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California Zombie Killers  作者: 三篠森・N
EP9 ザ・スカベンジャーズ -スーパーハイパーウルトラシャーマン‐
36/86

1話

 デー デデーン

 デケレデデデ デデデデーン

 デデデデーン デデデデーン


 エピソード9 スーパーハイパーウルトラシャーマン


 CZKファン暗黒の時代が始まる!


 ミランダ・レイチェル・ノーマンは発見されたが

 ウェイワードパインにまで落ちてしまった彼女は

 果たして以前までの彼女と同じだろうか?


 チャールズ・ディーン・ノーマンはタマを使って

 クララを作ったが、ゾンビキラーとしての彼は

 タマが抜けてしまっているのではないか?


 人生の着地点を見つけたチャールズはそれでいいだろう

 だが闇と光の曖昧な境界線を彷徨うミランダは

 このまま暗黒面に落ちるのか?

 はたまた闇を抱いて光となるのか?


 彼らの歩みを止めることは十一番目の勇者や

 第八世代の怪物たちにもできないだろう

 だが闇の勢力はすぐそこに迫っている


 邪悪なメガ・コーポはたったの19980円で

 多くのタイムイズマネーを完全破壊する

 新型ビデオゲームマシーンの恐るべき商品展開により

 マニアックたちの徹底弾圧を始めようとしていた


 闇の呵責と闇の誘惑は誰にも襲い掛かる

 一方 賢明で勇敢な“スカベンジャーズ”のリーダー


 ドクター・イマガワはメンバーを招集し

 大規模なゾンビ殺しを計画することで

 ミランダがひとりぼっちになることを防いでいた……


 果たしてミランダが行き着く先は光か闇か……

 このエピソードのオープニングを飾るにふさわしい人物は誰だ?

 断固(ダンコ)ミランダだ。

 カリフォルニア某所の荒野を舞台に今回のエピソードは始まる。ヒッピー村でハエのたかったオートミールだけで何週間も籠城したヒッピーたちを助けてやるのだ。


「You can`t see me」


 PRIERCE!

 ジャパニーズサムライソードアンブレラの正確無比な突きがアラスカの木こり一族の家長ジョセフ・グレゴリー(享年59歳 ゾンビ年齢12歳)の二メートル近い高さにある左目を貫いた。そしてブルース・リーめいたキックでジョセフを蹴り飛ばし、ゾンビ化以降も固まって行動していたグレゴリー家のシャロン(享年48歳 ゾンビ年齢12歳)、バーノン(享年27歳 ゾンビ年齢12歳)、アレクサ(享年23歳 ゾンビ年齢12歳)、クリント(享年19歳 享年12歳)を次々と消費していく。比類なき攻撃性はまるでダース・ベイダーだ。

 “Miranda(ミランダ) Rachel(レイチェル) Norman(ノーマン)” ♀ (20)




「ッ」


 次に彼女は欠かせない。両のブシドーでアクロバティックにゾンビたちを切り裂いていくのはミセスだ。彼女の近くには“スカベンジャーズ”のメンバーですら立ち入らない。その凄まじい実力とキャリアがもたらす安定感はまさにオビ・ワン・ケノービ!

 “Mrs(ミセス)” ♀ (39)




「Try me, I'll make you famous」


 数ではミセスが上だが、“質”ではどうだ? 現代ゾンビ学概論の講義がもしハーバードで開かれるのならば、彼女の名を忘れるようなトンチキは単位をもらえない。殺しの“質”を極限まで高めたこのクレバーでセクシーなベラトリクス・サンダーランドは、非力でも扱いやすく、誤射しても人間なら死なない程度に調整してある麻酔銃でゾンビたちを天国へ送る。これからゾンビたちは、彼女に有名(famous)にされるのだ。その恐ろしさと手際の良さは皇帝パルパティーンに匹敵する。

 “Bellatrix(ベラトリクス) Sunderland(サンダーランド)” ♀ (29)




「うおおおお貴様らに永住権(グリーンカード)はやらん! 私のデスとロイヤーが許さんぞ! 代わりに愛国の弾丸をくれてやる! 資本主義万歳! ウィー・ザ・ピーポー(我々こそ真の愛国者)!」


 BLAMBLAM!

