追放
「おい、アル・・・貴様は首だ。足手まといの荷物持ちはいらねえ。」
「・・・え?」
俺はどうも追放されるらしい。
「これからは下層に潜っていくつもりだ。足手まといがいると簡単にパーティは全滅する・・・わかるよな?」
「・・・。」
追放モノを題材とした小説や漫画は見た事がある。
理不尽に無能判定されるが実は有能で、相手に復讐するという内容がほとんどだが、自分がその立場になるとは思わなかった。
(しかし・・・レベルが低い上に荷物持ちで、1回しか迷宮に同行していない。しかも衣食住の面倒も見てもらっている・・・よく考えなくても追放は妥当だよな。逆に今まで面倒みてもらった金返せとか言われる前に、さっさと逃げたほうがいいかもしれない。)
「・・・わかりました。今まで迷惑をかけてすみませんでした。」
俺は出来る限り落胆しているフリをして、席を立ち背中を向けてその場から素早く逃げようとする。
「おい、待てよ。」
しかし、バナザードが素早く俺の肩を掴み体を密着させて足を止めさせた。
(まずい・・・今までの生活費を返せと言われるかもしれない。)
俺は仕方ないと観念したが、彼は重い小袋を他の仲間達に見えないように渡してきた。
そして小声で、俺に呟く。
「10万Gの金貨が入っている。これで装備を整えたら浅い階層なら戦えるだろう。後、アルテナって子は神官だから誘っておけ、生存率が上がる。俺はもう面倒を見れないが、死なない程度に頑張れよ。」
「え・・ああ、いいんですか?」
「手切れ金という奴だ、遠慮なく受け取っておけ。じゃあな。」
彼はそれだけ早口で言うと、仲間達の所に帰って行った。
(なんだ・・・バナザードめっちゃいい奴じゃないか。すまん、全然育ててなくて。)
俺は心の中で謝罪をすると、そのまま振り返らずに冒険者の宿に帰る事にした。
これからどうするかをちゃんと考えなければいけない。
◇◇◇
俺は宿屋のベッドで考え込んでいた。
(これからどうするべきか・・・10万Gを貰ったから当面は問題ない。)
この世界の生活をそこそこしてきたが、だいたい1日100Gあれば生活できるようだ。
単純に考えると貰ったお金で3年ぐらいは生活できる。
しかし、この世界で3年も生きる気はない。
やはり、何かが起きる事を期待してアークデーモンを倒すべきだろう。
俺はこの世界に似たゲームをずっとやってきた。
だから効率のいいレベル上げや、使える武器防具、アイテムなどはよく知っている。
もちろんアークデーモンのデータはブレイブが残してくれた情報のみではあるが、なんとなく倒すビジョンは見えている。
(よし、今日はもう寝よう。明日から色々試したい事がいっぱいある。)
日本で生きていた時は明日が来るのがつらかった。
今日より明日の方が悪くなっていくからだ。
しかし、今は試したい事がいっぱいあって、早く明日が来てくれないかと願っている。
(こんな得体のしれない世界にいるのに、なんか楽しくなってきたぞ。)
本当はそれが普通で、みんな人生を楽しんでいるのだろう。
では、これからが俺の本当のスタートなのかもしれない。
俺は明日への希望を胸に眠りについた。




