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California Zombie Killers  作者: 三篠森・N
EP 5 ザ・スカベンジャーズ ‐ザ・ファーストアベンジャー‐
17/86

2話

「おい、アレはまさか」


 サンフランシスコ。そこはなんでも集まる町。ヒッピーもゲイもマイノリティも、誰も彼もがそこにいることを許される町(ゾンビを除く)。買ったばかりのダイエットコーラを落としてしまったこの青年ルーク・ハミルは精神的な修行と超科学的エナジーの習得で銀河を守るスーパーソルジャーとなったという設定で、オンボロだが速い車を持っているハリソン・ソロという友人と二人でちまちまゾンビ殺しをしていた。だが今の前を通りがかった長身痩躯とチビデブの二人組は……!


「バラチ兄弟……ッ!」


 ゾンビ殺し界の超大物が何故ゾンビのいないサンフランシスコに!? ルークとソロはサインをねだるか、同じゾンビ殺しとして挑発とライバル宣言をするか迷った結果何もしなかった。


「チッ、ゾンビの気配がしねぇよ。なぁ兄貴!」


「そう慌てるな弟! もうすぐ山ほどぶっ殺せるからよ!」


 “DE BARACHI`s”

 テリトリー:アナハイム周辺


 バラチ兄弟のチビデブ、バラチ兄がサングラスを外し、クシャクシャに折れて汚れた地図を睨み付けた。


「文字が読めねぇ」


「俺も英語は読めないぜ兄貴」


「日本語と英語の区別くらいはつくと思ったんだがな……。おい、そこのコスプレ。日本人街のドクター・イマガワって野郎の酒場がどこにあるか知ってるか」


 ダメだ勝てねぇ。ルークとソロは悟った。だってこの人たちはかっこつけたくてゾンビ殺しやってるんじゃないんだもの……。女の子にモテたいとか、何もしてないと親がうるさいとかじゃなくて、ただゾンビを殺したいからゾンビを殺してる。こういう何千何万というゾンビを殺し、その地域のゾンビを殺した後は新たなゾンビを求めて旅を始めるジャパニーズビデオゲーム『モンスターハンター』のイビルジョーのようなヤツらは……。鍛え方が違う! 精根が違う! 理想が違う! 決意が違う!


「ドクター・イマガワ?」


「日本人街ってあのニャアニャア言ってるヤツらのことかな」


「じゃあ、あっちの突き当りの角を曲がると紙で出来た大きなジャパニーズランプのあるところが日本人街の入り口ですので……」


 ゾンビ殺しやめよう。ちゃんと働いて、きちんと稼いで出世して幼馴染のキャリーに声をかけてデートに誘おう。二人の青年が改心した。




 〇




 At that time(その頃……)


「あの……サインください!」


 ローティーンの少女が、曇っているのにサングラスをかけ帽子を被り、カフェのラウンジでラテを飲みながらヴォーグのバックナンバーを読んでいる若い女に声をかけた。正体を隠そうとしているようで実は逆に有名人アピールをしているこの女性は、最近サンフランシスコでは熱狂的な人気を誇るアイドルグループのメンバー、アマンダだ。彼女たちはライブで踊り、歌いながら、スタッフが命がけで捕まえてきて弱らせたゾンビたちに四十八人がかりでトドメを刺すパフォーマンスをする。クレストゲートパークのラジオDJが「今週のゾンビ殺し」を発表するようになってからこの手のキャラ付されたゾンビ殺し系アイドルグループが全米で急増した。


「サイン? ええ、いいわよ」


 少女のシャツにサラサラと慣れた手つきでサインするアマンダ。彼女にはペン越しにも、ファンの少女の鼓動がまるで自分たちのバックバンドのドラムのように早打ちになっているのがわかった。それが彼女の快感だった。


「あの、わたしもアマンダさんみたいなゾンビ殺しアイドルになりたいんです! アドバイスをください!」


「そうね」


 アマンダは少しもったいぶって首を傾げた。


「諦めるか、サンフランシスコから出ていくことね」


 少女の心がゆっくりと冷めていくのもまたアマンダの快感だった。少女が蚊の鳴くような声で何か言いながら去っていくのを眺め、視界から消えたところでアマンダはまたサングラスをかけた。そんなアマンダの向かいの席に、背の高い女性が座った。髪は美麗な金髪で、白いダブルのコートにブルーのストール、ボトムスは黒、芸能人気取りの大きなサングラスと色の濃い口紅。サンフランシスコで配られている芸能系フリーペーパーを読んでいる。もちろんアマンダも載っている。美人でオシャレで化粧も上手かもしれないけどその技術を培った時間の分、わたしほど若くないわね。とアマンダは思っていた。


