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California Zombie Killers  作者: 三篠森・N
EP 7 ザ・スカベンジャーズ -Wayward pine-
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1話

「この町は、我々『聖人取締局』の再三にわたる警告と救済の声を無視し続けた、許しがたきならず者と悪の蔓延るゴミの町である! よって我々はこの悪を町ごと焼却して悪しき魂を神の元へ返還し、穢れが浄化され清らかな魂へとリサイクルされることを願い、まずはこの酒場『ウェイワードパイン』にて使徒の使命を執行する!」


 あぁー! あの神の使い『聖人取締局』さえも匙を投げたっ! この街はもうお終いだぁ~! ブサイクは整形と化粧と愛嬌でごまかせるけれど、悪しき心とバカと罪とノーコンと恋心と金グセの悪さは死ななきゃ治らない! 再三にわたる免罪符の販売を拒否し続けた『ウェイワードパイン』!


「神の代行による最後の警告だ。金庫を開けろ。さもなくば汚物は消毒となる」


 Son of a gun! 邪悪な上にバカでもある! 武装した使徒たちが銃口を向けているってのに、チンピラもジャンキーもゴスもパンクスも娼婦も娼婦の子供たちも少しも驚きやしない! 割れた酒瓶やギターを持って威嚇もしないし誰もピスタチオの殻を投げてぶつけたりしない。動揺していたのは、偶然族旅行で立ち寄っていた、普段はサンフランシスコを拠点にしているタフガイ、レックス様とその子分たちぐらいだ。リアルカルトギャングにビビるレックス一味を除いたローカルチンピラたちは、『聖人取締局』の使徒と、酒場の奥でボンサイと呼ばれるジャパニーズ・リトル・プラントの手入れをしているヨレヨレのボルサリーノ帽に丸グラサンの黒人の男を一瞥して財布を取りだし、またポーカーや乳繰り合いを始める。そして男が帽子を脱いで大道芸人のように帽子をサカサマにもって酒場を歩くと、客たちはみんなチップを入れた。どれもとても安い額の旧通貨“セント”だ。男は集めたチップをズタ袋に流し込み、使徒たちの前に立つ。


「やったれヴァレンタイン!」


 BLAM!

 カルトギャングの頭が吹っ飛んだ! 飛び散った血と脳漿で壁はまるでジャパニーズビデオゲームのナワバリバトル! 


「ワッザ!?」


「安心しろ。確実に殺すのは一人目だけだ」


 ヴァレンタインが二人目の使徒の頭に銃を突きつけ怯ませ、その緊張した足をへし折る!


「それから今日は三の倍数人目も殺すことにする」


 BLAM! BLAM!

 ヴァレンタインと呼ばれた男! すごいウデマエだ!


「リサイクルをするのに最も必要なものは……。まずはゴミだ」


 ヴァレンタインが使徒の最後の一人の眉間に狙いを定める。三の倍数人目だ


「ヒッ」


 BLAM!


「“彼女(マチルダ)”にもそう伝えよう」






EP7 The Scavengers -Wayward pine-






かつて日本軍のタイファイター的存在だったゼロファイターと呼ばれる戦闘機を鹵獲した「Faggot(カマ野郎)!」が口癖の軍人が、戦時中の日本人は松ヤニでゼロを飛ばそうとしていたことを知り、趣味で作った松の森に出来た町ウェイワードパインと同じ名のバー、ウェイワードパインは掃き溜めの町の掃き溜めだ。暴力的で血気盛んで知的レベルが低いこの町のさらに困ったヤツらがこのバーに集まる。かつてはただの腐敗と自由と暴力とのるつぼだった。お互いの顔も名前も知らない相手を無意味に挑発し殴り合い、ケガをしてツケも払わず帰宅する、そんなバーだった。しかし事情が変わった。十三年前にゾンビ現象が起き、数年前からこの町にもゾンビキリングの競技が伝わった。暴力と腐敗とエキサイトを好むウェイワードパインはゾンビキリングにハマった。最高の娯楽がウェイワードパインにルールと序列をもたらした。バーの常連はゾンビを殺しに出かけ、そのエキサイティングなスポーツの楽しさをウェイワードパインらしくない豊富な語彙と雄弁さ饒舌さで若干の驚きと共に振り返った!

