3話
「ゾンビキリングのことをみんなわかってきたかな? 彼らはただのスイーパーじゃない。そしてただのエンターテイナーでもない。二つを備えた重要な存在なんだ。君も明日にはゾンビを殺せる。だがそれだけじゃ足りない。ルックス&トーク、迫力、場数。ゾンビキラー本人に求められるものはこの辺だが、君がゾンビキラーとして名を上げたいのならもう一つ、本当に本当に重要なモノがある」
CHECK!
「オーディエンスだ」
SEATTLE
ANAHEIM
COLORADO
「名のあるゾンビキラーは地元で応援されてるね。そう。スターゾンビキラーはオーディエンスありきだ。オーディエンスの応援と推薦があってクレストゲートパークのDJコニーのスタジオに情報が届き、彼の審査でランキングに名前が載る。ゾンビを殺すことならガキでも腰の曲がったジジイでも出来る。だが上位ランカーになるには、さっき述べたプロレスラー三大要素に加えて応援だ。オーディエンスの力もまた、プロレスラーに求められるものの一つだけどね」
…
……
「ハァーッ、ハァーッ! 僕は今、ついにゾンビキリングの最先端にやってきた! クレストゲートパークのDJコニーのスタジオだ!」
Interview with DJ Cornish
Q1:僕は今、非常にエキサイトしている! ゾンビキリングにおいては、ロックにおけるビートルズ以上の偉人であるDJコニー! 会えて本当に光栄だ!
DJ Cornish:
「イエア。DJコニーだ。知ってるぜマイケル・マッキントッシュ。ラジオ界のU.Sチャンプが俺なら、今のTV界のU.Sチャンプは君だ、マイケル。全国五十万のリスナーのみんな! そして愛すべき殺戮者たち! 君たちに愛を込めてリトル・キラーと呼ぶぜ! やっと会えたなリトル・キラー。ビッグ・キラーのDJコニー、テレビ初顔出しだ」
Q2:ここまでの映像を見てあなたはどう思う? 僕のゾンビキラーへの理解は正しい?
「概ね正しいよ。俺がゾンビキラーに求めているものは君のビデオで言っている通りだ。トークスキル、迫力、殺害数。どれも重要だ。もちろん、推薦もね。だが君が例に挙げたベラトリクス、バラチ兄弟、リカルドがそうであるように、三つの要素を満たすより、応援を勝ち取ることの方がよっぽど難しく、価値がある。その先の選考のことは、フェアじゃないから言えないけどね! ベラトリクスはまだしも、バラチ兄弟とリカルドはゾンビキラーになってなかったらただのヤベーヤツだ。驚くことに、ベラトリクスはあんなキリングスタイルのおかげで医学に貢献している。だがバラチ兄弟とリカルドは……。ヤベーヤツだ。だが、そんなヤベーヤツを、地元を挙げて応援するヒーローにしちまうのがゾンビキリングなんだ! かつて、遠い遠い神秘の国ジャパンのスモウ・レスリングでは、全てのスモウ・レスラーリストにレスラーの出身地が書いてあったそうだ。それほど地元出身を応援することは大事でエキサイティングなことなんだよ。単純な応援の量ではどうしても地域格差が生じる。そこが俺の腕の見せ所だ」
Q3:国民全員がスターになれる、歴史的に見て極端・異常とも呼べる事態だ。その中心人物であるのはあなただ!
