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第50話 得た力の振りかざし方

俺は…俺たちはとにかく暴れ回った。

更新してくるサクリファイスの大群を正面から迎え撃ち、的確に潰し…無力化していった。


「はぁっ!はぁっ!」


血と汗が滲む。もう何機倒したのか分からないし、あと何機居るかわからない。

今はただ、終わりを望んでいる。

S/Overlordの反動はいつもよりかはマシだが、マシなだけだ。

全然痛いし、辛い…!


「次は…次は…!」


と周囲を見回していると


「アレ…?」


周囲にはなにも居なかった。

サクリファイスの大群はなく、あるのは足元に転がる鉄屑のみ。


『零亜君!』

「珊瑚さん…敵は?」


珊瑚さんからの通信を聞き、敵はまだ居るのかを聞く。

すると


『全機、無力化の確認は終わったよ。あとは捕食領域から出てきたオールイーターの殲滅だけ』

「そ、そうか…」

『私、殆ど援護する必要なかったけど』


珊瑚さんが皮肉を言ったのか、文句を言ったのか分からなかったが…とりあえず謝っておこう。


「えっと、ごめん?」

『謝ってほしいわけじゃないよ!?ただ、凄いなって』

「凄い?」

『零亜君とファフニールの二人なら無敵でしょ?それなら禁忌機体を量産すればって思ったけど…そうとは言えないかもね』

「まぁな」


多分、珊瑚さんが禁忌機体の量産をよしとしない理由が分かったのだろう。

今の俺の姿を見て。


『何回も聞くけど、本当に大丈夫?見た限り、とても無事とは言えない姿だけど…』

「辛いは辛いが…まだいける」

『倒れないでよ?』


心配と確認の声を聴き、俺は即座に了承する。


「とにかく、向かうぞ…」


呼吸を整えてから、俺と珊瑚さんで捕食領域から出てきたオールイーターの殲滅に向かおうとしたが…。


『全ARMOR”sに通達する。捕食領域から出てきたオールイーターの殲滅及びサクリファイスの大群の無力化が完了したことを確認した。ミッションコンプリートだ』


どうやら捕食領域から出てきたオールイーターの殲滅が同時に終わったようだ。

流石、ソフィーさんをふくめたナンバーズの面々。


「はぁ…」


思い切り息を吐き、網膜投影を解除するとともにS/Overlordも解除する。

ファフニールの指示が無いとはいえ、反動に耐えるのは流石にキツかった…。


『終わったみたいだね』

「そうだな…」


作戦が終わったとはいえ、身体は悲鳴を上げている。

意識が持ってかれる前に出来る限りは応急手当てしておこう。

ファフニールのコックピットから応急キットを取り出して、出来る限り俺の身体に付いている傷を治す。

例え、治癒力が高くても治せる傷は治さないとな。


「ぐぅっ…ふぅ…!」


出血した傷を消毒液で消毒してからガーゼで止血。

染みる痛みが電撃のように襲い掛かってくるが、反動に比べたら全然マシだ。

ついでに水と一緒に即効性のある鎮痛剤も飲んで、出来る限り痛みをなくす。

あぁ…痛みが無くなっていく。

出来る限り薬には頼りたくなかったけど、やっぱり効果があるといいなって思う。


『こちらソフィーです。お二方、お疲れ様ですわ』

「そちらもお疲れ様です」


ソフィー生徒会長からの連絡。

何体のオールイーターが捕食領域から出てきたのか分からないが…多分激戦だっただろうなとは思う。

いつになったら捕食領域を無くせれるんだろうな。

まぁ…とにかく終わりだ。

早くアリスの元に帰らないと。

そう思い、操作レバーを握った。

次の瞬間


――キィィィン!!!


「がああぁぁぁぁぁぁっ!!?!?」


唐突にファフニールのS/Overlordが再起動されると同時に俺の身体中に巡る痛み。

今までの比にならないほどの激痛が全身に襲い掛かってくる。


(痛い痛い痛い!!)


身体中を搔きむしりたくなるほど、痛い。

けど…奇跡的に鎮痛剤を飲んでおいてよかった。

本当にギリギリだけど、意識を保ってられる…!!

それよりも、何が起きた!?


