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第56話 山積みの問題

一度、俺はアリスを抱えて保健室に向かう。

その間もアリスは錯乱状態に陥っているのか、俯きながらぼそぼそと何かを呟き、俺の腕を握っていた。

それに対して俺はぐつぐつと…怒りを募らせている。

…わかってるよ。

再三ファフニールに落ち着けって言われるが、そんなことはわかってる。

けど、許せない。

今でも骨の一本でも折っておこうと思ったが…もうそんなことはできない。

結局、あの三人は即死し、何処かへと運ばれて行った。

そんなことはどうでもいいが。

俺は勢いよく保健室の扉を開けて、先生にアリスの事をお願いする。

すぐさま何かの検査が始まるが…外傷云々がないのは良いがそれ以上に問題なのが


「『トラウマ』になっちゃったんだろう」

「トラウマ…施設の事がですか?」

「多分…というより絶対って言い切れる」


アリスが施設に居たこと、どんなことをされたのかは…全校生、全職員が知っている事だろう。


「今って鴉羽君がアリスちゃんに色々な事を教えてるでしょ?楽しい事、美味しい物とか」

「それはそうですが」

「勿論、鴉羽君の行為は善意で出来てるし合っている行動なのは分かるけど…アリスちゃんの場合は楽しい経験を重ねすぎて施設に戻りたくない意志がトラウマに昇華した可能性が高い」

「…」

「…別に鴉羽君を責めてるわけじゃないから、そこは誤解しないで。むしろあってる行為だし、そうなってしまうのが自然だから」


保健室の先生は俺にそう言いながら慰めてくれる。

アリスは施設の事がトラウマになった…それほどまでに教えた事が良かった半面、少し申し訳ない気持ちになっていた。

今、俺の目の前のベッドにはアリスが寝ている。

冷や汗が凄く、顔もやや赤い。

トラウマの影響か、発熱状態になっているとの事。


「…鴉羽君」

「俺は…どうすればよかったんでしょうか」

「だから自分を責めないで。きちんとした行動だったと聞いたから」

「…」

「とりあえず、ここは私に任せて軽く休んで。アリスちゃんが目が覚めたり何かしらの変化があったらすぐに連絡するから」

「わかりました…では、失礼します」


俺がこのままここに居ても、何も変わらないことは理解している。

言われた通りに、保健室から出て少し廊下を歩いた後


「はぁぁぁぁ…」


ため息をつきながら廊下の壁に背を預けてズルズルと床に座るような状態になる。


(先生の言う通り、俺の行動はあっていたはずだ。だけど…未然に防ぐこともできたんじゃないか?)


