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岡島は頼りになるが、萌えはない

~岡島は頼りになるが、萌えはない~


「で、関原くん。日常を守る、戦うと言ったけれど、君はどうしたいのかい」


 不敵な笑みで岡島は俺を見てくる。


(ってか、この人アイドルなんだよね?なんか裏表ありすぎない?)


 いや、それも人気らしい。戦えるアイドルってね。いまいちその設定では萌えられないんだよね。プロ意識というかなんというか。


(大丈夫、私もそこは萌え要素じゃない。んで、あっきーはどうしたいの?)


 そりゃ決まっている。約束したからね。約束は絶対だ、そう。


「まずは菅田ユリに会う。菅田ユリの両親に会った謝罪し、お見舞いに行く」


 そこで、天使ちゃんに確認してもらうんだ。菅田ユリが自分かどうかを。そう言うと岡島はこう言ってきた。


「まあ、関原くんと同じくらい菅田ユリも何かを見ているのだ。意識が戻ったら狙われる可能性は高い。標的が分散しているより一か所にいる方が敵もやりやすいと思うだろう。つまり、敵のしっぽを捕まえやすい。悪くない案だな。で、その菅田ユリという素性はつかめているのかい?」


 言われて思った。全然知らない。名前と家くらいはわかる。古い家だった。なあ、どういう子なのか教えてくれよ。


(知らないわよ。私記憶ないし。私が菅田ユリかどうかもわかんないじゃない)


 そうか。何か思い出せたりしないのか?だが、俺の問いには何も返ってこなかった。


「素性はわからない。何も情報がないんだ」


 思い出せないのなら仕方がない。今の所天使ちゃんの可能性があるのはこの菅田ユリなんだ。だったら、この子を追いかけるのが一番だ。それに、今の俺の状況を考えても。


(そうね。応援するよ)


 やっぱり、天使ちゃんの声は最高だ。脳がとろけそう。


(キモいんですけど。その表現)


「そうか。まあ、それは君が直接調べるのだろう。まあ、君は餌なのだからせいぜい動いてくれ給え。


 こちらとしても最善を尽くそうじゃないか。といっても、生徒会メンバーはこれでも業務を多く抱えている。


 手伝うのは僕だけだがね。でも、うれしいだろう。僕のようなかわいい子を横に従えて街を闊歩できるのだから」


「いや、それは望まないし断る」


 そう、それは確実にむつきんの暴走を招く。というか、惨劇が想像できる。


(そこを収めるあっきーかっこいい。どうするのか知らないけれど)


 なんで最後吐き捨てるように言ったの。見捨てないでよ。頑張るからさ。


(じゃあ、まず生徒会長か赤川きゅんのどちらがタイプか私に教えて)


 なぜそうなる。まあ、どちらかを選べと言われたら。俺はそう言われて二人を見比べる。この学園のアイドルと言われている二人だけれどタイプは違う。


 守ってあげたくなる赤川と勝ち気な岡島。どう考えたって彼女にするとすれば赤川だよな。


(うんうん、ならばはっきり言わなきゃ。俺の横は赤川がいるから大丈夫だって)


 それって言わなくてもいいよね。


「そうか。ならば君は誰に守ってもらうつもりなのかね?それとも僕に何かさせたいのかな?しょうがないな。欲しがり屋の君のために特別サービスをしてあげようではないか」


 そう言って岡島は俺の首に腕を回してくる。


「ちょっと何をしてくるんだ?」


 俺は狼狽した。だって、これはただ単に優しく抱きしめられているからだ。しかもなんだ。この甘酸っぱいいい匂いは。なんだか本当に女子に抱きしめられている感じだ。なんだかドキドキしてしまう。


(そのまま抱きしめ返せばいいのよ)


 ありがとう。天使ちゃん。その声のおかげで俺正気に戻れたよ。俺は岡島の肩に手をかけ押し返した。


「そういうのは大丈夫だから。でも、迷惑をかける。すまない」


 俺はそう言って頭を下げた。一瞬沈黙。あれ?ひょっとして変なスキルでも身に着けたのか?まさか時を止める能力か?


