表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
16/18

決戦前

~決戦前~


 退院をした。


 付き添ってくれたのは赤川と先に退院をしていたむつきんだ。


「あのね、もう気が付いているかもしれないけれど」


 赤川が言ったのはあの日から岡島と連絡が取れないという事だ。あれから一週間だ。学校も休んでいる。赤川に聞くと学校には体調不良という連絡が入っているみたいだ。だが、その確認は取れていない。


「なら、岡島の家に行くか。それしかないだろう」


 本当に体調不良ならそれでいい。でも、俺のこともある。携帯は新しく契約をし直した。速攻でむつきんが設定をして満面の笑みを浮かべている。


 俺がどこにいて誰と何をしているのかがわかるアプリだ。不思議とアカウントが二つある。よく見ると赤川も同じアプリを入れている。


「これで何かあったらすぐに駆けつけられるよ」


(赤川きゅんが攻勢に出て来た。さて、どうするあっきー)


 どうもしません。


「ありがとう。むつきんは大丈夫なの?」


「うん、大丈夫だよ。それに、私のためにあきらんは頑張ってくれたんでしょ。だから笑顔で迎えなきゃだもの。ありがとう」


 こういう表情を見るとむつきんってかわいいんだよな。ちょっと暴走さえしなければ完璧なのに。


(あの時あの暴走を止めていればと思うあっきーなのであった)


 なんでいきなりそんな変なナレーション風を入れてくるの。たまに暴走するけれどむつきんは悪い子じゃないんだよ。


「その笑顔のおかげで頑張れるよ。それで、あれから何かあった?」


 実際何もないのだ。そして何の進展もない。あれから何度か狭山刑事が病院に来た。だが、話すことはあまりない。


 俺の聞きたいことは何も話してくれないからだ。そういえば、一度だけリハビリの時にも見たが、あの日は俺の所には来なかったな。


 むつきんの所にでも言っていたのだろうか。なら、はやく解決してほしい。だが、いまだに俺とむつきんを襲った相手も見つからずにいる。おかしい。警察って優秀だったんじゃないのか。

 

 とりあえず、退院をしたから学校にも行けるようになった。その放課後にこうやって3人で会っている。


「そこで、あの女装会長の家ってどこなの?まあ、助けてくれたのだからお礼も言わないといけないものね」


 むつきん、なんか結構辛辣だな。


(まあ、天敵というか、本能で勝てない相手だってわかっているんだよ)


 まあ、俺も岡島聖という人間を敵に回したいとは思わないね。でも、あの岡島が一週間も学校に来ていないんだ。それは事件だろう。


 とりあえず、むつきんと放課後に会うまでに準備はしておいた。


 まず、岡島の家の場所については教師に聞いても教えてもらえなかったから生徒会室に聞きに行った。普通に岡島が居なくてもまわっているのだ。


 だが、彼らも岡島については「体調不良」ということ以外は知らないのだ。とりあえず、家の場所は教えてもらえた


 訪問する理由は見舞いと言う形で行こうと決めた。見舞いに必要だと思って、岡島と同じクラスの人間に話すとノートのコピーはすぐに手に入った。というか渡したい相手が多すぎてびっくりした。


 まあ、岡島はこの学校のアイドルだからな。そして、見舞い品を買おうと思っていたらこれまたすぐに集まった。


 アイドルって怖い。というか、みんなあの岡島の何を見てここまでテンションがあがるのだ。


(そりゃ、やっぱり顔じゃないの?)


 まあ、男子校であの顔と服装だからな。実際、外を歩いていてもそこらの女の子よりかわいいのも事実だ。


 ということで、3人で岡島の家に行くことになったんだ。


 場所は調べると電車ではなくバスが近いことがわかる。バスに乗る。というか、あのかっこで岡島はバスに乗っているのか。


 まあ、見た目は誰が見ても女子にしか見えないがそれにしても勇気があると思った。徒歩圏ならまだしも15分くらいバスに乗ってから降りる。


 バス停から少し歩くと閑静な住宅街が見えてきた。大きな建物が多い。少し歩くと更に大きな建物が見えてきた。レンガのような塀があり、門がある。表札には「岡島」とある。


「大きな家だね。どうする?」


 扉の横にインターフォンがある。そして、扉の上には監視カメラまである。なんだこの家。明らかに人を受け入れるのではなく、拒むような作りをしている。


「押すしかないだろう」


 そうだろう。


(こういう時怖気なくなったね)


