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竜のお世話係19

数十年前に引き取ったという竜はかなり弱って衰弱していた。

起き上がる力もないのか寝ているばかりで、ご飯もあまり食べなかった。

リズは竜が食べやすいように野菜を細かくしてもらったものを手に乗せて直接竜の口へと運ぶ。

そうすると恐る恐るという風に竜が食べてくれるのだ。


「信じられん。よく手を出せるな」


後ろの方で見ていた白い白衣を着た男たちは目を丸くして見ていた。

どうやら竜を研究はしているらしいが、竜に対して恐怖心を持っているようだ。


リズは竜になら手を食われていいぐらい竜を愛しているため恐怖心はない。


2匹の竜の世話をしながら3週間目が過ぎた。

毎日、一番上であろう階から螺旋階段を昇り降りを繰り返し、だいぶ足腰も鍛えられたであろう。

それでも竜のもとへ通うのだけでも同じ建物であっても大変つらかった。



「はぁ、ルーメロスは元気かしら。みんなも元気かしら」


仲良く話す人も居ないこんな環境で、だんだんと心が沈んできたリズは連れられてきたという竜を撫でながらため息を吐いた。

ここ一週間でだいぶこの竜はリズに心を許してくれていた。

いつものように、檻の中に入って撫でまわす。

体力がないのか竜は寝てばかりだった。

今日は決心をして、磨いてあげようと脇に置いてあったデッキブラシを手に持った。


竜は理解してくれたらしくさっそくお腹を出して洗わせてくれる気があるようだ。

「ありがとうね。綺麗にしてあげるからね」


何年もこの竜を洗ってあげようなどと親切な人がいたわけでもないらしく、ひどく汚れていた竜を丁寧にブラシをかけていく。

黒い水とともに汚れが落ちていく。

すると左足にキラリと光るものが見えた。

「何か足についているの?」


リズは声をかけてもっとよく見ようと竜の足元に跪いて手を伸ばす。

竜の足にはチェーンがついておりキラキラと光る石もはまっていた。

プレートに何か字が書いてあるようでリズは水をかけて汚れを落とす。


「ガット?」


掠れている字を読み上げると竜が嬉しそうに一鳴きした。

しかしその声もどこか弱弱しい。


「もしかして貴方の名前?ガットっていうの?」


リズが尋ねると竜はまた嬉しそうに返事をする。

「こんなタグまでつけられて、あなた大切にされてたようなのにどうしてこんな扱いを受けるようになったのかしらね」


竜がこんな日の当たらないところに長い間閉じ込められて満足な世話もしてもらえないなど可哀そうだ。

足の裏も丁寧に洗ってあげると、かなり嬉しそうに竜は体をくねらせた。

綺麗になった竜の体を見下ろして、リズはため息を吐いた。

長い間、ほとんどお世話も満足にされずに恐れられた竜。

今も白衣を着た男が日替わりで遠巻きに見ている状態だ。

綺麗になった竜の足についているプレートをもう一度見た。

名前が書いてあるプレートをよく見る。

四隅にキラキラ光る青い石が嵌められている。

「サファイアかしら。たぶん、高級な石よね」


そんなリズたちの様子を見ていた白衣の男たちが「名前がわかったぞ、ガットだそうだ」

と呟きながらノートに記録している。

長年竜に近づきもしないで竜と共存していこうなど無理な話だ。

リズはもう一度ため息を吐いた。


2匹の竜が夕ご飯を食べたのを確認をしてリズは地下からまた階段をゆっくりと上がっていく。

途中、待機している騎士へ軽く頭を下げて彼らの前を通る。

この繰り返しの毎日もいつまで続くのか。

竜のお世話ができることはうれしいが、日の当たらないところで入れられていれば竜達も体調を崩すだろう。

与えられている最上階の部屋のドアを開ける。

広くもなく、狭くもないベッドと机、そして洗面所があるだけの部屋。

窓にはめられた鉄格子越しに外を眺めると、空は綺麗な夕焼け色。


「きれいな空」


先ほどまで世話をしていた竜達を空に飛ばせてやりたいと思うが無理だろう。

リズがため息を吐くと、ドアがノックされた。

返事をすると、女性が夕食を運んできた。

話してはいけないといわれているのだろうか、3週間経っても女性たちは必要最低限のことしか話そうとはしない。

自由に話もできない環境にリズはストレスが溜まり始めていた。

一人で夕食を摂り終えたころ、女性がまた空いた食器を取り下げに来た。


「ごちそうさまでした」


リズがそういうと、女性が軽く頭を下げる。

「なにか必要なものはありますか?」

「特にはありません」


リズが答えると女性は頷いて食器を下げて出ていく。

今日はこれで誰もリズの部屋へは訪ねてはこない。

これもいつものことだ。

見張りはたまに廊下を歩く騎士だけで、あとは各階にいる騎士たちだろう。



リズはため息を吐いて、ベッドへと横になった。

横になった状態でも鉄格子越しに見える窓から星がよく見えた。

「今日は新月なのね・・・だから星が見えるのか」


ここに来てから独り言が多くなったと思う。

リズは星を見ながらまたため息を吐いた。

星だけは自分がいた家と見え方が同じだ。

今頃、父と母は何をしているのだろう、心配しているかなと思いを馳せる。


騎士である父はまんまと敵国にさらわれた娘のことを怒っているかもしれない。

足手まといと思われたら嫌だ。

ダメな思考がぐるぐると渦巻いてくる。夜になると毎日ダメな思考になっていく。

疲れているんだと思いリズはかなり早いが少し眠ろうと目をつぶった。




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