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第51話 戻り行く機体


アレから、4時間くらいたった。

結論として俺はまだコックピットの中にいる。

珊瑚さんも既に自室に戻っていて、俺は今は一人だ。


「まだダメか。ファフニール」


…ダメか。

未だに俺の四肢はコックピットと融合されていると思う。

今も視界は真っ暗のままで何も見えないから情報も何もない。

現状、得られている情報としては…今、俺とファフニールが居るのはAT学園の前橋ではなく、整備科の格納庫って事くらいか。

動かせはするんだよな。パイロットが動けないだけで。


「どうすっかな…」


俺が出来るのはコックピットに座って、ぼーっとするしかない。


「はぁ…」


と一人でため息をついていると。


「…ん?」


ファフニールが話しかけてくる。

…どうやら今回の件に関して俺に話したいことがあるようだ。

とりあえず、俺はファフニールの言葉に耳を傾ける。

今回の戦いを経て、俺に話したいこと。

それは…このファフニールの『ドラゴンスローンシステム』についてだそうだ。

ファフニールのドラゴンスローンシステム…正式名称は『ドラゴンスローンシステム:Re.BOOT』というらしい。

通常のドラゴンスローンシステム同様、パイロットと人間を繋げるシステムでありながら他の効果として『パイロットの力の抑制』と『パイロットと通じた危機管理』がある。

未だにパイロットの力の抑制の意味が分からないが…今回の話としてはそこに問題があるようだ。


「…」


…ファフニール曰く、『パイロットの力の抑制』をする理由を話したいそうだ。

まぁ何の疑問とか質問もないし、普通に聞く。

ドラゴンスローンシステム:Re.BOOTは『元に戻す』という力が備わっている。

つまり…どういうことだ?

疑問に思うが『元に戻す』という効果には心当たりはある。

俺の記憶やファフニールの機体は言われた通り戻ってきてはいるが、それが何で抑制する理由に繋がっているんだ?


「…抑制をしなければ、とんでもないことになる?」


ファフニールは『抑制をしなければとんでもないことになる、まだその時ではない』と告げてくる。

より意味が分からなくなってきたんだが…。

そして、その抑制に問題が発生した。

それが今の俺の状態だそうだ。

コックピットと融合している事と…一瞬の意識が刈り取られたタイミングで起きたことに関係するらしい。


「今回の話はややこしいな…」


ファフニールにしては話がややこしい。

何か言えない事があって、いい感じにぼかされているような感じがする。

…すみません、か。別にいい。

嫌味を言っているわけじゃないが、今更だ。

とりあえず、他の禁忌機体と違ってファフニールのドラゴンスローンシステムは別物で、効果の一つであるパイロットの力の抑制に何らかの異常が発生した。

その結果、俺はコックピットと融合したって事だ。


「自分で整理してきちんと言葉に出したけど、意味が分からない…」


と暗闇の中で一人で項垂れていると


「お兄ちゃん?」

「えっ!?」


急に聞こえるはずがない声が聞こえてきて身体が反応する。


「あ、アリス…?居るのか」

「うん、お兄ちゃんの目の前にいるけど…見えないの?」

「あ、あぁ…というかどうやってここに来たんだ?」

「私だ」


もう一人、声を聴く。


「東雲学園長…ですか?」

「あぁ、その通りだ」

「何故…」

「何故も何もアリスが泣きながらお兄ちゃんが帰ってこないとソフィーや愛染に報告して、その報告が私の耳に入った。ただそれだけだ」

「そ、そうですか…」


完全に忘れてたけど…今、俺は全く動けない。

動けないとなるとアリスの元へ行くこともできないという事だ。

そりゃ…泣くよな。


「ごめん…アリス」

「大丈夫…それで、お兄ちゃんは今動けないの?」

「あぁ…ピクリとも動けない」

「ちょっと待ってて」


とアリスは言い、一瞬理解できなかったがその間に。


――パキンッ!!


「は!?」


突然、俺を縛り付けていた黒い結晶が砕け散った。


「なん…何で…!?」

「わたしの能力で治したの」

「治した?」


アリスの能力は治癒能力。

けど、何で治癒能力で黒い結晶を剥がせるんだ…?


「ふぅむ…?」


東雲学園長も俺と同じように疑問に思う点があるようだ。

しかし…解放されただけマシか。

そう思い、コックピットから立ち上がろうとしたら


「あ…?」

「お兄ちゃん!?」


俺の両足に力が入らなかった。

全身に力が入らない?というか、お腹が空いてる…?