 もちろん、彼の名前も現代ゾンビ学概論のレポートには必須だ。質でも量でもなく、“キャラクター”だけでここまでのしあがったのは彼ぐらいだ。“スカベンジャーズ”の用事でリオ・グランデ川を離れることが多くなってしまったが、リカルド・マクファーレンがかつてクズの町ウェイワードパインでお喋りクソ野郎のオニールから奪った二丁のマグナム、“デス”と“ロイヤー”は、リオ・グランデ川で防げなかった分のツジツマが合うくらいには不法入国者(エイリアン)を殺している。ステイツへの想いで炎のように出力が揺らぐ不安定な彼は、まるでカイロ・レンだ!

 “Ricardo(リカルド) MacFarlane(マクファーレン)” ♂ (41)




「The Hero is here!」


 的確にシールドでゾンビを受け止め、銃とシールドでブッ壊す! その元気すぎるハシャギようを見て、彼がじきにジャパニーズ・カンレキであることや、ガンの重症患者だったことなどわかる者がいるだろうか? 長生きすることが出来なかった息子ロビンの分まで、この人生を完遂する。それがキャップの“ヒーロー道”だ。死さえ恐れない勇敢なこの男性をクワイ=ガン・ジンに例えたい。

 “CAPTAIN(キャプテン) CALIFORNIA(カリフォルニア)/William(ウィリアム) Rogers(ロジャース)” ♂ (59)




「……」


 そんなキャップに背中を任せ、彼女は喘息のクスリを吸った。メガネの度は最近また合わなくなってきたが、世界がクリアに見える。シスター・グレイシャは東洋に伝わる、突く・切る・払うと、あらゆる役割を果たす便利なステキ武器ナギナタ・スピアで、キャップが止めたゾンビの頭を打ち壊す! 一人、二人、三人、四人、五人! 大統領のワイフとファックでもしたかってぐらいに凄まじく殺されていく。とある田舎町で暗殺者として育てられた彼女は、サンフランシスコで暮らし、ゾンビ殺しとしてもその才能の片鱗を発揮するようになってきた。その伸びしろは“新たなる希望”ルーク・スカイウォーカー!

 “Glacier(グレイシャ) Goldgrape(ゴールドグレイプ)” ♀ (19)




「ハァ……」


 ため息まじりの紫煙を吐き、ドクター・イマガワはラジオのボリュームをちょっと上げた。


『俺が言いたいのは“ゾンビキリング”っていうスポーツ自体が腐っちまったってことなんだ。今、“ゾンビキリング”をやってるやつら。お前たちは自分たちが“ゾンビキリング”を殺しているってわかってるか? ゾンビに返り討ちにされるようなヘタクソのことを言ってるんじゃあねぇ! てめぇらだよてめぇら。俺のラジオも聴かねぇで“ゾンビキリング”やってるてめぇらが“ゾンビキリング”をファックし、殺し、腐らせちまってるんだ!』


 スピーカーの向こうで、北米大陸で最も影響力のある人物の一人、最もリスナーの多いDJの一人のDJコーニッシュ(コニー)が口角泡を飛ばす。


『少なくとも“スカベンジャーズ”とミッキー・ローリネイティスだけはまっとうに“ゾンビキリング”をやってるぜ! 身内の贔屓やジャパニーズ・ネンコ・ジョレッツじゃねぇ。親を黙らすためにやってんじゃねぇんだよ。モテるためやSophomoricなガキどもが俺ってヤバイんだぜ、って思い知らせるためにやってるもんの先にあるもんが“ゾンビキリング”なんだよ。少なくとも“ステイツ・ジャック”とかいう工場から出荷された十五歳から二十歳の少年のようなクズ共は殺されるべきだ』


「ねーう」


 ドクはいっそDJコニーにハガキを送ってやろうかと思った。「タッパと声のデカイヤツにロクなもんはいねぇ」と。


「ボケチャールズ」


 このカリフォルニアにいったい何が起きているのか?

 DJコニーの言葉を思い出してほしい。“ゾンビキリング”は死んでしまった。

 リカルド・マクファーレンの言葉も思い出してほしい。資本主義万歳。

 そう。スポンサー付きで見た目重視の若者を選び、“ゾンビキリング”をプロデュースする業者が現れたのだ。“ゾンビキリング”は自営業ではなくなりつつあり、ベラトリクス・サンダーランドが唯一の存在である“アイドル系ゾンビ殺し”とは似て非なるこういった“ゾンビ殺し系アイドル”が今、ゾンビ現象発生当初を知らない子供たちの間ではやり始めている。彼らはスタッフが弱らせたゾンビをスイートなラブソングとダンスに乗せてトドメを刺す。


