第45話 信仰者を知る
アリスと新しい日常を過ごしてから数日たった。
学園内では学園祭の話が出てきており、各々のクラスがどのような出し物をするのかという相談の話でもちきりだった。
かという俺もそういう話をする…はずだったのだが
「…」
周囲を見回す。
今、俺はAT学園から離れた場所に居る。
何でこんなところに居るのかというと…単純に任務だ、俺が適任との学園長からのお墨付きで出撃している。
ただ…アリスは学園でお留守番だ。
今回の任務の内容は『識別不明機撃退及び調査』。医療施設から少し離れた場所で前の識別不明機が出現したとの情報がAT学園及び学園上層部に伝達され、今はAT学園は学園祭準備中。実際にAT学園の学園祭は保護者の参加は勿論、ARMORの開発に関わる研究者や役員の人も参加するので警備を固めている最中。
ナンバーズや3年生が警備を頑張っているのに識別不明機の事も調査しなければならない為、単騎の実力を持つ俺とファフニールが抜擢され、秘密裏の単独出撃をした。
通信する相手もなく、単独での出撃。学園長とかナンバーズは知ってはいるが…今回は誰も知らない戦いになるだろう。
んで、アリスなんだが…識別不明機が前の医療スタッフに関係する奴らの可能性がある為、学園でお留守番だ。
まぁ…めっちゃ泣かれたけど。
『やだぁぁぁぁぁぁ!!!うわぁぁぁぁぁん!!』
『アリス!泣きたい気持ちも分かるけど、お兄ちゃんは任務に…!』
『アリスもいくぅぅぅぅ!!』
『動きま…せん…!?』
『ぜ、全然離れませんわ!?』
『ぬぐぉぉぉぉぉ!!!と、取れん!?』
『俺の制服が破れる!?』
『服の一枚くらい安いだろ…!』
『俺の制服ですよ!?』
アリスは両目から大粒の涙を流して、俺にセミみたいにくっついていたので、無事に帰ってくることと、今日は一緒に寝ることを約束して何とか離れて貰った。
(すまんなアリス…)
頭の中でアリスに謝罪しつつ、多分今も頑張ってアリスを慰めようとしている皆に感謝する。
今頃、学園祭の話とかそういう話で何とかしていると思うが…。
(とにかく、行くか)
識別不明機が最後に見つかった場所へ向かう。
操作レバーを操作しつつ、マップの情報を確認。
目撃場所は…ここか。
一度ファフニールのスラスターを止めて、識別不明機の目撃情報を確認する。
前の医療施設で遭遇した機体と同じ形状だ。
何処かで量産されているのか?けど、パイロットはよぼよぼの老人だったしな…パイロットにも人員があるし、そこまでの大量生産はできないだろう。
というか禁忌機体を大量生産してパイロットが湯水のごとく使われていたらそれこそマズいだろう。
「…ファフニール、どうだ?」
周囲のレーダーを確認しつつ、ファフニールに周囲の状況を問いかける。
まぁ何の反応もないことと、敵対意識の無いオールイーターの反応は微弱だが何処かにいるとのこと。
いつになったら見つかるのやら…なんて思いつつ、周囲を捜索する。
すると
「む?」
ファフニールのレーダーに2機分の反応がある。
アークリアクターの識別コードは…不明。
(識別不明機…来たか)
それは良いんだが、何処にいる?ライフルを左手に装備して、構えつつ周囲を見回すが…機体の機の字もない。けど、レーダーの反応を見るに丁度目の前にある廃墟に居るはずなんだが…?
――ビーッ!ビーッ!
廃墟から警報が鳴り響く。
「!!」
あんなボロボロの廃墟から警報が鳴り響くものなのか?なんて思っていたら、廃墟の残骸を砕きながら、何かが出てくる。
それは、黒色の2機のARMORだった。
(あの時と同じ機体!)
医療施設の付近で戦った時の識別不明機と一緒だ。
となれば、無力化と同時にパイロットの確認。ついでに一機くらいAT学園に持って帰れねぇかな。
大剣を地面に突き刺して、ライフルを構えて狙いを定める。
敵対してくるのなら倒す。敵対してこないなら何とかして無力化する…それだけだ。
「どう来る…?」
相手の動きを伺うが…ピクリとも動かない。
相手のARMORは起動しているが、全く動かないのは少々不気味だ。
何を、狙っている?
