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竜のお世話係18

隣国、ネルリア王国は竜を持たない国だった。

そのため、リズが住んでいる国から竜を盗み軍事力をつけようと目論んでいたようだ。

竜が盗まれるのも過去に何度かあったが、コゼット爺さん曰く、竜の繁殖がうまくいかないのだろうということだった。


リズが隣国に来てから1週間が経過していた。

特にひどい扱いをされるわけでもなく、竜のお世話係としてだけ連れてこられたようだった。


森の中に建てられた灰色の細長い建物にリズは収容されていた。

すべての窓には鉄格子がついており、リズは一番上の階に部屋を与えられていた。

至る所に騎士の姿があり、とても逃げ出すことはできそうになかった。

食事は女性が1日3回運んできて生活に必要なものを聞いてくれる。

殴られた頬は多少痛みはあるものの、ほとんど腫れは引いていた。



竜は同じ塔の地下で飼われており、容易に外に出させないようにしてあった。

日も当たらない場所では竜も弱ってしまうと訴えるリズだったがそれは聞き入れてはもらえなかった。

朝起きて、運ばれてきたご飯を食べる。

竜の世話の知識はあまり言ってはいけないとコゼット爺さんに教育されているためリズは最低限のことだけを伝えている。

竜の餌の内容と、毎日のブラッシング、あとは適度な運動とストレス解消をすること。

できれば、竜が選んだお世話係にきちんと世話をさせないと竜はストレスが溜まってしまい、いうことを聞かなくなることだけは伝えた。

竜の食べ物は野菜だけだったため、フルーツなども加えてもらった。

そのおかげか、慣れない環境でも竜はご飯をもりもり食べ始めた。



今日もリズは自室から階段を降りて地下まで向かう。

鉄格子越しに見た外は相変わらず木々しか見えない。

周りに建物らしきものは確認できない。

らせん状の階段はリズの部屋から廊下を渡り降りる、5階分降りたところでまた廊下を歩きまた5階分降りるを繰り返す、所々に騎士が立っており逃げないように監視されているようだった。

リズがいる建物が何階建てかは不明だったが、20階分は毎日上り下りをしている。


竜の世話より、毎日の階段の上り下りで体力を奪われて非常に疲れていたが1週間経ったいまはすでに慣れてきている。


「おはよー」


地下の竜がいる牢屋へと重い鉄のドアを開けて入り竜に声をかける。

大きな檻が置かれており、その中にマリアが世話をしていた竜が嬉しそうに鳴き声を上げた。

リズが勝手に連れ出さないようにドアの前には騎士が立っているが話しかけてくることはほとんどない。

これはいつものことなので気にはしていない。

檻から竜を出すことは禁じられているので、リズはデッキブラシを持って体を横にして檻へと入る。

少し前までは毎回、見張っている騎士に言って鍵を開けてもらっていたが、体を横にすれば入れると気付いてからは一人で入っているのだ。

リズが初めて檻の中に入った時は、見張りの人間たちがかなり驚いた顔をして見ていた。

どうやら竜をかなり怖がっているようで、今も一定の距離からは決して近づかない。


「あなたはそんなに狂暴じゃないのにね」


竜を怒らせるようなことをしなければ暴力的にはならないが、気に入られていない人間が世話をしようものなら竜も狂暴になることもあるらしい。

それで恐れているのだろうか。


地下にあるこの部屋は薄暗く、ランプの明かりだけだ。

デッキブラシで竜の背中を磨いていく。

気持ちよさそうに鳴く竜にリズは声をかけた。


「あなたに選ばれたお世話係じゃないけど、今はこういう状況だからお世話させてね」


納得したようにクゥーと鳴く竜。


そんな生活が2週間も経とうとしたころ、竜の研究をしているという40歳ぐらいの白衣を着た男が訪ねてきた。


「リズさん、実は竜がもう一匹居るのですが・・・・その竜の世話もお願いしたい」


「え?もう一匹いるんですか?」


一体どこから盗んできたんですか。と、言いそうになった言葉を飲み込んでリズは尋ねた。

とても竜を飼育する環境や知識がよいとは思えずもう一匹の竜が心配だ。


「ぜひ、会わせてください」


リズがそういうと、白衣の男は満足そうにうなずいた。


「隣の飼育小屋に居ますので、ご案内します」


男の後をついてリズも部屋を出る。

部屋の外には白衣を着た男が数人立っている。

「私たちは、竜の生態を研究している者たちですよ。ぜひ、いろいろ知識を教えてほしいものですが・・・まあ無理ですかね」


廊下にいた白髪の老人が、一人で笑いながら話しかけてきたのでリズはあいまいに笑う。

いくら捕虜として連れてこられたとしても、そう簡単に竜の知識を話すわけがない。

それは相手もわかっているようで無理に聞いてくることはなかった。


リズからしたら尋問や拷問をされると思っていたがそれは今のところはない。


薄暗い廊下を歩き、一番奥の部屋へと入る。

先ほど竜の世話をしていた部屋と全く同じく鉄格子がありうっすらと照らされた中に大きな竜が寝そべっているのが見えた。

「この竜は・・・?」

リズが顔をしかめて聞くと、白衣を着た男が静かに言う。


「約数十年前にあるところから保護した竜なんですが、ここで保護してから年々竜の体調が悪くなってきましてね。餌は食べない、暴力的でしてね。ちょっと持てあましていたんですよ」


「はぁ」


竜が暴力的なのはあなた達のお世話の仕方のせいでしょと言いたかったが言える立場ではないのでリズは怒りを抑えつつ頷く。


「竜の様子を見させてください」

「もちろんどうぞ」


リズは恐る恐る近づくと、竜は歯をむき出して威嚇してきた。

よっぽど酷い扱いをされてきたのだろう、リズは檻の中に手を恐る恐る入れ、竜の鼻先を撫でた。

クンクンとリズの手の匂いを嗅いでペロリと舐めた。


「信じられん」


白衣を着た男たちが目を丸くしてリズ達の様子を見て驚いている。

「腕を噛まれるか、腕を噛みちぎられるのかと思いましたよ」

「実際嚙みちぎられた人いましたからねぇ。はっはっは」


後ろで談笑をしている男たちにリズは顔をしかめる。

そういうことは早く言ってくれと。

この竜はリズに対しては敵意を向けてこないため、一安心だ。

この日からリズは2匹の竜の世話をするようになった。





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