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竜のお世話係14

その日の朝礼で、新しい竜のお世話係が紹介された。

竜騎士と、お世話係が集まる中、一人の少女がザール団長に連れられて部屋に入ってくる。


「おう、てめぇら新しい仲間だ。コゼット爺さんが年のため引退することになった。

急遽、新しいお世話係となったのがこのかわいい子。マリアちゃん21歳だ。みんなよろしくな」


ザール団長の横に微笑みながら立っている少女はとてもリズと同じ21歳とは思えないぐらい大人びて見えた。

黒いまっすぐな腰まである髪の毛は天使の輪ができるぐらいつやつやで、肌質もきめ細かで真っ白だ。

どこのお姫様かと思うぐらいの綺麗さに一同が息を呑む。


「はじめまして、マリアと申します。どうぞよろしくお願いします」


にっこりと笑うマリアにリズは思わずつぶやいた。


「すっごく綺麗な人ね」

「そうね、でも嫌な感じがするわ。女の勘ね」


マーシャルの言葉にリズは顔をしかめた。


「なにそれ。でもマーシャルのカンは当たるのよね・・・あんまり近づかないようにするわ」


セドリスに急に近づいてきた女には碌な思い出がないリズ。


「あぁ、そうねぇ・・・。セドリスさんに気があるかもしれないのよね。そういう女に結構ひどい扱いされるものね。あなた」

「そうなのよねぇ」


遠い目をしたリズとマーシャル。

いつも一方的にセドリスに恋をした女性が仲良くしていると勘違いしているリズに文句を言いに来るのだ。

リズが適当にあしらいながら過ごし、冷たい態度のセドリスに脈がないとわかった女性たちが去っていく。

その繰り返しだ。


でも今度のマリアはとても綺麗で、今までの女性たちとはちょっと違う。

お姫様のように美しいマリアがセドリスに近づいたら彼はなびいてしまうのではないかとちょっと不安だ。

ウォルフが常に、肌質は大切よ!髪の毛のお手入れも大切なのよと言っている理由がよく分かった。

毎日、お手入れしておけばよかったなと後悔をするが、顔がそもそも違うのだが意味があるのだろうかとぼーっとしているとマーシャルに腹を突かれた。

目線であっちを見ろと言ってくる。

ちらりと見ると、ちゃんと朝礼を聞けと睨みつけている父親と目が合い慌てて背筋を伸ばした。



数日後、リズはいつも通りゴロゴロと餌が乗った台車を押しているとセドリスとマリアが話している姿が見えた。

セドリスは無表情に見えるが、長年付き合っているリズにはわかる。

嫌がっていると。

セドリスがちらりとリズを見たが、リズは軽く頭を下げて遠回りをして二人に近づかないように台車を横に向けた。


セドリスがマリアを気に入ってしまったらどうしようと不安だったが、どうやら今は彼の好みではなさそうだとわかる。

今のところは。

遠回りをしながら台車を押していると、ウォルフとマーシャルが小屋の陰から手招きしているのが見えた。

「なぁに?こそこそと」

台車を押しながらリズが声をかけながら二人に近づくと、ウォルフはご立腹のようだった。


「とんだ女よあのマリアって子」

「かわいい子じゃない。ねぇ、マーシャル」


リズが話を振ると、マーシャルは首を振った。

「全然、見た時から嫌な感じはしていたわよねウォフル」

「そうよ。可愛くないわよ!私が狙っていた男にアタックかけてたのよ!いい男だいたい声をかけて回っているわよあの女」


ウォルフが一気にまくしたてると、マーシャルもうなずく。

「私も聞いたわよ。竜騎士以外にもめぼしい男に声をかけて歩いているらしいわよ」

「へぇ・・・。婚活かしらね」

リズがそういうと、二人は同時に首を振る。


「まさか!婚活にしては酷いわよねー。ちょっと気を付けた方がいいわよ。あの女」


ウォルフとマーシャルがそういうのでリズは頷いた。

「じゃ、ルーメロスのご飯の時間だから。ご忠告は受け取っておくわ」

「本当に気を付けるのよ。私、カンだけは鋭いのよ。女のカンね」


ウォルフがリズの背に声をかける。

マーシャルとおんなじことを言っている二人はやっぱり仲がいいんだわと一人笑いながらルーメロスの小屋へと向かう。


「あら、もうお戻りなの?」


すでに小屋にいるセドリスにリズが声を掛けると、無表情ではあるが不機嫌なセドリスが睨みつけてきた。

リズは肩をすくめて、ルーメロスの餌をおろす。


「あの女につかまっているのに無視しただろう」

「無視とは失礼ね。お邪魔しちゃ悪いと思ったのよ」


リズがそういうとますますセドリスが不機嫌になる。


「あいつはおかしい」


セドリスも同じことを言うのだとリズが手を止めて彼を見つめる。

「マーシャルとウォルフも同じこと言っていたわ」


端正な顔立ちの彼は朝の訓練をした後とは思えないほどきれいな顔をしている。

青い目の彼と目が合い、リズは顔が赤くなりそうであわてて目を逸らした。


「なるほど、いろんなやつに声をかけてるってわけか」


納得したように言うセドリスにリズが口の端を上げて笑った。


「自分に気があると思ったんでしょ。違ったって感じ?」

「まぁ、・・・そうなのかな?」


少し考えている、セドリスに思わずリズが声をあげて笑った。


「どれだけ自分がモテると思っているのよ」

「実際そうだからね」


さらっと言うセドリスに羨ましいわねと心でつぶやいてリズは話を促す。

「で、どういう話をしたの?」


ルーメロスを撫でながら言うリズに少し考えながらセドリスが答える。


「竜の話とか、俺たちの仕事とかを聞いてきたな」

「ふーん。働いていけばわかるのにね。不安なのかしら」

「そういう感じではなかったな・・・リズもあの女に気を付けた方がいい」

「わかったわ、マーシャル達も同じこと言ってたもの」

「知っていることでもごまかして答えるようにするんだ」


真剣な顔をしていうセドリスにリズはもう一度頷いた。


「わかったわ。気を付ける。でもすごく綺麗な人だから憧れちゃうんだけど友達になりたかったわね」

「まぁ、無理だろうね。タイプが全然違う」

「見た目も違うわね。彼女はとても美しいもの」

「見た目はどうでもいいけど」


セドリスがさらりという。

なんとなく、美しいマリアに卑屈になっていたリズの心が軽くなった気がして微笑んだ。

そんなリズにセドリスが呆れたように片眉を上げる。


「人の見た目を気にするなんて珍しいな」

「それほど彼女が美しかったから。お姫様みたいじゃない」

「くだらない話だな。でも・・・見た目に騙される男はいるかもしれないな」

そう言ってルーメロスを撫でるセドリスがマリアを好きにならなくてよかったと安堵してリズも作業にとりかかる。








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