「ファフ…ニール!どうし…た…!!」


操作レバーを握りしめる両手が震え始めるが、今はファフニールの言葉に何とか耳を傾ける。


「…オールイーターが…超高速で迫ってきて…いる…?」


ファフニール曰く、オールイーターが超高速で迫ってきているとのこと。

何処からだ…!?


「そっち…か…!?」


網膜投影を再度開始し、ファフニールが指示した方向を見る。

そこには何もいないが、確かに何かが迫ってきているとのこと。

…あぁ信じている。それに俺も、何かが来てるって感じるんだ。

けど、何処から…?

なんて思っていたら


――バコォォォンッ!!


「下か!!?」


地面が割れ、姿を見せる。

それは…巨大な『狼』だった。


(アレって…!?)


過去の話を思い出す。

確かソフィー生徒会長が言っていたオールイーターだよな…そして、ソフィー生徒会長、八神さん、アウローラさんも感じ取った身をすくむほどのオーラ。

俺もそのオーラを感じ、ファフニールも理解した。

コイツは…別格だ!!


【ワウッ!!】

「ぐぅっ!!!?」


ファフニールがS/Overlordを起動してくれたお陰で、狼の噛みつきを両手のアームクローで受け止めることが出来たが…。


――ギ…ギギッ…!


(お、押されてる…!?)


正面からの鍔迫り合いでこちらが負けている。

少しずつ、後ろへと押されていく。


「くっ!!」


レッグのスラスターを噴射しつつ、何とか力で渡り合うが…このままじゃマズイ!

一旦、距離を取らないと…!


「ふん!!」


テイルブレードを狼に向けて放つと、狼は先に反応し俺たちから離れ、此方を見ながら威嚇してくる。


「はぁっ…はぁっ…!!」


鎮痛剤で抑えられてるとはいえ、痛みに悲鳴を上げる肉体。

同時にファフニールからの超高速演算によるとてつもない量の情報と指示。

今までとは比べ物にならない…!!


(クソ…何も聞こえねぇ…)


ずっと耳鳴りがしているせいで、他のARMOR”sが何をしているのか全く分からない。

撤退か、追撃か。

目視での情報が必要になるがコイツ相手に目線を逸らせば一撃で屠られる。

何せ、現段階のS/Overlordと殆ど対等…拮抗勝負を出来るほどに互角。

一瞬でも油断すれば、それで終い。


「ふぅっ…かぁぁぁ…!」


息を吐き、集中する。

あの狼の一挙手一投足を見逃すな。

何で死ぬかわからない…!


【ウォウッ!!】

(来た…!!)


狼は正面から走って来る。

俺は背面からライフルを構えて迎撃するが…。


――ドキュウゥゥゥゥン!!


【ワウッ!!】

「避けた…!?」


撃った瞬間、狼は左右に避け、また突っ込んでくる。

今まで、蟷螂とかムカデとか大きいオールイーターと戦ってきたが…コイツは別格すぎる。

今までと次元が違いすぎる…!!


「…!!」


ファフニールからの声。

どうやらナンバーズ以外のARMOR達は撤退を開始し、ナンバーズの三機含めコンダクターは残って狼の迎撃を狙っているそうだ。

しかし…ファフニールは無慈悲に告げる。

無駄だと。

このまま戦えばファフニールの大破は愚か、残りの4機は跡形もなく消えると。


(それほどのレベルの差が…!)


パイロットの腕以上に機体の数値で、オールイーターに立ち向かえるのはファフニールしかいない…とのこと。

腕で詰めれない差が明確にある…!!


(…撤退するしかないのは分かってる!けど、どうやって撤退する気だ!?)


ファフニールは俺と残りの機体全員の撤退が最善策だと告げる。

そんなことはわかってる。でも、どうやって逃げる!?

運動性能は高い…個体としても強い…!

逃げれる方法なんてどこにもないだろう…!


(何とかして逃がす為には…逃がすタメにハ…!)


