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California Zombie Killers  作者: 三篠森・N
EP8 ゴー! タイガー・マザー!
31/86

1話

 前回までの! CZK《Cairo Zombie Killers》は!

 占術師(ババア)預言()ったとおりだぜ! 悪魔(ヤツ)木乃伊(ゾンビ)遺児(のこ)してやがった!  元凶(おや)仇敵(カタキ)である(オレ)復讐(リベンジ)決定(ちか)った木乃伊(ヤローども)は、ついにその全貌(すがた)出現(あら)わした……。

 出征()くぜ相棒(アヌビス)!  (ファラオ)称号()矜持()けて太陽神(ラー)(パワー)披露()せてやる!  埃及(エジプト)(オレ)守護(まも)る!

「……Cool」


 廃墟のドライブイン。チャールズのインパラに新しく搭載されたDVDプレイヤーで、ドクターから貰った日本の古いグランド・サムライのドラマ『ショーグン』を観たミランダはその言葉を堪えずにはいられなかった!

 このショーグン! 年齢といいムサ苦しさといい、ミランダのドストライクだ!


「やっぱり日本ってサイコーね兄さん。兄さん?」


 しかし、チャールズはバドワイザーの瓶を片手に双眼鏡でどこか遠くを覗き込んで微動だにしない。


「そんなに熱心にどうしたの兄さん? スカーレット・ヨハンソンがお着替えでもしているの?」


「おかしなことが起きてる」


「おかしなこと?」


「ミランダ、お前も双眼鏡を見てみろ」


 ミランダもコーラのプルタブを開け、兄と同じ方向に双眼鏡を向ける。するとなんということだ!


「あれは……ゾンビ?」


「んああ、少なくとも俺の友達にあんなヤツらはいない」


「ゾンビが勝手に死んでる?」


 ミランダの言う通りなのだ! 確かにかなり小規模なゾンビの群れが遠くにいる。警戒することもない距離、大きさの群れだ。その群れのゾンビたちが、突然に糸が切れたマリオネットめいて一人ずつ倒れて死んでいくのだ。


「狙撃と考えるのが妥当だが、いい腕してるな。ん?」


 ヒューンと甲高い音が空を裂き近づいてくる。チャールズの体に緊張が走った。


「おいおい。おいおいおいおいマジかクソッ!」


 チャールズは咄嗟に身を屈め、バドワイザーの瓶を振り上げる! けたたましい音を立てて瓶が砕け散り、芳醇な泡がチャールズのインパラのシートで弾けた!


「弓矢だ!」


 チャールズの言う通りなのである! 幸運にも、双眼鏡で自分目掛けてまっすぐに飛んでくる矢を捉えたチャールズは、一番近くにあった武器……バドワイザーの瓶で異次元の射手の矢を撃ち落としたのだ! なんたる軍隊仕込みの反射神経と荒廃したカリフォルニアを生き延びたタフさの二重螺旋じみた迎撃能力であろうか! イージス艦にチャールズを搭載出来るのなら喜んで買う国は多いだろう。だが、瓶の一部が彼の腕を引っ搔き、血が滲み出した。


「ミランダ、白旗を挙げろ。相手は人間だ」


 即座にインパラの陰に身を隠した兄妹は、遠い国・日本(ジャパン)で使われるトラディショナルな遠距離武器・和弓から発射された矢を注意深く観察した。その矢にはこんな字が刻まれていた。

 “南”。






EP8 Go! Tiger-Mother!






「人間だったのかい。これは悪いことをしたねェ!」


 白旗を認め、トヨタでやってきたのは、キリッとした太い眉に黒い髪のカリアゲ、黒い瞳の中年女性だった。


「このラーメンババア……。俺じゃなかったら死んでるぞ」


「ラーメンババア? アタシは中国人じゃなくて日本人ギャ! ミナミ・ユキコ!」


「そうかいユキコ! アンタのせいで俺の車のシートがビールでビチャビチャだ! おもらししたみたいに!」


 チャールズが両腕を広げてユキコにシートの惨状を訴えかける。そしてミランダは目の前の女性が日本人だと知り、大きな関心を持って日本訛りの英語を話すこのジャパニーズ・キモッタマ・カアチャンを観察した。もしかしたら、まだ他にも日本人が?