 これは、天使ちゃんのおかげだよ。怖気付いたら天使ちゃんが背中推してくれるでしょう。だからこういう時は慣れてきた。インターフォンを押す。


「はい」


 女性の声だ。ここで臆してはダメだ。思い出せ。岡島はこういう時凛としていた。あのイメージだ。


「私、岡島聖くんと同じ学校の関原あきらといいます。最近休みがちなので様子を見にきました。もし、岡島聖くんの体調が良いようなら面会をしたいのですがいかがでしょうか?」


 ただの体調不良なら会えるはずだ。


「確認いたします」


 それだけインターフォンから聞こえて音が途絶えた。このまま放置されるのだろうか。そう思っていたら扉の向こうから黒シックな服装に白いエプロンをした女性が出てきた。


 これってメイドっていうやつですか?家にメイドがいるのなんて初めて見たよ。


「確認いたしました。どうぞお入りください」


「ありがとうございます」


 足が震えそうだ。


(あっきー。これ絶対におかじまんと付き合うといいよ。玉の輿だよ)


 え~と、色々つっこみたい所があるのだけれど、まず嫁のポジションが岡島じゃなく俺なのがびっくりなんだけれど。


(だって、あっきーって基本受けでしょ。まあ、ラブラブなのを見ていてほほえましいのは赤川きゅんとなんだけれどね)


 はいはい。平常運転ありがとうね。でも、おかげで緊張がほぐれたよ。いつもありがとうね。


(そういうのじゃないからね)


 天使ちゃんってツンデレだっけ?まあ、いいか。


 扉の奥は芝生があって広い庭がある。その奥に建物がある。これまた白い大きな家だ。なんだこれ。ここ日本だよね。


 ここだけ異空間だ。建屋の中に入る。これまた見たことのない玄関だ。しかも、玄関に入っても同じ服装の女性が立っている。


 ここ日本だよな。横を見ると赤川もむつきんもびっくりしている。


(こういうのってアニメとかで見たよ。気にしちゃダメ。でも、みんな若い女性なんだ)


 それは思っていた。


「こちらへどうぞ」


 スリッパに履き替えて廊下を歩く。階段をあがりこれまた重厚な扉の前に立つ。不思議とその横にインターフォンがある。


 おいおい。どういうことだ。そう思っていたらかちゃりという音がした。扉が開いたのだ。


 扉の向こうにはいつも通り長い髪をした岡島がいる。


 ただ、違うのは制服じゃない。だが、服装は普通じゃない。なんでワンピースを着ているんだ。


「ああ、入って。とりあえず、ナオさん。お茶とお菓子を用意してください」


 そう言って扉の奥に校長室とかにあるようなソファーがある。


(応接セットね。ってか、これ個人の部屋にあるんだ。しかも白くて高そう)


 絶対特注だよな。というか、まっさきにソファーにむつきんが座る。赤川は壁を見ている。


 そこにはぬいぐるみがある。どうやら岡島の女装は高校からじゃなく元々こういうキャラらしい。


「ああ、適当に座ってくれ給え。ちょっとまだ顔に跡が残っているからな」


 そう言われて確かに右目の周りが若干青くなっているのがわかる。


「どうかしたのか?」


 盗聴先を追いかけると言っていた。それで何かあったのか。岡島が言う。


「とりあえず、今回の出来事はある程度わかった。けれど、正直これ以上手を出さない方が安全だ。向こうはもう危害を加えに来ないだろうしね。


 それでも解決を望むと言うのならできることはまだある。ただ、これはこの前とは違う危険がある。それでもやるかい?」


「その代償がその怪我なのか?」


 俺は岡島の目を見る。手に小型のアイスノンを持っているのがわかる。


「まあ、そんなとこだ。僕はこう見えても学園のアイドルなんだよ。


 アイドルが怪我をした状態でみんなの前に現れることはできないからね。まあ、腫れも引いたから後は色だね。最悪コンシーラーで誤魔化すとするよ。さて、どうするのかな?」


「もちろん、やるに決まっているだろう。おびえながら日常を過ごすなんてごめんだ」


 俺は赤川とむつきんを見る。二人とも頷いている。危険な思いをみんなしてきた。謎はちゃんと解決させたい。こんなわからないままでいたくないんだ。


「そうか。ならば今回の出来事についてだけれど、証拠はない。


 けれど、この前の盗聴先から相手の拠点は割り出せた。そう、その先は○▽銀行の社員寮だ。そして、関原くんを助けた人もその○▽銀行の行員だよ」


「それが何につながるんだ?」


 俺はわからなかった。岡島が言う。


「ここ最近騒ぎになっていたのは○▽銀行で起きた銀行強盗事件だ。犯人は依然捕まらず逃走中。そして、その逃走中に事故に巻き込まれたのは関原くんと菅田ユリさんだ。


 実は菅田さんに確認をしたんだ。治療費について。そうしたらなぜか被害者でもある○▽銀行が特別融資をしてくれたらしい。


 あんな古い家を担保に低金利で金を貸しだしたらしい。それも破格の条件だ。おかしいと思わないかい」


「確かに条件だけを見るとおかしいと思う。いや、うちにも○▽銀行の方は来ていた。


 関係ないが、謝罪ということだそうだ。渉外担当の方が来ていた記憶がある。けれど、それは消費者対応なんじゃないのか?