 何よりも自由で自分たち本位なウェイワードパインは、町一番のお喋りクソ野郎オニールを公式アナウンサーにして、クレストゲートパークのDJコニーがお送りする本家『今週のゾンビ殺し』から独立した自分たちのゾンビ殺し『WWP(ウェイワードパインリーグ』を立ち上げた。今や北米大陸で最も大きな影響力を持つ人物ベスト10に入るDJコニーは、『WWP』リーグの存在を知っているが、その加入と採点を認めていない。それは『WWP』との意見の対立などが理由ではない。『WWP』の根本的な問題についてDJコニーはオフレコでこう言及した。


「確かにゾンビ殺しはゾンビの駆除という実益を兼ねた素晴らしくエキサイティングなスポーツだ。だが『WWP』は競技のために必要なゾンビを“調達”しているという黒い噂がある。その噂が真実である可能性がある限りは『WWP』をゾンビ殺しというスポーツと認めることはできない。……ヤツら、人を半殺しにするんだ。近くのギャングやなんかにちょっかいを出して、ケンカに来たところを半殺しにして、ゾンビのいそうな場所に放置する。そしてゾンビを増やして、それをキリングするんだ。人を殺すのはゾンビ殺しじゃない。人殺しさ。そんなヤツらを俺の電波に乗せることはできないね」




CZK3 7-1-A

「ミランダ! まだ生きてる冷蔵庫が見つかったぞ!」

「本当に兄さん! 中に入ってるは、えぇ~と」

「クラウン・コーラだ! それもキンキンに冷えたのが何ダースも! 両手じゃ数えきれないぜ!」

「Awesome! 今日からクラウン・コーラパーティね!」

 クラウン・コーラ 全米のイチバンマーケットにて大好評発売中

CZK3 7-1-B




「さぁ、お待ちかね! 聖人取締局のリサイクルの結果報告の時間だ! まずは今日も町一番のせっかちディクスンが先陣を切る! ゾンビのバーゲンセール状態でボーナスゲームになりかけた今日のハイスコアを獲得すべく『WWP』の戦士は今日も果敢にゾンビを殺す! 中盤、ゾンビの圧倒的な数を前に満腹になりかけた危機的状況で、現場にはレモネードを売るアルバイトに来た非力な少女と思われたミランダ嬢のラジコン空爆が炸裂! 値千金の一撃でゾンビが蹴散らされ、『WWP』の戦士も息を吹き返した! そして戦士たちが消耗し、Out of ammoに喘ぐ試合終盤、またもやミランダ嬢が躍動する! 自慢のジャパニーズサムライソードアンブレラでバッタバッタとゾンビをなぎ倒し退路を確保したミランダ嬢のウォークオフホームランでゲームセットだ!」


 かつて自分と兄を、“CALIFORNIA ZOMBIE KILLERS”と呼んだあのDJほど自分をスゴイカンジに伝えてくれないな、とミランダは若干の物足りなさを感じた。

 そう。チャールズとナタリアの間に子供が、つまりミランダにとっての姪っ子クララが誕生し、チャールズと別れて一人で旅を始めたミランダ・レイチェル・ノーマンは、今、ウェイワードパインにいた……。


「おかえりなさいませミランダ嬢。今日はいかがなさいます?」


 最初はよそ者であるミランダを小バカにしていたウェイワードパインの人々も、本場のリーグで、兄とのコンビとはいえ週間ランキング最高5位まで行ったミランダのゾンビ殺しを見てすぐに態度を改めた。ここでのルールは暴力やケンカで自分より強そうなものやゾンビ殺しが上手いものを称えよ、なのだ。バーテンもその一人だ。


「ジンジャーエールかコーラを」


「あなたと共にビトゥイーン・ザ・シーツを楽しみたい方々がいらっしゃるようですよ」


「信頼出来ない人たちが過半数の場所ではお酒は飲まないって決めてるの。だからコーラ」


 ミランダはバーの中で大騒ぎをする『WWP』のプレイヤーを一瞥し、その奥で独り、静かにジャパニーズ・リトル・プラントの手入れをする男に視線を送った。


「彼にもね」

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