第48話 敵は移り変わり、生贄を知る
学園祭開催三日前。生徒、教師、警備員が忙しそうに動き回り、クラスメイトや他クラスの人たちは笑いながら作業をしている。
かという俺もクラスメイトと共に作業を…したかったんだがな。
「鴉羽、どうだ?」
「部品や物資の確認は完了しています。残りは警備含めナンバーズのARMORの整備の確認だけです」
「そうか、順調に進んできているな」
今は八神さんと一緒に学園内を回りつつ、警備体制、物資と部品の確認、警報の点検を行っている。チェックの項目を確認しつつ、今後の予定を頭の中で繰り返す。
項目の確認が全て終わり次第、次は学園周囲の警備に入る。
やはり…学園祭は回ることが出来ないかもしれない。
覚悟はしていたが…やることが多い…!
「やっぱり去年と同じくやることが多いな」
「去年?」
「あぁ、今の3年生の元生徒会長が主導でやっていたことの補佐をしていたんだが…これくらい忙しかったぞ」
「その生徒会長は…」
「…今はいない、それで察してくれるか」
「!!」
八神さんの言う通り、察した。
「すみません…」
「知らなかったのだろう?」
「は、はい」
「ならいいさ、とにかく仕事に戻ろう…あのアリスもお前と一緒に学園祭を回りたいだろうしな」
「ま、回れるんですか?」
「現状、3年生とナンバーズは交代交代で警備を行う。鴉羽が休憩をしているときはアリスと一緒に回るといい。というか回れ、あの子からお前を奪い取れば絶対に泣く」
「アリスを理解しているようで…」
「理解した、が正しいな」
とりあえず、現状のままで準備が進むとナンバーズで警備は2機ずつの交代交代で行う。
んで、休憩時間で回れるようになるからその時間でアリスと回ろう。
祭りを教えられるし、楽しい事を知れるはずだ。
まぁ、そのアリスは今はクラスで色々していると思うけど。
「そういえば、東雲学園長から聞いたが…あのサクリファイスとかいう禁忌機体なんだが鴉羽はどう見てるんだ?」
「どう見てる、ですか?」
「あぁ、実際に禁忌機体を乗りこなしている奴の意見を知りたくてな」
「うーん…」
あのサクリファイスのデータを思い出す。
正直…アレはARMORとは言えない。
まともにオールイーターと戦えないし、攻撃を受ければ一撃で破壊されるほど貧弱な装甲に内部機関。さらにはあまりにも古すぎるシステム。
ドラゴンスローンシステムは人機一体のようなものだが…動きずらいARMORならむしろ枷になるとは思う。
「戦えるような機体じゃないとは思います」
「お前も同じ感想か」
「八神さんも?」
「あぁ。脆い装甲、古いシステムに加え、老人がパイロットだ。それに禁忌機体に搭載されているドラゴンスローンシステム?の反動はお前で知っているしな」
「まぁ…はい」
反動に関しては、疑問の一つだった。
今まで戦ったサクリファイスのパイロットは基本的に老人で永眠しているか死にかけているかのどちらかだったが…出血の跡がなかったのは気になる。
やっぱりドラゴンスローンシステムが似ているだけだから反動が違うのか?と頭の中で思考する。
「オールイーターと戦っていたら今度は人か…色々と考えさせるな」
「愚かって言うべきなんでしょうかね」
「かもな。今こそ人間一人一人が手を取り合うべきなのに互いに足を引っ張る必要はないだろう」
「ですよね…」
「まぁ私たちは私たちで出来ることをとにかくやればいい。仕事に戻るぞ」
「了解です」
八神さんの言う通り、今は手を取り合うべきなんだ。
オールイーターの被害は世界各地で広がっている。勿論、俺たちの国もな。
未だにオールイーターに喰われた地区の奪還作戦は発令されていない。
というか発令できないが正しいか。
オールイーターに喰われた領域。別名で『捕食領域』と言われているんだが、そこの領域の奪還作戦は過去に行われている。
結果は…悲惨の一言だ。
つぎ込んだARMORは全て完膚なきまでに大破もしくは捕食され、帰ってきたパイロットもARMORも無い。
ただ、一つだけ帰ってきた『データ』があった。
それはパイロットの最後の言葉。
何でも捕食領域には数多のオールイーターと強力なオールイーターが居る。
これでは戦えない、勝てるわけがないと叫びながら…散っていった。
(俺とファフニールでも無理なのかな…)
なんて、一人で考えていた。
すると
「…ッ?」
頭痛。
ほんの一瞬の頭痛だが、感じると共にファフニールからの報告。
オールイーターが目覚めたな。
「どうした?」
「…オールイーターが目覚めたようです」
「あの時の頭痛か?」
「はい、同時にファフニールがオールイーターの目覚めと進行しているのを確認しました」
「わかった。そろそろ警報もなるだろうし、私たちで先に向かおう」
「了解です」
八神さんは俺の頭痛の事を知っている…というより知ってしまったが正しいか。
今までのオールイーターの目覚めや前兆には俺とファフニールがセンサーよりも先に反応する。
何の疑いもなく信じてくれるのはちょっと嬉しい、気がする。
そうして俺と八神さんは一度、仕事を止めて自分たちの機体がある格納庫へ向かう。
ただ、俺は整備科の方の格納庫だ。
前の単独出撃の整備がまだ終わり切っていない。
俺も明楽も自分のクラスの事で手いっぱいだったしな。
とは言いつつも、前の戦闘でそこまで傷は負っていないし、大丈夫だと思う。
そうして八神さんと別れたタイミングで
――ビーッ!ビーッ!ビーッ!
