8話 いっしょに始めないか?
1学期の期末テストで、耀と麗央は同率1位になった。結果を見て、2人は笑い合い、ハイタッチをした。
「レオ!私、とっても嬉しいですっ」
「俺もだ」
そして麗央は2人で下校中に、カフェに寄らないかと耀を誘った。
「前々から考えていたんだが。同好会以外にも、2人で個人的に投資をしてみないか?ヨウとなら、大きな事が成し遂げられそうな気がするんだ。200万円、俺の個人資産から出す。それを使おう」
「え、そんな大金……。いいんですか?じゃあ、原資分稼げるまで、利益はレオのものにしてくださいね」
「いや、利益はヨウと半分だ」
耀は複雑そうな表情になった。
「それは……。なんだか対等じゃない感じがします。
原資分に到達するまでは、追加投資に回しちゃいましょう!」
「ヨウがそういうなら……。分かったよ」
「じゃあ、これから作戦会議です!」
頭を寄せてスマホの画面を見ながら話していると、いつのまにか数時間経っていた。
「そろそろ、帰りましょうか。明日、市の図書館でいっしょに勉強と相談をしましょう」
「ああ、楽しみにしてる」
「…時々図書館で白石先輩を見かけたから、もし会えたら話しかけてみたいんです。……かまいませんか?」
「どうして俺の許可が必要なんだ?」
「え?だって、約束してたのはレオだから……」
麗央は一瞬、言葉を失った。
耀の言葉は、ただの確認のはずなのに。どこか引っかかる響きを持っていた。
「……ヨウは、誰と話そうが自由だ」
少し間を置いて、麗央は答えた。安心させるように、落ち着いた口調で。
「そう、ですよね」
耀はほっとしたように微笑む。
けれど、その笑顔を見た瞬間、麗央の胸の奥に、わずかな違和感が広がった。
(本当に、それでいいのか?)
登校中に見た時の、輝く笑顔のままに他人を拒絶していく様子。耀がいつか傷つけられるかもしれないと、心のどこかで警鐘が鳴っている。
「もし何かあったら、すぐ俺に言え」
「え?」
「その先輩がどういう人間か、俺はあまり信用してない」
耀は少し驚いた顔をしたあと、くすっと笑った。
「レオ、珍しいですね。そんなふうに言うの」
「……悪いか」
「いえ。でも、ありがとうございます」
耀は柔らかく頷いた。
「先輩は愛らしい方だと思いますが…。
ちゃんと気をつけます」
――この先、何かが動く。投資の話も、白石先輩のことも。そして、耀との関係も。
「……明日、図書館でな」
「はい。楽しみにしてます」
夕焼けの中、2人はそれぞれの帰路へと分かれた。
同じ方向を向いているはずなのに、どこか違う未来へ進み始めているような、そんな気配を残したまま。




