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第52話 4年の月日を経て【黒い嵐】顕現す

出現した蛇のようなオールイーター。

八神、アウローラを筆頭に3年生のARMOR’sが出撃し、同時に国のARMOR’sも迎撃に当たっていた。

大量のARMORが蛇を攻撃しているのだが…。


「これだけの数が居れば…何とかなると思っていたのに…!」

『大きすぎる…!』


目の前にいる蛇のオールイーターの体格は、前の戦闘で戦ったムカデの約2倍程度。

尻尾を薙ぎ払うだけで周囲の建物や地面が抉れ、ARMORが吹き飛ぶ。

同時に傷を負わせているのにもかかわらず、ダメージになっている気がしていない。


「くっ…!」


アウローラはコックピット内のモニター越しに蛇を睨む。


【シュルル…】


蛇もまたARMOR達を睨み、身体をうねらせながら口を開き、突撃してくる。


『全員!回避しろ!!』


八神の声に反応したARMOR’s達は、蛇の進行方向から外れ、ジェットで空中へ逃げる。

しかし、蛇も一筋縄ではいかない。


「!!?」


身体を大きく上に伸ばし、上に飛んだARMOR以上の位置まで口を上げたのちに、口を開きながら下へと落とす。


『上だ!避けろぉぉぉぉぉ!!』


誰かがそう叫んだ。

全員が避けた。

避けた…つもりだった。


「あっ!?」


反応に間に合わなかった、ARMORが一機。

蛇に咥えられてしまった。


「シールドビット射出…!」


それを確認したアウローラはすぐさまシールドビットを展開し、蛇の顎を狙って射出すると同時にブレードを構えて、突撃する。

しかし、射出したシールドビットは蛇の顎に突き刺さらず、弾かれる。

蛇は接近してきているヴィオーラの事も気にせず、咥えたARMORを上に放り投げる。

そしてそのまま口を大きく広げて下で待っている。


「今、助け」


今、一番蛇に接近していたアウローラは気絶しているであろう上に放り投げられたARMORを助けようとヴィオーラは上へと飛ぶ。

しかし


『行くなアウローラ!!それは罠だ!!』

「!!?」


それは罠だった。

気が付いたときにはもう遅かった。

蛇は口を広げて獲物が降ってくるのを待っていた?

否、降ってくる獲物を助けに来る獲物が居ると理解したうえで口を広げていた。

そして獲物が二匹に増えた瞬間、蛇は口を大きく広げながら身体を伸ばしてアウローラ諸共、喰らおうとした。


「う…そ」


徐々に蛇の口が近づいてくるモニターの画面を見て、絶望したアウローラ。

次の瞬間


――ビュオォォォォォォォォツ!!


「っ!!!?」


その場にいるパイロット及び蛇のオールイーターは動きを止められる。

とてつもない風の轟音が鳴り響くと共に身の毛がよだち、冷や汗が噴き出すほどの圧力を放出する何か。

アウローラは恐る恐るその方向を見る。

そこにあったのは…。


「黒い…嵐…!?」


真っ黒で巨大な竜巻だった。

黒い粒子が竜巻を作り出すかのように渦を巻き、周囲の建物を削り取りながら巻き上がっている。

やがて、黒い嵐が止むと同時に。

最凶最悪のオールイーターが、両翼を広げて…空中に顕現した。


【―――。】


全身が黒曜石のような真っ黒で光沢を帯びた鱗を覆い、鎖で巻きつかれたかのような強靭な前脚と後脚、両翼を大きく広げ翼を見せる。

両目は深紅に染まり…口元も鎖で巻かれていて開かなくなっているが、その隙間からは赤い粒子が出ていた。

言わずもがな…それは【黒龍】その物だった。


『嘘…だろ…』


八神を含め、他のARMOR’sは絶望していた。

蛇以上の存在がこのタイミングで顕現した。

しかも、フェンリルという個体に対してARMORの性能の差で負けている状態で…それ以上の存在に勝てるわけがない。

各々が絶望し、覇気に負け、ここで終わりなのだと理解した。


【―――!!】


黒龍は両翼を広げ、ARMOR’s達を目指して突撃していく。


『く、来る』


反応し、避けるよりも先に黒龍はARMOR’sの元についた。

各々が終わりを察したのだが…。


――ドゴォォォッ!!


