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第46話 知るべき、知らぬべき

単独での秘密裏の出撃から帰還した俺は急いで学園長室へ向かう。

今回の件の報告と同時に不明機二機から抜き取った情報がある。

例え、学園長が別件の用事があろうとも今回の件に関してはすぐさま伝える必要がある。


――コンコン。


学園長室の扉を叩く。


『誰だ』

「ナンバーズ鴉羽零亜です。出撃から帰還しました」

『入れ』

「失礼します」


学園長の許しも得たので扉を開けて中に入る。

そこには


「?」


知らない女性がいた。

若めのスーツの女性で手元の電子端末にタッチペンを走らせ、何かを書いているのが分かる。


「すまない、鴉羽。今、学園祭の取材を受けていてな」

「そう…ですか」


今回の件を告げるべきだろうが、俺が手に入れた情報を外部の人間に露出させるわけにはいかない。

流石に時間を改めるべきだろう。


「鴉羽…?あ、君は鴉羽零亜君かな」

「そうですけど」

「あぁ、ごめんね。急に話しかけて…私はこういう物です」


そういいながらスーツの女性は俺に名刺を渡してくる。

大和田真見おおわだ さねみ』24歳と書かれており、どうやらテレビ局の人らしい。


「今日はAT学園の学園祭についてのテレビ局の事前の打合せだったけど…まさかARMOR’sの新星って言われてる鴉羽零亜君に会えるなんて…!ちょっと取材しても?」

「すまないが、彼は出撃から帰ってきたばかりだ。取材をしたいのなら後日にアポを取ってくれ」


東雲学園長が俺と大和田真見さんの間に入り、そう言ってくれた。

いや確かに疲れてるし、インタビューは慣れてないし、色々と助かった。


「それもそうですね…では今回は機会が無かったというわけで」


学園長にそう言われた大和田真見さんは一歩下がる。


「では、事前の打ち合わせも終わったので私はこのあたりで」

「あぁ。それと当日に変な騒ぎを起こすなよ」

「それは勿論ですよ。AT学園の学園祭は様々な関係者もいらっしゃいますし、テレビ局の人間が騒ぎを起こすわけにはいきません」


そういいながら大和田真見さんは学園長室から退室しようとするが


「ですが…一つ、伝言というより私個人の警告をしても?」


扉に手をかけるも、手を放して俺と学園長を見る。


「どうした?」

「これを」

「え?」


大和田真見さんは俺にUSBメモリを握らせる。


「これは…」

「流石に爆弾とかそういう物ではないです。ですが、ある意味爆弾と言えば爆弾も言える物ですね」

「?」

「最近、とある医療施設のスタッフがAT学園のナンバーズの特定の事を聞き出せっていう依頼がしつこくて」

「!!」


それを聞いた瞬間、俺は目を見開く。とある医療施設のスタッフ…だと?

先程の怒りに加算するかのように憎悪の炎が燃え上る。


「勿論、私は相手のプライバシーを踏みにじるようなことはしません。私のポリシーに反しますし、そもそも昨今はマスコミも色々と規制とかルールとかそういうのが増えましたから」

「…それで?」

「逆にその医療施設のスタッフの事を調べちゃいました!そりゃプライバシーを暴こうとしてくる人間が居るのなら逆に暴かれる覚悟を持たないとって思いまして!」

「えぇ…?」


凄い元気いっぱいに言っているが、かなりとんでもないこと言ってないかこの人!?

撃っていいのは撃たれる覚悟が必要と聞いたことがあるが…似たようなものなのか?


