表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
California Zombie Killers  作者: 三篠森・N
EP 7 ザ・スカベンジャーズ -Wayward pine-
28/86

3話

 ハロー、マイクだ。いや、こっちの名前の方が有名かな?

 “ニュートマン”!

 みんな知ってるね? 放射能実験で生まれた特殊なイモリとサイキックパワーで繋がっているんだ!

 (SPLOSH!!)


 ここが僕の街ニューヨーク。サイコーにクソッタレな愛すべき街さ。

 (SWISH!!)


 まずはニコラス伯父さんとペギー伯母さん! 本当の両親より愛してるよ二人とも!

「誰が“ロード・オブ・ザ・リング”のジジイじゃ! 失礼な!」


「ウフフ、今日の晩御飯はローストチキンよ」


 ゴードンは……悪夢みたいに嫌なヤツさ! ヤツが自慢げに乗り回している悪趣味なスポーツカーだって、上院議員の“ザ・グレイテスト・パパ”のものじゃないか! それにあいつがいつも連れてるクイーンビーのレクシィだってそんなにいい女には見えないぜ。


「ハッハッハァ! イカす服だな、小学生からパクったのか!? イッヒッヒッヒ!」


「キャー、ダサーイ」


 彼は僕のメンターで、有名企業の社長の顔とありとあらゆる昆虫のパワーを持つハンサムなベテランヒーロー、通称“インセクト・ガイ”!


「ジャスティス! 私の溢れ出る才気などスタン・リーでも描けないぞ!」


 そして何より美しいローラ・チャン……


「おはようゴードン! それからポーリー、ドナルド、ボブ、ジャン、それからえぇと、そう、マイク!? マイク! わたし、いつかブロードウェイに立つのが夢なの!!」


 君のために今日もニューヨークを守るよ!

 (PLUCK!!)

 (GLUG!!)

 (WHIRL……)


「Ribbit……」


“UNBELIEVABLE NEWT-MAN”


 忘れないでくれ! いつでも僕が君の一番の親友だ!

 @町外れ


「おい、おい! グンバツのタレやんけ! こらぁゴックンボディやでぇ!」


「おい乳かパンツ見せぇ!」


「ホンマえらいこっちゃで。かなわんなー。おい乳かパンツ見せぇ言うとるやろ!」


「乳かパンツぐらいええやろ!」


「しやで。ピン札用意したるからパンツ見せぇ!」


 掃き溜めの町、ウェイワードパインのクズ野郎共がキャットコール。そうだろう。確かに今、町の外からやってきたのは、このウェイワードパインに似合わない、鼻持ちならないファッションモデルのオフ日のような女はゴックンボディなグンバツのタレなのだ!


「失せなさいゴミ」


 “Bellatrix(ベラトリクス) Sunderland(サンダーランド)” ♀ (29)


「あぁん?」


「ならこっちのお嬢ちゃんでええわ。パンツ見せぇ」


「お前ロリコンやったんか。犯罪やでぇ。……今更気にせぇへんけどな。むしろ俺はこっちが好みや。俺のPussy Wagonに乗せたるから天国までドライブしようや」


 クズ共の話題は、ベラトリクス・サンダーランドの同行者の少女に向かう。しかしあまりにも下品すぎて、彼女は英語じゃないと思っているようだ。


「……」


 おさげにメガネの小柄な少女は、ポーチから喘息のクスリを取り出し、吸引する。言葉は伝わっていないが、その下品な悪意を感じ取ることは出来たようだ。スゥー、ハァー……。

 衛星放送が映りそうな程分厚いメガネの奥の瞳孔が吸引に応じて拡大と収縮を繰り返し、ゆっくりと落ち着いていく。本当にそれは喘息のクスリか!? まさか、今サンフランシスコで流行っているストレスへの特効薬であるスーパーハーブ“チャーリー・シーン”ではないか!?


「!!!! ……」


 “Glacier(グレイシャ) Goldgrape(ゴールドグレイプ)” ♀ (19)


「あぁなんてこと! わたしの可愛いシスターになんてセクハラ! 許せないわねぇ~! これは許せないわ!」


 ベラトリクスが大げさにシスター・グレイシャの頭を自らの豊満なバストに沈め、ヨシヨシとナデナデする。ベラトリクスはだいぶ年下の妹のような存在、シスター・グレイシャを溺愛していたのだ。


「まぁまぁ全員落ち着きなさい。頭を冷やして」


「ああ。リアルアメリカンに恥じない振る舞いを心がけよう」


 “CAPTAIN(キャプテン) CALIFORNIAカリフォルニア/William(ウィリアム) Rogers(ロジャース)” ♂ (59)


 “Ricardo(リカルド) MacFarlane(マクファーレン)” ♂ (41)


「オッサン、援助交際の少年ならこの町にはおらんで。メキシコへ帰りぃ」


「しやしや。こんなグンバツのタレがおって……What the fuck!?」


 リカルドがチンピラAの襟をひっ掴む! 日光で爛れた首筋があらわになり、すぐに引き寄せられヘッドバット! 余りの威力に頭突いたリカルドの額が割れる!