「…え?」


黒龍はARMORの軍勢を無視し、喰われかけたアウローラとARMORも無視して…巨大な蛇の頭に前脚を叩きつけて、地面に押し付ける。


【シャァァッ…!!?シャアァァァァァ!!】


押し付けられた蛇は何とか黒龍から逃げようと、身体をうねらせ周囲の建物を倒壊させながら暴れ回るが…ビクともしていない。

それどころか


【―――!!】


黒龍は翼を横に薙ぎ払う。

ただ翼を薙ぎ払っただけなのに、蛇の胴体は断面が綺麗に見えるほど真っ二つに斬れた。


【シャアアァァァァァァァ!!?!?】


蛇は断末魔のような叫び声を上げる。

その光景を見たARMOR’s達は…疑問しか湧かなかった。

奇跡的に助かったアウローラはARMORをキャッチし、付近の物陰に潜み、黒龍の様子を伺う。


(何故私たちを狙わない…!?)


本来、オールイーターは人間や建造物を喰らう。

オールイーター同士で戦うことは現時点でありえない。

ありえないはずなのに、黒い嵐の元凶である黒龍は蛇のようなオールイーターに襲い掛かり一方的に蹂躙している。


『こちらAT学園、学園長の東雲だ。とてつもないオールイーターの反応をキャッチしたが…何があった』

「…東雲学園長。黒龍です、黒い嵐と共に黒龍が姿を現しました」

『何だと!?』


東雲学園長からの連絡を受け取り、アウローラがすぐさま答える。

4年越しに起きた黒い嵐。

そして黒龍の顕現。

起きたことをありのままに全て伝える。


『何故黒龍が…いやそれもそうだが、オールイーター同士で戦うなんて初めて見る…』

「如何なさいますか」

『…黒龍との戦闘は許可できない。それはお国のARMOR’sも同じことだと思うがな。アレを倒すときは…私たちが本気で戦える時でなければな』

「わかりました」


東雲学園長の判断はもっともだった。

今、このタイミングで元凶である黒龍を討伐できれば何らかの影響が起きるのは事実。

しかし、討伐はできないと確信できるほどの圧倒的な個の暴力。

何十機ものARMORが協力しても倒すに至らなかった大蛇を一方的に蹂躙する黒龍。

今の戦力では通用しない。それどころか刺激を与えたことにより黒龍が前の惨劇と同等の被害を出す可能性もある。

そうなれば、黒龍に手を出すタイミングは…絶対に殺り切れる時以外ない。


『AT学園全ARMOR’sに通達。至急、戦闘区域から撤退せよ。黒龍の出現となれば撤退せざる負えない。前の惨劇を繰り返さない為にも今は撤退だ。黒龍に刺激を与えるな』


東雲学園長はAT学園の出撃したナンバーズを含めた全ARMOR’sの撤退を命じた。

それを聞いたアウローラや八神も、他の3年生全員が黒龍と大蛇の戦闘に巻き込まれないように逃げる。

しかし


『…む』


東雲学園長が何かに気が付いたようだ。


『AT学園ARMOR’s、少し待機してくれ』

「東雲学園長?」


東雲学園長は何かに気が付いたのか、急にARMOR’sに待機命令を下す。

意味が分からなかったがアウローラ達は出来る限り黒龍達から離れたのでその場でとどまる。


『どういうつもりなんだ…?』

「分からない」

『…それにしても何でこのタイミングで黒龍が?』


アウローラは通信で八神とお互いの意見を交わす。

何故、今黒龍が顕現したのか。

4年の月日を経て、なぜ今日という日に目覚めたのか。


『馬鹿どもが…全ARMOR’sに通達。お国の方のARMOR’sの数名が命令違反を犯している。黒龍を倒さんと射撃を開始しようとしている』

「!!」

『下手をすれば、前の惨劇を起こしかねない。今、あっちのARMOR’sが対応中だが…可能性として今日をあの黒龍の命日にするかもしれない。どう転ぶかわからないが全ARMOR’sは武装を構え、待機だ…以上』


