3話
THEN……
テロリスト対策センターのジャニス・バッカーだ! 前回までは……おいそこのお前何をしている! 大人しく武器を捨て両手を上げろ! さぁ早く武器を捨てて! そして壁に向かってゆっくり膝をつけ! テロリストの一味か!? 正直に黒幕の名前を吐くんだッ! 早くしろ近距離で怒鳴るぞ! 今ならまだそれで済む。俺はテロリストとわかれば容赦はしない。だが安心しろ、俺の拷問は無慈悲だが目と爪だけは狙わない。……ここまでのあらすじ? お言葉ですが大統領、今は緊急事態です! 俺は誰の指図も受けない! これ以上事態が悪化するとみんな巻き添えになってしまうぞ! 俺に引き金を引かせるな! ……前回までは税金が高いけど平和な町でクーデターだ!
「オモチャじゃないんだぞ」
「わかってる」
ジョンソンキャップがチャールズに銃を向け、レッサーポリスマンたちの混乱は増すばかりだ。
「トカゲの尻尾はどこからだ?」
〇
At that time(その頃……)
「お前には黙秘権がある。弁護士を呼ぶ権利もある。証言は法廷にて不利な証拠として扱われる場合がある。経済的に余裕がないのなら国選弁護士をつけることが許される。……国はもうないから国選弁護士はいないだろうけど」
シスター・グレイシャを護送しているはずなのに人気のない路地裏にいたトニーとアンドレの前に現れたのは用心棒の旅人の妹の少女だった。
「なんだ?」
「ミランダ警告よ。スペルも一緒」
「だから何の用だ!?」
ミランダがトニーに銃口を向けた。
「黙秘」
発砲! 続いてアンドレにも発砲!
「立てる? シスター。この町にイチバンマーケットかセブンイレブンがあったら案内して。ラップと弾とミッキーアンドマロリー社のチキンブリトーを買わなくちゃ」
シスターは何も言わずに充血した目で倒れたトニーとアンドレの様子を窺った。
「まるで、仲間に裏切られた上に仲間を殺されたみたいな顔ね。大丈夫よ、殺してないから。ドクターから借りた麻酔銃よ。ねぇシスター」
自分以上に無口な少女に少し調子が狂ってきたが、ミランダはしゃがんでシスターの目線まで降りて続ける。
「一番死に様がきれいなのは誰だと思う? 殉教者よ。その上、その殉教者が無垢な修道女だったらものすごく劇的で、どんな死に方をしても絶対にきれいに死ねるわ。そして惨く殺されれば殺されるほど、その死は美しく評価される。あなたはこのどうしようもない町の悲劇要員。最初っから死ぬためにシスター・グレイシャは用意されたの。考えてみて。独裁者による重圧に民が悲鳴をあげて、その苦しみの代弁者として無垢な修道女が自ら血に染まった道を行く。その末に無垢な修道女は死ぬんだけど、その死はどう思われるかしら。慈悲深く純粋なはずのシスターでさえ殺人鬼に変えるほどの独裁を絶対に許してはならないってことになるわね。その死を無駄にするなってみんな立ち上がる。そして追い詰められた独裁者は殺されるか、よくて追放。そのエンディングを迎えてみんなであなたの墓標に向かって言うの。ありがとうシスター・グレイシャ。あなたの犠牲のおかげでみんなが勇気を持てた。あなたの礎の上で私たちは生き続ける、ってね。犠牲者と為政者はいつもそうよ。文句だけは美しいけれど」
ミランダはため息をついた。
「あなたは切られるはずだったトカゲの尻尾。だからジョンソンキャップはあなたをあそこで始末しようとしたわ。市長が助けなければ死んでた。あんなに不利な状態で兄さんと対峙しても逃げようともしなかったのは、ジョンソンキャップが助けてくれると思ってたから。違う? 黒幕がジョンソンキャップだったかはどうでもいいわ。とにかくあなたは捨てられたのよ」
シスター・グレイシャは何も言わない。跪いて目をミランダから逸らしているだけだ。ミランダはそのつむじを少し見つめてから、頬に一発ビンタ!