(そんなわけないじゃない。顔を上げて見たら)


 そう言われて俺は顔を上げる。目の前に冷めた表情をした岡島がいる。そして、なぜか嬉しそうな表情をしている赤川もいる。何があったんだ?岡島が言う。


「こういうのはあまり効果がないみたいだね。まあ、いいだろう。学園に降りかかる火の粉を払ってやろうではないか」


 まあ、放課後の火の粉もついでにさらっと払ってくれたらいいのにと思った。


 その放課後。


 本当に岡島はさらっと払ったのだ。あの伸びる警棒は実はスタンガンだったのだが、普通にさらっと避けてむつきんの頭を押さえつけて終わったのだ。


 そして、むつきんはわかったらしい。こいつには勝てないということが。諦めたむつきんに「こいつは男だ」と言ったら、いきなり岡島の胸をもみだした。


「本当だ。ってか、あきらんってひょっとした女より男が好きなの?」


(うん、そうだよ)


 ってか、そこ被ってこない。


「違うからね。俺が好きなのはむつきんだからね」


 って、言いながらうまく笑えない不思議。何かがひっかかる。


(そりゃ、最愛の人は赤川きゅんだものね)


 もう、やめてください。そこまで言われ続けたら赤川の行動が本当に俺を好きなんじゃないかと思ってしまうので。


(いや、それ本当だから)


 だから、なんでさらっと普通のテンションでそういう事いうのよ。


「んで、今日も行くの?このメンバーで?」


 むつきんにそう言われた。周りを見ると俺、むつきん、赤川に岡島。傍から見るとハーレムみたいに見えるかもしれないが実は女性はむつきんだけだ。


 一番可憐なのは赤川だ。そして、凛としているのが岡島。なんか怖いオーラ全開なのがむつきんだ。


 ってか、俺の思考おかしくないか?これ本当に俺の思考か?天使ちゃん何か操作してない?


(シテナイデスヨ)


 なんで片言!まあ、気にしないで行こう。とりあえず、俺はまず手土産を買うことに決めた。


 まずはお土産だ。なんだかゲームで敵国の武将を籠絡するのにまずお金を渡すとか珍しいものを渡すというのがあったのを思い出した。


(あっきーは守備範囲広いよね)


 ってか、これ天使ちゃんのためにやっているんだからね。間違えないで。


 とりあえず、この界隈で少しだけ有名な和菓子屋がある。そこで詰め合わせを購入した。ってか、結構な値段になった。


「ここの大福おいしいよね」


「うん、つい私も買っちゃった」


 なぜか気が付くと赤川とむつきんが仲良くなっている。あの二人があのまま付き合う流れになったら俺は別れられるのかもしれない。


(違うよ。あれはそういうのじゃないから。強敵に立ち向かうために手を組んだのよ)


 天使ちゃん何言っているの?


「では、行こうではないか」


 なぜか俺を守ると言い出した岡島は俺の腕にくっついてくる。岡島からはものすごくいい匂いがする。


 こいつ本当に男なのかと疑いたくなる。試してみるか?でも、どうやって。


(揺れるあっきーも楽しい)


 楽しまないの。でも、実際岡島はあのむつきんとの戦いを見ても強いのがわかった。そういう意味では安心できるのかもしれない。しかも岡島はこうも言っていたのだ。


「常に複数で行動をする。一人にならない。相手も複数いる人間に何かするのをためらうだろう。声を張り上げるかもしれないし、反撃されるかもしれない」


「任せて。あきらんは私が守るから」


 そう言ってむつきんは警棒だけじゃなく色んなものをカバンから取り出した。


「それに、もし誘拐されても大丈夫。あきらんの携帯にはアプリを入れているから。どこにいるのかすぐに私の携帯で把握できるようにしているからね」


 え?ってか、いつの間にそんなことに。言われて携帯を見る。確かに見慣れないアプリがあった。


「それは愛のしるしよ。私の行動もそれで把握できるから。誰と電話しているとかメールしているとか、Lineしているとすべてわかるからね。お互いの行動を知れるとか安心できるでしょ」


 笑顔で言われたけれど恐怖しかない。ってか、そこまで俺は束縛されていたのか。


「だからわかっているわよね。浮ついたこととかしたらすぐにわかるんだからね」


 ぼそっと低い声で言われた。思わず「はい」って答えてしまったね。


(恐怖におののくあっきーであった)


 だから、なぜにナレーション風になるの。そういう映画とかドラマみたいな演出いらないからね。


 電車に乗り、さびれた商店街を歩く。


「確かに、こういう所だと襲うには適しているかもしれないな。注意が必要だ」


 いや、岡島の発言はその通りなのだけれど、どうしてずっと腕を組んでいるのかがわからない。そして、その後ろを赤川とむつきんが歩いている。そう、後ろからものすごいプレッシャーを感じるのだ。


