5話
「ストームトルーパーのゾンビだぁあ?」
「ストームトルーパーのゾンビだ。俺たちジェダイの騎士になりたくて……。ストームトルーパーのゾンビを作った。そいつらを派手にブッ殺す予定だった」
「何をした?」
「近くのチーマーやカルトギャングをとっ捕まえた。監禁し、ゾンビの血を注射したりゾンビの肉を食わせたりしてウイルスに感染させた。そしてストームトルーパーのコスプレをさせて餓死させ、損傷の少ないゾンビを作った」
スカベンジャーズのメンバーは顔をしかめた。医療従事者であるドクとベラトリクスはそれがいかに、いかに生命を愚弄する行為であるかを知っている。なんという……なんという……。
「よかったぜ」
「?」
「てめぇらがクズで安心したぜ。俺は今日、この町に到着して、よく知りもせずこのウェイワードパインとその住民を妹の前でクズと断じて罵った。俺は間違ってなかったぜ。てめぇらはクズだ」
チャールズはオニールに怒鳴りもしないし暴力も振るわない。ため息を吐いて腕組みし、しばらく考え事をした後、薄汚れた空色のペンキの家の庭から電動芝刈り機をかっぱらった。
「ストームトルーパーというくらいだからたくさんいるんだろうな」
目を凝らすとどんどんと白い影が増えてくる。ストームトルーパーのゾンビ、いや、ゾンビのストームトルーパーだ。
チャールズは電動芝刈り機が正常に始動することを確認し、インパラの中の武器とゾンビ殺しに使える日常品のラインナップと数を確認する。
「OK。ベラトリクス、ビデオ回しといてくれ。クララがいつか、パパはまるで小さなボートのように頼りなくフラフラしているオジンだわッ! って言い始めた時に見せるパパの雄姿だ。宝石のようなパパをカメラに収めてくれ」
「まだ小さい娘にゾンビ殺しを見せる気?」
「娘がゾンビ殺しを見られる年齢になる前に小さなボート呼ばわりされたらやってられねぇ」
芝刈りの紐を引いてエンジンを始動、愛車のボンネットの粗暴に乗せ、自らは運転席に乗り込む。そして目いっぱいアクセルを踏み込み、ストームトルーパーAに向かって一直線! ストームトルーパーAの直前でブレーキをかけて急停止、インパラのバンパーがゾンビの血で汚れることはなかったが、急加速→急ブレーキにより、ボンネットの電動芝刈り機は慣性の法則で前方へとブッ飛ぶ!
Grind!
回転する刃がストームトルーパーAの兜を砕き、中の顔面をえぐり取る!
Splash!
血の噴水となったストームトルーパーAことセシル・プラッセ(享年15歳 ゾンビ年齢0歳)がフォースに還る。チャールズはワイパーでフロントガラスの血肉をふき取り、ゾロゾロと到着する無数のストームトルーパーたち、そして鎧のない剥き出しゾンビたちを見て、不敵に笑った。
そしてブラスターを撃つハン・ソロのように銃でゾンビを撃ち、ライトセーバーを振るうルーク・スカイウォーカーのようにクギバットでゾンビの首をへし折った。
「俺の愛車にベタベタと指紋をつけるなよ腐葉土ども。目ン玉からゲロ吐くことになるぜ! さぁゲーム開始だ。どこまでやれるか見せてみな。ど~れ~にしようかなッ!」
〇
@ウェイワードパインのウェイワードパイン
「あれが君の兄さんか」
ヴィクターがマッチを擦り、タバコに火を点けた。
「ええ、そうよ。嫌になるわよね。兄さんは……」
「眩しすぎるな」
「その言葉がピッタリ」
「いいじゃないか。真っすぐな人間だと思っていた人間が折れてしまう様を見ること程、失望することはないぞ」
「いえ、兄さんにはもう一度失望したわ。娘……つまりわたしの姪のクララが生まれた時、兄さんはわたしとの旅をやめたの。母さんを探す旅を。今は小麦畑の隅っこで、弾も入ってない銃でガンスピンしてるだけ。一日一〇〇回×三セットのスクワットをしないと体型も維持出来ない。それが今の兄さんよ。それなのに……」
