激突
大量のバンパイアに囲まれた騎士ブレイブだったが、ことごとく打ち破っていった。
「キィイイエエエエエエ!」
ザンゲキが最後の一人にトドメをさす。
「ふぅ・・・何とかなったな・・・。」
仲間達の状態を確認する。
かなり消耗しているようだ・・・体中傷だらけ、魔術も奇跡もあまり使えそうにない。
「疲れているね。これ以上は厳しいかな?」
「貴様達の方が厳しいんじゃないか?手下どもは全員倒したぞ。」
「たしかに素晴らしい強さだ。その強さに免じて相手をしてあげよう。」
「それはありがたい。2対6だが文句はあるまいな?」
すると不老不死の魔導士は少し笑って、
「いや、わたしだけで相手をしよう。ここまで戦った君たちへの褒美だ。」
と提案してきた。
「本気か?」
「もちろんだ。」
奴が指示を出すと、一度礼をしてバンパイアロードは影に染み入るように消えて行った。
皺くちゃな表情からは、真意を読み取れない。
「奴の意図が読めない・・・アウグスト、どう思う?」
「考えられるのは、1人で戦うと油断させてからの・・・バンパイアロードとバンパイア達の奇襲。」
「なるほど・・・たしかにそれは考えられるな。」
「ミリアム、君は周りの様子に気を配ってくれ。」
「了解。」
私達は陣形を組み、奴と向かい合う。
「始めてもいいかい?」
「ああ、いつでもいいぞ。」
「ではさっそく・・・。」
そう言うと、魔導士は指を俺達に向けて魔術を放った。
「すべての敵を殲滅せよ・・・メテオブラスト《爆裂》!」。
(いきなり最強呪文か!)
「マリーシャ、アウグスト!」
「「災いから友を守りたまえ・・・マジックシールド《魔防壁》!」」
魔術によってパーティ全員を光の障壁が2重にはられ、爆発のダメージを軽減する。
「ほう、重ねる事によってダメージを軽減したか。やるじゃないか。」
奴はニタニタしている。
「みんな大丈夫か。」
素早く味方の損害を確認する。
全員無事とはいかないが、吹き飛ばされた者はいない。
「よし、一気に間合いをつめるぞ!」
魔術師は打たれ弱い・・・つまり近づかれる前に最強呪文をぶっ放すのは想定済だった。
つまり近づけば勝機はある。
「ではもう一発耐えられるかな?」
奴が右腕を前に出し、攻撃態勢に入った。
「させるか!」
阻止するべく、ザンゲキは敵に素早く接近し一閃する。
その一撃が奴の体を両断する!
「キィェエエエエエエ!」
それだけでは終わらない。彼が奇声を上げながら容赦ない連続攻撃がヒットする。
それで奴の体は細切れになった・・・はずだった。
「どういうことだ?」
私も攻撃に参戦すべく近づいて奴を見たが全くの無傷だ。
着用しているローブはズタズタなのに、肉体には傷一つもない。
「刃が通らない・・・魔術のたぐいなのか・・でゴザル。」
ザンゲキは一度間合いを取り、相手の姿を茫然と見ている。
しかし、俺達の様子など意に介さずまた指から魔術を放つ。
「すべての敵を殲滅せよ・・・メテオブラスト《爆裂》!」。
光が私達の近くを通りすぎ、後ろで大爆発が起こる。
急いで振り返ると、待機していた4人の仲間達が吹き飛んでいた。
息があるのかわからないが、全員グッタリしている。
(こんな事になるとは・・・。)
「キィィェエエエエエエエ!」
ザンゲキは闇雲に攻撃を繰り出している。
効いている様子はない、それどころか刃の方が欠けている。
「君うるさいね。」
奴はけだるげに喋ると、体が膨張しはじめ、ドンドン強大化し始めた。
ローブがはじけ飛び、太い腕がザンゲキの首を掴み締めあげる。
何が起こったか理解できなかったが、彼を救うために叫びながら相手に攻撃を仕掛ける。
「貴様あああ!ザンゲキを離せええええ!」
奴の腕に渾身の一撃を繰り出すが、頑強な皮膚にはじかれてしまう。
(なんだ・・・刃が通らない。これがあの皺くちゃの老人の体か?)
その後も巨大化が進み、いつの間にか6mほどの巨体になっていた。
曲がりくねった巨大な角、血を思わせる赤い目、膨れ上がった鋼鉄の筋肉・・・そしてヌメヌメと光る紫色の肉体。
「まさか・・・グレーターデーモンか?!」
すると怪物は醜悪な顔でニタァと笑い、手の中でもがいているザンゲキを壁に放り投げた。
「ザンゲキ!」
壁に叩きつけられたザンゲキはピクリとも動かない。
生死は不明だが、動く事すら出来ない状態なのは理解出来た。
「グハハハハ、我はアークデーモン!そんな低レベルの連中と一緒にスルナ!」
「なんだと?人の言葉を理解できるのか?」
「アタリマエダ、貴様ら程度の言語など簡単・・・と言ってもこの体のおかげだがな・・・グハハハハ!」
「体・・・まさか魔導士の体を乗っ取ったのか?」
「ソウダ・・・が、今の肉体は別人ダガナ!」
「どういう事だ?」
「ワレラはこの世界での肉体をモタナイ。仮初の肉体がいる・・・だから呼び出した魔導士の体を乗っ取った。だが残念ながら人間は不老不死ではナイ。」
その時、奴が話していた質問の答えが脳裏に浮かんだ。
〈不老ではないし、不死でもないが・・・永遠ではある〉
「まさか!体を入れ替えて存在し続けているのか?!」
「なかなか頭の回転がはやいじゃナイカ・・・。」
「この迷宮は貴様が代わりの肉体を得るために作ったというわけか!」
「ホォ・・・なかなかの推理力だ。だが、この迷宮は魔導士が作った物だ。目的は知らないが、我にとっては都合が良かったので利用させてもらっただけの事。」
(何という事だ。奴が伝説級の存在アークデーモンだったとは・・・。私以外もう戦える者はいない、勝ち目はないだろう・・。)