「ヴィーナスが微笑んだのさ。偶然、俺の知り合いにはミッキー・ローリネイティスというバケモノがいた。ミッキーがユーモアとエモーショナルたっぷりでアクロバティックにゾンビをブッ殺すのを見て、俺はラジオでミッキーを称賛した。すると俺の方がスゲェ、俺の地元にはもっとスゲェヤツがいる、と投稿が集まってきた。俺が推薦してるのはミッキーなんだから、ミッキー・ローリネイティスが常にトップなのは当り前さ。彼は休まないしね。一回ハネムーン休暇を取った時、俺はベラトリクスを1位にしたが、ミッキーとベラトリクスの間にはまだ大きな壁がある。一回1位を獲った、そんなことで満足するなよベラトリクス。ああそうだ。今、俺に恋人はいないぜ。いつでも連絡くれよベラトリクス! 君なら歓迎するぜ」
Interview with Dr.Imagawa
Q1:緊急インタビューだ! 今回の主役、カリフォルニアゾンビキラーズの三人目のメンバーとでも言うべきこのクレバーなドクにも話を聞くよ。ハロー、ドク。
Dr.Imagawa:
「コニチハー。君の番組のファンだ。ビデオは何度も観ている。特にお気に入りなのは『食人族十番勝負』だ」
Q2:割と最近の作品だね。僕の番組のファンなんて嬉しいな。そしてドク。あなたは最新作へのアクセス権を今、手にした! 直接ゾンビを殺すことはしないあなただが、話を聞けばノーマン兄妹に大いに貢献している。あなたの役割を自己紹介と共に。
「サンフランシスコのドクター・イマガワだにゃ。サンフランシスコでクリニック兼バー兼骨董店をやってるよ。ワイフでバーテンのミスズちゃんのカクテルを飲みながら素敵なコレクションを観ていくといいにゃぁ。ボクは確かにゾンビを殺したことはほとんどないにゃ。それはサンフランシスコで生きるのにゾンビ殺しの必要がないから。それに彼女もいる。ミセス!」
COME!
「彼女以上にウデの立つ生物はいない。彼女がいる限り、ボクとミスズちゃんは安全だにゃ。ボクは安全なサンフランシスコで、ゾンビの群れ情報、無線機やビデオテープといった最先端のものを入手する。そしてその情報やブツを二人に提供する。別に二人がゾンビ殺しをしてなくてもボクはそうしたにゃ。結果的に、ゾンビ殺しのサポーターをしていることになったけど。あとは仕事の手配だにゃ。二人は金に困ってることもある。金をくれてやることは出来ないけど、報酬を払える仕事ならある。あとは護衛や援護にミセスをつけたりするにゃ」
Q3:あなたの仕事がなければノーマン兄妹はこれほど優れたゾンビキラーになっていないだろう!
「別にぃ。あのクソッタレのラジオDJがくだらない争いを巻き起こしてる。ボクはチャールズとミランダがゾンビ殺しをしていようがいまいが構わない。二人の母親、アビゲイルはいい人だった。二人はあの人を探すべきだ。このU.S.Zでゾンビを殺さずにそれをやることは難しい。だが、ゾンビ殺しをすることが、チャールズとミランダの旅のモチベーションやガス抜きになっているなら続ければいい。ボクはゾンビ殺しのサポーターじゃなくてチャールズとミランダのサポーター。偽善者? 好きに言えばいい。ボクは元から医者だにゃ」
CZK3 10-3-A
「ミランダ! まだ生きてる冷蔵庫が見つかったぞ!」
「本当に兄さん! 中に入ってるは、えぇ~と」
「クラウン・コーラだ! それもキンキンに冷えたのが何ダースも! 両手じゃ数えきれないぜ!」
「Awesome! 今日からクラウン・コーラパーティね!」
クラウン・コーラ 全米のイチバンマーケットにて大好評発売中
CZK3 10-3-B
「天才に理屈はねぇ。来たゾンビを殺す。それだけだ」
SMASH! チャールズの片手持ちのクギバットがチャンドラー・フェイマス(享年33歳 ゾンビ年齢2歳)の頭を引っ張り、故郷凱旋ホームラン! グビッとビンを傾け、浴びるようにビールを飲む。
「流石だぜチャールズ」
「今日は何百人殺すんだ?」