少しずつ、少しずつ…俺の両足に力が入り始める。

やがて


――ピシッ。


何かにヒビが入る音を耳が拾った瞬間。

俺は…何かに飲み込まれた。


ーーー


『撤退できるか!?』

「多分、無理ですわ…いくらなんでも個体として強すぎます…!」

『零亜君…!』


東雲学園長とナンバーズに愛染はお互いに時間を稼ぎ、何とかしてファフニールと共に撤退するために策を練っていたが…不可能に近かった。

あの形態変化したファフニールと正面から渡り合えるほどの個体を前に逃げ切れるかどうかすら怪しい。

生半可な時間稼ぎは効果がない所か、下手をすればファフニールと鴉羽を犠牲にしてしまう可能性が高い。


(どうする…!)


東雲学園長も、ソフィーも、八神も、アウローラも、愛染も…どれだけ考えても機体の性能差を埋めるほどのいい作戦が思いつかなかった。

刻一刻と時間が経過していく。

すると


『ちょ、ちょっと待ってください!鴉羽君のバイタルサインに異常を検知!これは…

!?』


アウローラは鴉羽零亜のバイタルサインを確認し、見つける。

脈拍がとてつもなく早くなっている。


『いや脈拍もそうだが…ファフニールの様子が…!』


八神もファフニールを見て、気が付く。


――ギギャギャギャギャ!!


ファフニールの装甲から聞いたことが無い音が響き渡る。

黒と赤色の装甲を持つファフニールの黒い色の装甲から異音が響き渡り、やがて…装甲の隙間から黒色の粒子が外部へまき散らされる。


「なんですの…アレは」


まき散らされた黒い粒子はやがて、ファフニールの背面のスラスターに集まり始め、形状を作り始める。

作り出された形状は…『翼』。

四枚の巨大な翼が広がる。

黒色の粒子が吹き出し、赤色と黒色のエネルギーの翼膜。

それを確認した4機のARMORとパイロット。

しかし、一瞬にしてファフニールの姿が消えた。

そして


「――え」


ロビンフット、ヴィオーラ、紫苑、コンダクターが空に舞う。


『えっ!?えっ!!?』

『何が起きた!?』

『どうなってる!?』


4機のパイロットは混乱する。

何故、自分の機体は浮いているのか。何故、高速で動いているのか。

その疑問を感じ取っているうちに、気が付けば…。


「…は?」


4機と4人のパイロットの目には…見たことのある学園が下にあった。

言わずもがな、AT学園だった。

二分かかった片道は戻るまでわずか10秒もかからなかった。


「一体何が」


ソフィーは何が起きたのか分からないまま、後ろを見た。

そこには…。


「!!?」


ファフニール…のような機体が居た。

元のファフニールの機体の面影があるがそれ以上に変化している点が多かった。

顔のパーツは完全に変形し、完全にドラゴンのような頭となり口が開いていた。

それだけではなく、大きく広げられた4枚の翼に加え、元々の二本のアームだけではなく黒い結晶のようなもので構成された巨大な副腕が各々の機体を掴んでいた。

それをみたソフィーの感想は…。


(ARMOR…?)


ARMORとは思えない。

それだけだった。

そもそもARMORとは機械なのに、まるで生物のような部分がある。

特に翼と副腕は機械ではなく生命体の翼と腕。


『零亜君…?』


この最中、愛染は鴉羽に声をかける。

しかし、返答はナシ。

だがファフニールは4機のARMORを抱えながら地面へと下降していき、AT学園の前橋に着地すると同時に4機のARMORも地面に優しく降ろされた。


『お、おぉ…?』

『鴉羽君、意識があるの…?』


バイタルサインを確認すると脈拍、脳波も共に正常だが変わらず返答のみ無し。


『鴉羽零亜…?』


ソフィーはロビンフットを操作し、形状を変えたファフニールのコックピットに触れようとしたが、触れるより先にファフニールから出現した翼と腕が粒子化してファフニールの装甲の隙間の中へと戻っていく。


『――っはぁっ!?はぁっ!?はぁっ!?』

『零亜君!!』


腕と翼が消えた瞬間、鴉羽の声が通信から流れてくる。

声色的に今、目覚めたかのような感じだとソフィーは感じ取った。


「鴉羽零亜、何をしましたの?」

『わかりません…クソ…何だこれ…!?』

『どうした?』

『今、俺は何処にいるんです…?』

「何を言って…」

『この暗闇は何なんだ…ファフニール、答えてくれ』


様子のおかしい鴉羽の様態を感じ取り、愛染とコンダクターはファフニールの元に近づき、コンダクターのハッチを開いて、愛染はファフニールのハッチの強制解放レバーに手をかけて、下ろす。