どうやら国のARMOR’sの数名が撤退命令を無視して戦闘を継続しようとしているらしい。


『…仇、だろうな』

「…えぇ」


八神とアウローラは命令違反を起こした理由に心当たりがあった。

〈仇討ち〉。

場所も、人も、何もかもを奪い去ったオールイーターという存在の元凶とも言われている黒龍が顕現したのだ。

嫌でも…倒したいだろう。

だが、今の行為がどれだけの影響を与えるのか分からない。

最悪、前以上の惨劇が起きる可能性も考慮し…可能性として、今この場所、この時を持って…黒龍を討伐するかもしれない。


「でも…勝てる気がしない」

『私も同じ気持ちだ。蛇を殺せなかった私たちに力の差を見せつけているんだからな。あの黒龍は…』


AT学園ARMOR’sが見る先。

そこには蛇をズタズタに切り刻み、一方的に蹂躙している黒龍の姿が。

蛇の攻撃は黒龍に通用していない。

体当たりも、噛みつきも、何一つとして通用していない。

すると


【シュルララ…!】

『ん?』


蛇の動きが変わった。

突如、身体をうねらせながら距離を取り始める。

そして口を大きく開き始めた。


「何を…」


そうアウローラが認識した時だった。


【シャァァァッ!!!】


蛇は口を開き、風を吸い込んでいく。

そして


――ドォォォォォン!!!


蛇の口から超巨大な風圧を放ったかのような空気弾が黒龍目掛けて放たれた。

いわば、音の大砲。何故そんなものが放てるのかと思ったアウローラだったが


(大型のオールイーター…もしかして)


アウローラの今までの戦闘の経験や情報交換の中で、大型のオールイーターには、〈特殊能力〉のようなものがあったことを思い出す。

前の大型のオールイーターについての話でムカデや蟷螂には他のオールイーターとは違った能力が有った事を思い出すと同時に、蛇の能力は音か風を放つ能力ではないのかと予想する。

