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23話 かくておっさんはポーションの製造方法に激怒する

少しグロい描写があります。

苦手な方は注意してください。

一応次話にあらすじ載せます。

 

「魔窟。


 誰かがポーション作成組合をそう呼んだ。


 あれは魔窟だと。

 覗こうとしても覗けず、知ろうとしても知れず、帰ろうとしても帰れない。

 こそに幾多の強者たちが消えていった。


 そんな魔窟に潜入する3人の人間がいた。


 ロビン・ステッパー。

 ポーションに秘められた謎を解き明かさんとすべく、このポーション作成組合に乗り込むことを提案した男。


 ユナ・オルセン。

 ポーションに魅せられた男の弟子。男の夢を支えんとすべく男に協力するが、自身もポーションの謎に魅せられ始めている。


 アルマ・シュレディング。

 かつてのマッドアルケミスト。かつてはポーションの謎を追ったが夢破れ諦めたものの、男と出会い再びポーションに挑まんと決意したもの。


 この3人がここに集まったとき、何が起きるのか。

 ポーションの謎は解き明かされるのか。


 それは神のみぞ知る………」


「そんなバカなこと言ってないで気配察知を展開してください」


「大丈夫かロビン………」


 痛い口上を切ったロビンに冷ややかなユナの声が浴びせられる。

 何より本気で頭がおかしくなったのかと心配するアルマの声がロビンの胸にグサグサと突き刺さる。


「お前ら、もう少し遊び心ってものをだなぁ……」


「しっ! そもそも誰のせいでこんなところに隠れてると思ってるんですか」


「あれは不可抗力だろ………っ!」


 カツカツと廊下を歩く人の足音が響く。


「ここに人の気配があるなぁ………おい、このあたりを探せ」


「はっ!」


 黒いフードを被った見るからに大物の男が従えていた部下に命じる。

 なかなか見つけることのできない侵入者に、男は歯噛みする。


「くっ……どこだ。ポーションの製法を知られた以上は生かしておくわけにはいかないのだ……」



 ……………



「ポーション作成組合って魔窟って言われてるからどんなもんかと思ってたが、実際構造はそんな複雑でもないんだな」


「まあ職員が迷ったら元も子もないですからね」


「いやー、だが門の侵入者対策に全幅の信頼を置いているんだなー」


 悠々とポーション作成組合の内部を歩く3人。

 門には魔力探知機による隠密、気配遮断対策がしてあったが、そこを通り抜けてしまえばもはや彼らの道行きを阻むものはなかった。


 なお、門の侵入者対策についてはあっさりと攻略することができた。

 カラクリとしては、ターナー商会の伝手を使ってリトレイア大迷宮から出た魔道具の中に紛れ込ませてもらったのだ。

 農産物や薬草から魔力が感知されたら1発で分かるが、魔道具の中から魔力反応がしたところでそれを疑うものなどいない。

 あとは気配遮断と隠密を使っておけば、一応中を改めてられてもバレるということはない。

 こうしてロビンたちはあっさりとポーション作成組合に侵入することができたのだった。


「ポーション作成組合で働いてる人の中に高ランクの気配察知を持ってる奴がいたらどうしようと思ったが………」


「まあスキルは習慣とか訓練とかで発現するものだしなー」


「ポーション作成組合の中が血で血を洗うような命懸けの職場だったら別ですけどね……」


 ポーション作成組合は入ったら2度と抜けられないだけで、別に命懸けのブラック企業というわけではない。

 週休2日で残業代がちゃんと出るのは有名な話だ。

 笑い話として。


 故にポーション作成組合の職員に高ランクの気配察知スキルが芽生えることはない。

 彼らが街の真ん中を堂々と歩いていても見つけることができないのだ。


「んで、ポーション作ってるところはどこなんだ?」


「ええっと、地下3階ですね。早速いきましょう」


「そうだなー」



