神官アルテナ
地下2階は次の階段までの道のりは1本道だが、とにかく曲がりくねっているので遠く、魔物との戦いによる消耗がこの階層の危険要素だ。
俺は先ほど魔物に襲われそうになったせいか、後ろの見えない暗闇に何かが潜んでいるんじゃないかと気になってしかたない。
ついチラチラと後ろを振り返ってしまう。
(いないよな・・・もし何かあったらすぐに盾を構えないと・・・。)
その時、左手を誰かが掴んできた
驚いて確認すると、アルテナが手を握っていた。
「大丈夫だよ。」
彼女の声は小さかったが、まるで染み入るように良く聞こえた。
(情けない・・・こんな女の子に心配されるとは。)
「ああ、すまない・・・ありがとう。」
「心配しなくても、私の目なら暗闇でも見通せる。」
そういってこちらを見た彼女の大きな目は金色に爛々と輝いていた。
(金色の目?初めて会った時は茶色だったような・・・。)
「それは魔法なのかい?」
「違う、私はドワーフ族だから暗闇を見通せる能力が元々備わっている。」
「ドワーフ族?」
ドワーフ族は小柄だが力強く頑丈で器用な種族だ。
鍛冶や装飾品作り、鉱石などの加工が得意で、基本地下に住んでいる。
その為、暗闇でも目が効く。
(ドワーフは良くゲームでも出てくるから知っているが、彼女の容姿はイメージと違うな。)
彼女はたしかに小柄で肉付きがよく、アリアのように抜群のプロポーションではないが、人間の体系からそこまで外れてはいない。
茶髪で前髪は真っすぐに切りそろえており、後ろ髪は三つ編みだ。
肌は少し黒く、大きな目をしており、全体的に愛らしい顔立ちだ。
服装は白を基調とし、ところどころに黒と黄が入っている神官服を着ている。
(俺としてはもっと厳つくて、女性でも髭が生えているイメージなんだが・・・。)
「しかし、ドワーフに初めて会ったがこんなに可愛いとは・・・。」
「可愛い?」
(しまった・・・心の声が漏れてしまった・・・また侮辱だと思われる。)
「いや・・別に思った事を言っただけで・・・。」
「うん・・ありがとう。」
そう言って俺の手を強く握って来た。
侮辱にならなかったようだ。
しかし、その後何となく手を離せずそのまま進まなくてはいけなくなった。
バナザードはそれをチラチラ見てニヤニヤ笑っていた。
◇◇◇
アルテナの手をずっと握っていたので、そこに意識がいってあまり恐怖は感じないまま地下3階への階段近くまでいつの間にか到達していた。
「よし、休憩しよう。次は地下3階だ。地下3階は落とし穴などの罠、そして毒や麻痺、魔法などを使用してくる敵もいるから油断しないように。もちろん俺らのレベルなら問題ないが・・・アル!お前だけは気を付けろよ!」
「え・・ああ、はい。」
まるで見せしめである。
(ま・・会社では出来ない社員として、いつも見せしめにされてたから慣れてるけどね。)
また階段近くの小部屋で各々休憩する。
(ふう・・・一息つける。なんか恐怖とかより、別の意味で変な汗が出て酷く疲れた。)
「おい、アルちょっとこい!」
またバナザードが部屋の端で呼んでいる。
(またかよ・・・。)
俺はまた嫌々彼の元へと駆け寄る。
「なんですか?俺も休憩したいんですけど?」
彼はニヤニヤしながら俺の背中を強く叩いてきた。
「お前・・・やったな?」
「は?」
「俺はアルテナの相手をしろっていったけど口説けとは言ってないぞ?」
「口説く?」
「手をずっと握ってるから、俺ですら恥ずかしくなったぜ。」
どうも彼は誤解をしているようだ。
「しかし、ドワーフが好きとはかなりの特殊性癖だな。」
たしかにゲームでハーフエルフというのは良くいるが、ハーフドワーフというのは少なくとも俺は知らない。
しかし、ドワーフ女性が基本あんな感じなら十分ありうる気はした。
「うーん、でも彼女は俺達にそこまでかけ離れていないから、そこまで特殊ではないのでは?」
「おいおい、好きだからって自分が普通みたいな言い方するなよ。アリアさんと比べて見ろよ、全く違うだろ?」
たしかにそれはそうだ。
ただ、俺は数日間この街をブラブラしていてかなりの女性を見かけたが、アリアほどの抜群のプロポーションの人は一人もいなかった。
だからアリアさんが人間の中でも特殊な気がした。
「たしかにそれはそうですね・・・俺はドワーフ見た事ないんですが、あんな感じなんですか?」
「・・・そういえば違うな。ドワーフ女性は何人か見たが、もっと恰幅がよくて厳つい感じはあるな。顔つきももっとふくよかな感じだったかも・・・しかし、個体差があるから、何が正しいかはドワーフしかわからん事よ。」
「なるほど。」
「まあお前が特殊性癖でも・・・俺は応援するからな!」
そう言って彼は親指を立てた。
完全な誤解なのだが、否定するのも面倒なのでそのままにしておく。
(ただ特殊性癖っていうのはやめてほしい・・・。)