自分を責めてしまう。

分かっている…分かってはいるが、何かできたんじゃないかと卑屈になってしまう。


「あ、鴉羽君。どうしました?」

「アウローラさん…?」


いつの間にか近くまで近寄っていたアウローラさん。

明らかに心配そうに俺の方を見ている。


「アリスちゃんの事ですか?」

「はい…もっといい行動が出来たんじゃないかって」

「アレで十分ですよ。それで…凹んでるところ悪いのですが、ソフィー生徒会長がお呼びです」


ソフィー生徒会長か。

ってことは、さっきの事を情報共有してほしいって事だろう。

行くしかねぇか。


「分かりました」


俺は息を少し吐いてから立ち上がる。

そうしてアウローラさんと共に生徒会室に向かう。

すると


「うぅっ…?」

「アウローラさん!?」


急に立ち眩みがしたかのようにふらっと身体から力が抜けたように倒れかける。

すぐさま俺は反応し、アウローラさんを抱き留める。


「だ、大丈夫ですか!?」

「…いい、大丈夫だ。俺だ」

「!」


アウローラさんから低い声が聞こえると同時に一人称が『私』から『俺』に変わったことですぐさまアウローラさんがヴァルティさんになったことを理解した。


「ヴ、ヴァルティさん?」

「はぁ…クソ、さっさと身体の所有権を渡せばいい物を…まぁいい、何とかしてお前と話がしたかったんだ」

「俺に?」


どうやら前と同様、俺に用があるようだ。


「アウローラが勝手に抱え込んでた物をお前に共有させてもらう、というか共有しないとならない」

「あの件の転校生ですか?」

「あぁ。学園祭も終わった後、こちらに来るという情報が来た。今じゃAT学園の上層部が大騒ぎだろうな。なんせ二人目の男性のARMOR’sだからな」

「気になったんだが…ソイツはどうやってARMOR”sに?」

「なぁに簡単だ。ソイツは一国のARMOR製造所の御曹司、それで分かるか?」

「ある程度は」


用は立場か。

てか、それで別の人が作ったARMORを奪い取ってそれでARMOR”sになったと。

もう…何も言えねぇよ。


「んで…生徒会は使えないだろうな。前にも言った通り、生徒会長も変には出れないだろうし、まともに動けるのはお前だけだ鴉羽零亜」

「前の確認ですが、殴ってもいいんですよね?」

「アウローラは止めるかもしれないが、遠慮なくやってくれ。なんならアウローラの前だけはコテンパンにやったっていい」

「それは…何故?」

「立場上、アウローラは止めざる負えない。なんてったって一応は婚約者だからな」


メンドクサイ立場だな…なら心にとめておこう。

最悪、骨や歯の何本かはへし折ってもいいかもな。


「…それでお前に伝えないといけないことを渡す」

「渡す」

「これだ」


するとヴァルティさんからUSBメモリーを手渡される。


「言っておくがこれは誰にも共有するな、お前だけ知っていろ。いいな?」

「はい」

「仮に共有すれば…俺が死に物狂いで手に入れた情報がパーになる。肝に命じろよ…くっ、もうか…!?」


ヴァルティさんはそのUSBメモリーに入っている情報の共有を禁じると頭を抑え、苦しそうに悶える。


「頼むぞ…」


そう言い残し、またヴァルティさんはぐでっと意識がなくなるかのように全体重を俺に預けてくる。

きちんと抱き留めて、軽く肩を揺さぶる。


「大丈夫ですか?」

「…んん…あぁ、鴉羽君。ごめんなさい、最近疲れてきちゃったのか倒れることが増えちゃって」

「本当に大丈夫ですかそれ…保健室に」

「いいえ、大丈夫です。それより行きましょう?」

「…」


俺はしれっと受け取ったUSBメモリーを懐にしまい、アウローラさんを立ち上がらせる。


「わかりました」


ーーー


そうしてアウローラさんと共に生徒会室につき、扉を開けると既に八神さんとソフィー生徒会長。

そして


「待っていたぞ」

「東雲学園長?」


東雲学園長も居た。

てか、三人の前に大量の書類と様々な写真やらなんやらが記された物がある。

全部、報告書か…?


「すまんな、学園祭も終わったのは良いが…今回の件は例年にもない例だと」

「…えぇ、流石に明日の学園祭の再開の難しいですわ」

「ですよね」


俺の立場からすれば明日の学園祭は中止にすべきだと思う。

外部からの侵入者、来賓の中に悪意があった者、そして殺傷事件。

俺は…殺傷事件の三人の事は知っているが口外すべきではないと思っている。

まぁ言った所でそもそも信じられるかどうかって話だが。


「鴉羽よ…アリスはどうした?」

「トラウマが蘇ったせいか、肉体の防衛反応で発熱状態に…」

「…そうか、すまない」

「何故学園長が謝罪を…どう考えたって悪いのはあの白衣の連中です」

「いや、謝る理由があるんだ。学園の長として」


そういいながら東雲学園長は立ち上がり、俺にボイスレコーダーを手渡してきた。


「これは?」

「前の大和田という女性を覚えているか」

「大和田…あのテレビ局の?」

「あぁ、アイツがこちらにまた新しい情報を寄こしてくれた。何でテレビの取材陣の一人があそこまでの情報通なのかは分からないが…ひとまず聞いてくれ」


東雲学園長に言われるがままにボイスレコーダーに入っている音声データを再生する。

普通に音声が鳴り響き、三人ほどの会話が聞こえてくる。


『こいつ等か?』

『あぁ、この五人を通してくれ』

『悪いがそれ相応の立場を』

『勿論タダでとは言わん。これでどうだ?』

『ほぉ…いいだろう』

『助かる。では後ほど…』


そこで会話は途切れた。


「…ウチに裏切り者が出た。勿論、賄賂を受け取った者や関係者は諸々は既に捕まっている」

「…」

「故に今回の件は学園の責任だ。長として謝罪を」

「受ける気はないです」

「鴉羽…?」


俺は頭を下げようとする東雲学園長の肩を掴む。

確かに長としての責任はあるだろう。俺も怒りがないのかと言われれば、嘘になる。

十分、不満は感じた。

だが、この場で学園長に不満をぶつけたところで今の状態が好転するわけじゃない。

俺が願うのは


「悪いのはそれを指示した人間と賄賂風情に靡いた奴です。そいつら以外からの謝罪は一切受けません。ですが、東雲学園長に一言いうのであれば…もうこんなことを起こさないようにしてください」