「ああ」
「どうしてあんなに偉そうなことが言えるのよ……。先に母さんを諦めたのは、兄さんの方じゃない……」
「かもな。だが兄さんは君を諦めなかった」
「……」
黙り込み、その沈黙をごまかすようにミランダはコーラを飲んだ。ヴィクターはバフッとハードボイルドめいて煙を吐いた。そんな二人のいるウェイワードパインのスイングドアがまた砕ける程の勢いで蹴り抜かれる。
「大変だ! ストームトルーパーが出来上がったぞ! だがいい知らせと悪い知らせがある」
やってきたのはあわてんぼうのディクスンだ。予定通り、『スターウォーズ』のコスプレをしている。彼のお気に入りはボバ・フェットだ。
「Yes! パーティの時間だな!」
「俺のポテトキャノンがゾンビ共のド頭をカチ割ってやるぜ!」
「Yippee-ki-yay, motherfucker」
ウェイワードパインのクズ野郎共が口笛を吹き、それぞれしっくりくる武器を手に取った。
「次にいい知らせだ。そのストームトルーパーと、あの旅のタフガイたちが戦っている」
「いい知らせだと? ディクスン。悪い知らせの間違いだろう? 俺たちのストームトルーパーを横取りなんて許さないぜ!」
「でも、悪い知らせがあるんだ」
「おいもったいぶらずにさっさと話せディクスン! そうでないとそのムダに動くケツ穴みたいな口にその辺を転がってるブーツをつっ込んじまうぞ!」
「ストームトルーパー約一〇〇人。その他の、普通のゾンビが一〇〇人以上いる」
「クソッ……二〇〇か……」
「いえ、アタシたちウェイワードパイン・ファミリー、いえ、Pandemic Giga Cuntなら楽勝ヨ。アタシたちは一+一=二〇〇にも二〇〇〇にもなるワ。十倍ヨ十倍!」
「んあ、んあ、そうだ。んあ、君の言う通りだヘザー。んあ。だから少し黙っていてくれ。つまり、こうだ。あの旅人がくたばるまでに、少しでもゾンビの数を減らしてくれればどうにかなるはずだ」
ウェイワードパインの頭の悪いプランを聞き、ミランダの心の中を鈍色の有刺鉄線が駆け巡った。目が何かにギュッと押され、苦しくなる。このディクスンを今ここで殺してやろうかというような気持ちさえ湧いた。
「ミランダ」
「何よヴィクター」
「味覚障害になっても、チョコレートの味だけはわかる。だがな、ミランダ」
「何?」
「チョコレートは肌に悪い。ニキビが出来る」
〇
@町外れ
チャールズの腕に三葉虫の化石じみた血管が浮き上がる!
SMACK!
ニューヨークで活躍したスーパーヒーロー“ニュートマン”ことマイク・コズロウスキー(享年19歳 ゾンビ年齢12年)を頭をクギバットが吹っ飛ばし、クギバットの間合いから逃れてウェイワードパインに向かう、同じくニューヨークで活躍したヒーロー“インセクト・ガイ”でも有名なトミー・リックマン(享年48歳 ゾンビ年齢12歳)の体を銃弾が背中から胸へと貫通する。BLAM!
「メガ・チャールズはガチ両刀。チャックの釘バットは強い!」
弾丸の流星群が襲い掛かる! 効果はバツグンだ! これは耐えきれない、ダウンです!
BLAMBLAMBLAM! 軽快に体を翻し、前方の三人のストームトルーパーのド頭にブルズアイ! この距離なら、チャールズはセブンイレブンのゲームコーナーで遊んでいた頃から外したことはなかった!
「次は好きな数字だ。Cinco! 悪いなみんな。出番はないぜ」
今日のチャールズは絶好調だ! 二〇〇九年のワールドシリーズのヒデキ・マツイの好調に匹敵する! 最早、ゾンビたちの目から見れば、チャールズは“キング・オブ・モンスター”と呼ばれた怪獣、Godzillaにも等しい!
