第47話 疑問、疑念、そして答え
学園祭の準備も本格的に始まり、学園は少しばかり熱狂の渦に巻き込まれつつある。
その気持ちが分からないわけじゃないがな。
学園祭というよりも、『祭』っていう物は楽しむべきものだ。
アリスにも教えないといけない事だが…少し無理になるかもしれない。
「来たな、鴉羽零亜」
「はい」
今、俺が居るのは学園長室。
アリスはクラスで洋服の採寸中だ。どうやら出店とは別でクラスのユニフォームみたいなのを作るらしい。んで、俺は既に採寸は終わってるからアリスの番になったタイミングで放送で俺の呼び出しが入った
が流れ始めた。
勿論、アリスは俺から離れたくなかったので一瞬のうちに俺の身体にひっ付いたが…出撃じゃないはずだからクラスメイトと待っててと話し、今日の夜も一緒に寝ることで話はまとまった。
てか、毎日一緒に寝てる気がするんだが?と思ったがその時は口には出さなかった。
「とりあえず、座ってくれ」
「わかりました」
東雲学園長に言われた通り、ソファーに座り向かいに東雲学園長が座った。
「鴉羽が持ち帰ってきた情報、そして記者から受け取った情報を調べまとめた結果…正直、驚きを隠せない」
「そんな情報が?」
「…特に鴉羽が知るべき情報があまりにも多すぎた。まずこれだ」
そういいながら東雲学園長は一つのタブレットを俺に渡してきた。
それを受け取り、タブレットの中にあるメモリーのファイルを開く。
記されているデータを確認する。
「禁忌機体『サクリファイス』…?」
これは俺が持ち帰ってきた情報だろう。んで、あの老人たちが乗らされていた機体か。
機体のシステムはやはりドラゴンスローンシステムが搭載されている。
内容も殆ど同じだし、効果も同じだ。
ただ気になる点も所々あるが。
(何故ここまで装甲や内部システムが杜撰なんだ?)
今の俺の禁忌機体のイメージとして『パイロットの生命活動にダメージを与える』と『一機で戦況を覆せるほど強力』の二つがある。
今日にいたるまでの俺の戦歴が全てを証明してくれるだろう。
しかし、今回戦った禁忌機体は壊れやすく、同時に傷が付きやすいほど脆い代物だ。
とても戦える代物じゃない。
(俺が整備科だったら、こんな機体で出撃なんてさせない。むしろ改修を待ってくれとまで言うほどだ。何でこんな機体が…)
機体情報を眺めながらそう思う。
「今見ているのはサクリファイスの情報か?」
「はい、色々思う所がありまして」
「聞かせてくれ」
「俺の禁忌機体に対するイメージとかなりかけ離れた装甲やシステムで、ドラゴンスローンシステムも前に見た情報と少し違う点があったりして」
「やはり、鴉羽もそう思うか」
「東雲学園長も?」
「あぁ」
どうやら東雲学園長も俺と同じ考えのようだ。
禁忌機体だけでも疑問点があまりにも多すぎるし、解決のしようもない。
禁忌機体『サクリファイス』か。覚えておこう。
次に流れてきた情報は、パイロットの情報だ。
84歳の老人。出身地は俺が戦闘を開始した場所からかなりかけ離れた場所で、74歳の頃に妻を亡くした。その後、黒龍教を信仰し…ドラゴンスローンシステムの搭載手術に成功。
それから4年間、電子プログラム空間で訓練し、サクリファイスで出撃…。
(何故出撃させた?)
