パパ活
「準備はこれぐらいで問題ないですね。」
俺がそのまま清算しようとすると、盗賊のミカから不満の声が上がった。
「ちょっと、私には何もないの?」
盗賊は序盤のあらゆるものが足りない状況では必要不可欠な存在だ。
このゲームは店で購入できる装備が貧弱で更新もされない。
つまり迷宮での宝箱による装備強化は絶対必要、宝箱の罠解除専門の盗賊は優遇される対象である。
しかし、残念ながら今は店にほとんどのレアアイテムがお金で買える状態でストックされているので、今更中層で手に入る程度の装備はそこまで必要ではない。
(まあ、宝箱から手に入る装備を売り払ってお金に代えるのはありだが、それも色々と難しいしなあ。)
「私こう見えても強いから、装備とかに新調すると役に立つよ。」
「・・・。」
たしかに今攻撃能力が一番高いのは彼女ではあるが、前線に立たせるには打たれ弱すぎる、かといって後列から攻撃する弓は装備できない・・・彼女に投資する事は完全に無駄である。
「なに?他の仲間には奢るけど私には何もないの?」
「・・・。」
人から奢ってもらうのに図々しい物言いである。
(というかこの子、必要ないよな。経験値も分配されてしまうから、邪魔だし。)
一瞬そういう考えが頭に浮かぶ。
しかし、会社では俺の事をみんなそう思っていたのかも知れない。
そう考えると、彼らと同じ考えをする自分が酷く醜く感じられた。
(落ち着け・・・何か、有用な装備はないか?)
思案しながら物色していると、奇妙な道具セットが目に入った。
「ガンフォさん、これは?」
「おお、それに目をつけるとはやるねぇ。これは盗賊の七つ道具だよ。」
「これが盗賊の七つ道具か。」
このアイテムは盗賊のみ装備できるアイテムで、宝箱の解錠と罠解除の確率を10%引き上げる。
ただ、このアイテムが手に入る頃には盗賊はレベル25ぐらいになっており、どんなに解除難易度が高くても解除確率95%になるので基本不要アイテムである。(罠解除は残念ながら95%が限界で100%にならない)
「確か値段は・・・。」
「12500Gだね。効果は抜群だよ。」
(高い・・・使ったことなかったから値段覚えてなかった。しかし、レベル14なら価値があるかも。罠解除失敗すると全滅する可能性もあるからな。)
俺はチラッとミカの方を見ると輝く瞳で盗賊の七つ道具を見ている。
すごく欲しそうだ。
「あの~、ミカさんこれなんてどう?」
「ええ!いいの!ほしい~!」
態度が急変して、さっきまでとは違い媚びるような口調だ。
微妙にイラっとする。
(パパ活する人の気持ちってこんな感じなのか・・・俺は向いてないな。)
しかしこの子はツンデレではなかったようだ。
ツンデレなら「欲しくなんてないんだからね!」が正しいはず!・・・よく知らんけど。
俺は盗賊の七つ道具も含めて会計を終わらせた。
「しめて、71100Gになるね。」
かなりの金額である。
やはり盗賊の七つ道具はいらなかった気がする。
(パパ活って大変だな。ご利用は計画的に。)
俺は泣く泣くお金を払ったが痛い出費だった。
「まいど~!」
ガンフォさんは厳つい顔でめいいっぱいの笑顔を見せた。
俺達は店を後にしたが、最後まで謎だったことがある。
(奥にいるパックル族は何もしなかったけど、結局何だったんだ?)




