた。
「星、愛してるよ。星が、欲しいよ。いなくちゃ生きれないよ。だからね、受け入れて」
鼓動が早くて苦しい。
魔法が消える時間だ。
明日の朝までいなくてよかった。
もういっそ化け物に喰われてしまおう。
ブーブー
「電話なってるよ。」
氷雨が僕から離れた。
「あっ、うん。」
やっぱり、止めてくれるのは君なんだね。
「もしもし」
「家、今から帰るから星も?」
「うん」
「じゃあ、後でな。」
「バイバイ」
電話を切ったら、氷雨は少し冷静になっていた。
「タクシー呼ぶね」
「うん」
僕は、タクシーを呼んだ。
氷雨を抱き締めた。
「氷雨と僕の愛は、永遠だから。離れていても大丈夫だから」
氷雨にキスをした。
長くて、優しくて、ありったけの気持ちを込めたキス。
「落ち着いた?」
「うん。」
僕は、氷雨の涙を拭ってあげる。
「帰ろう、氷雨のお家に」
僕と氷雨は、玄関を出て下に降りた。
タクシーに乗り込んで、氷雨は行き先を告げた。
乗った瞬間に重ねた手を離した。
もう、友達なんだ。
綺麗にさよならできる気がしたのに…。
化け物に喰われなかったお陰で、途中から氷雨といるのは月といるような幸せな感じにかわった。
でも、長くは続かなかった。
すぐに、沸き上がるマグマに飲まれた。
やっぱり、ダメだ。
うまくいかない。
氷雨の家の近くでおろしてもらった。
「わざと、離れた場所でおりた。」
マンションは、見えてるけど遠い。
「何でかわかる?」
僕が、首を横にふると氷雨は笑って「こうする為」と言って僕にキスをした。
優しくて長い長いキスをして、抱き締めてきた。
「愛してるのに、いれなくてごめんね。」
「僕も、ごめんね。」
「時々、電話するから出てくれる?」
「わかった。」
「あの日、星に出会って星を愛せてよかった。これは、はずさないで」
そう言ってネックレスを口に含んだ。
「愛してる、氷雨。この先もずっと永遠に」
そう言って、僕も氷雨のネックレスを口に含んだ。
氷雨は、僕を抱き締めた。
「またね、星さん」
「またね、氷雨くん」
そう言って手をふった。
すぐに、氷雨が手を繋いできた。
名残惜しく手を離す。
氷雨が、マンションに向かって歩いてくのをいつまでもいつまでも見つめていた。