「ん?」
相手を見ていたらふと気が付いた。相手の2機のARMORの通信回線がオープン回線になっている。普通はプライベート回線で相手に通信を傍受されないようにするのだが…尚更オープンになっている理由が分からない。
けど、相手の通信を傍受できるのならそれでいい。俺は網膜投影を解除し、相手の通信に接続する。勿論、俺が通信を聞いていると気が付かないように暗号化しておいてな。
『―――。』
(無音だな…何も聞こえない)
通信しているとは思えないほど無音が流れ続ける。
すると
『う…ぁ…ぁ…』
(唸り声?)
唸り声が聞こえる。
何というか…正気を持っているかれるような程、苦しそうな声だ。
前の禁忌機体同様、既に永眠した老人が乗っているのか…?
唸っている時点で意識はあるのは分かるが…助けるか?
てかそもそも助け出せるのか?
(いや助けよう。また前みたいに無理やり乗せている可能性もある)
そう思い、再度網膜投影を開始し、トリガーに指をかける。
狙うのは…!
「そこだ!」
――ドキュウゥゥゥゥン!!
動かない敵機体の片足を狙って撃つ。
狙い通りに放たれたレーザーは不明機の片足に直撃し、溶解させたのち爆発。
片足が無くなった機体はそのまま地面に崩れるように倒れる。それを見たもう片方の機体は俺たちを認識してアサルトライフルを連射しながら襲い掛かってきた。
勿論、弾を正面から受けるわけにはいかないので突き刺した大剣をライフルを持たないもう片方の手で逆手持ちして、引っこ抜き、横にスライド移動しながらもう一機に狙いを定める。
(スライド移動しながらの照準合わせは難しいな…!)
今まで対ARMORの戦闘訓練もしてこなかったせいもあるが…何よりも俺は近接しかしてこなかった。今日から遠距離武装の練習とか訓練とかするか、と心に刻んだ。
感覚で照準を定めて、撃つ。
「やっぱ…ズレるよな…!」
移動しながらの射撃はやはり難しい。狙った通りに飛ばないし、何よりも敵の偏差も考えないといけない。
(と、なれば…!)
俺はすぐさまライフルをしまいながらスラスターをチャージ。
逆手持ちしたブレードを構えなおすと同時に、全スラスターを解放し正面からツッコむ!
相手の機体も正面から突撃してくる機体の攻撃を受け止めるほど馬鹿じゃない。
俺に向かってアサルトライフルで射撃してくるが、大剣の腹の部分を前に構えてアサルトライフルの弾を受け止めつつ、前進。
「くらえっ!」
懐に入った瞬間、ブレードを横に薙ぎ払いアサルトライフルとアーム諸共…叩っ切る!
――ガキョンッ!!
狙い通り、ファフニールの大剣が不明機の腕とアサルトライフルを破壊するが…これは何処を狙えばいい!?
俺の判断だが、この戦いはあくまで機体の無力化及びパイロットの救出を目的としている。
けど、どうやって助ける?
前は完全に動かなくなったところをコックピットのハッチを破壊して確認したが、今回に関してはまだ動いているし、このまま攻撃し続けても良いんだが…衝撃で不明機のパイロットが気絶する可能性も十分にある。
なんてったって乗っているのは老人の可能性が高いからな…!
「ふん!」
もう片方の腕も吹き飛ばし、一度距離を取る。
次は…頭か?頭を吹き飛ばせばカメラアイは使えなくなるから十分に有利になる。
(頭だな…!)
両腕がなく、どうしようもない不明機の頭部を狙って大剣をぶん投げる!
随分前だけど、珊瑚さんとのシミュレーターの訓練でやった極デメリット極メリットの戦法。振るっていた大剣をぶん投げるっていう意表を突く技だ。
――ガキィィン!!