「数で攻めればどうにかなるとでも? Make my day!」
チャールズはミニチュアの車にミッキー&マロリー社のチキンブリトーを括り付け、妹のお株を奪うように精密なラジコン操作! 同時に搭載された時限式の新型爆弾F3(Fuckin` Fuck Flash)を起爆。その爆発で、元ハリウッドの某スターの運転手アダム・スティラー(享年33歳 ゾンビ年齢7歳)、ハニートラップが得意なゲスパパラッチのマリリン・ウッドウェル(享年27歳 ゾンビ年齢2歳)、アメフト部のバッドガイな学生レイ・ゴードン(享年19歳 ゾンビ年齢12歳)とその彼女レクシィ・アリ(享年25歳 ゾンビ年齢6歳)、恐るべきイタリアン・マフィアのマルス・マスカルポーネ(享年52歳 ゾンビ年齢12歳)が悪臭を放つ腐ったマグマになった。そして爆心地から漂うミッキー&マロリー社のチキンブリトーのグッドなスメル!
「You are not my match!」
カルトギャング『聖人取締局』のリーダーとして利権と女を貪っていたクリス・ヤングマン(享年33歳 ゾンビ年齢0歳)の眉間の穴から血と脳漿と二度目の人生の残り時間が流れ出る。チャールズはハリケーンのような動きでゾンビを次々に殺していく。まるでハリケーン・カトリーナが人間になったかのようだ。このユナイテッド・ステイツ・オブ・ゾンビにまだインスタグラマーがいれば、今の彼とセルフィーを撮ることを強く願っただろう。
「Uuuuuuuuunnnnggggg……」
だが、そんなインフルエンサーたちも、ゾンビの群れに突然現れた頭身の高いこの存在にカメラを向けるだろう。二メートルを超える長身、手術痕の目立つツギハギの体、異常に肥大した手足……。
「OOOOAAARRGGHH!!」
その怪物はボールが縮み上がるような咆哮をあげる。この大音声で彼の前方にいた“二代目マザーファッカー・スミス”ことスミス・スミソニアン(享年26歳 ゾンビ年齢4歳)、テロリスト対策センターのジャニス・バッカー(享年44歳 ゾンビ年齢8歳)がショック死する!
「なんだこいつ」
チャールズの動きが一瞬止まる。おお、まさか!? これはかつて、バラチ兄弟とファッティ・モハメッドを殺害した後、ミセス・ミチルに倒された、メリーポピンズ製薬製の改造ゾンビ“フランケンシュタイン”ではないか!? メリーポピンズ製薬はドクター・イマガワ率いる“スカベンジャーズ”、そしてミッキー・ローリネイティス率いるゾンビキラーの活躍によって破壊されたが、フランケンを製造する技術を持ったマッドサイエンティストがあの惨劇を生き延びていたというのだろうか!? だが、このフランケンが新造品である確証もない現在、憶測のみでフランケンシュタインを製造できる科学者の生存などという世迷い言で読者の諸君の混乱を不必要に煽ることは避けねばならない!
「真っ赤な服着ちゃってぇ~。『デッドプール』でも観たかぁ?」
BLAM!
「Ung……」
その巨体の心臓目掛け銃弾が血肉を引き裂く。だが!
「OOOOAAARRGGHH!!」
「ワッザ!?」
フランケンシュタインは圧倒的な筋肉量で弾丸を抑えこみ、致命的臓器や致命的血管へのダメージを防ぐ。攻撃を受けたフランケンシュタインは眼球をジャパニーズ・パチンコのようにギョロっと回してチャールズを捉え、彼の首をへし折るべく手を伸ばす。
「チッ、頭をぶっ飛ばしてやる。クララの未来にお前のようなバケモノは残さねぇ!」
チャールズは拳銃を捨て、しっかりとクギバットをグリップ。両手でしっかりと握り、地に足をつけて急所に向かって打ち込まれるクギバットのフルスイングは狙いが精密かつ、ケースによっては拳銃以上の威力を叩き出す! ガッズィーラの魂が乗り移った今のチャールズならいける。ぅ~? ……届くか? あの高さ。
BLAM!
突然の銃声と同時にフランケンシュタインの右目が破裂してガクッと右半身が力を失い、膝をついた。届く! この高さなら!
Pierce!
そして、ジャパニーズサムライソードアンブレラの槍めいた強烈な突きが腹部に入り、マチ針のようにフランケンシュタインの五体を固定する。その頭部はまさにチャールズのストライクゾーン!