「何も言わず何もせずそこで自動的に自分の肩書が“民のために命を散らした可憐な修道女にして圧政の犠牲者である悲劇のヒロイン”になるの待ち? どうせ死ぬんなら吐いてから死なない? あなたがわたしに教えてくれないとずっとわからないままなの。悪い魔女の情報をくれたら可哀想なドロシーちゃんは踵を三回鳴らしてもうカンザスのおうちに帰っていいわ。それも嫌?」
それでもシスター・グレイシャは口を割らない。ミランダはシスターのメガネを奪い取り、彼女の両手を縛っているロープを掴んで無理矢理引き吊り起こす。
「ワァオ、このメガネ、まるで衛星放送が映りそうなぐらい分厚いわ。いい? もうあなたには何も期待しないわ。兄さんの方の結果待ち。メガネを返してあげる。その代わり、イチバンマーケットかセブンイレブンに案内して。その傷の応急処置をしてあげる。それにこれからゾンビの群れが来るらしいの」
CZK3 6-3-A
「ミランダ! まだ生きてる冷蔵庫が見つかったぞ!」
「本当に兄さん! 中に入ってるは、えぇ~と」
「クラウン・コーラだ! それもキンキンに冷えたのが何ダースも! 両手じゃ数えきれないぜ!」
「Awesome! 今日からクラウン・コーラパーティね!」
クラウン・コーラ 全米のイチバンマーケットにて大好評発売中
CZK3 6-3-B
「ジョンソンを拘束しろ」
チャールズとジョンソンキャップの均衡を破ったのは、ブル市長だった。ここまでの目まぐるしい展開に置いて行かれていた為政者の鶴の一声でレッサーポリスマンたちがジョンソンキャップを取り囲み、手錠をかける。
「貴様ら……。俺を裏切るのか! 俺がどれだけ……どれだけ!」
「それ以上喋るなジョンソン。話は後で聞く。だがシスター・グレイシャには会わせるな。何が起きるかわからん。連れていけ!」
ブル市長の声でレッサーポリスマンがジョンソンキャップを署に連行する。ブル市長の顔面に生タマゴが命中!
「ジョンソンキャップに何してくれてんだブルドック野郎!」
「シスター・グレイシャまで凶行に走らせたお前が捕まれクソが!」
「もう二度とお前がオプティマス・プライムに乗ることはないと思え!」
と、さっきまで静まり返っていた町民たちがシスター・グレイシャとジョンソンキャップの退場で勢いを取り戻し大ブーイング!
「お前もとっととくたばりやがれ! よそ者め!」
「田舎者のクロコダイルダンディはオーストラリアでブーメランでも投げてろ!」
チャールズにもタマゴとゴミが投げつけられる。が、チャールズは気にしない。自慢のTシャツなのに!
「え……?」
気にしてないようで気にしてた! チャールズが町民兼暴徒の一人に銃を向ける。
「お前、もう死にたいか? まだ死にたくないか? 死にたくなかったらな、死にたくなかったら! ここにいる全員! 三日分の食料と水と護身用の武器を持って家に籠れ。そして冬用の長袖で厚着しろ。死にたくないヤツらは全員籠れ! 車があるヤツは南に逃げろ。ロスからゾンビの群れが来る。いいか、ゾンビだ! お前らは知らないだろうが、ゾンビはタマゴやフライドチキンの骨を投げつけられたぐらいじゃ死なないぞ。キレもしない。虱潰しに全員食い散らかすだけだ。全員籠るか逃げろ!」
それでもまだ町民たちは動かない。
「早くしろってんだよ!」
チャールズが上空に向けて数発発砲。銃声がしないとわからない町民たちがやっと安宿から逃げ出すオカマのように散っていった。
「市長、そういうことだ。町の北で俺とミランダの二人で防衛線を張る。ご自慢の警備員には俺たちが殺し損ねて町まで行っちまったヤツを任せる。イチバンマーケットかセブンイレブンはあるか?」
「あ、ああ」
「それから」
チャールズが突然後方に向かって肘打ち! チャールズの後ろに立っていたレッサーポリスマンの一人が嗚咽を漏らしながら手に持っていたナイフを落とし、倒れこんで悶絶!
「悪いがこいつはもらってく。今回はちと骨が折れそうなんでな」
「イチバンマーケット」という日本語が入っているお店がたびたび出てきますが、リアル・アメリカンやミスター・アメリカの異名を持つプロレスラー、ハルク・ホーガンの決め台詞「イチバァーン‼」からとってます。