だが、蛇がそのような能力を持っていたとしても


【―――。】

【スギャァッ!?】


それは黒龍には無力だった。

衝撃波は確かに黒龍に当たった。

当たったにもかかわらず、黒龍の鱗には傷1つない。

周囲の建物の状況を見れば、どれほどの威力なのかは想像に容易い。

ビルを一撃で削り、地面のコンクリートを抉り取り、更には黒龍を討とうとしていたARMORを直撃ではないのにも関わらず吹き飛ばすほどの威力。

そんな一撃にびくともせず、黒龍は蛇の上顎と下顎を前腕で掴み、空へと持ち上げる。


「あんな巨体を…!?」


あの巨大な蛇が空へと持ち上がっていく。

上へと上がっていく中で蛇は身体をうねらせ、暴れ続けるが…全く意味がない。

そうして…諦めたのか蛇はだらんと動かなくなる。

それを見た黒龍は口を蛇に向かわせるが…。


【―――!!】


首を横に振る。


『た、食べる気なのか?だがあの口だと食えないんじゃ…?』

「えぇ…口は鎖で覆われてるし、口が開かない。多分、首を振ったのって食べられないから…?」

『可能性としてはあるが…何よりも謎なのは何でオールイーターがオールイーターを食う?』


八神の指摘はもっともだった。

オールイーターがオールイーターを喰らう事象は今までにはなかった。

にもかかわらず、明らかに黒龍は蛇を喰らおうとしていた。

食べようとしても口が開かないせいで、首を横に振った…そう予想した八神。


【―――…】


すると、黒龍が掴んでいる蛇から粒子が飛び出す。

よく見ると蛇の身体が尻尾の方から塵となって消えていき、その塵が粒子となって黒龍に集まっていく。

何が起きているのか理解できぬまま、その場にいたARMOR’s達は蛇が…天で黒龍に吸収されていく様を見届けた。


【――ァァ――ヵァァ――】


無理やり口を開こうとしているのか、口の隙間から粒子が溢れ出す。

そこに…一発の砲撃が着弾する。


『やっぱり撃ったか…!』


国のARMOR’sの射撃が黒龍に着弾し、爆煙が巻き上がる。


【――ァァァ――…!】


爆煙が翼で振り払われ、黒龍が再度姿を現した。

砲撃をくらってもなお、傷1つもつかない。

…撃ってきたARMORをロックオンしたのか、黒龍は右前腕の手のひらを向ける。

向けた手のひらの周囲に風が集まっていく。


「アレは…!」


明らかに先程の蛇がやった空気弾のような動きをしている。


『蛇がやってた…待てよ、あの威力があそこに放たれるってことは…!?』

『全員!退避ッ!!』


嫌な予感を感じ取った八神と東雲学園長の退避しろという叫びに全員が一気に、戦闘区域外に逃げていく。

そして


――ドォォォォォォォォォンッ!!!


先程の蛇以上の音の大砲が放たれ、着弾し…周囲の建物、瓦礫、地面が華を開くようにクレーターが出来上がった。


『マジか…』

「あんな力…」


圧倒的な個の力。

一騎当千、百戦錬磨。

勝てるというビジョンが少しも見えない彼女たちにとって黒龍という存在がどれほどのとてつもない存在なのかを再度認識した瞬間。


――ビュオォォォォォォッ!!


黒い嵐が巻き上がり…黒龍は一瞬のうちに姿を消した。


『…AT学園全ARMOR’s、撤退せよ。これ以上、この場所で出来ることもない。今は早く学園に戻ってきて身体を休めろ。いいな』


ーーー


「ん…?」


目を開ける。


「んんー!!」


身体を起こし、ぐーっと伸ばす。

腕には点滴と俺の身体に抱き付いているアリス。

首を軽く回すとゴキゴキと骨が鳴る音がする。

ふぅ…点滴の影響か、身体が満ち満ちている。

前の空腹感は全くない。


「ふぅ…」


息を吐き、天井を見上げる。

無機質な天井だ。

すると


――コツ…コツ…。


(?)


足音が聞こえてくる。

一人…か?

俺が居る医務室の前を通過するのか分からないが二人分の足音が近づいてきてるのが分かる。


(何で急に耳が良くなった…?)


なんて思いつつ、聞こえてくる足音に耳を澄ませると俺がいる医務室の前で止まり、コンコンと扉のノックオンが聞こえてくる。


『ソフィー・ハントです。鴉羽零亜、起きましたか?』

「はーい」

『起きましたのね。失礼しますわ』


扉が開き、ソフィーさんが入ってくる。

さっきの足音はソフィー生徒会長の物だったのか。


「目が覚めたようで何よりですわ」

「俺は眠ってたんですか」

「えぇ、丸一日経っています」

「丸一日…」


一日中寝てたのか俺…。


「身体の調子はいかがですか?」

「元気ですね。今すぐでも動けると思いますよ」

「であれば、今日はしっかり休み明日に備えてください」

「学園祭前日ですもんね」

「えぇ、それと無理はしないように。アリスちゃんやクラスの皆様も心配しますから」

「ぜ、善処します」

 

と若干の心配を身体で受けたのち、ソフィー生徒会長はベッドで寝ている俺の横に座った。

先程から気になっていたが少し様子がおかしい気がする。

何というか、少し上の空っていうか。


「…鴉羽零亜」

「は、はい」


考えていたらソフィー生徒会長が先に口を開く。


「八神とアウローラは今日、緊急で出撃しました」

「オールイーターですか?」

「えぇ、そこは良かったのです。無事に帰ってきましたが…新しい問題、しかもとてつもなく大きな問題が発生しました」

「大きな問題…っていうのは」

「…黒い嵐」

「!!?」

「4年の月日を経て、黒い嵐が再度発生し…黒龍が現れました」

誤字脱字、語彙力がほぼ皆無に等しいのでミス等がありましたらご報告お願いします


感想も待っていますので気軽にどうぞ!


超絶不定期更新ですがご了承ください…

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