狙い通り投げた大剣は不明機の頭部に突き刺さり、スラスターを解放しながらファフニールの膝で突き刺さった大剣の柄を狙って…膝蹴り。
突き刺さった大剣が膝蹴りの衝撃を受けて、不明機の頭部を穿つ。
不明機の頭部は俺の体験と一緒に吹き飛び、不明機は仰向けの形で倒れた。
「今だ…!」
すぐさま倒れた不明機のコックピットのハッチを握りしめて、
――バギャアッ!!
ねじ切る!
ねじ切ったコックピットのハッチの破片はその辺に投げ捨てて、網膜投影でコックピットの中を確認する。
「前と同じか…」
中にはよぼよぼの老人。
前と同様、操作レバーは握っておらず頭に変なガジェットが付けられていてコックピットに縛り付けられているかのように見える。
…ファフニール曰く、周囲の不明機は停止したとのこと。
ならチャンスだ。
俺はファフニールの両足のレッグの膝を曲げさせ、地面に近づける。
そのままコックピットのハッチを開いて、不明機のねじ切ったハッチに飛び移り、すぐさま起動履歴や内部のデータをスマホ型の通信端末を接続して全部抜き取る。
データを移行している間に、この老人の周囲の状態を調べる。
(やっぱり…冷たい)
改めて思うが、何でこんな人を戦場に出す必要がある?
静かに寝かせてやればいい物を…!
「ってダメだ、俺の感情を出したところで何の解決にもならない」
とにかく、これ以上の犠牲者を増やさない為にも情報を手に入れないと。
俺は頭部のガジェットを老人とコックピットから離し、老人の首元に接続されているドラゴンスローンシステムの管を抜き取りにかかるが
「む?」
すんなりと管が抜けた。
この管って身体に接続されてるんじゃないのか?それに結晶のような管じゃない。
俺のと違うのはわかるが…こんなに違う物なのか?
けど…やっぱりこの老人の顔は歪んでいる。
『データの完全移行完了』
「…」
データの完全移行が終了したことがスマホ型の通信端末から告げられ、それを回収する。
それと…せめて
「せめて…この場所で置いていくことを赦してほしい」
歪み切った顔を安心させるために開眼した瞳を左手で覆い、そのまま瞼を閉じさせた。
歪み切った顔は静かに眠ったかのような顔つきに変わった。
それを見届けたのち、もう一度ファフニールのコックピットに飛び移り、もう一機の不明機に近づき、コックピットのハッチをねじ切り中に入る。
すると
「う…ぁ…」
「!」
微弱だが息が、ある!
すぐさまスマホ型の通信端末をコックピットと接続し、データの移行を開始すると同時にこの老人の頭部のガジェットを外す。
「う…?」
「大丈夫ですか!?」
老人は俺を見る。
「き、み…は?」
「ちょっと待っててください!すぐにドラゴンスローンシステムの管を」
と老人のうなじ辺りについている管を取り外そうとしたら
「きみが…進化の…使徒なの…か?」
「は?」
と言われた。
進化の使徒…なんか、聞いたことがあるような。
「!」
ふと思い出した。東雲学園長との会話を。
『あくまで警察から聞いた話だが、黒い嵐の元凶である黒龍が出現したことにより世界は浄化され、更に良い世界が作られると信仰し、オールイーターを世界を浄化する『使徒』だと思っているそうだ』
黒龍教の信仰の話を聞いたときに『使徒』の話を聞いた。
けど、あの時は世界を浄化する使徒とか聞いたが…この老人は進化の使徒と言った。
とても関係ない話とは思えない。
聞くべきだろう。
「何故俺を進化の使徒だと?」
「この機体に乗っていれば…進化の使徒に出会えると…教祖様が」
「ほ、他にはどんなことを!?」
「他はいつもと変わらない…だが、私は会えたのだ…教祖様のいう通り、進化の使徒と…!」
とてもじゃないが正気とは思えない。
いや信仰云々にケチを付けるつもりはない。
そういうのは自由にやってもらって構わないが…人様に迷惑をかけるとなれば話が変わる。
「あぁ…進化の使途様…私たちに教えを」
「…」
より、深くまで聞いてみるか。
「その教祖は何処にいる?」
「私程度の者では会うことはできません…ですが、ある場所に拠点があると」
「ある場所に拠点?それは何処に」
「わからない…のです」
分からないのか。
まぁ期待はしてなかったからいいが、ただ老人はこの機体にドラゴンスローンシステムという下手したら死にかける物があることと、それに繋がっていることに気が付いているのか?