本拠地のファンも大盛り上がり。みんな銃や各種武器を持ち、口笛を吹く。今日はオレンジの成人式だ。オレンジの成人式では、みんなでゾンビ殺しに出かけ、その術とゾンビへの理解を深める。ゾンビは数が多いだけでとても弱いので、落ち着いて対処すれば全然ヤバくない。まだ成人前のミランダでも知っているこのゾンビ殺しに重要な考え方を成人式で知ることで、オレンジは誰もがゾンビを殺せる町になれるのだ。まずはチャールズとミランダがデモンストレーションだ。それに加え、今回は偶然町に来ていたミセスという素晴らしい助っ人もいる。
「カメラ回しておけよマイケル。これがオレンジだ」
ミランダの操縦するラジコンカーが大量のゾンビを巻き込んで自爆! ここはベルリンじゃないってのに赤い雨が降る。役目を終えたリモコンをバーニー・グラブス(享年60歳 ゾンビ年齢5歳)に投げつけ、首をへし折る。生き残っていたゾンビに向かって今度は銃弾が一直線! 銃反対派で襲ってきたトナカイに発砲できず殺されたエミール・ウィットロック(享年41歳 ゾンビ年齢9歳)、彼がピーナッツアレルギーだと知らずにデート前にピーナッツバターサンドを食べてきた恋人にキスされて死んだリーヴァイ・パリッセ(享年17歳 ゾンビ年齢8歳)、キスをしたオードリー・パットン(享年25歳 ゾンビ年齢1歳)の眉間に風穴を開け、オレンジの熱風を吸わせる。
次にエドガー・ポウリー(享年18歳 享年3歳)にジャパニーズサムライソードアンブレラを突き刺す! もちろんエドガーは即死だが、今日のミランダはここで止まらない。故郷オレンジに自分のウデマエを見せる絶好の機会だし、テレビのカメラも来ている。突き刺したアンブレラをオープン! 突き刺さっていたアンブレラが強靭なバネで開かれるのと同時にエドガーの上半身が拡散し、木っ端微塵に砕け散る。アンブレラに弾かれたエドガーの雨で視界を奪われたクリントン・ラーコム(享年38歳 ゾンビ年齢8歳)、イワン・フェアブラザー(享年21歳 ゾンビ年齢2歳)らの頭を銃でぶっ飛ばし、返ってくる血の雨からエレガントにアンブレラで自分を守る。
「わたしはあなたたちより背が低いけど?」
そしてちょっとイキった。ポーカーフェイスなままでもテンションは上がっている! デヴィッド・ベイラー(享年58歳 ゾンビ年齢3歳)、カレン・マルティネス(享年21歳 ゾンビ年齢3歳)、モーガン・エリントン(享年42歳 ゾンビ年齢9歳)をジャパニーズサムライソードアンブレラで叩き割り、後ろに迫っていた通称“グリズリー殺し”の総合格闘技チャンピオン、イドニス・ドッジ(享年37歳 ゾンビ年齢6歳)をローキックで崩し、真正面から顔面を踏んづけて頭を砕いてやった。ゾンビ殺しを夢見る若者にとって、刀剣でのキリングは人気だが、それは小学生が答える“将来の夢”の俳優や歌手のようなものだ。実際はその難しさの前に夢破れる。ミランダはそんな若者たちにアンブレラで手本を見せてやったのだ。
よくできました、とドクとミセスが拍手を送る。留守のことがほとんどのこのちっぽけな少女だが、今のオレンジの住民にはとんでもなく魅力的に見える!
「わかったかお前ら! ゾンビ殺しに必要なものが!」
チャールズが声を張り上げてクギバットからクギを一本抜き、ローランド・ストーム(享年29歳 ゾンビ年齢6歳)の眉間にストライク! そして力こぶを見せてやる。
「筋肉と!」
そしてニッキー・ロンバード(享年35歳 ゾンビ年齢0歳)を拳銃で撃ち抜くミランダを指さした。
「火薬だ!」
マイケル・マッキントッシュは頭からおもらししたようにドバドバ汗を流した。
「これはスゲェビデオになるぞホセ……!」
「……ザッツラィッ」
〇
…
……
数日後
「……?」
瞼を貫くほど強い日差しがチャールズを照らす。彼は上半身裸でベッドに倒れていた。寝ていた、というには乱暴すぎる寝相と寝起きの悪さだ。
「クソッ……」
頭がズキズキと痛む。こんなに頭が痛いのはポート・エグゼビアでぶっ壊したインパラの修理の請求書を見た時以来だ。
「そうか、バチェラーパーティ」
痛む頭にさらに負荷をかけ、必死に記憶のページをめくる。
「クソォッ……ドク……ドク! シノブ・イマガワ! ベンジー! ジェイク!」
返事はない。少しずつ、記憶の星が星座になる。少なくとも夕方頃までは思い出したくもない程はしゃいだようだ。だが記憶は途中からプッツリ切れている。記憶がぶっ飛ぶ程飲んだのだ。みんな生きているだろうか? 何故、自分は一人だけ家のベッドで眠れていた?