警報が鳴り響いた。
『緊急事態発令!捕食領域から小型オールイーターが大群で市街地に向けて進行中!パイロットは専用機に乗り込み出撃せよ!』
…ファフニールの言う通り、捕食領域から小型のオールイーターが出て来てそれが市街地に向かっている。
未だにオールイーターの行動理念が分からないが…とにかく、行こう。
市街地に被害なんて出たら目も当てられん!
『ソフィーハント、学園周囲の警備を他の2年生に任せ、該当箇所へ出撃しますわ』
『こちらも出撃します』
『了解、私と鴉羽もすぐに出撃する』
『わかりました』
そうしてナンバーズ間の通信は終了し、俺も整備科の格納庫についた。
もうファフニールは自分の意思で格納庫から出ており、レッグを折り曲げてハッチを開き、待機していた。
「早いな…よっと!」
俺はファフニールのレッグをよじ登り、コックピットに飛び込む。
「よし、行くぞ…ファフニール!」
そうして網膜投影を開始し、俺とファフニールはオールイーターの出現位置に向かって飛んでいく。
ーーー
砂埃を巻き上げ、住宅地と捕食領域の中間に着地する。
『来ましたわね、鴉羽零亜』
「今はどんな状況で?」
『アウローラ』
『はい。現時点の状況としては捕食領域から出てきたオールイーター達はこの住宅地を目指して進行中です。到着時刻としては…あと2分後にここに付きます』
あと2分か。
「ファフニール、何匹いる?」
…AT学園の前橋で戦った時と同等の数が居るのか。
『ファフニールはなんて?』
「AT学園、前橋で戦ったときと同じくらいの数が来ていると」
『あんな大群が来てるのか…』
『ですがこちらには鴉羽零亜も居ますし、もうすぐで3年生も到着しますわ』
『ですね、よほどのことがない限りは大丈夫かと』
AT学園の前橋での戦いは今でも忘れられない。
初めてのARMORの操作に加えて、オールイーターとの初めての戦闘…。
オールイーターと戦って血まみれになったあの時が懐かしいよ。
今でも血まみれになるけど…。
とにかく、あの時から成長したんだって所を見せてやるか。
(やるぞ、ファフニール…!)
そう思い、俺は網膜投影を再度開始しオールイーターの大群を待とうとした。
しかし
「…?」
ファフニールが俺に呼びかけ…見つけたことを俺に報告してくる。
その言葉を聞いて俺は
「はあっ!?」
声を荒げて、周囲にレーダーの範囲を広げる。
レーダーは範囲を広げすぎると燃料の消費が激しくなるが、一瞬くらいはいいだろ…!
『鴉羽君?どうしました?』
「…!!」
俺は見てしまった。ファフニールの言った通りだ。
これは、出撃している全員に報告すべき事象…!
俺は回線をナンバーズのみではなく、学園内のオープン回線に切り替える。
そして、見て知ったことを話した。
「こちらナンバーズ鴉羽零亜!ナンバーズ及び全ARMOR”sに報告!たった今、周囲をサーチした所…『住宅街の方から捕食領域目掛けて識別不明機』が高速で進行中!」
『何ですって!?』
「数は…全26機!」
ファフニールが感じ取ったこと、それは前に戦った識別不明機の大群が住宅街の方から捕食領域目掛けて進行中という事。
俺は信じられなかったが、サーチ範囲を広げたときに知った。
マジで、来てる…。
自分で言っといてなんだけど、とんでもねぇ数だな!?