「これあなた?」


 芸能人気取りがフリーペーパーをアマンダに見せる。


「ええ」


「サンフランシスコに詳しい?」


「ええ、多少は」


「じゃあ教えてほしいんだけど」


 芸能人気取りがブランド品のバッグから地図を取り出した。


「日本人街のドクター・イマガワの店はどこ?」


 芸能人気取りがサングラスを外した。そのブルーの瞳と形のいい目を見てアマンダの脳内に電撃が走った。


「まさか……。ベラトリクス・サンダーランド……?」


「そうだけど」


 “Bellatrix Sunderland”

 テリトリー:シアトル周辺


 尊敬してます……ッとは言えるものかッ! とアマンダは唇を噛んだ。アイドル系ゾンビ殺しのパイオニア、ベラトリクス・サンダーランドに憧れてやっとつかんだゾンビ殺し系アイドルとしての座が、その一言で否定されるような気がした。でも実物のベラトリクス・サンダーランドはあまりにも美しい。


「ちょっと?」


「日本人街なら、48シアターを西に三ブロック行った角を南に。残念だけどそのドクターの店は知らないわ」


「ありがとう。この記事読んだわよ。あなたたちの噂もよく聞くわ」


「そう」


「アドバイス欲しい?」


 アドバイス欲しいですって? 何その上から目線! こっちだって遊びでゾンビ殺し系アイドルやってる訳じゃない。プライドを持ってやってるんだ! どう言い返すべきか。今やサンフランシスコで人気が高いのはベラトリクス・サンダーランドよりも自分たち! そんな人が、わたしに何かアドバイスできるものならしてごらんなさい。と言うべきか、キッパリとそんなものは必要ないと拒絶してやるべきか。

 目の前のガキが狼狽えてる。それがベラトリクス・サンダーランドの快感だった。


「ベラトリクス、わたしはあなたを尊敬してるわ。でもあなたはアイドル系ゾンビ殺し。そしてわたしはゾンビ殺し系アイドル。違う立場だから何もアドバイスは必要ないわ」


「そう。つまんないの」


「ええ、ごめんなさい」


「アドバイスが欲しいって言っても、諦めなさいなんて言う気はなかったのに」


「そう」


「アドバイスが欲しいなんて言ったら今すぐ死んでゾンビになってわたしに殺された方が輝けるわよって言うつもりだったけどその必要はなさそうね」


 ベラトリクスはアマンダに手を差し出した。アマンダも握手に応じた。


「ありがとう」


「ステージでは笑顔をばらまいて今サンフランシスコで人気のアイドルが、プライベートでは芸能人アピールをして、声をかけてきたファンの子供を泣かせて遊んでるってことも匿名でバラしたりしない。ちゃんと実名でバラす。あなたはこれからバッシングとか大変かもしれないけど、頑張ってね。お姉さん応援するわ」




 〇




 At that time(その頃……)


「キャー! ひったくりよー!」


 淑女が悲鳴をあげた。淑女の目の前で、サンフランシスコには似合わないネルシャツに野球帽、日焼けして真っ赤になった首筋の、見るからに貧困層の中年男性が少年にカバンをひったくられたのだ。少年は信じがたいスピードでストリートを駆けていく。サンフランシスコの道のことならこの少年が誰よりも知っていた。だが知らなかったことがある。それはひったくりを繰り返すこの少年の逃走ルートがいつも同じだということを、警官たちが知っているということを知らなかった。路地裏で待ち伏せしていた警官たちは少年を囲んで警棒で殴った。


「ちょっとォ、お巡りさん。何をしてるんですか。ケガしてるじゃないですか」


 やっとレッドネックの男性が追い付いた。カバンを盗まれたというのにリンチに加わりもせずに呑気に警官に声をかける。


「へへ、いいんだよ、こういう泥棒のガキはこうやって痛い目に遭わせてやらなきゃわからねぇんだ」


 警官の一人が凶暴な声で言った。


「おかしいなぁ。その鞄は私が彼に、預けたものですよ?」


 レッドネックの男の言葉に一番驚いたのは泥棒の少年!


