第59話 動き、歪みだす歯車
翌日。
昨日、授業が開始する前にファフニールが動き出したことを知った。
桐ケ谷さんには言ってないが俺のファフニールは勝手に動く。俺の意思でもそうだし、ファフニール自身でも自分の考えで動くからな。俺とファフニールで繋がってる。
「あぁ、それと…鴉羽君」
「はい?」
頭の中でファフニールから昨日の事の報告を受けていると一条先生が授業が始まっても居ないのに、俺を指してきた。
「2日後に二年生のガディ君との決闘があります。理由はまぁ…はい」
「わかってるので大丈夫です」
「え、知っていたんですか?」
「他の二年の方から聞きました」
嘘はついていない。だって桐ケ谷さんは二年生のはずだ。
ガディ…ガディだっけ?ま、いいや。
アイツと一緒に居るから二年生だろう。
その桐ケ谷さんから聞いたから嘘ではない。
「えっと…その、鴉羽君」
「はい」
「…教員があまりこんなことを言いたくはありませんが、気を付けてください」
教員にもこんなこと言わせんのかよ…どんだけやべぇんだアイツ。
「俺もこんなことを言いたくないですが、既にファフニールからの報告を受けました。件の奴がファフニールに細工しようとしたところを追い払ったそうです」
「えっ!?」
「心構えは既に済んでいますし、ここにいるクラスメイトにも宣言ついでに言いますが…俺はアイツを…本気で『潰す』つもりでやります」
俺の宣言にクラス中がざわつく。
「教員の方がそれ相応の問題を抱えていることも理解してますが…そんなことすら忘れるほどに俺は怒りに燃え、同時に憎悪で満ちています。たかが三日そこらの転校生が他の生徒に手を出し、俺の親友すら狙ったんですよ?そりゃ…こうなりますよ」
一条先生は明らかにたじろいでいる。
俺への対応、件の奴の対応…あと単純にビビっているかもしれない。
多分、俺の顔はさっき言った通り怒りと憎悪に満ちたアリスには見せられない酷い顔をしているだろう。
「…」
「…鴉羽君」
「はい」
一条先生は少し、深呼吸してから教卓に両手を置いて俺にこう言った。
「これは私個人の言葉です。鴉羽君、もし本気でやるなら…私は本気で背中を押します」
「!!」
「私にとっての教師は生徒の夢を応援し、生徒を正し、背を押す物だと思っています。もし鴉羽君が本気であのガディ君を潰すのなら…本気でやっていいです」
いつもの一条先生とは打って変わり、ものすごく真剣な表情ではっきりとそういい放った。
本当にいい教師だ。どこぞの生徒に拳を振り上げたカスとは大違い。
「ありがとうございます、一条先生」
「さて、話はこのくらいにして授業を始めます」
そうしていつも通りの授業が始まり、俺は机の上のノートにペンを走らせながらファフニールからの言葉の一言一句を聞き逃さぬように耳を傾けた。
内容としては…今、丁度目の前にある『ガディ・パヴォーネ』の専用機のスペックの事だと。
何で目の前にあるのかと疑問に思ったが、偶然が転がってきたのだと神様に感謝しつつ、話を聞く。
専用機名『ティアドロップ』
やや白に近い水色の装甲を持つARMORで、背面に大型のバックパックが装着されており、展開すると副腕が出現する。
4刀流のブレード、腕を四本使った射撃武器などオールレンジ攻撃を行うことが出来る。
専用アビリティは『雪の福音(スノー。ゴスペル)』
両手、両腕から特殊な氷を生成し、盾や武器を作成することが出来る魔法のような事が出来るとのこと。
聞いてすぐわかる。
桐ケ谷氷水さんは俺や明楽以上の技術者だ。そもそも副腕という時点で十分にすごい。
機体のバランスや性能、出力の調整といった緻密な計算、更に特殊な氷を生成しそれをバリアにできるのもすごい。
言葉での説明は容易かもしれないが、それを実現できるような力を持っている。
そう考えると…桐ケ谷氷水さんの姉はとてつもないARMOR”sだったのかもしれない。
もしAT学園に来ていたのならナンバーズ入りは確実として、最前線に容易に立つことが出来るだろう。
なのに…もうその姉は居ない。そしてその姉を殺した人物こそ…あのティアドロップに乗っているクソ野郎だ。
授業中だっていうのに怒りが収まらん。
(それと…なんだ…?)