「それで、この情報はテレビ局で放送するよりも貴方たちに渡すべきだと思いました」

「何でそういう判断を?」

「勘です!一応コピーもありますけど!」

(こいつまじか。)


適当過ぎてドン引きしちゃったよ。


「その代わり、厚かましいかもしれませんが…鴉羽零亜君」

「は、はい?」


大和田真見さんは俺をじっと見つめてくる。


「君の事を取材させてね?君の事は私もそうだけど、世間も知りたいみたいだからさ」

「は、はい…」

「それでは、また学園祭で~」


そういって大和田真見さんは去って行ったが…何というか嵐のような人だったな。

てか、このUSBに関しては少しありがたい。


「して…鴉羽。極秘の任務ご苦労だった」

「はい」


学園長は大和田真見さんを見送り、ソファーに座り直して俺を見る。


「それで…何か収穫は?」

「これを」


そういいながら、俺はスマホ型の通信端末を東雲学園長に手渡す。


「これは?」

「目撃情報付近を捜索した所、廃墟とそこから出現した識別不明機2機と戦闘。それで無力化し2機のコックピットから全ての情報を抜き取りましたが…恐らく狙ったと思われる不明機12機が接近してきて…撤退しました」

「つまり、この中に抜き取った情報があると?」

「はい、完全に抜き取ったはずかと」

「素晴らしい。流石私の生徒であり、ナンバーズの単騎戦力だ」

「ありがとうございます」


お褒めの言葉を預かり、東雲学園長が通信端末を操作し、俺が抜き取った情報を見る。


「データ量が膨大だな」

「2機分のデータ全てですので…」

「分かった。ならこちらの者たちでデータの整理や解析を行う。また後日呼び出す」

「分かりました」

「それまでは身体を休めておくといい。それと…そのUSBはどうする?」

「これも預けても?」

「あい、分かった」


俺は先程受け取ったUSBメモリも学園長に渡した。

中身が何であれ、俺が先に知るよりも学園長とかに知ってもらった方がいいって思った。


「では任務の報告を受けたので、もう行っていいぞ」

「分かりました、失礼します」

「あぁそれと早めに教室に戻ってくれ。丁度1年1組から助けてほしいと連絡が来てな」

「わかりました、今すぐ行ってきます!」

「頑張れ」


俺は学園長室から飛び出して1年1組の教室へ走って向かった。

廊下を走るなと言われているが今回はどうか許してほしい。


ーーー


「すみません!今、戻りまし」

「お”兄”ち”ゃ”ぁぁぁぁぁん!!」

「ごはっ!?」


教室の扉を開けたと同時に明らかにギャン泣きしていたアリスは俺の胸にしがみ付く。

アリスの衝撃が身体中に伝わり、激痛で声を上げそうになるが…我慢して胸元に引っ付くアリスの頭を優しく撫でるが、すっごいグリグリと頭部をこすり付けてくる。


「すまん…ちょっと時間がかかった」

「うーっ…!」

「ごめん…」

「…うん」


アリスは涙目のまま上目づかいで俺を見つめる。

うっ、罪悪感が。


「はぁ…疲れた」

「珊瑚さん?それにナンバーズの先輩も?」

「えぇ…オールイーター以上に疲れましたわ」


明らかに疲れ切っているクラスメイト及びナンバーズの3人。

俺が離れてから今に至るまでずっと泣いていたのか?


「やっぱり俺が離れたからですか?」

「いえ、実は鴉羽零亜が離れてから少しずつ落ち着きを取り戻し始め、学園祭の話になるとすっかり泣き止み、満面の笑みで学園祭の話をしていましたの」

「けど…何で?」

「…ちょっとテレビを見せたら、丁度他の場所でARMOR’sが被害を受けたというニュースが放送され」

「あ」

「貴方が犠牲になったと思ったアリスちゃんは…」

「あー…」


凄い何とも言えない…ただ運が悪かったと言うべきか。


「お兄ちゃん、怪我無い?」

「ないよ。無傷で帰ってきたから」

「うーっ…よかった…」


うん、しばらくは無傷で帰ってこないと。

てか、S/Overlordを使ったらアリスが馬鹿泣きそうだ。

しばらくはオールイーターが来てほしくない…!