「ハァ? カバンを預ける? 何を言ってるんだお前は」


 少なからず警官も驚いてはいたが。


「いやね。道案内をしてもらうチップですよ。私は日本人街にあるドクター・イマガワって人のお店に行きたいから彼に道案内を頼んだんですよ。カバン持ちをしてくれたらチップもあげるとね」


 警官の一人が顔をしかめ唾を吐いた。


「なぁにを言ってるんだこのトーヘンボクは。アタマがサルから進化していないのか?」


 ブチッ。


「援助交際の少年なら他を探しな!」


 ブチブチッ。

 ジャキッ、バァン! 警官の一人が頭を吹っ飛ばされた。


「ワッツハプン!」


 警官たちが驚いて腰の拳銃を抜き、レッドネックの男性に向ける。レッドネックの男性のショットガンからはまだ硝煙が上がっている。


「貴様らそれでも米国人(リアルアメリカン)か! いいか! 我々人間は創造主が作られたもの! サルからの進化だと? 進化論など異教徒のまやかしだ! ダーウィンはただの頭の狂ったサディストのゲイだ! 俺がゲイだと!? 俺をダーウィンなんかと一緒にするな! まさか貴様ら……犯罪者(テロリスト)か! 畜生、俺がリオ・グランデ川から少し目を離した隙に……愛する母国(ステイツ)密入国者(エイリアン)共の侵入を許してしまった……。そしてこともあろうに警官の扮装をするなど言語道断! 母国(ステイツ)の平和は俺が守る! 死ね!」


 What the fuck!?

 こいつ、ヤベー! 話が超飛躍してるしいろんな意味でヤベー!


「やべぇ、こいつ、リカルド・マクファーレンだ」


「リカルド・マクファーレン?」


「メキシコとの国境を縄張りにして不法移民とゾンビを片っ端から撃ち殺してるサイコ野郎だ」


 “Ricardo MacFarlane”

 テリトリー:リオ・グランデ川周辺


「くたばれ犯罪者(テロリスト)!」


 何もかもが恐ろしくて頭を抱えて身を縮めこませていた少年が顔を上げたのは、何発も続いた銃声が鳴り止んでからだった。


「大丈夫か少年」


 立っていたのはただ一人! リカルド・マクファーレン!


「僕は大丈夫」


「そうか、それならよかった」


「おじさんこそ大丈夫?」


「私かい? 私は大丈夫さ。なぜなら私はリアルアメリカンだからな」


「ねぇおじさん。僕、そのドクター・イマガワって人のお店の場所知ってるよ。案内する」


「そうか、ありがとう。さぁ、君も胸に手を当ててこう叫ぶんだ。We the people(我々こそ真の愛国者)!」


 あの時ほど自分が愛国者であることを誇りに思ったことはない、と、後の共和党議員スモーク・ブラウニーは語っている。




 〇




 A little later(少し後)……


 昼から曇っていたサンフランシスコの天気は夕方になって本格的にぐずつき始め、パラパラと小雨が降り始めた。恐竜並の怪力と巨体とワル学の知識が自慢の通称レックスとその子分たちは雨を避けるように小走りになり、その途中で傘をさした人物とぶつかった。


「イッテ」


「ごめんにゃ」


 日本語訛りの英語で軽く謝った男は、袖の広い妙な服を着ている。アジア人だ。後ろに子分とみられるスーツ姿のポニーテールのアジア女に傘をささせ、その下で雨を避けている。ジャパニーズ・ヤクザのオヤブンとコブンだ。最近この町でこういうアジア人どもが調子に乗ってることは知っていたがこのレックス様にぶつかっておいてごめんにゃですむと思ってるとは、やはりアジアだな! おぉっと、アジアアジア言ってると筋肉がしぼんじまうぜ。ちょっくらこの町のルールってもんを教えてやるか。


「おいてめぇそれで済むと思ってんのか。このレックス様とその子分にぶつかっておいてよ。ケガでもあったらどうすんだ。金出せよ。病院に行かなきゃなんねーな。なぁ、痛ぇだろ、子分」