26機のARMOR、しかも禁忌機体って…!
『こちら学園長の東雲。出撃済みの全ARMOR’sに伝達。ナンバーズは識別不明機の排除を優先せよ!後から到着するARMOR’sに小型の討伐を命じる!』
考えている間に東雲学園長が出撃しているARMOR”s達に命令を下した。
ナンバーズは識別不明機、後から来る3年のARMOR”sは小型のオールイーターの討伐が命じられた。
『26機の識別不明機か…!』
「嘘かと思いましたけど、本当にいます」
『えぇ…此方も確認しましたが、本当に26機居ますわ…』
『どうしますか?』
『全機の無力化を最優先!このままオールイーターとの戦闘になれば乱戦は避けられませんわ…とにかく数を減らします!』
『わかった!』
『わかりました!』
「了解です!」
そうしてナンバーズは捕食領域から住宅街の方へ向かって飛んでいく。
(何でこんなタイミングで…!)
心の中でタイミングが悪いことに文句を言いながら、レーダーで数を確認しながら向かう。
本当に26機もサクリファイスが居る。
ナンバーズで何機削れるかわからねぇぞ…!?
『サクリファイスを目視で確認!』
ソフィー生徒会長の声と共に俺も目視でサクリファイスを確認した。
真っ黒の鉄の塊の束がこっちに向かって進行してきている。
というかほぼ全スラスターを解放しているとしか思えないほどの速度だ。
あの速度は、パイロットが持たないぞと思ったが…中身を知っている俺は…何とも言えない気持ちになった。
そのままナンバーズ4機は地面に着地し、サクリファイスを迎え撃つ準備をした。
俺はレーザーライフルと大剣を構える。
『ナンバーズ、サクリファイスと接敵します!』
『こちら3年生のARMOR’sもオールイーターと接敵する!』
ナンバーズはサクリファイスと、3年生のARMOR”sはオールイーターとぶつかる。
俺たちナンバーズはソフィー生徒会長の声に従い、サクリファイスを目掛けて襲い掛かろうとした。
しかし
『…は?』
『何!?』
『何故私たちを…!?』
サクリファイスたちは俺たちなんて眼中にないと言わんばかりに無視し、26機の大群は武器を抜かずに、捕食領域を目指して進行していく。
「何故、攻撃してこない…!?」
意味が分からない。
今までの戦闘の経験ではアイツらは普通に襲ってきた。
それなのに、今回は俺たちを無視してオールイーターの住処である捕食領域を目指していっている。
『ソフィー、どうする?』
『…どうもこうも、あのサクリファイスが何をするか分からない以上変に手出しができませんわ』
『そう…ですよね』
3人とも混乱している。
俺もそうだ。
(俺たちに加勢するつもりか…?)
一瞬、加勢に来たのかと思ったが絶対にないと言い切れる。
今までの戦闘やサクリファイスの前に聞いたパイロットの目的を知る限りでは絶対にない。
絶対に、何かがあるはず。
(あのサクリファイスのパイロットの言った言葉の中に、何か目的があるのか…?)
サクリファイスのパイロットが言った言葉を思い出す。
その中に、目的があるはず…!
オールイーターの進化の使途と見なす黒龍教…解放される…
『初めは疑っていました。しかし、この管に繋がっている間は身体が自由に動くのです…ずっと動けなかった両腕両足が新しい腕や足に切り替わったように…!』
『そして、自由に動き回っている間に進化の使途に身を捧ぐ者や『敵』と戦う中で進化の使途を見つける者たちが現れ、進化した者や天に召されたものも現れ始めました』
『私は敵を見つけ、動こうとしたのですが…急に体が動かなくなり意識が朦朧としていました。しかし、その敵から進化の使途様が現れるとは…何たる幸運…!』
(――あっ!)