「これで…私も解放される…」
「解放される?」
「私は…黒龍教を信仰した理由として…妻を失ったのです」
「妻を…」
「はい…あの黒い嵐が起きてから、妻が重病で他界し、私は一人になりました。しかし、黒龍教の人たちが私に住処と生きる希望を教えてくれたのです。あのオールイーターは私たちの世界を進化させる使徒だと…!」
老人の目は…据わっていた。
この人は、妻を失い孤独になってしまった…心のよりどころが無くなってしまった。
そんな中で黒龍教の奴に心の隙間を埋められ…こんな戦場に駆り出されている。
まさか同胞が死んでいるとも気が付かず。
いや…同胞が死んでいることに気が付いているが、進化の使途を見るための犠牲と捕えている可能性も高い。
悟りを開く、とは違うが…似たような話を聞いたことがある。
「初めは疑っていました。しかし、この管に繋がっている間は身体が自由に動くのです…ずっと動けなかった両腕両足が新しい腕や足に切り替わったように…!」
「…」
「そして、自由に動き回っている間に進化の使途に身を捧ぐ者や『敵』と戦う中で進化の使途を見つける者たちが現れ、進化した者や天に召されたものも現れ始めました」
「!!」
「私は敵を見つけ、動こうとしたのですが…急に体が動かなくなり意識が朦朧としていました。しかし、その敵から進化の使途様が現れるとは…何たる幸運…!」
老人は俺を見ながら両手を合わせて、俺に祈る。
俺に祈ったところで、俺はアンタを救えない。
孤独を癒せるような存在でもない、人類に進化を促せる存在でもない。
ただの一人の人間だ。
俺は…どうしようもない気持ちに苛まれていると
――…ィィィン…!
「!!」
ファフニールからの警報。
此方に向かって不明機が12機が接近してきているとのこと。
同時に
「ぐあぁぁぁっ!!」
老人が急に苦しみだし、バタッと力なく倒れた。
「お、おい!!」
俺は老人の肩を掴む。
「!!?」
一瞬で身体が冷たくなり、コックピットのバイタルサインを確認すると…既にこの老人は眠っている。
今の一瞬で何が起きた!?
目の前で広がる出来事に頭の処理が追い付かない。
追いつかないが…無数の敵が来ている。
このままこの場に居続けても意味がない。
通信端末を回収し、ファフニールのコックピットに飛び移る。
「すまない…」
老人を軽く見てから…少し罪悪感を感じつつ、コックピットに背を預けて操作レバーに手をかける。
「網膜投影、開始!」
目の前に広がる光景…永眠した老人二人に、停止した不明機。
そして狙ったかのように現れる不明機12機。
向ける矛先のない怒りが俺に襲い掛かってくる。
「クソがぁぁぁッ!!」
咆哮を上げる。
誰が…こんなことをしやがった。
例え老人でも、一人一人の命の価値や重さは同じはずだ。
なのに、こんな湯水のように浪費させるなんて…!
(全員…墜としてやるか…!)
怒りのまま、あの大群に矛先を向けようとしたが
「…落ち着いてください、か。すまん…熱くなった」
ファフニールは俺の怒りの矛先を収めるように言ってきた。
お前の言う通り、今ここで怒り狂った所で何の意味もない。
俺が出来るのは手に入れた情報を伝えて、これ以上の犠牲を出させない為に頑張るしかない。俺はファフニールを操作し、空に飛び上がり戦闘領域から離脱しつつ、先程の不明機の軍隊を見る。
不明機の軍隊は停止した不明機に群がり、停止した不明機を担ぎあげて何処かへと進んでいく。
俺はその軍隊を…見届ける事しかできなかった。
誤字脱字、語彙力がほぼ皆無に等しいのでミス等がありましたらご報告お願いします
感想も待っていますので気軽にどうぞ!
超絶不定期更新ですがご了承ください…