改善だ。

今回の件でアリスは確かに傷ついた。俺だって理解してる。

だからこそ、二度目を作るなと釘をさす。


「…わかった、約束しよう」

「それでいいです」


そうして東雲学園長は対策してくれることを約束し、俺とアウローラさんは開いている席に座る。


「それでは…鴉羽零亜、話してくれますね」

「アリスの事ですよね」

「えぇ。あの科学者たちが言ったことが真実なのか、それと貴方が知るアリスちゃんの情報を全て」

「わかりました」


そうして俺は俺が知る限りのアリスの事を話した。

施設の事、アリスの生まれ、どのような事をされたのかを何もかも話した。

俺がアリスの事を話すたびにソフィー生徒会長や八神さんもアウローラさんも初めは驚きの表情だったが徐々に曇っていく。

無理もないだろう。


「――これが俺の知る限りの『アリス』です」


全ての情報を話した後には静寂で重々しい空気が漂っていた。

俺だって初めてアリスの事を真の意味で知った時、こうなったしな。


「…なぁ鴉羽」


ふと、八神さんが俺に声を掛けてきた。


「お前はアリスがオールイーターだと知った時、どう思った…」

「はっきり言いますが…最初は信じられませんでした。あんな子供がオールイーターだとは思えなかったので」

「…アリスを…殺そうとは」

「それは全くですね。俺にはあんな何も知らない少女を倒す気にも殺す気にもなれず…俺の中で燻ぶったのはアリスを創り、その命を汚し、あまつさえ良いように扱った科学者共を許せないと思いました」

「だろうな、私だってそうだ。もしあの時に戻れるのなら白衣の連中の顔面に拳と叩き込みたい」

「それは私も」

「アウローラさん…」


それに賛同するかのようにアウローラさんも声を出す。


「これは…あまりにも酷すぎます。命を粗末に扱う行為も、人類に仇成すとする行為も許されない行為です」


アウローラさんも明らかに怒りに震えている。


「ソフィー生徒会長は…どうお考えですか」


怒りに震えながらもアウローラさんはソフィー生徒会長に問う。


「…私たちの意識を少し鞍替えしないといけませんわね」

「ソフィー生徒会長?」

「私たちARMOR’s、そしてナンバーズに取ってオールイーターとは敵であり、滅ぼさなければいけない存在」

「!」

「例外はないと思っていましたが、アリスちゃんは別ですわ。敵対意識もないのは分かっていますし、何よりも倒すべきではないと考えられる証拠がありますから」


そう言いながらソフィー生徒会長は俺を見る。


「ん?あー…そういうことか」

「ですね」

「?」


何で三人共、俺を見るのかと疑問に思うがすぐさま答えが飛んできた。


「アリスと共にいる貴方が無事である時点で喰らう生命体ではないと確信できますわ。鴉羽零亜、確認ですが今日までアリスちゃんに肉体を食べられたり敵対する意識もなかった、そうですわね?」

「はい、それは嘘偽りないです」

「それだけで十分です」

「俺の言葉を信じてくれるって…ことですか」

「前にも言いましたが、信じる物は私自身で判断しますの」

「こっちも同意見だ」

「私もです」

「ありがとうございます…!」


ナンバーズである三人もアリスの事を信じてくれたようだ。

俺が無事で居たからこそ、アリスに危険性は無いという立証が出来たのだろう。

それよりも信じてくれた三人に心から感謝を告げる。


「…しかし、問題が増えたのも事実ですね」

「あぁ、本格的に人との戦いも考えないとな」

「…いつになったら私のロビンフッドは返ってきますの」

「まだオーバーホール改装中なんですか?」

「そうですわ…全く、こんなことになるのなら鴉羽零亜にオーバーホール改修の事を勉強させてからでも遅くはならなかったでしょうに…!」

「本人が目の前にいるんですがそれは…」

「ま、整備科の星だからなお前は」

「ある意味、ARMORの事に関しては鴉羽君もそうですし、鴉羽君の専用整備士である西園寺君もAT学園の中で誰よりも詳しいですから」


アウローラさんに言われた通り、俺と明楽は誰よりもARMORについて詳しいと言えるだろう。その分の勉強をしてきたからな。


「鴉羽零亜」

「はい?」

「今からでも遅くありませんわ。オーバーホール改修について勉強しませんこと?」

「俺をどうしたいんですか…」

誤字脱字、語彙力がほぼ皆無に等しいのでミス等がありましたらご報告お願いします


感想も待っていますので気軽にどうぞ!


超絶不定期更新ですがご了承ください…

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