あんな機体で出撃すれば即死は免れないし、どんな動きでパイロットに負荷がかかるのか分からない。
何せ、システムも杜撰だ。耐衝撃システムも搭載されているかどうかすらも怪しい。
「パイロットについて何か思う事があるのか?」
「死ぬ間際に…少し会話を」
「話せたのか?」
「はい…」
話せはした。
けど、急に目の前で即死したのは今でも分からないがこんな人生を送れば…いきなり死ぬのもおかしくない。
何よりもドラゴンスローンシステムに繋がっていたんだ。
身体へのダメージは計り知れない。
「…変に聞きはしないが、どういう事を話していた?」
「黒龍教を信仰している事、進化の使途という物を信じていたことです」
「はぁ…難しい問題だな」
東雲学園長は頭を抱える。
俺も何とも言えない。こういう問題は解決にかなりの時間が必要であり、解決策も投じにくい。
「とにかく、このタブレットの情報は全て鴉羽に渡そう。ソフィーを含めたナンバーズにもこの話は伝えるが…ここから先の話は、お前にしか話せない」
「!」
一気に東雲学園長の雰囲気が重くなり、自然と俺の身体に力が入る。
「誰にも言うな。そしてこの情報はかなりの危険を孕む。いいな?」
「はい…」
そうして東雲学園長が取り出した一枚の紙とその紙に映っている写真には見覚えしかなかった。
そして東雲学園長は語りだす。
俺も…信じられない真実と情報を。
「――は?」
ーーー
「あ、お兄ちゃん!お帰り!」
「零亜君、待ってたよ!」
東雲学園長から情報を受け取ったのち、俺はクラスに戻った。
そこには満面の笑みでメイド服に身を包んでいるアリスが居た。
「…」
「お兄ちゃん?」
「零亜君、どうしたの?」
珊瑚さんとアリスが話しかけてきているのは分かっている。
分かっているのに、反応が出来ない。
というより、先程の東雲学園長からの情報が未だに信じられない。
「―――。」
俺は先程の東雲学園長からの話を思い出す。
一言一言を頭の中で木霊させるかのように。
『鴉羽が保護しているアリスについて…確定した情報があった』
『確定した情報?』
『そしてあの記者が持ってきた情報は…とてつもないほどの物だったというわけだ』
あの時、東雲学園長から渡された紙…いや書類は『実験結果の報告書』だった。
しかも写真はアリスの顔写真。正直、嫌な予感はした。
あの医療スタッフ共が何しやがった?と怒りをふつふつと湧き上がらせていたら知りたくもない情報を知った。
知ってしまった。
『アリスは…いや彼女は、人工的に作られた【オールイーター】だ』
『――は?』
その時の俺は何も言えなくなった。
嘘だ、でたらめだと否定をしたくなったのに、否定が出来ない点もあった。
それはアリスの治癒能力だ。
アレは人間の力を越えた何かだと思っていたが…そもそも人じゃないって言われた。
『何を、言ってるんですか?そんなことが』
『信じられないのもわかる。だが…これをみて同じことを言えるか?』
信じられない俺は東雲学園長に異議を唱えようとしたが…次に渡された書類を見て、信じざる負えなかった。
『本気…か、よ』
それに記されていたのは…アリスの実験や、生成された条件などが書かれていた。
俺はその書類を握りしめながら膝をつく。
『ッ!!』
アリスは…あの黒い嵐の元凶である黒い龍の鱗と人間の細胞を融合させ、オールイーターの粒子と人間の細胞の比率を5対5になって初めてアリスという者が生成された。
最初は知性はなく、赤子のような物で色々教えたり人体実験を繰り返し…ある程度、物心がついたころにアリスの能力が分かった。
それからは『敵対意識のないオールイーター』かつ『勝手に治るモルモット』としての実験が始まり…そこから先は見てられなかった。
吐き気を催す程の邪悪。
目をそらしたくなるほどに惨い。
『ファフニールが言っていた敵対意識のないオールイーターは…多分、アリスの事だろう』
『…』
俺は聞いている花時を信じられぬまま床に座り込むと、俺の肩に手を添える東雲学園長。
『…情報整理に時間がかかるだろう。ここで少し休んでからクラスに戻ると言い』
『わかり、ました…』
そうして俺は呼吸を落ち着かせていた。
すると
『鴉羽』
『…?』
東雲学園長が俺の前に座り、目線を合わせて話しかけてくる。
『一言、言わせてほしい』
『…』
『私はこの情報を聞いて確かに混乱はした。だが、私には私の考えがある通り、お前にはお前の考えがある。そして今のアリスの家族はお前だけだ。お前が自分で判断していい』
『…』
『私たちはお前の意見を尊重する』
『…』
そうして俺は頭の中で情報を整理し、呼吸を整えてからクラスに戻って今に至る。
「お兄ちゃん?」
「あぁ…すまん」
心配したのかアリスは俺に抱き着き、上目づかいで俺を見てきたので俺は優しく頭をなでる。
「えへへ…」
(こんな少女が…オールイーター、だと?)