「兄さん!」
「Yeeeehaaaaw!」
二〇〇九年ワールドシリーズにおける“ガッズィーラ”ヒデキ・マツイのフルスイングが完全に再現され、フランケンシュタインの鼻や耳、瞼といった突起に食い込み、肉を引き裂く。衝撃で首の骨が砕け、皮膚をちぎって頭部がきれいなスライス回転でウェイワードパインの町外れにアーチをかけた。目にも止まらぬ早業でジャパニーズサムライソードアンブレラを引き抜いたミランダは、エレガントにアンブレラを開いて宙を舞うフランケンシュタインの血の雨から自分と兄を守った。
「ヘッ」
世界中が君を待っていた。二つのパワーで戦えノーマン兄妹!
CZK3 7-5-A
「ミランダ! まだ生きてる冷蔵庫が見つかったぞ!」
「本当に兄さん! 中に入ってるは、えぇ~と」
「クラウン・コーラだ! それもキンキンに冷えたのが何ダースも! 両手じゃ数えきれないぜ!」
「Awesome! 今日からクラウン・コーラパーティね!」
クラウン・コーラ 全米のイチバンマーケットにて大好評発売中
CZK3 7-5-B
あぁ~ん。いやぁ~ん。
チャールズのノートパソコンのスピーカーが卑猥な声をあげ、ウェイワードパインの荒野に響かせる。
「兄さん」
「お前の第一声がごめんね、じゃない限り俺はこのジャパニーズポルノアニメーションを観るのをやめないぞ。グエーグロテスクだ」
チャールズがガシッとライターの石を打ち、タバコに火をつけた。妻から禁止されている、一日三十本以上のタバコだ。
あぁあぁいやぁ~ん。
「ごめんね兄さん。さっき酒場で言ったことは謝るわ。みんなにも謝らなきゃ。でも、話を聞いて」
「聞くさ」
チャールズがノーパソを閉じると悪趣味なジャパニーズポルノアニメーションの再生が終わる。
「わたしはきっと、構ってほしかった。探してほしかったのよ。ナタリアとクララに嫉妬していたのかしら。兄さんはわたし一人のものじゃないのに」
「そんな言葉で機嫌を取ろうとするな。俺ぁ……ナタリアとクララを得て一人だけ幸せになってしまってよかったのか? なんて後悔したことは一度もないぜ。お前だって幸せになってもいいじゃねぇか。なぁ? なるべく全うな形でな。それを願うのが兄貴の勤めだ」
「本当に優等生ね、兄さん。嫌んなっちゃう」
「そうか。ご自慢の兄貴でいられるようで嬉しいよ。ちょっと待ってなミランダ」
チャールズは腰の拳銃を抜き、街から歩いてきた一人の男に銃口を向けた。
「なんだオッサン。何か用か?」
「ミランダ、無事か?」
やってきたのはヴィクターだった。チャールズの銃を認め、彼は気だるげに両手を上げて丸腰を証明した。
「ミランダがゾンビに殺されるもんか。誰が鍛えたと思ってる」
「いや、怖い兄貴に叱られていないかだ」
「なんだそっちか」
ミランダがチャールズの銃を手で覆う。
「兄さん、彼はマトモよ」
「マトモ?」
「ウェイワードパイン純正の住民じゃないわ。ウェイワードパインで待ち合わせの用事があるだけ。彼にはコーラを奢ってもらったりしたわ。とても紳士的よ。字は読めないけど」
「そうか。妹が世話になったな。銃を向けたことは済まない。少し神経質になってしまった」
ヴィクターが首を振る。
「君の言う通りだ。ウェイワードパインはクズの町。警戒心がないと身ぐるみを剥がされてしまうぞ。俺はヴィクターだ。ヴィクター・ヴァレンタイン」
「ヴィクター。ミランダを心配してくれてありがとう」
「俺もウェイワードパインの悪事に加担した身。それどころか、俺がいることでウェイワードパインはより省みないようになったようにも感じる。ストームトルーパーを作るなど……。その後始末をしてくれたこと、感謝する」
「いいってことよ」
「出来れば、ゾンビたちを検めたい。探している相手がいるかもしれないんだ」
「手伝おうか?」