 行きすぎているかもしれないけれど、最近は変にネットに上がるから気を付けているだけだと思っていた」


 自分で言いながら岡島の意見が正しいのかわからなくなる。


「明日、○▽銀行に行こう。そこで関原くんに確認をしてもらう。助けてくれた男性が銀行員かどうか。


 そして、その場でお礼を言うんだ。その行動を他の行員がどういう目で見ているのかでわかる。それをまた動画で撮る。どうだ?」


「わかったいいだろう。俺以外は離れていて欲しい。赤川。また俺の携帯を預けるけれどいいか?」


「うん」


 横を見るとむつきんが不満そうな顔をしている。というか、赤川を睨んでいる。


「むつきんに危険なことはさせたくないんだ。だからわかって」


(といいつつ、赤川きゅんを信頼しているから携帯渡せるんだよね)


 いや、違うよ。


 ってか、アプリのおかげで俺が誰と何をしているのかむつきんは知っているしね。でも、追加で何かされそうで怖い。待ち受けが勝手に変わっていたりとかね。


(そういえば、そういう出来事あったね。あっきー気が付かなくて面白かった)


 いや、天使ちゃん。気が付いていたのなら教えてよ。でも、また天使ちゃんにお願いをしないといけない。俺が見えていないところでどういう危険があるのかを。


(いいの?あの刑事さんに怪しまれていたけれど)


 別にかまわないよ。それに天使ちゃんの声が聞こえることだって証明のしようがないでしょう。


(わからないわよ。ひょっとして何か検査したらとんでもないことが起こっているかもしれないよ。そして、悲観にくれたあっきーを赤川きゅんがひっそりと横で支えるのよ)


 なんだか楽しそうだね。俺は部屋を見渡す。かわいらしい本当に女の子の部屋にしか見えない。


(あっきー女の子の部屋って妹の部屋くらいしか知らないでしょう。しかも勝手に入って怒られるイメージしかもっていないくせに)


 勝手に人の記憶を覗かない。


「でも、この部屋すごいな。岡島って本当は女子になりたかったのか?性同一障害というやつなのか?」


 そう言って赤川もむつきんもすごい顔をして俺を見てくる。


(聞きにくいことを聞けるあっきーは勇者だね)


 いや、触れちゃいけないことかもしれないけれど、触れずにいることの方が変だろう。違うの?


(あっきーは間違った方法に成長したのね。どうせなら赤川きゅんと結ばれる方に育って欲しかった)


 その方向には育ちませんから。岡島が言う。


「ああ、これは仕方がない。まあ、簡単な話しだ。僕には兄がいる。


 これがまあ、平凡なんだよ。そして弟が優秀。周囲はどう思う。だから弟には何か理由が必要だったのだよ。


 それがこれさ。まあ、かわいいのか嫌いじゃないからいいし、結構楽しいからないいけれどな」


 結局、楽しんでいるのか。でも、なんだか色々なんだな。俺は恵まれていることがわかった。


(そうだね。私もいるしね)


 まさかのアピール来たし。もう、たまに天使ちゃんの思考がわからないよ。


「まあ、気にしないでくれ給え。それとも、この僕の闇を埋め止めてくれるかい?」


「いや、それはない」


 しまった。つい天使ちゃんの時と同じような対応をしてしまった。だが、岡島は笑っている。


「そういう関原くんの対応が僕は好きなんだよ。では、明日10時に○▽銀行の前の喫茶店で。中に入って優雅にお茶でも飲んでいるから声をかけてくれ。学校は適当な理由をつけて休むこと。いいね」


 それ生徒会長が言うセリフかよ。でも、ここまできたらやってやろうじゃないか。最終決戦ってやつを。


(そのセリフ言ってみたかったのね。あっきーってひょっとして中二病なの?)


 天使ちゃんにだけは言われたくないよ。でも、これで終わりにしたい。そして日常を取り戻すのだ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