進化の使途に…身を捧ぐ者。そして『サクリファイス』という意味。
俺は…多分、理解した。
「ソフィー生徒会長、八神さん、アウローラさん…俺たちがすべきことが分かった気がします」
『鴉羽?』
「あのサクリファイス達。俺の予想通りであれば…オールイーターに『喰われ』に行きます」
『何ですって!?』
俺の言葉に驚くソフィー生徒会長。
それもそうだ。俺だってこの考えが生まれたときに一瞬、違うだろって否定したが…そうとしか思えない。
「前の俺とファフニールの単独作戦時に息があったサクリファイスのパイロットと会話が出来たんです。その中に進化の使途に身を捧ぐ者も居ると聞いて」
『進化の使途…確か黒龍教の教え?みたいなものですよね』
「はい…そして文字通り、進化の使途に身を捧ぐのであれば…!」
俺の言葉と意味を理解した瞬間
『ナンバーズ、今すぐにサクリファイスを止めますわ!このタイミングでオールイーターに喰われるARMORが増えるのなら!』
ソフィー生徒会長は声を荒げて俺たちに命じた。
そしてすぐさま俺たちはサクリファイスを止めにかかる。
むしろ止めにかからないといけない。
オールイーターに喰われたモノは全てオールイーターに還元されると同時に、人間が居ればそれを核にオールイーターの数が増える。
そのサクリファイスの中には老人がいるが、老若男女関係なくオールイーターは増殖するための核にする。
26機…言い方を変えるのなら『26人』の人間が一気にオールイーターになったとしたら?
しかも…今、3年生が大群とぶつかっているタイミングで更に数が増えたとしたら?
考えるだけで悍ましいことになること間違いない…!
「くっ!」
俺はサクリファイスの前に止まり、大剣を横に構えて4機のサクリファイスの進行を抑えるが、流石に…キツイか…!
こっちも禁忌機体とはいえ、4機のパワーを抑え込めるほどファフニールは万能じゃない。
「クソ!」
『鴉羽君!そのまま抑えてて!』
「!」
言われた通り抑えていると、アウローラさんの専用機『ヴィオーラ』のエネルギーブレード『ハイド』が4機のレッグを乖離させる。
よし、これで4機は止まった…!
「ありがとうございます!」
『お礼は後で!次が来ます!』
「はい…!」
そうして俺たちはとにかくサクリファイスを無力化していく。
足、腕、頭を破壊して何とか無力化していくが…!
「!!?」
俺はある光景を目の当たりにして背筋が凍った。
(レッグが無いのに…両腕だけで捕食領域まで…!?)
両足を切り裂いたサクリファイスはそんなこともお構いなしで両腕を使って捕食領域を目指していく。
何がそこまで駆り立てる!?死ぬんだぞ!?
しかも、オールイーターに喰われて…!
『くっ!?数が多すぎますわ…!』
『コイツら何なんだよ!?斬っても切っても止まらない…!』
ソフィー生徒会長も、八神さんも文句と怒りを露わにしながらサクリファイスを無力化していく。
しかし
「!!」
各々がサクリファイスに対応していたが、数に限界があり…ふとしたタイミングで一機突破されてしまう。
「クソ!」
いち早く俺が気が付き、せき止めていたサクリファイスのレッグを蹴り飛ばして推進力を得てから突破したサクリファイスに攻撃を仕掛けようとするが…!
「ぐおっ!?」
他のサクリファイスが俺とファフニールに抱き着き、そのまま地面に下ろされてしまう。
「俺に…俺たちに触るんじゃねぇ!!」
アームで抱き着いてきたサクリファイスの頭部を殴り飛ばし、無理やりにでも引きはがそうとするが…引きはがしたところで他のサクリファイスも俺たちに抱き着いてくる。
邪魔くせぇ…!
(どうする…使うか!?)
このままじゃ一機突破されたまま、その一機が喰われる!
ここでS/Overlordを使うか!?
使えば絶対に止められるが…今回はアリスが居ない。
俺の身体に来る反動はそのまま全部来るだろう…!
いや、考えるな!
やらない後悔よりも、やって後悔した方がマシだ!
「ファフニール!S/Overlordを」
と言おうとした次の瞬間
――ドキュウゥゥゥゥン!!
「えっ!?」
あらぬ方向からレーザーが放たれ、抜かれた一機のレッグが撃ち抜かれた。
ソフィー生徒会長…?いや、ソフィー生徒会長もサクリファイスに対応中だ。
他の八神さんも、アウローラさんも他のサクリファイスに対応している。
じゃあ誰が?と思っていると。
『零亜君!助けに来たよ!』
聞き覚えしかない声、見覚えしかない機体が俺の目の前に降りて来る。
白とピンクの装甲。鋭い両足につけられたレッグブレード。スカートのように舞うビット達…間違いない。
あの機体は『コンダクター』だ。
ってことは…!?
『さ、珊瑚さん!?』
誤字脱字、語彙力がほぼ皆無に等しいのでミス等がありましたらご報告お願いします
感想も待っていますので気軽にどうぞ!
超絶不定期更新ですがご了承ください…