「こんなところで何をしていた? どこかから逃げてきたのか?」


「こっちが名乗ったんだからまずは名乗りな坊や。話は次ギャ」


「チャールズだ。チャールズ・ディーン・ノーマン。こっちは妹のミランダ」


「よろしく、チャールズにミランダ」


 ユキコは手を差し出し、チャールズもそれに応じる。


「おや、アンタ、ケガをしたのかい?」


「んあ? いや、カスリ傷さ」


「バイキンが入るといけないねェ。ちょっと待つギャ!」


 ユキコはリュックサックからパンティストッキングのパッケージを引っ張り出し、慣れた手つきでチャールズの傷に包帯のように巻きつけた。


「……ラーメンババアなんて言って悪かったなユキコ。だがアンタ何をしてる? 新手のスゴウデゾンビ殺しか?」


「フン! アタシの弓のウデは超一流! 若い頃はジャパンで競技大会にも出たギャ!」


 ユキコは大きく胸を張り、荒馬のように鼻で息を吐き出した。


「ジャパン? やっぱりジャパンにいたの、ユキコ?」


「おやおやミランダ。お兄さんに紹介されたからアンタの名前は知ってるけど、アタシはまだアンタから挨拶されていないよ! 三十点!」


「無礼を許してユキコ。ミランダよ」


「いいお行儀。八十点! そうさ。アタシは日本にいた。そしてこの国の人間と結婚したのさ」


 ミランダもユキコと握手を交わす。その右手の指はゴツゴツとしていた。弓を番えて射るから皮膚が硬くなっているのだ。


「アタシらはサンフランシスコを目指してたのさ! あっちこっちの日本人が今、サンフランシスコを目指してる」


「サンフランシスコ? 確かにあそこは平和だな。ゾンビもいねぇし、アンタと同じ日本人も多い。移住するにはいい町だ」


「サンフランシスコに移住ゥ? バカ言っちゃいけないギャ。どうも、日本に帰る船がカリフォルニアから出るらしいのさ。だからまず、サンフランシスコに集合するのさ」


「ほほぉう」


 チャールズが腕組みをして唸る。そして少し考え事をした。


「同行しよう」


「やったぁ! ついに日本に行くのね兄さん!」


「いや、日本には行かないぜミランダ? まだ母さんも見つかってねぇし、日本が安心かもわからない。だがサンフランシスコに用がある」


「サンフランシスコに用? 聞いてないわ」


「今、ここで用が出来た。サンフランシスコ、日本人、日本へ帰る船。お利口なミランダにはこの三つのワードでクイズが解けるかな? このクイズはクイズだけで一〇〇万ドル稼ぐジョージア州のクイズ王ミスター・スミスでも解けなかった問題だぜ」


 サンフランシスコ、日本人、日本へ帰る船。ミランダの記憶の中の点と点が繋がり、線となって星座の如く正解を浮かび上がらせる。


「ミセス?」


「そう、ミセスだ。ミセスも日本に帰りたがってる。ミセスにこのことを教えてやろう。それにミセスなら日本へ帰る船の用心棒に申し分ない。シスター・グレイシャもサンフランシスコに逃がしてから会っていないしな。ドクに預けてハイ、サヨナラってのは不義理だ。サンフランシスコに向かうぞ。だいぶ遠いがな。ユキコ、アンタの弓のウデはスゴウデだ。まるでホークアイかレゴラスだ」


 チャールズがインパラのボンネットに地図を広げた。


「旅は道連れ世は情け! そうかい、よろしくチャールズ、ミランダ」


 ユキコはもう一度、兄妹と握手をする。


「そして紹介するギャ。息子のケビンと娘のスズシロ」




CZK3 8-1-A

「ミランダ! まだ生きてる冷蔵庫が見つかったぞ!」

「本当に兄さん! 中に入ってるは、えぇ~と」

「クラウン・コーラだ! それもキンキンに冷えたのが何ダースも! 両手じゃ数えきれないぜ!」

「Awesome! 今日からクラウン・コーラパーティね!」

 クラウン・コーラ 全米のイチバンマーケットにて大好評発売中

CZK3 8-1-B




「んみゃぁ~。これは立派な和弓(ワキュウ)! 矢羽は鷹かにゃ? 矢じりにかえしがないにゃ。これは完全に競技用の品!」


 数日の旅を終え、ノーマン兄妹とユキコ一家はサンフランシスコに到着していた。道中、何度かゾンビに出会ったがノーマン兄妹のゾンビ殺しの腕は読者の皆様はご存知の通り。ユキコも見事な弓の遠距離攻撃でそれをサポートした。そして辿り着いたサンフランシスコのドクターの店に入って挨拶を終えるなり、ドクターはユキコの背負っている弓に目を輝かせたのだ。


「かったるいこと抜きでハッキリ言うにゃ。その和弓、一〇〇〇ドルでボクのコレクションに加えさせてもらいたい」


「この弓は売れないねェ」


 ユキコは豪快に笑った。


「アンタ、日本のどこ出身だい? アタシは福岡(Fukuoka)さ」


「おいマジかよイカれてるぜ。地名にFuckって入れるなんて」


 ドクターが無知な友人に肩を竦める。


「ボクは日本人だけどカリフォルニア生まれで日本には行ったことはないにゃ。でもこっちのミセスはちゃんと日本出身にゃ。ミセス」


『Gifu Prefecture』


 ミセスが携帯用ホワイトボードで回答した。


岐阜(Gifu)出身なのに日本語喋れないのかい?」


「ミセスはシャイすぎて誰とも喋れないんだにゃ」


「困ったもんだよ」


「でもミセスは現時点で北米大陸最強の生物にゃ。ボクもこの最強のボディガードがいなくなるのは惜しいが、ミセスも帰りたいだろう? 日本への船のことはボクも知らなかったけど、情報収集をしてみるにゃ」


「そうかい。よろしく頼んだよ。それと、ドクター・イマガワ?」


「んみゃ?」


「アンタ、医者なんだろ?」


「んみゃあ……。まぁ、クリニックの院長ではあるにゃ」


「アタシの息子、ケビンに勉強を教えて欲しい。ケビンは絶対に医者にすると決めてたんだ。それなのに、あのナマケモノ……」

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