一騎討ち
私達二人は、凶悪なアークデーモンと対峙していた。
「準備は済んだカ?」
「ああ。」
「残念だナ、1人しかお仲間がいなかったとは。はたして2人で私に勝てるかナ?」
「勘違いしないでくれ、戦うのは俺一人だ。彼女は戦える余力はすでにない。」
「・・・好きにシロ。」
「アリーシャ戦いは俺がする、君は下がっていてくれ。」
「わかったわ。」
それを聞いて、彼女は大きく後ろに下がった。
「アークデーモンよ。私の最後の願いを聞いてくれないか?」
「ナンダ?」
「アリーシャ・・・いや、仲間の女性は見逃してくれないか?」
「そちらが何人で戦おうと勝手だが、全員始末スル。これは決定事項ダ。」
「・・・見逃す事が出来ないのなら、私が貴様との戦いに敗れた場合は・・・せめて彼女を楽に殺してやってくれ。」
「自分が死んだ後の事を考えるなど、くだらん事だナ。だが、それで全力が出せるなら、約束しよう。」
「感謝する。」
剣を構え戦闘態勢に入る。
奴から攻めてくる気はないようだ。
「ウォオオオオオオ!」
私は雄たけびを上げて切りかかった。
しかし、奴はそれを腕で受け止める。
ガキィイイイイイイイイン!
金属音がなり、攻撃した私の剣が弾かれ反動で後ろへとのけぞる。
何とか体勢を立て直すが、手にしびれが残るほどの衝撃だ。
「攻撃したこちらの手がしびれるとは・・・。」
「あの女は苦しまずに殺してやるが、貴様は別ダ。遊びながらいたぶって殺してヤロウ・・・だから存分に楽しませてクレ。」
(圧倒的な力の差がある・・・だからこそ奴は油断しているだろう。アリーシャ頼むぞ。)
「ウォオオオオオリャァアアア!」
次は連続攻撃を繰り出すが、先ほどと同じく強靭な筋肉と硬い皮膚に弾かれる。
だが奴は、こちらの攻撃をすべて腕で受けている。
つまり、それ以外の箇所ならダメージを与えられる可能性があるかもしれない。
「フンッ!」
闇雲に攻撃するフリをして、素早く懐に入り込み相手の腹に軽い一撃を入れる。
「グウゥウウ!」
軽い一撃だったが、奴の顔が歪んだ。
攻撃した場所には傷一ついていないが、痛みはあるのかもしれない。
(やはり腹の部分も硬いが、人間と同じように骨はないようだ。人間の体を奪っているだけあって構造は似通っている。)
そのあたりは、パワーは別物といえど他のデーモン系と変わらない。
「グオォオオオオオ!」
攻撃されて、腹が立ったのか攻撃に転じてきた。
太い腕をぶん回して攻撃してくる。
思ったより素早い攻撃で完全に避けるのは、重い鎧を着た私には無理そうだ。
(バンパイア共と戦った時のダメージがまだ残っている。まともに受けると耐えられないかもしれん。)
盾を構えて、守りに徹するが受け止めずに攻撃を逸らす事に集中する。
凄まじいパワーによる攻撃を盾越しとはいえ、まともに食らうと今の私では体ごと吹き飛ばされると判断したからだ。
ガギャギギギギギ!
「盾が!」
攻撃を逸らす事には成功したが、鋭い爪が盾の外観を削り取る。
(魔法金属ミスリルで出来た盾が削れるとは、なんて破壊力だ!)
しかし、質の低い盾なら、盾どころか腕ごとやられてたかもしれない。
「良く受けタ。このままイタぶってもいいが・・それでは芸がナイナ。」
(何をするつもりだ。)
相手の攻撃を警戒して間合いを取り、守備を固める。
すると両手をこちらに向けて2つの魔術を連続発動させる。
「氷の嵐ヨ吹き荒れろ・・・ブリザード《氷嵐》!」
「雷撃よスベテを貫ケ・・・サンダーボルト《雷電》!」
氷の嵐と雷撃が避ける間もなくブレイブを直撃する!
「ぐぁああああああ!」
凍えるような寒さと激痛に襲われ思わず膝をつく。
「まだ生きているのカ。思ったよりタフだな。」
奴の余裕のセリフが遠くに聞こえる。
体中が痛くて・・・立ち上がれない。
ここで攻撃されたら何も出来ずに殺されるだろうが、奴は何もしてこない。
それだけ余裕だという事なのだろう。
(2種類の魔術を連続発動だとは・・・防具の魔術攻撃軽減が無ければ死んでいたな。)
奇跡や魔術を発動させるには、魔力を集め、イメージを練り、力ある言葉と同時に放つ。
簡単に説明するとそれほど難しい事ではないように思えるが、工程ひとつでも間違えると失敗してしまう繊細なものだ。
(それをほとんど時間のロスなしで発動してくるとは、やはり高位の存在・・・という事か。)
「ドウシタ、まだ死んでいない事はわかっているゾ。攻撃して来い!」
「・・・残念だが、もう立つことすらできないな。」
「ナンダ・・・もう終わりか?思ったよりあっけなかったな・・・いや、ワタシが強すぎるたのカ。仕方ない・・・つまらないが、トドメをさすカ。」
その時、私は最後の力を振り絞って声を出す。
「待ってくれ!最後に聞きたい事がある!」