「気持ちは嬉しいが無理だろう。もう十二年も前にはぐれた相手だ。服装も特徴も言葉で伝えることは出来ない。だが若い女性だ。『マトリックス』のウォシャウスキー監督のように性転換していなければな」
「そうか。ミランダ、手伝ってやれ」
ヴィクターが死屍累々の中に立つ。焼けつくような太陽の下、ヴィクターとミランダは二〇〇人を超えるゾンビの顔を覗き込んだ。
「そんな……。まさか」
炎天下でヴィクターは凍えたようにガクガクと震えだし、フラワーロックになった手を口に当てる。
「マチルダ!?」
「マチルダ? あのマチルダ?」
「見てくれミランダ! この栗色の髪に褐色の瞳! 背格好も同じだ。そしてこの手首の火傷の跡……。マチルダだ」
ヴィクターは膝をついて天を仰いだ。
「ちょっと失礼」
ドクターが袖を折り、腕に多くのひっかき傷を負った若い女性のゾンビの口をこじ開けて中を窺う。歯科は彼の専門ではないが、そもそもゾンビ現象はドクが十八歳の時の起きたため、彼は正式な医師ですらない。
「ミスター・ヴァレンタイン? マチルダは歯科にかかったことは?」
「俺が知る限りではない」
「んみゃぁ、何本か粗悪な金歯があるにゃ。これはゾンビ現象後に流行ったタイプ。戦時中、殺し合った日本軍とアメリカ軍は、殺した相手の金歯を戦利品として持ち帰ったらしいが、これは何の価値もない粗悪な金属にゃ」
「待ってくれ。ゾンビ現象後に流行ったタイプだって?」
「みゃ。ゾンビ現象後、一部の地域では栄養失調で歯が抜ける症例が確認されているにゃ。また、さらに極々一部の過激な地域では、噛まれて感染する、というルートを潰すために全員抜歯した、なんて噂もあるにゃ。そんな事情で一時期、粗悪な金歯が流行っていたんだにゃ。シスター。この可哀想な女性の為にお祈りを頼む」
シスター・グレイシャも若い女性のゾンビの下へとやってくる。そして聖職者らしく、祈りを捧げた。
「本当にマチルダならば……。彼女は生きようとした、ということか」
「ええ。マチルダは生きようとした。この腕の傷がその証拠よ。彼女はゾンビに抗った。そして歯を失っても、粗悪な金歯で補って、生きようとした」
「マチルダ……」
ヴィクターがゾンビ(享年22歳 ゾンビ年齢4歳)のか細い腕を握り、大粒の涙を流す。荒野に落ちたその涙も灼熱の太陽ですぐに蒸発していく。
「俺の約束は終わった。君は家に帰れミランダ。誰かに待たれているうちは、まだ帰ることが出来る」
セクシーなチョコレート色の男は、サングラスをかけて天を仰いだ。彼を一人にしてあげよう。ミランダとドクターはヴィクターの肩に一度触れ、チャールズの下へ向かった。
「……」
「小柄なシスター、マチルダの為にお祈りをありがとう。何か用があるのかい?」
「もしあなたが迷い」
シスターは緊張で喘息のクスリを吸いたくなる気持ちを抑え、ゆっくりと震える声で言葉を紡いだ。
「なんのために生きているかわからなくなってしまったら、こうしてください。アビゲイルという女性を探すのです。髪はブロンド、瞳はブルー。身長はミランダと同じぐらい。彼女はミランダとチャールズの母親なのです」
「何故それを君が?」
「わたしはかつて、とある町で人殺しをしていました。七歳の頃から人殺しの手段を教え込まれた殺人鬼。わたしは自分の殺人に義があると信じていました。しかし、その義を信じられなくなった時、わたしはあの兄妹に出会いました。今はあの二人と一緒に、アビゲイルを探すことを目標にして生きています。あなたにわたしと同じ空気を感じました。飼われた殺人者。そして、変われた殺人者……」
「俺は何も変われてはいないさ。俺はウェイワードパインに飼われていたよ。そうだな。俺はまた、旅に出る。かつてマチルダとそうしたように、流星群や移民の船を見る旅に。……ミランダにもそう伝えてくれ。いつかまた会おう、とも」
NEXT
CZK 8-1-A&B
『スーパーハイパーウルトラシャーマン』