「それで任務は?」

「滞りなく、今は東雲学園長に色々お願いした後です」

「わかりました。では鴉羽零亜も帰還しましたし、私たちは教室に戻りましょうか」

「あぁ…」

「はい…」

「すみません…」


俺は謝罪しながらナンバーズの三人を見送り、俺の席に着いた。

担任の一条先生には今日が授業ではあるが、任務があるので授業に出れないことを話しておいたため、出席云々は大丈夫だったが今回の任務がまさかの授業内で終わり切ったので普通に出席する。

んで、今の時間は学園祭でどんなことをするのか〜っていう話だ。


「じゃあ鴉羽君も帰還しましたし、学園祭の話に戻りましょう。一応、今のところ出店の話で案はこのような感じです」


メイド喫茶、和風喫茶、洋風喫茶…。

全部喫茶店じゃん!?もっとこう、なかったのか!?


「鴉羽君、どう思いますか?」

「喫茶店は確定なんですね?」

「まぁ…はい」


一条先生は明らかに困ったかのような声を出す。

周囲を見ると大体のクラスメイトが頭を縦に振っている。そこまでやりたいか?


「一応、聞きたいんですが何故喫茶店を?」

「学園祭の定番だからかな」

「珊瑚さん?」


俺の質問に答えたのは珊瑚さん。

その答えに他のクラスメイトも首を縦に振る…うん、そんなにやりたいんだな。


「言い方は悪いかもしれないけど、私たちはARMOR’sになる為にここにいる。でも、青春らしいこともしてみたいからっていうので喫茶店に決まったの」

「なるほどな」

「でも、何の喫茶店にするのかが決まらなくて…零亜君はこれがいいみたいなのってある?」

「正直…さっぱりだ。中学の時も学園祭があってそういう店はやったけど…俺は何もわからないしな」

「え、そうなの?」

「まぁな。でも俺は基本接客がメインだったし」


俺の居た中学校には学園祭はあった。

出店とかそういうのもやってよかったんだが…まぁ利益が貰えるわけじゃない。

儲けた分は学校に寄付して今後の設備とかそういうのに充てるというので出店をやっていた。

実際に設けた分は中学校内の設備に充てられたし、裏金とかそういうのではなかったのは確か。


「零亜君の接客か…それでどんな出店を?」

「俺の所は男装女装喫茶」

「男装女装喫茶!?」

「だ、だん…?」


珊瑚さんを含めてクラスメイトが驚きつつ、アリスは男装という言葉が分からないようだ。

これは…教えるべきなのだろうか。


「名前の通り男子は女装、女子は男装する喫茶店だ。俺も女装はしたが…あれは思い出したくねぇ」

「ど、どんな感じだったの?」

「異様なほど女装が似合う男子が2割、まぁまぁ似合うのが3割、明らかに似合ってないのが5割。全員殆どふざけて着てたしな」

「零亜君はどの枠!?」

「似合ってないに決まってるだろ…顔は明らかに男だし、体格もほとんど変わってなかったんだぞ?そんなんが女装したところで似合うわけないだろ」

「あー…」

「てかそもそも着れなかったし…特別枠で執事になったよ」


中学の頃から身体は大きかったし、用意した男装用のメイド服はどれも切ることが出来ず、奇跡的にコスプレ用の執事服が余っていたので特別枠でそれを着て接客した。

最初は男子からずるいとか言われる可能性はあったが、非の打ちようが無かったので暗黙の了解みたいな感じになった。


「それじゃあ男装女装」

「それになったら本当に怒る。」

「…は止めて、普通に多数決にしよっか。みんなもそれでいいよね?」


珊瑚さんが皆に呼びかけると、はーいと元気に声が響いた。

そうして多数決が始まろうとしていた。

すると


「ねぇ、お兄ちゃん」

「ん?」


アリスが話しかけてくる。


「その、きっさてん?ってなに?」