 細い路地に入り、昭和の雰囲気がある建物の前まで行く。木で出来た表札はうっすらと文字が書かれている。


 黒い小さなインターフォンを押す。しばらくして出てきたのは昨日のおばあさんとは違った。パーマをあてた細面の女性。体も細い。こぎれいにしているのがわかるが全身から疲れがにじみ出ている。


「何かうちに用事ですか?」


 冷たいセリフ。だが、すでに想定済みだ。


「はじめまして、私は凸▽学園の関原あきらといいます。本日はお詫びに参りました。謝罪をさせてください。本当に申し訳ございませんでした」


 そう言ってまず頭を下げた。というか、想定していたはずなのに、練習していたはずなのに、なんだか変なものでも見るような目で見つめられると頭の中が真っ白になる。


(まあ、実際変な行動だからね)


 それ言わない。誰のためにやっていると思っているの。


(でも、全然この景色見ても何も感じないんだよね。まあ、覚えていることが少なすぎるのだから仕方ないけれど)


 頑張って思い出してよ。って、頭の中でこんな会話をしているけれど俺はずっと頭を下げたままでいた。すると岡島が俺の前にすっと立ってこう話しだした。


「はじめまして、私は凸▽学園で生徒会長をしています岡島聖といいます。今回訪問させていただきたのは4月27日に凸▽2丁目の交差点での交通事故に関してになります。


 先ほど謝罪をしたのは当学園の関原あきらになります。彼は凸▽2丁目の交差点で白いバンに跳ねられた生徒になります。


 その白いバンはその後、突進し、歩道におられた菅田ユリ様にぶつかったと報道で知りました。本来であれば加害者は未だ見つかっていない白いバンの運転手かと思います。


 けれど、関原くんは菅田ユリさんの事故に関しても自分に責があるのではと思い謝罪したいと申し出があり本日同行させていただきました」


 岡島はそういうと俺の横に並び頭を下げる。なんだこいつ。女装をしているけれどやっぱりすごい奴だ。なんでこうすらすらと言えるんだ。


(多分人前で話すのに慣れているんだよ。あっきーも慣れれば大丈夫だよ。まずは往来で赤川きゅんに告白できるようになったらメンタル強くなるよ)


 そんな苦行はしません。ってか、告白した後の方が怖い。そう思っていたら後ろにいた赤川もむつきんも同じように頭を下げているのがわかる。なんだか俺のことなのにみんなを巻き込んでもうしわけない。


(本当だよ)


 いや、そこ天使ちゃんがつっこみ入れるとこじゃないよね。


「わかりました。皆さん頭をあげてください」


 そう言って俺はゆっくり顔を上げた。先ほどの怪訝な表情とは違って次は複雑な表情というのか、困った表情をしているのがわかった。


「もし、宜しければお見舞いに行ければと思っています。それと、これはつまらないものですが」


 そう言って俺は手に持っていた和菓子の詰め合わせを差し出した。


「本当にユリが知ったらびっくりするでしょうね。これから私は病院に行きますがついてきますか?」


「はい」


 俺はすぐに返事をした。天使ちゃんの顔が見られる。


(いや、その子私じゃないかも知れないよ)


 いいんだよ。それに、俺が居なければ菅田ユリは事故にあっていなかった。それは事実だ。だから俺にできることはしたいんだ。


「うん、そういう真面目なところもいいよね」


 むつきんが俺にゆっくり近づいてきたそう言った。だが、次にこうも言ってきた。


「同情や人道的は許すけれど浮気なんかしたらわかってるわよね。一生忘れられないトラウマ作ってあげるからね」


 いや、すでに一生忘れられないトラウマになりそうですが。そう思っていたら岡島に肩を叩かれた。


「第一関門はこれでクリアだ」


「いや、助けてもらってありがとう」


 本当にそう思った。俺だけじゃ絶対にこんな展開にならなかった。でも、岡島は男だ。そして、やはりなんだか完璧すぎて怖い。


 いや、女装しているから完璧じゃないか。でも、たまに間違いそうになる。大丈夫俺には、


(赤川きゅんがいるものね)


 そこ被ってこない。でも、俺はまだわかっていなかった。岡島の狙いを。そして、この事件の真相を。


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