「Make America Great Again! 私は君のような国民がいて悲しい! 世界の旗手ステイツならばもっとふさわしい態度! 言葉! 精神がなくてはならない! 同性愛!? ロリコン!? メキシコ人!? 全てステイツでは許されない! 見たところ君はまだ若い。貧しいことは同情する。間違う事だってあるだろう! だから私は君を殴る! 君がステイツの一員であると、誇りと自覚を持てるまで! 私だって悲しいんだ! わかってくれ! そうだ! 介護の仕事はどうだ? 若くて体力があって人肌恋しい君にピッタリだと思わないかね? 考えてみてくれ! 我らが実現する理想のステイツを!」


 涙と血を流しながらリカルドがチンピラAを殴り続ける。キャプテン・カリフォルニアがなんとか引き剥がすが、すぐにリカルドはその正義感溢れる老人を振り払ってチンピラAへの暴行を続ける。


「やめろ! やめるんだリカルド! 相手はケガをしているぞ! 誰か医者を呼んでくれ!」


「いや、もう医者より牧師を呼んだ方が早いんじゃないか?」


 町外れに最後の一人が合流する。ソフトモヒカンにサングラス、ロングTシャツでマッスルボディを隠したタフガイは、イチバンマーケットの紙袋を抱えていた。その紙袋をシスター・グレイシャに渡し、右腕の筋肉にパワーを溜めてリカルドを正気に戻す必殺パンチ! リカルドが気絶する。


「消えろクズ共」


 “Charles(チャールズ) Dean(ディーン) Norman(ノーマン)” ♂ (30)


「堪忍やでぇ」


 チンピラBは、リカルドのパトリオットバイオレンスで複数個所骨折した相棒を連れて逃げていく。その姿を確認し、トヨタの大型車から日本人の男性とミセス・ミチルが降りてくる。


「チャールズ!」


「ドク! マジでなんだよこの町。ニューヨークやロスが可愛く見えるぜ」


 チャールズとドクター・イマガワが何度も拳を叩き合わせて友情のサイン。


「サンフランシスコよりヒドイにゃ」


『No shit』


 携帯用ホワイトボードでミセスも会話に参加する。


「まさかミセスがそんなに汚い言葉を使うとはな。ミランダがそんな言葉を使っていたら家の罰金ボトルに一ドルだ。ともあれ、スカベンジャーズはこれで全員集合か。……本当にこんな町にミランダがいるってのかい?」


「ミセスの情報は間違いないにゃ」


「……罰金一〇〇ドルと外出禁止だな」


「そこがお前はズレてんにゃ。ミランダはもう子供じゃない」




CZK3 7-3-A

「ミランダ! まだ生きてる冷蔵庫が見つかったぞ!」

「本当に兄さん! 中に入ってるは、えぇ~と」

「クラウン・コーラだ! それもキンキンに冷えたのが何ダースも! 両手じゃ数えきれないぜ!」

「Awesome! 今日からクラウン・コーラパーティね!」

 クラウン・コーラ 全米のイチバンマーケットにて大好評発売中

CZK3 7-3-B




「約束が消える前にせめて別れの言葉を言いたかった」


 ヴィクターはウイスキーのグラスを傾けた。


「マチルダという少女がいた。世界からすれば何も特別なものはない。ちっぽけな少女だ。俺は彼女とホノルルで出会った。彼女は生きようとしていなかった。俺は彼女を殺そうとした。だが、出来なかった。それまでに俺は九十九人殺してきた。いろんなヤツがいたよ。シアトル・マリナーズのファン、マザーファッカーなチンピラ、ベトナムか日本に逃げようとする夫婦、キャディのディーラー、ロリコンのクズ野郎。全員生きたかった。俺が銃を向けると決まって命乞いをしたよ。だが、マチルダだけは命乞いをしなかった……。俺は震えて……。命の重みというものを俺は殺す相手に求めていたんだ。殺されたくないと思うから、命には重みがある。命乞いがあってこそ、俺は自分の行いの意味を知れた。人を殺すことそのものへの後悔や罪悪感はもうない。それを受け入れる過程で、俺は味覚を失って酒とチョコレート以外の味がわからなくなったが……。人殺しはタダではなく、重みのある行いでなければならない。マチルダとの間にはそれが成立しなかった。生きたくない人間は何の為に生きるのか? その答えを、生きるために人を殺す俺に教えて欲しかった。そして俺はボスを裏切り、マチルダと一緒に姿を隠した。いろんなものを見たよ。流星群や移民の船を……。そんな古い映画のような逃避行を続けていた。マチルダも俺に懐いてくれたよ。もちろん、子供が親にするようにではなく、女が男にするようにではなく、一対一の人間同士の信頼のようなもの……。殺し屋以外の俺を唯一見てくれたのがマチルダだ。世界にとっては特別ではなくても、俺にとってマチルダは間違いなく特別だった。そしてはぐれたら、ウェイワードパインという町で待ち合わせようと約束していたんだ。ある日、俺は町に買い物に出かけた。そしてあのゾンビ現象だ。すぐにバリケードが張られ、俺とマチルダは離れ離れになった。俺がアパートに帰ったのは……。いや、アパートだったものに帰った頃にはマチルダはもういなかった。逃げ切れたのか? 無事なのか、どうなのか。普通なら心配するのはその辺だろう。だがマチルダの場合は違う。彼女は死ぬことを拒否していなかった。逃げずにゾンビに食われたのでは? だが俺は受け入れられなかった……。マチルダは生きている、そう信じ! このウェイワードパインでまた会えると! この町で彼女を待っている。十二年間な。本当はわかっているさ。マチルダはもう死んでいる。もしくは、生きているが俺を拒否して逃げたか……。わかっているんだ。もう二度とマチルダには会えない。だが、わかってくれとは言わないが、待っていたいんだ。一番楽だからな。現実を受け入れるよりも……。そして、このウェイワードパインで、俺は唯一ゾンビを殺せない男だ。ゾンビは命乞いをしないからな」


「不器用なのね。文章がメチャクチャよ」


「こんなに話すのは初めてだ」


 兄がもう町に着いているとも知らず、ミランダは自分の胸の高鳴りに目を回しそうだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろうSNSシェアツール
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