プシューッと空気の抜ける音と共にコックピット内の状態が彼女たちの前に広がる。

そこには


「えっ!?」


顔、両手、両足が真っ黒の結晶に覆われており、コックピットと一体化したかのような鴉羽が座っていた。


「零亜君!?大丈夫なの…!?」

「その声、珊瑚さんか?今、俺はどうなってる」

「えーっと…顔と四肢が黒い結晶で覆われてる」

「結晶…なんだそれは」

「とにかく、脱出できない?」

「脱出したいんだが…!!」


その声と共に鴉羽はコックピットの上で悶える。


「ピクリとも…動けない…!!」


黒い結晶が砕けないのか、鴉羽はコックピットから降りることが出来なくなっている。

そして愛染に続き、ナンバーズの三人もファフニールのコックピットの中を覗き込みコックピットと融合した鴉羽を見ていた。


「どうなっているんですか、これ…」

「私にもさっぱりだ。鴉羽、ファフニールは何か言ってないのか?」

「…動かないでほしい、と」


鴉羽はファフニールに告げられたことを話す。

ファフニールは今の鴉羽に『動かないでほしい』とのこと。


「ファフニールが動かないでほしいと告げるという事はファフニールのシステムの影響で鴉羽零亜がこのような姿に?」

「わかりません…」


ソフィーは自分なりの考えを伝えるが、謎に包まれてるファフニールのパイロットである鴉羽も分からない。


「とにかく、今は鴉羽零亜は待機していてください。私たちは先に東雲学園長に今回の作戦の事を報告しましょう」

「えぇ」

「わかった」

「それと、愛染珊瑚」

「は、はい!」

「今は鴉羽零亜の傍に居ておいてくださいまし」

「わかりました」


そう言い残し、三人は学園内に機体と共に撤退していった。

その場に残った愛染は四肢が結晶のようなものに包まれている鴉羽の腕に手を添える。


「珊瑚さん、居るのか?」

「いるよ」

「すまん、何も見えなくて」

「謝らないでよ、別に零亜君が悪いわけじゃないんだし。むしろ感謝してるから」

「そうか…」


今もなお、動けぬ鴉羽を見ながら愛染はただ、立っていた。


「それで…何があったの?前の蟷螂の時に見たアレとは違う感じがしたんだけど…」

「それは俺も同じ意見なんだ」

「同じ意見って?」

「あの時に発動したのはS/Overlordっていうファフニールの専用アビリティ。ファフニールの本来の性能を出すとともにコックピットに滅茶滅茶負荷がかかるっていう奴」

「と、とんでもないね…」

「まぁそれは良いんだが…今回の事に関してはファフニールのシステムじゃない感じがするんだよな…」

「え?」


鴉羽は意味深な事を口にする。


「どういう…」

「言った通りなんだよ。ファフニールのシステムが動いたというより、別の何かが起きたとしか思えない。初めてのS/Overlordの時みたいに記憶が消し飛んでるのもそうなんだが、反動をまるで感じないのがわからないんだ」

「反動がないの?」

「あぁ、S/Overlordの反動は慣れたつもりだけど今回のはまた別の何かだと俺は思ってる」

「そうなんだ…でも零亜君が無事でよかったよ」

「こっちのセリフだ。ソフィー生徒会長や八神さんにアウローラさん。それに珊瑚も」

「…うん?」


その会話の違和感に気が付いた愛染。


「零亜君、今さ…私の事、呼び捨てで呼んだよね」

「え?呼んでたか今…すまん、無意識だった」

「もう一回」

「へ?」

「ワンモアプリーズ」

「何でそんな片言」

「いいから」

「…」

「言ってよぉぉ!」

「馬鹿、揺らすな!」

誤字脱字、語彙力がほぼ皆無に等しいのでミス等がありましたらご報告お願いします


感想も待っていますので気軽にどうぞ!


超絶不定期更新ですがご了承ください…

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