「ボケチャールズ!」


 これは流石にドクも思うものがあった。自分ではゾンビ殺しをせず、安全なサンフランシスコでノビノビ暮らしているドクだが、ノーマン兄妹をサポートしてきたし、DJコニーから“スカベンジャーズ”を押し付けられ、最初はイヤイヤだったが今は結構ノリノリでリーダーをやっている自分がいる。“スカベンジャーズ”を出荷された少年“ステイツ・ジャック”と同一視されるのは我慢がならない。

 だからドクは、“スカベンジャーズ”を招集した。プライドも環境も実力も違う、本物の“ゾンビ殺し”を思い知らせてやるために……。ミランダがもう一度、尊厳を取り戻せるように……。そして、召集の過程で、チャールズを誘えない自分もいた。


「ねーう!」


 日本語で汚い言葉を口走ったドクは、雑誌の表紙を飾る“ステイツ・ジャック”のリーダー、ザックの顔にタバコを押し付け穴をあけた。


「まさかお前の出番がまた来るとは思ってなかったにゃ。くたばれ資本主義」


 ドクは一ドル札を恨めしそうに睨みつけた後、雑誌に挟んだ。穴があいたザックの顔から、ちょうどジョージ・ワシントンの肖像がドクを覗いていた。






EP9 The Scavengers -SUPER-HYPER-ULTRA SHAMAN-






「ミランダ、お疲れにゃ」


「ドク」


「……。上手くやれてるようでよかったにゃ。メンバーとも馴染めてるみたいだし、今日はシスターもキャップも調子が良かったし、ミランダもいつも以上にノってるように見えたけど?」


「……そうね。そうかもね。今日はハシャげたわ」


「……らしくもない、とも言えるんだが。無理してジョークを言ってタフぶらなくていいにゃ」


「何が言いたいの? ドク」


「ねーう。なんでもないにゃ。ミランダ、少しサンフランシスコで休もう」


「いいえ、大丈夫よ。母さんを探すわ。……ありがとうドク。楽しかったわ」


「ミランダ」


「ドクの言いたいことはわかってるつもり。でもね、ドク。やっぱりわたしはこうするしかないの」


「ミランダ」


「何? 少し奇妙よドク」


「これを持ってくといいにゃ」


「なにこれ? 札束?」


「千ドルあるにゃ。この先、また大きな金が必要になる。返してくれればいいにゃ」


「いらないわ。罰金ボトル以外には特に使い道はないもの。どうせなら二十五セント玉で欲しかったわ。ドライブインのスロットマシンで遊べるもの。仕事をちょうだい」


 ドクのトヨタのダッシュボードに入っていた、サンフランシスコで配られているチラシの束を見る。


「これなんて面白そう」


 “ニュートン逮捕”

 我々はついにアイザック・ニュートンを逮捕することに成功した。我々は身代金を要求しない。何故なら引き換えに渡す身柄がないからだ。しかし、魂のみで現世を漂う悪霊ニュートンは、我らが預言者の力により永遠に拘束されるだろう。死者と交わす言葉を持つ預言者は、自らの肉体をニュートンの霊体に貸し、代弁することで釈明のチャンスを与えた。しかしこれ以上彼が貶められるのをよしとしない慈悲深き預言者の意思により、ニュートンの悪あがきは教団内での極秘となった。しかし、重力などというまやかしから彼は解放されただろう。地球の引き合う力は全て霊の磁力によるものなのだから。


「ド(タマ)がイカれてるにゃ」


「No shit」


「ここの預言者(ロード)は死者と話せるらしい」


「面白そう」


「やめとくにゃ。トチ狂ってるんにゃこいつら」


「ド頭トチ狂ってる人の方が笑えるじゃない。ミスター・ビーンとか、あのなんて言ったっけ? 昔ドクに見せてもらった日本の……」


「バカトノ?」


「そう。バカトノ。あれみたいなものよ」




CZK3 9-1-A

「ミランダ! まだ生きてる冷蔵庫が見つかったぞ!」

「本当に兄さん! 中に入ってるは、えぇ~と」

「クラウン・コーラだ! それもキンキンに冷えたのが何ダースも! 両手じゃ数えきれないぜ!」

「Awesome! 今日からクラウン・コーラパーティね!」

 クラウン・コーラ 全米のイチバンマーケットにて大好評発売中

CZK3 9-1-B




「サイテー」


 荒野を駆けるミランダがバイクに積んでいたラジカセがガビガビと呪われた音を立て、心臓麻痺のようにストップしてしまった。バイクを止め、リジェクトのボタンを押すとテープが絡み、腹を裂かれたゾンビの腸みたいにラジカセから引き摺り出される。荒野を駆けるBGMがエキゾーストノートだけでは困る。無駄なことを考える時間がありすぎる。特に今のミランダは……。


