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竜のお世話係21

リズが戻ってきてから2日が経った。

昨日は一日家で過ごさせてもらい、次の日から報告をすることになった。

今、まさにその報告の最中であり、リズを囲むように机が並べられて詳しく見てきたことを話している。

団長をはじめ偉い人たちが集まった空間は息が詰まる。

8年前に城の中でぶつかった人間と、リズを攫った人間が同じであったことを報告すると会議室に居た偉い人達が一斉に頭を抱えた。

かなり前から城にスパイが出入りしていたということだ。


「リズちゃんお疲れさま。今日はこれで終わりだ帰っていいよ」


ルーメロスのお世話は、他の竜のお世話係がしてくれているので心配はいらないといわれてはいるがせっかく自由に会いに行けるようになったのだ。

世話はしなくても、挨拶ぐらいはしておきたい。

リズはそう思いながら、団長と父親やほかの部署の上層部たちが座っている椅子から立ち上がり頭を下げた。

「それでは失礼します」

「疲れているところ悪かったわね。明日もよろしくね」


エレノアがにっこりと微笑みながら手を振ってくれたのでリズはもう一度頭を下げた。


「先に帰ってていいぞ、俺はまだ会議だ」


疲労のため肩を回しながらカジミールがリズの背に声をかけたためリズは頷いて会議室のドアを開けて外に出る。


竜騎士の会議室から出るとセドリスが廊下に立っていた。

外は夕暮れのため、薄暗い廊下の中で髪の毛も騎士服も黒いセドリスは暗闇に紛れており急に現れると驚いてしまう。


「黙って立っていると驚くんだけど、どうしたの?」

「もう、帰るんだろう?送っていく。まだ変なのいるかもしれないし」


無表情に近づいてくるセドリスにリズは頷いた。


「変なのじゃなくてスパイでしょ。スパイって言ってたわよ偉い人たちは」

「まぁ、そうだな。あの男は?」


リズとセドリスは並んで歩き出す。


「あっちに着いてから一回も姿を見てないわ、マリアはどこかで尋問を受けているらしいわね」

「そうらしいね。リズが連れ去られて、彼女だけ置いて行かれてすぐに捕まえられたよ。

自分は悪くない、置いて行かれた、竜と一緒に帰れば結婚できるって大声で泣きわめいていたけど」


「マリアもあっちの国の人だったのかしらね」

「違うと思うよ。あの男は何年も前に城に潜り込んでいたらしいけど、マリアを竜のお世話係に入れたのは間違いなくあの男が助言したせいみたいだな」


セドリスの言葉にリズは頷いた。先ほどの、報告会議の中でも簡単に説明があったが、マリアは竜に気に入られるために竜を狂わせる薬を使っていたらしい。

竜のお世話係に選ばれるためにあらかじめ竜の餌に薬を混ぜていたようだ。

その後はマリアに対する竜の態度があまりに妙であったため、内密にマリアを捜査していたということだが、その間に竜を奪われてしまったということらしい。


二人は遠回りをしてルーメロスの小屋へたどり着くと、リズは小走りに駆けていく。

「ルーメロス!」

リズが声をかけると、竜は嬉しそうに鳴き声を上げて甘えたようにリズの顔に頭を擦り付けてきた。

今までお世話をしてきてここまで甘えられるのは初めてでリズはニヤニヤ笑いながらルーメロスの頭を撫でまわした。


「よしよし。かわいいわねぇー。こんなに甘えて私がいなくて寂しかったのねぇ」


今まではセドリスにしかこういう甘え方をしなかったルーメロス。

リズはニヤニヤが止まらず、優越感に浸りながら後ろに居るセドリスを振り返った。


「いや、別に俺はルーメロスに甘えられて羨ましいなんて思わないけど」

「え?思わないの」


驚いて聞くリズにセドリスは頷く。

「まぁいいもんねー。ルーメロスが私を心配してたってことがうれしいもん」


ニヤニヤしながら竜を撫でまわすリズにセドリスも口の端をかすかに上げて微笑んだ。

珍しいこともあるもんだとリズは思ったがあえて口にはせず珍しいセドリスの笑顔を眺める。


「リズが、会ったっていうもう一匹の竜のことなんだけど」

セドリスが何かを決意したように話し出した。


「ん?ガットのこと?」


あの竜が今元気だろうかと、思い出して心が沈む。

「そう、俺の父が乗っていた竜がガットっていう名前の竜だったんだ」


「えっ?お父さんって竜騎士だったっていう・・」


13年前に竜を盗もうとした隣国との小競り合いで死んだという話を思い出してリズは顔を曇らせた。


「そう、昔は竜それぞれに名前のついたプレートを付けていたんだ。でも父が死んだあの戦闘で竜が盗まれたらしい。これは極秘事項だったらしく俺も昨日知ったんだ。竜個体の名前が認識できるものは廃止になったんだ。今は、つけられていない。

だから、リズが会ったという竜は父の乗っていた竜で間違いないと思う」


驚きで固まっているリズにセドリスはかすかに笑みを浮かべている。


「盗まれた竜はどうしているかとみんな心配していたらしいんだ。今回生きていたということは良かったというべきか・・・。一度でも会ってみたいと思っていたから」


「でも、結構弱ってたのよ」


リズが言うと、セドリスは頷いた。

「団長たちとも話し合って、早く保護をしようと動いている」

「そう・・・・」


竜は保護してほしいが、保護をするということは、父やセドリスが隣国へ行くということだ。

戦闘になるかもしれないし、セドリスのお父さんのようにだれか死んでしまうかもしれない。

そこまで考えてリズは複雑な気分になった。

騎士なのだから戦闘はいつかあるだろうと思うし、危ない場所に行くことが仕事でもある。

だからと言って死んでほしいとは思っていない。


リズの考えていることが分かったのかセドリスはリズの横から手をだしてルーメロスを撫でた。

「それが仕事だし、今ならわかるよ。父さんがどんな気持ちで竜に乗っていたかってね」


「・・・ガットを取り返すぜ!って感じ?」

リズがそういうと、セドリスはあいまいに微笑んだ。


「ちょっと違うかな・・・。取り返すっていうよりは大切なものを守りたいって感じかな」


セドリスの微笑みがあまりに綺麗でリズは一瞬固まってしまった。

ルーメロスに会えなかったのも寂しかったが、セドリスに会えなくなったのもかなり辛かったのだとリズは本人を前にして思う。

何気ない毎日が幸せなのだなと思った。







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