この、猛烈な…嫌な予感は。
なんて思っていたらスマホにメッセージが2件、同時に送られてきた。
一件目はソフィー生徒会長だ。
このメッセージは今のナンバーズ全員に送信されている。
『鴉羽零亜、八神。アウローラを見ませんでしたか?』
『授業中なんだが…まぁ見てないぞ。あのガディとかいう奴も見てないな』
『おかしいですわね。授業が始まってもなお、アウローラが帰ってきませんの。思えば昨日の夜から姿を見ていないような…』
『それに関しては私もだ。鴉羽、どう思う』
二件目、桐ケ谷氷水さんから
『鴉羽さん、大変です!昨夜…アウローラさんが夜間のうちにAT学園から連れ去られ、エデン研究所へ連れていかれました。その決定的な証拠としてエデンの監視カメラで拘束されているアウローラさんの姿が…』
「ッ!?」
◇◇◇
場面は変わり…研究所『エデン』地下下層部。
「もうすぐだ…もうすぐでアウローラにその中にいるヴァルティとやらを切り離し、彼女を永遠に僕のものにできる」
そこに居るのはガディ・パヴォーネ。
水槽のようなものに手を当てて、そうつぶやく。
最も、その水槽の中身は魚や海洋生物…ではなく、大量の女性の身体を持ったクローンが漂っていなければ良い物だったが。
「そうだろう?ヴァルティ」
そう言いながら後ろを振り向くと、両手、両足を電気椅子のようなもので座らされ、拘束されているアウローラ・ヴァルティ。
「テメェ…寝静まって言ううちに随分と姑息な真似を…!」
「ふん、君に興味はない。僕が興味があるのはアウローラの方だ。さっさと失せろ」
「はっ!今、アウローラは起きてねぇよ。てか、起きることもねぇだろうな」
「…どういうことだ」
「二分化された俺たちの人格は記憶を引き継ぐことはできない、そして…肉体の所有権はアウローラにしかなかったが…俺が無理やり意識を保っていれば『俺』が存在できる」
「なら尚更」
「テメェの顔をアウローラに見せるわけにはいかないんでな。お前みたいな豚の顔はよ!!」
「なんだと!!」
「くっ!!」
拘束されてもなお噛みつくヴァルティに拳を振りかざすガディ。
「へ、へへっ…効きもしねぇな」
「まぁいい…お前はすぐさま用済みとなり、アウローラは僕のものになる。その結果は残るだけだ」
「…そんな人形にアウローラを閉じ込める気かよ。性癖が壊れてるんじゃないのか?」
「愛だ」
「愛?そんな一方的な愛でよく言えたな」
「…もういい、連れていけ」
言葉が通じないと思ったのかガディは周囲に立っていた『白衣の連中』に指図し、アウローラ・ヴァルティを何処かへと連れていく。
それを見届けた後
『分かっているわね?』
機械に下降された声が、ガディに向けられる。
「はい、黒龍教様」
『アウローラを手に入れた暁にはパヴォーネ社のARMORの生産力や金銭で私たち黒龍教に支援を行うと』
「勿論です」
『なら良いわ。しかし、油断は禁物』
「あの三人組ですね」
『えぇ、謎の機械を身に着けた三人の女性には気を付けない』
「勿論です」
ガディがそう言うと、声は聞こえなくなり部屋は静寂に包まれるがガディは落ち着いた様子でAT学園の制服を身に着け、スマホを取り出し、何処かへと電話をかける。
『…なんだ』
相手は、AT学園の東雲学園長。
「僕とアイツの決闘を本日に開始にしてもらおうか」
『何故だ?余程の理由が無ければ…』
「僕に逆らうのか?AT学園の生徒がどうなってもいいと?」
『…はぁ、あい分かった。今日、決闘を開催に変更する』
クズそのもののような会話。
東雲学園長ではなく、周囲の人間…つまるところを『生徒』を人質に取り、半ば無理やりにでも鴉羽を潰そうと考えているガディ。
「いう事はそれだけだ。じゃあな」
『…最後に言っておく』
「あ?」
『敵に回す奴は考えたほうがいい』
そういい、東雲学園長の方から電話が切られる。
「何なんだあのババア。まぁ…いい、ママには申し訳ないけど、僕の為に消えてもらうよ…くくくっ」
そう一人でに呟き、部屋を後にしてAT学園にへと向かっていった。
◇◇◇
桐ケ谷氷水さんのメッセージを見た瞬間、全身の血の気が引いた。
あのエデンとかいう研究室で行われる人格移行手術はもうすぐと言っていたが、こんな直ぐなのかよ!?
と、焦った瞬間
――ピンポンパンポーン。
突然、学園のチャイムが鳴り響いた。
『聞こえるか?学園長の東雲だ。お知らせが一件、呼び出しが一件あるので報告する』
こんな授業開始時間にお知らせ?
いや、そんなことを考えている場合じゃない!アウローラサンを取り戻すためにどうすれば、と考えた。
次の瞬間
『明後日に行われる予定だったガディ・パヴォーネと鴉羽零亜の決闘は…本日の14:00を持って開始となる』
「!!!?」
決闘の時間が繰り上がった…?
アイツ死に急いだのか…いや違う!!
(やられた…!)
俺を動けなくするためか!!
桐ケ谷さんが俺がアウローラさんたちを助けようとしたことをばらしたのか!?
いや、それはない。そもそも桐ケ谷さんがばらすメリットが無さすぎる。
なら何でだ…!?
「え、決闘の時間が繰り上がる!?」
「ねぇ、零亜君。どういう…」
一条先生は驚き、丁度出席していた珊瑚は俺を見る。
俺は…
「クソッッ!!!」
焦りと怒りのあまり、机に拳を叩きつける。
銃声かのような轟音と共に机にヒビが入る。
「―――あの…クソ野郎…!!」
心の中の水面が焦りによって波紋が生じて居たが…すぐさま、スッと収まるが水面はぐつぐつと煮え滾り…俺の中が怒りで支配されていく。
俺の中で何かが蠢き、内側から外側へと感情も肉体も、『激怒』で埋め尽くす。
そして、俺の頭は一つの答えを出した。
――壊セ。
その答えを肯定した瞬間、俺の四肢と首元から『プシュッ』と音が鳴った気がした。
誤字脱字、語彙力がほぼ皆無に等しいのでミス等がありましたらご報告お願いします
感想も待っていますので気軽にどうぞ!
超絶不定期更新ですがご了承ください…




