決着
「待ってくれ!最後に聞きたい事がある!」
アークデーモンはトドメを刺そうとしてた手をおろした。
「ナンダ?早く言え。」
「ああ・・・貴様は私と何度も会って戦ったと言っていたが、どういう事だ。私と貴様は初対面のはずだ。」
「・・・フム。」
奴は目を細めて動きを止めた。
悪魔の表情は読めないが、何かを思案しているのは感じた。
「たしかに・・・何も知らないお前をただ殺したところでツマラナイ。わかった、教えてヤロウ。」
「お前とはこの場所で何度も戦ってイル。モチロンこの真の姿ではなく、不老不死の魔導士としてナ。」
「貴様とは初対面だ、そんな事があるわけないだろう。」
「私もそう思っていた・・・声を聞くマデハ。」
「声?」
「その声の主が誰だかワカラナイ。しかし、直接頭に突然聞こえてきたのだ、【目覚めよ】と。」
「そして理解シタ。お前と何度も戦って死に、蘇るを繰り返している事にな。しかも、蘇るたびにその事を忘れル・・・ナントモ屈辱的な事だ。」
「信じられないな。私にはそんな記憶は一切ない。」
「本当にソウカ?」
「・・・。」
(確かにこの部屋に入る時、何か既視感があった。何度も同じ事を繰り返していたからなのか・・・しかし、そんな馬鹿な。)
「その声の主は記憶が蘇った私に、元々の悪魔としての力を戻してクレタ。そして言われたのだ【異世界の勇者を倒せ】と。」
「異世界の勇者?」
「私を何度も倒したお前が異世界の勇者だと思い、万全の準備をして待ってイタ。しかし、違うヨウダ・・・お前からは何も感じナイ。」
「言っている事がよくわからない・・・異世界の勇者など本当に存在しているのか?」
「存在しているのは確実ダ。声の主がそう言っているのダカラナ。」
「しかし、存在していたとしてもこの迷宮の最深部まで来て、貴様に挑んでくるかはわからないだろう?」
「挑んでくるサ。異世界の勇者は私を倒さないといけないらしいカラナ。」
「・・・それも声の主が言ったのか?」
「そう言う事ダ。ではそろそろトドメを刺すゾ。」
「まて・・・。」
私は痛む体を無理やり起こして、立ち上がる。
「ハァ、ハァ・・・・。」
「何の真似ダ?」
「私の残り少ない魔力で、最後の奇跡を使わせてもらう。」
「ホォ・・・それは面白い。あえて、受けてヤロウ。攻撃してミロ。」
俺は痛みをこらえて最後の奇跡のために魔力を集め、イメージを練り、力ある言葉と共に放つ!
「我が敵を砕け・・・フォース《力撃》!」
手のひらから白く輝くエネルギーの塊が真っすぐアークデーモンへと直撃する!
・・・かに見えたが体に触れる瞬間、霧散する。
アークデーモンは不思議な顔をして呟く。
「・・・これがお前の最後の奇跡カ。」
「私の攻撃は通じなかったのか?」
「私はあらゆる魔術と奇跡を無効化スル。しかし最後というから何かと思ったら下級の奇跡だったとは・・・ガッカリダナ。」
私は力を使い果てて、また膝をつく。
もうこれで本当に限界だ。
「ザンゲキ、ミリアム、アウグスト、ルキリア・・・すまない、君達を助けられなくて・・・。」
「懺悔の言葉カ・・・憐れだな、貴様には誰も助ける事ハデキナイ。だが悲しむことはない、私が強すぎただけナノダ。」
奴は口元を大きく歪ませて笑みを浮かべた。
あらゆる者に恐怖を与える凶悪な表情だ。
「なるほど、お前は強大で凶悪な存在だ。だが・・・色々とわかった。」
「・・・どういう意味ダ?」
「後はどこの誰かもわからないが、異世界の勇者に倒してもらうしかないな。」
「・・・何を言っていル?」
私は喉が引き裂かんばかりに叫んだ。
「アリーシャ今だ!」
アリーシャはこの時をまっていたとばかりに、魔術を発動させるべく魔力を集める。
「ごめんね、みんな・・・そしてブレイブ。」
次はイメージを練る。
「まさか、最後の力で攻撃魔術をぶつけようというのカ?愚かな、私にはどんな魔術も奇跡も効かナイ。」
そして力ある言葉と共に魔術を発動させる。
「我を彼の地へと送れ・・・・テレポート《転移》!」
発動と同時に彼女は光に包まれ姿が消えて行く。
「転移魔術!逃げるダト、ふざけた事ヲ!」
最後に見えたのは憤慨するアークデーモンと、力なく膝をついているブレイブの背中だった。
「後は頼んだぞ、アリーシャ・・・そして名も知らない異世界の勇者よ・・・。」