 ……………



 階段を下ればすぐに到着する。

 各階ごとに扉がついており、ロビンはその扉の前に立った。


「さあ、ポーションよ! お前の製法が今、明らかになるぞ!」


 そう言って彼は扉を開けた。


「これは………うっ……」


「な、なんだというんだ………」


「まじ、かよ………」


 目の前の光景を醜悪と呼ばずしてなんと呼ぶか。

 それ以外に彼らはソレを的確に表現する方法はなかった。


 扉を開けたロビンたちの目に飛び込んできたのは、大量のゴブリンだった。

 彼らは口に透明なパイプが繋がれており、そしてそこから大量の濃い緑色の汁がゴブリンたちの口に流れ込んでいた。


「あの色……『最初の草』と『ヤーナの水草』をすり潰したものです………」


 そしてゴブリンたちは限界までその液体を送り込まれ、限界を超えてもそれを送り込まれ


「ゴァァァァァァァア」


 ゴブリンたちの胃は逆流する。


 そしてそれは少し透明がかった液体になっており、それは彼らがよく見たものだった。


「ポーション………なのか?」


 ロビンが追いかけた夢にしては少し、いやかなり質が悪い冗談のような事実だった。


「クソッ!」


「あっ! ダメです!」


 思わずロビンがドンッと壁を殴った。

 ユナの制止はほんの少し遅く、その音は強く響いた。


「ん?」


 ユナが見たのは部屋に入ってくる職員。

 そして響いたロビンの拳。

 隠密と気配遮断が破れるには充分な条件だった。


「〈アサシンアーツ〉!」


 咄嗟にユナは暗殺術を放つ。

 だがその刃が職員に届く前に、彼は警報を鳴らした。


 ジリリリリリリリリリ!


 沢山の警備員が集まってくる。

 いかにロビンがSランクとはいえ、多勢に無勢。



「すまんっ!」


「いいです! それより早く逃げましょう!」


「煙幕ー」


 謝るロビンを制し、逃げることを提案するユナ。

 それに合わせてアルマが煙幕を使った。


「逃げるぞ!」



 ……………



「くそっ! 思い出しただけでも気分が悪い! ゲロマズい、ゲロマズいとは言っていたが、まさか本当にゲロ飲まされてたとはな!」


 あの光景を思い出して悪態をつくロビン。

 だがロビンがこう言っていられるのも、一旦離れて落ち着いたからである。

 彼の内心を思えば、あの場で全て破壊してもおかしくはなかったのだ。


「壁を叩いたのは悪かったけど、あれはやっぱり不可抗力だろ」


「いや確かに胸糞悪かったですけど……」


 実際ユナも吐かないようにするのが精一杯だっただけで、今までこんな作り方をされた飲み物を飲まされていたということに腹が立っていないわけがない。

 なおアルマはそれより研究欲が勝っていたため、若干引いたものの吐く怒るの前に、吐瀉物がポーションになる原理に目がいっていた。


「くそっ! こうなったら絶対、もっとうまくてまともなポーション作ってやる!」


 新たな決意を固めるロビン。

 それを横目にアルマは現状把握に努めていた。


「ふむー……どうやらここは地下7階だなー」


「随分下まで来てしまいましたね……」


 とっさに上階ではなく下階に向かって逃げ出してしまったことを少し後悔しつつ、でもしょうがないと思うユナ。

 現在ロビンたちはどこかの倉庫の箱の影に隠れていた。


「人の気配はどこかしこからするが、あいつらは追ってきてるか?」


「そうだなー、しっかり追ってきてるぞー」


「どうやって逃げます?」


 ロビンは腕を組む。

 緊急の警報に呼ばれてやってきた黒フードの男は高ランクの気配察知を保持していた。

 そのため入ってきたように出ることはできない。


「だがな、俺がどれだけこんな危機に直面してきたと思っている! ソロマッパーの力、見せてやるよ!」


 戦闘では空気なロビン。

 だがここからはロビンの独壇場とも言えるのだった。



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