「ええ、痛いッス」


 アジア人男性が膝を屈めて子分の顔を覗き込み、懐から小さな紙を取り出してレックスに渡す。


「診たところ全然大丈夫だしこれぐらいで痛がってたら不良としてはちょっと物足りないにゃ。それでも痛むようだったらボクは日本人街でちっちゃなクリニックやってるから来るといいにゃ。それ名刺ね。お酒と骨董品もあるから仲間連れてきて飲んでってもいいにゃ」


「日本人街ってことはてめぇジャップか」


「まぁ、そうだにゃ」


「ジャップのくせに何レックス様にたてついてんだ? 殺されてぇのか?」


 ケガしてるはずの子分とは別の、ケガしてない子分がレックスの前に立ち塞がった。


「レックス様、マズいでやんすよ……。日本人街、医者、バー、骨董! こいつ、ドクター・イマガワやんすよ!」


「ドクター・イマガワ?」


「ええ、レックス様も噂では聞いたことがあると思うでやんす。アメリカ中にゾンビ殺しを派遣するゾンビ殺し派遣業者の日本人……」


「ゾンビ殺し? なんだそりゃ。ゾンビ殺しなんてのはあんなのザコ専門のヤツらだろ? 笑っちまうぜ。ここでこいつをぶん殴ったらザコ専門家がワラワラ仕返しにやってくるってか?」


「それだけじゃないでやんす……。“ドクター・イマガワには最強のボディガードがいる”……。そのボディガードはサムライで、しかも女でやんす! つまり……」


「あの傘をさしてるのがその最強のサムライボディガード?」


「ええ、もし腰にジャパニーズサムライソードを差してたら間違いなく……。最強のサムライ、通称ミセスでやんす!」


 レックスは雨に打たれながら、傘をさしているアジア女の腰に目配せする。するとそこには昔スミソニアンの博物館で見たようなソードが!!!


「いかにも、ボクがドクター・イマガワ、そして彼女がミセスだにゃ」


 “Dr,Imagawa& Mrs.Michiru”

 テリトリー:サンフランシスコ日本人街


「お、お、俺は!」


 レックスは声を張り上げた。

 俺は――

 ビビってんのか?


「今日は雨が降ってるからミセスは傘をささなきゃいけないにゃ。だから刀は抜けない。帰っていいかにゃ? テレビ裁判の再放送観たいんだにゃ」


「み、見逃し……」


 見逃してください? それとも、見逃してやろう。か?


「ミセス、帰ろう。レックス君、風邪ひいたら是非おいで」




CZK3 5-2-A

「ミランダ! まだ生きてる冷蔵庫が見つかったぞ!」

「本当に兄さん! 中に入ってるは、えぇ~と」

「クラウン・コーラだ! それもキンキンに冷えたのが何ダースも! 両手じゃ数えきれないぜ!」

「Awesome! 今日からクラウン・コーラパーティね!」

 クラウン・コーラ 全米のイチバンマーケットにて大好評発売中

CZK3 5-2-B




「ウワ……」


 ドクターは思わずリアクションを取り繕うのを忘れた。


「ウワっつったか? 俺たちは客だぞおい」


 バラチ兄が小雨の中の買い物を済ませて帰ってきたドクターに詰め寄りメンチを切る。


「なんの用かにゃバラチ兄弟と、あとベラトリクス・サンダーランドにリカルド・マクファーレン」


 バーをやっている以上、コワモテのお客にはドクターもドクターのワイフ、美鈴ちゃんも慣れてるし覚悟しているつもりだったが、今回の集団の客は今までゾンビとは言え四人合計で三万以上の命を奪っており、さらに『今週のゾンビ殺し』になるためにさらにゾンビを殺しまくる自己顕示欲の塊である。スリルを楽しむ余裕も危険を躱せる頭脳も自分にはあると思っているドクターなら大丈夫だっただろうが、美鈴ちゃんは大変に臆病な大和撫子である。こんなことならタバコの買い出しの傘さしごときにミセスを使わないで店に置いておくべきだったけどまぁ今のところなんもないし別にいいか。美鈴ちゃんには後で謝ろう。