「クッソ……ヤベェヤベェヤベェ……何をした何をした」
チャールズはサイドテーブルにあった頭痛薬をコップの水で飲みこみ、タバコを吸って気分を落ち着けた。
「クッソ……」
今、寝室のこのドアを開けたら家が空に浮いていたりしないだろうか? オレンジがゾンビタウンになっていたり、ヒッピー村になっていたり……。背中にタトゥーとか入っていないだろうか? 何があってもおかしくない。ドクが結婚した時はもっとヤバかった。しかし、ドアの方が先に開いた。
「兄さん、起きたの?」
「ミランダ……?」
「コーヒーを淹れるわ」
「待てミランダ。何か……あったか?」
「兄さんの財布から一〇〇ドル抜いて罰金ボトルにブチ込んだわ」
“現在の罰金額:110ドル”
「クッソ……。だが俺はその程度で済んだか。ドクやベンジー、ジェイクは無事か?」
「ベンジーはダメかもね」
「クソォ……。ミランダ、何があったかお前の知ってる限りで教えてくれ」
「兄さんはベロンベロンになってオレンジをぶらついて騒いでたわ。ドクとベンジーとジェイクもね。家には帰ってないけどどこにいるかわかるくらい騒がしかったから心配はしていなかったわ。そしてさっき、路上で倒れてる兄さんたちを見つけたの。ミセスが兄さんとドクを起こそうと手を取ったら、二人とも泣きながらこう言ったの。俺にしろ! 俺にしろ! 連れ込むなら俺にしろ! 服を脱がすなら俺にしろ! って。ミセスを誰と勘違いしたのかしら?」
「クソ……。命が残っている中では考えうる限りサイテーだ。こんなことが妹にバレるなんて」
「俺にしろ俺にしろ! 連れ込むなら俺にしろ! ベンジーは結婚したばかりだ! ベンジーにはイヴァンカがいるんだ! ベンジーだけは見逃してくれぇ! って」
「……」
「……サンドイッチ作ってあげる。具は訊かない方がいいけど? コーヒーも淹れてあげるわ。そういう訳で、ベンジーだけは、先に結婚という人生の地獄に行ったわ」
「クソッ、全く結婚オメデトウだぜベンジー……」
チャールズはジュウっとタバコを灰皿に押し付け、少し安心して笑った。
「そろそろ兄さんも誰かに身代わりになってもらえるようになったら?」
ジャッカーンジャカジャジャカジャジャッジャーン。ノーマン家のラジオが『ジャンピングフラッシュ』を奏でた。
「イェーイ、リトル・キラー!? DJコニーだ。今日はビッグニュースがある。ランキングに変動があるぞ。5位にニューカマー、激戦区カリフォルニアを代表する王道ゾンビ殺しの継承者、チャールズとミランダのノーマン兄妹だ! こいつらのことを知りてぇんなら、マイケル・マッキントッシュの最新ビデオを今すぐ買いな。クレイジーだ。こんなヤツらを知らなかったなんて、まだまだ俺も娑婆僧だな……。さぁぁぁ今日もクレストゲートパークのスタジオから、リトル・キラーに最大限のリスペクトを送るぜ。スイッチをオンに!」
ノーマン兄妹はリビングで顔を合わせもせずにハイタッチをした。しかしその余韻にも浸らせてもらえない。ラジオを聴いた誰かが激しくドアをノックしているのだ。
「そーら、早くもおいでなすったぞぉ。ミーハー共め」
「きっとルームサービスよ。だってわたしたち、全米5位様だもの。マイケルにお礼をしなきゃ」
ドアの向こうからにゃあにゃあと日本語訛りの英語が聞こえる。
「きっとドクよ? ドクも無事だったみたい」
「どうかな? もしかしたらヤツは起きたら顔にタトゥーが入っててブキギレて俺のところに来てるのかも」
NEXT
『ザ・スカベンジャーズ キュンストレーキ・ザ・ストーカー』