「あぁ、喫茶店か。そうだな…」


説明するのはそうだが口頭の質問だと限界がある。

そう思い、俺はスマホを取り出し喫茶店の写真を見せる。


「これが喫茶店、ようはお店だ」

「お店…あ、お魚屋さんとか?」

「まぁ似たようなものだ。お魚屋さんはお魚が買えるだろ?」

「うんうん」

「喫茶店はその店でコーヒーとかデザートとかを飲んだり食べたり出来るんだ」

「こーひー?でざーと?」

「この辺は実際に飲んだり食べたりしてみるか。今日の授業が終わった後にちょっと食堂に行こう」

「うん!」


そうやって会話している間に多数決は終わり、メイド喫茶になった。

一瞬俺もメイド服を着るのかと疑問と恐怖を覚えたが俺は執事服で良いという事となり、学園祭のうちのクラスは出店としてメイド喫茶になり、パイロット科の唯一の男子生徒なので俺は執事になることになった。

本当によかったのは…俺が厨房の担当じゃ無かったという事だ。

俺は…料理が出来ない。

いやまるっきり出来ないというよりかはレシピ通りに作れるだけで、アレンジやらなんやらは本当に無理だ。『中火の弱火』とか『適量』とか未だによくわからん…。

そうして学園祭でやることも決まり、いつの間にかクラス委員長になった珊瑚さんは予算とかそういう書類を作り始め、俺も手伝いたかったが、今はアリスに集中してほしいとクラスメイトと珊瑚さんに言われたので先程言った通り、食堂に向かい…コーヒーとパフェを頂いた。

まぁ俺がコーヒーでアリスがパフェだ。


「ん~!おいひい!」

「あーあー、口元がクリームだらけ」


紙ナプキンでアリスの口元のクリームをふき取る。

やっぱり母性?を刺激される…なんて思いながらブラックのコーヒーを飲む。


「ふぅ…」


この苦みが良い。

砂糖やミルクを入れるのも悪くないが、そのままの状態を楽しむのもまた一興という物。

入学当初、整備科で頑張ってた頃、カフェインを取るのでブラックのコーヒーを飲んでいた。エナジードリンクは残念ながら売ってなかったしな。


「お兄ちゃんが飲んでるのは、えっと…こーひー?」

「そうだよ」

「のんでみたい!」

「や、止めといたほうがいい気がするけど…」

「のんでみたい!」

「こ、後悔しないでよ?」


アリスもコーヒーに興味が湧き、俺が飲んでいるのを飲みたいと言ったのだが…正直、どうなるかなんて想像に容易い。

多分、顔をしわっしわにゆがめるだろうな…なんて思いながらブラックのコーヒーをカップと一緒に渡す。

そしてアリスはブラックのコーヒーを飲んだ。


「うぇぇぇぇ…」

「だよな…」


予想通り、アリスの顔は歪んだ。

舌をべーっと出して、明らかに苦そうな顔をしている。


「とりあえずパフェを食べな。苦味は収まるから」

「ふわぁい…もぐもぐ」


アリスはパフェを一口一口噛み締めて食べている。


(何とかして苦味を消したいんだろうな)


なんて思いつつ、コーヒーを飲む。


「何でお兄ちゃんは平気なの…?」

「お兄ちゃん、だからかな。大人に近づくとこういうのも飲めるようになるから」

「うーん…アリス、わからない」

「まだ分からなくていいから」


と言いつつアリスの頭を撫でる。

そんなわけでアリスは『喫茶店』を覚えた。甘いスイーツを知り、苦いコーヒーを知った。

んで、コーヒーはもう飲みたくないって思ったらしい。

マズったなぁ…今度、カフェオレとか飲ませてみるか。

誤字脱字、語彙力がほぼ皆無に等しいのでミス等がありましたらご報告お願いします


感想も待っていますので気軽にどうぞ!


超絶不定期更新ですがご了承ください…

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