「MP製薬がゾンビワクチンの開発に成功したというニュースは?」


「耳には入ってるにゃ」


「それが本当だったら全ゾンビ殺しは職を失うわ」


「ナースに戻ればいいにゃ。なんなら雇うにゃ」


「そんなことはどうでもいいわ。どうやって調べたのか、わたしたちのところに脅迫状が届いたのよ」


「脅迫状?」


「ええ。“MP製薬を潰せ。さもなくばお前を今後『今週のゾンビ殺し』ランキングから除外する”ってね。ここの地図付きで、クレストゲートパークのラジオDJから」


「なんでボクを巻き込むんだあのクソDJ。死に晒せ。お前らもだ」


 バラチ兄とベラトリクスが再びドクターにメンチを切る。ミセスが右手を意味深長に動かし、これ以上の威嚇には刃物で応ずる姿勢を示す。


「まぁまぁ、落ち着こうじゃないか」


 リカルドが割って入る。


「現状、ゾンビワクチンが完成しているかどうかはわからないが、肝心なのはそこじゃない。未だにゾンビは山ほどいて、我々のような上位ランカーがいることがゾンビへの抑止力となり」


「ゾンビへの抑止力? 頭バグってんの?」


「地元住民の安心に繋がっている。地元チームを応援するように我々は応援を受け安心を与えている。だからゾンビが絶滅するまでは、本来私たちはテリトリーを長期間離れるべきではない。だが、ランキングから除外される訳にもいかない。ゾンビワクチンが開発されたならそれはそれでもいいが、なくても十年間リオ・グランデ川は平和だった。だから私はワクチンはどうでもいいが担当区域を長く離れることとランキング除外だけは避けたい」


「このサイコ・パトリオットとそこのサイコ・ビッチは殺しができなくなるからだろうが、俺たちにはちゃんとゾンビ共を殺す理由がある。ケバブ屋の復讐だ」


 やっべークレストゲートパークのラジオDJ殺したいにゃ。ボクの店がメチャクチャっていうかこいつらに場所バレちゃったしどうしよう。


「にゃあにゃあにゃあにゃあ」


「……にゃあ」


 ドクターはゾンビ殺したちにわからないようにミセスに日本語でいくつか命令をした。


「集まった理由はわかった。で、ここで何がしたいんだにゃ? 食事か、治療か、骨董鑑賞か」


「ここにまだ来ていないメンバーがいる。そいつが来ないと始まらない。ドクター、アンタ聞いたことないか? “カリフォルニアゾンビキラーズ”の噂を」


 ドクターは買ってきたばかりのタバコの封を開け、一本咥えて火を点けた。


「それならもういないにゃ」


「死んだのか?」


「……ボクの最も親しいゾンビ殺しだにゃ。言わなきゃダメかにゃ?」


 しばしの沈黙。それぐらいの分別はある。

 ピピピピとドクターの携帯電話が沈黙の中に響く。


「ハイ、こちらドクター。あれ? ミランダ? 誕生日おめでとう。ああ、そう。チャールズから携帯電話もらったのか。元気にしてるかにゃ? ……えぇ、それは正直気が退けるんだけど……え? あ、そう。ウン、はい。わかったにゃ。じゃあ今すぐ来てにゃ。うん、クララの子守りは出来ないってチャールズとナタリアに伝えるにゃ。バイバーイ。……いいかよく聞けお前ら」


 ドクターがパチンと指を鳴らすと即座にミセスが灰皿を差し出す。


「“カリフォルニアゾンビキラーズ”は実在するにゃ。ただ今はもういない。それは、“カリフォルニアゾンビキラーズ”が、チャールズとミランダの兄妹のことを指す名前だからにゃ」


「チャールズとミランダ……。ノーマン兄妹か?」


「そうだにゃ。兄のチャールズが引退したことでもう名前は失われたにゃ。兄はもう死んだも同然にゃ。ゾンビ好きのお前らでもあいつだけはほっとくべきにゃ。そういう意味では“カリフォルニアゾンビキラーズ”は死んだ」


「妹は?」


「今から来るって言ってるにゃ。はぁー。美鈴ちゃん、地図持ってくるにゃ。ミセスは武器の手入れをしておくにゃ。いいかお前ら。お前らがMP製薬のセキュリティに殺されようがボクには知ったこっちゃないがミランダに死なれると困るんだにゃ。だからMP製薬襲撃のバックアップは全力でする。まず、ミセスも一緒に行かせる。お前らがここで本気を出して暴れようがミセスが本気になったら音もなく皆殺しに出来るくらいミセスは強いにゃ。次に、お前らが生きて帰って来られたら一つ頼みを聞いてほしい。それは……」

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CZK3 5-3-A&B


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