「ぶっ壊れたのか」


「ええ」


 荒野の真ん中でたった一人、パラソルを開いていた赤いネルシャツの露天商の男がイッヒッヒと笑いながらやってきてラジカセを覗き込む。


「ダメかしら?」


「こいつぁ寿命だぜ。テープの方もダメだ。代わりにこいつを買わないか?」


 男が持っているのは、ミランダが持っているものより少し新しいタイプのラジカセと手書きのラベルのカセットテープだ。


「俺が気に入った曲だけを入れたその名も『GoodTime(ゴキゲン) Rock(ロック)』のNo.3だ。このテープには君の好きな曲が入ってる」


「わたしの好きな曲?」


「NirvanaやE.V.O、なのにPearlも入ってる。もちろん、ベースのロバート・リヴリン作曲のヤツだけだ。音楽の好みが雑食性の君にピッタリだ」


「……なんで知ってるの?」


「特に理由はねぇが全知全能やっててな。イッヒッヒ。なんでも訊いてみな。俺がクイズ番組に出ればクイズだけで一〇〇万ドル稼ぐジョージア州のクイズ王ミスター・スミスより稼げるぜ」


 ミランダは眉間に皺を寄せてあんまりカワイクない表情をする。クイズだけで一〇〇万ドル稼ぐジョージア州のクイズ王ミスター・スミスは、兄のジョークにしか出てこない架空の人物では? イッヒッヒと笑う目の前は何故知っている?


「随分幼い頃に友達を亡くしたようだな。シャーリーはニンジンしか食べなかったせいで、たったの五歳でなくなった」


「なんでシャーリーのことを知ってるのよ。兄さんの仲間? 兄さんから教えてもらったの?」


「言ったろぉ。全知全能だって。そうだな、例えばこのバイクはマーク伯父さんの遺品だ。マーク伯父さんはゾンビ現象の直後にもう仕事に行かなくていいぞって言ってあのバイクで出かけてすぐ亡くなった。君の友達にベラトリクス・サンダーランドがいるな? いや、君は別にベラトリクス・サンダーランドは友達じゃないと言うな。だが君はベラトリクス・サンダーランドとも友達になりたいと思っている。それにシアトルはNirvanaの聖地だ。そんな君にいいことを教えてやろう。彼女の初恋の人はシアトル・マリナーズのイチローだ。彼女の父親はシアトル・マリナーズの大ファンで、よく彼女をセーフコ・フィールドに連れて行った。その回数は五十回以上だ。君の兄、チャールズのプロムの相手を? アメリア・スタイルズはいい女だったみたいだな。ナタリアには敵わないし、今はサンディエゴでゾンビやってるみたいだが」


「意味のない言葉ね。答え合わせが出来ないことなんか知っていても意味はないわ」


「じゃあ次に、君の鞄に入っているチラシで、一番君が興味を持ったものが何かを当てよう。“ニュートン逮捕”だ」


 鞄からチラシの束を引っ張り出したミランダは、パラパラとめくり、無言の肯定とした。このチラシの束なんて見せてもいないのに。


「そんなミランダに」


「なんで名前を?」


「言ったろぉう。全知全能なんだ。そんなミランダは、『ゴキゲンロック』のNo.3を買わないのかい? 聴けばすぐに君が好きになるジャパニーズ・アニメーションのエンディングテーマも入ってる。ピーヒャラピーヒャラ」


「いいわ。何もないよりはマシ。『ゴキゲンロック』のNo.3を買うわ。今、千ドル持ってるけど?」


「タダでいい。あんまり気にしてないみたいだな、俺の全知全能を」


「言ったでしょ。答え合わせ出来ないことなんか知るだけ無駄なの」


「ありがたいねェ」


「何が?」


「あのオアシスまで俺を乗せてくれるだろう? それでチャラだ」


「あなた、遭難してたの?」


「そうとも言えるがそうとも言えない。ここままだと俺は死ぬが、君がここを通って『ゴキゲンロック』を買っていくことも俺は知っていた」


「まさにインチキオジサン登場、ね。わたしの名前は知ってるんでしょう? ミスター預言者さん。あなたの名前は?」


 ミランダは露天商の男にヘルメットを投げた。男は漆塗(ジャパン)のような黒髪をヘルメットで覆い、金の指輪でヘルメットを叩いて鳴らす。薄く色の付いたメガネの奥を細めてイッヒッヒと笑った。


「フィルだ。フィル・サリバン」

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