しかし、食事を求めているような空腹じゃないはずなんだが…謎の空腹感がある。


「どうした?」

「凄い…腹が減ってるというか…?」

「なるほど…とりあえずどちらにせよ、医務室に直行だ。アリスも共に付いていくといい」

「はーい!」


そうして俺は医療班に担架に乗せられて、医務室に連れていかれる。

その間も俺の身体は力が入らず、同時に物凄く空腹状態に苛まれていた。


ーーー


「飢餓状態の可能性が高いですね」

「飢餓状態ですか?」

「ですが、食欲が無いんですよね?」

「はい…」

「そうですね…それと血液検査の結果なのですが、確かに栄養失調になっております。本日は点滴を付けますので今夜はゆっくりとお休みください」

「わかりました」


診断結果としては飢餓状態の栄養失調、ただし食欲があるわけではない…と矛盾だらけの結果となった。

よく分からないまま、俺は医務室のベッドの上で悩みこんでいた。


(今回のこれはS/Overlordの反動ではない。明らかに何か別のが起きてる)


今までに無いパターンだ。

まだファフニールの知らない機能があるのかと頭の中で考えていると


――ボフッ。


「ん?」


ベッドに飛び込んでくる音が鳴り、その方向を見ると…アリスが俺の横で寝ており、俺の身体にしがみついてきた。

飛び込んできたのは十中八九、アリスだろう。


「アリス?」

「…ぐすっ」

「ごめんな。帰るのが遅くなって…」


アリスからすすり泣く音が聞こえた瞬間、罪悪感を感じつつアリスの頭を優しく撫でる。

コックピットと融合して動けなくなったとは言え、アリスを置いていったのは変えようもない事実だ。

こればっかりは俺が悪い。


「ううん…だいじょうぶ…」

「アリスも強くなってるんだな」

「でも…しんぱいした」

「それは本当にごめん」


ぐうの音も出ない。


「あぁ、アリス…聞きたいことがあるんだが」


と、さっきの事について質問しようとしたが…一定のリズムで呼吸音が聞こえてくる。

いつの間にかアリスは寝てしまったようだ。

ある意味、俺が居て安心したから緊張の糸が切れたのかもしれない。


「ごめんよ、アリス」


またアリスの頭を優しく撫でてから俺は両目の瞼を閉じた。


ーーー


翌日。

学園祭二日前となり、いつも以上にナンバーズの面々や3年生のARMOR’sや警備員達はピリピリしていた。

外部の侵入者を赦さないのは絶対なのだが、いつも以上にピリピリしている理由としては今この場に来れない人間のせいでもある。


「まさか、鴉羽が動けないなんてな」

「昨日のあのファフニールといい、色々な事が起きましたし…」

「私たちはファフニールのシステムの反動を受ける鴉羽零亜を見たことがありますから、今回もその反動でしょう。とにかく私たちも出来ることをしますわ」


急展開。

なんと現在、鴉羽が目を覚まさなくなったのである。

アリスは未だに鴉羽の傍から離れず、一緒に寝ているが…問題なのが鴉羽が起きないという事実。

原因は、血液検査の診断結果である栄養失調について。

人間に必要な栄養として点滴を繋いでいたのだが…再度、血液検査を行っても栄養は回復しておらず、目を覚まさないという事態になってしまった。

つまり、単騎戦力最強の一角であり、唯一出現した狼こと識別名『フェンリル』に対抗できるファフニールと鴉羽が動けないという事である。

そしてもう一つ。


「…」

「ソフィー、焦る気持ちもわかるが…」

「えぇ…分かっておりますわ」


生徒会長であるソフィー・ハントも動けないのである。

何故なのか。

昨日の戦闘で出現したフェンリル。アレはパイロットの腕だけでは埋められない差が明確にあった。

その差を埋めるためには専用機のARMORの改修や出力の調整といった、機体を改修し差を無理やり埋めるしかない。

現在はソフィーの専用機である、ロビンフットの改修が始まっている。

なお、それに伴いロビンフットは出撃不可。同時にロビンフットのパイロットであるソフィー・ハントも出撃できない。

この時点でナンバーズの4角のうち、2角が動けなくなってしまっている。

かなりとんでもない事態だ。


「その分、三年生の方々と警備員の人たちがいつも以上に警戒していますからね」

「…今回ばかりは面倒事は勘弁してほしいな」


そう思っていた三人と他のARMOR’s達。

しかし


――ビーッ!ビーッ!!


「!?」

「はぁ!?」

「…くっ!」


無情にも警報が鳴り響く。

しかも


『緊急通達!該当箇所に獣のようなオールイーターが出現!』

「こんな時に…!!」


獣のようなオールイーターが出現したとのこと。

ナンバーズの面々に現地のレーダーやカメラが捉えたオールイーターの写真が送られてくる。

獣という時点でフェンリルの可能性があったが、どうやら違うようだ。

そのオールイーターはまるで蛇のようなモノだった。


「…!」


すぐさま、ソフィーを含めたナンバーズが出撃しようとしたが…ソフィーは自分が出撃出来ないことに気が付き、足を止める。


「ソフィー…」

「…っ!」

「ソフィー、今は我慢していてくれ。それと私たちは絶対に帰ってくる。無事を祈っててくれ」

「…分かりましたわ」


ソフィーは八神とアウローラを見送る。

見送るしかなかった。

ソフィーは何故自分が動けないのか、何故自分が戦えないのかと。

今の自分の不幸を呪った。

しかし、八神は言ってくれた。

『祈っててくれ』と。

誤字脱字、語彙力がほぼ皆無に等しいのでミス等がありましたらご報告お願いします


感想も待っていますので気軽にどうぞ!


超絶不定期更新ですがご了承ください…

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