AT学園、ARMOR”sはオールイーターを死滅させることを掲げている。
それは俺も同じだ。記憶を取り戻す為にも平和な世の中にしたいから、オールイーターを潰す…なのに。
俺は、こんな少女に手をかけないといけないのか?
こんな無垢な少女を鉄の塊で潰せと?
(何を――考えている――。)
複雑化していく俺の心。
こんなオールイーターを殺さないといけないのか?
何でオールイーターを作った?
人みたいなオールイーターも居るのか?
【アリス】というオールイーターを倒さないといけないのか?
様々な疑問、疑念が頭の中をグルグルと回る。
(俺はどうすればいいんだ…)
考えて、考えて…とにかく考えた。
「お兄ちゃん…もっと撫でて?」
「あぁ」
いつの間にか手が止まっていたが、アリスに言われた通り再度手を動かして頭をなでてあげる。
(―――。)
俺は…。
(――俺はアリスを殺したくない。)
あの資料で見た通り、アリスは人工的に作られたオールイーターだ。
それは嫌でもわかる。嫌でも理解した。
けど、俺はアリスを殺したくない。潰したくない。
簡単だ…この子は『何も』知らない。
俺はこの子に色々な事を教えている。
美味しい物、あったかい場所、辛い思いなんてしなくていいことを。
この子はオールイーター…それが何だって言うんだ。
蓋を開ければただの無垢な少女だ。
辛い思いをして俺たちに助けられたと思ったのに、今度は殺されるなんて…あまりにも酷すぎる一生だ。
ただ『生きている』だけじゃないか。
人間と同じように『生まれて生きている』だけじゃないか。
生きているだけで罪なんて言うかもしれないが…そんなのは間違っている。
この子は生きていい、生きていいはずなんだ。
オールイーターと言われようとも、この子は敵対意識の無いオールイーターだ。
今だって俺に抱き着き、妹らしく甘えてきている。
何処が…敵なんだよ。
(それに憎むべきは…!)
憎むべきなのはこの子じゃない…この子を生み、命をもてあそんだ医療スタッフ共だ。
アリスを言い様に扱い、身の毛がよだち、吐き気を催す程の惨たらしい実験の数々。
命という重さを考えないカス共の方だ。
(ああいう人間の方がよっぽどゴミだ。オールイーターなんていう怪物よりも)
俺は一つの答えを出し、心に決めた。
この答えと意志を絶対に曲げない。
「アリス」
「うん?」
「楽しいか?」
「どうしたの?」
「最近、こっちの話をしてなかったなって思っただけだよ。この学園は楽しい?」
「うん!美味しいものもあるし、楽しいよ」
「そっか」
俺はアリスを守る。
例えオールイーターだとしても、この子は人間に対して敵対意識を持っていない。
それに、アリスが危険なオールイーターではないことを俺が共に生活することで証明できる。
(証明してやる、そして会った時は覚悟しておけよ…カス共が)
ーーー
『そうか、そう選択したか鴉羽』
「はい」
アリスが眠った後、俺はベッドから出て東雲学園長に電話をかけ、俺の選択を話した。
同時に俺が共に生活してオールイーターでありながら、この子は平気だと証明するという事も。
『あい、わかった。お前の選択を尊重しよう。だがもしもの時が来る可能性もある。覚悟はしておけ』
「わかりました」
『ではな、それと何か相談や願いがあればいつでも言ってくれ』
そうして東雲学園長との電話が終わり、ふと息を吐く。
今日だけで色んな疑問と色んな情報を知った。
「はぁ…」
息を吐きながら壁に背を預ける。
前途多難…その一言に尽きる。
今ある問題はどれもこれも大きいが、大きいだけだ。
その全部をこの手で潰していけばいい。
ただ、それだけだ。
誤字脱字、語彙力がほぼ皆無に等しいのでミス等がありましたらご報告お願いします
感想も待っていますので気軽にどうぞ!
超絶不定期更新ですがご了承ください…




