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異世界の勇者

魔術師アリーシャは最下層での壮絶な戦いを俺達に語った。


「まさかブレイブさんが倒されるほどの怪物とは・・・。」

「ブレイブは勝てないとわかっていたから、アークデーモンがどんな能力を持ち、何が有効かを少しでも知るために捨て駒になったのよ。だから、私は彼の最後の戦いを見届けてみんなに伝える必要があったわ・・・いつか奴を倒す勇者のためにね。」

「しかし異世界の勇者とは何者でしょうね?」

「まったく見当がつかないけど、アークデーモンが言った通りなら、悪魔達を倒す使命を持っている者なのかもしれないね。」

「・・・。」


それを聞いて黙ってうつむいている俺を心配して、アルテナは声をかけてきた。

「アル・・・大丈夫?」

「ああ、大丈夫だよ。問題ない。」


しかし内心まったく大丈夫ではなかった。

(いやいや、話が重すぎる!それに異世界の勇者って・・・俺だよな?)


彼女の話を聞いていると、どうも俺がその凶悪なアークデーモンを倒す勇者らしい。

しかも、悪魔達を倒す使命を持っているらしい。


(しかし、ゲームでは不老不死の魔導士が悪魔に体を乗っ取られていたのは明かされるが、アークデーモンに変化して戦うイベントなどなかったはずだ。)


だいたいアークデーモンに力を与えた声の主とは何者だろうか?

さらに裏ボスでもいるのだろうか?


・・・しかし、そこで突然閃く。


(あっ・・・まさか声の主というのはこのゲームの運営なのか?それなら好きに中身をいじれるし・・・・という事は、悪魔を倒すとゲームクリアが出来るというヒントをプレイヤーに伝えようとしているのか?)


かなり強引な解釈だが、もしこの世界がゲームなのだとしたら・・・クリアする事で今の状況を変化させる事が出来るのかもしれない。

少なくともこの世界で酒を飲んでダラダラするより意味があると思えた。


「しかし、よく転移魔術で脱出できましたね。」

「ええ、最下層からは転移した事がなかったから一か八かだったけど、地下1階まで転移できてよかったわ。壁に転移してたら即死だったわね。」


テレポート《転移》は魔術師が使う、指定した場所に転移できる最上級魔術である。

そのため習得も制御も難しく、一度行った場所で一定の範囲内である事はもちろん、かなり正確にイメージ出来ないと使いこなす事はできない。

そのため、失敗すると位置がズレて壁の中に転移してしまい、即死なんてケースも少なくない。


「アリーシャさん、転移で脱出できたなら転移でアークデーモンの所にすぐ行く事が出来るのですか?」

「それは出来ないわ。普通は一度行った場所ならイメージ出来るのだけど、まるで霞がかかったようにわからなくなるの。だから地下9階の転移装置までしか無理ね。それに・・・」

「それに?」


すると彼女は突然震え始めた。

「どうしたんですか?」

「奴の事を思い出すと体の震えが止まらないの。逃げる時に見たあの目・・・もしかして逃げた私を殺しに来るんじゃないかと思うと・・・。」

「大丈夫ですよ。迷宮から出れるなら、魔物達は溢れかえっています。アークデーモンも他の魔物と同じように迷宮から出れない仕組みがあるのでしょう。」

「ごめんなさい・・・わかっているのだけど、どうしようもないのよ。もう私には戦う事は無理だわ・・・。」


彼女には外傷はないが、もう精神的には戦えないようだ。


(レベル50のキャラが恐怖で戦えない程の奴に・・・俺では絶対無理だろ・・・。)


「アリーシャさんはとにかく体調が治るまでゆっくりしてください。冒険者達への説明は私が致しますので。」

「アリア・・・お願いね。」

「任せて下さい。」

「それとアル・・・バナザードによろしくね。」

「わかりました。」


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