第42話 混沌渦巻く情報
「ふぅ…!」
俺はARMORとの戦い方はあまり知らない。
というか今までの対戦相手があのクソたれの教員しかないからな。
あまり知識はないし、ファフニールの助言も一瞬遅くなる時もある。
だからこそ、対ARMORは俺の知識と判断で動くしかない。
「とりあえず!」
俺は操作レバーの特定のボタンを押すと、ジョイントが動き始め、ホルスターから明楽開発のビーム弾のアサルトライフルを大剣を握っていない方のアームで握り、構える。
そして狙いを定めて、トリガーを…引く!
――ドキュウゥゥゥゥン!!
「!」
俺が狙ったのは一機の片足だ。
狙いすました赤色の一発は弾道が下がることもなく、一直線に進み…片足を穿った。
す、凄い威力だ。明楽自身が対オールイーターを目的として開発したのがよく分かる。
一機の撃ち抜かれたレッグは溶解していき、体勢を崩してそのまま転ぶ。
そのままヘッドパーツを蹴り飛ばし、資格情報を無くさせて大剣の柄で地面に叩きつける。
というか蜂に対して撃てば良かったな…。
「次だ…!」
そのまま前進し、ブレードでもう一機に攻撃を仕掛ける!
不明機もブレードを取り出して、俺のブレードを正面から受け止めようとしている。
そこを…!
「ふん!」
ブレードを振ると見せかけて、片方のレッグのスラスターのみ出力し、左足の回転蹴り。
ブレードと不明機のボディ諸共蹴り飛ばす!
――メキョオッ!!
ブレードとボディが綺麗に歪み、吹き飛んでいくがそこを片方のレッグを掴み、地面に叩きつける。
そのまま拳を構えて、コックピットに拳を振り下ろすが…ギリギリで寸止め。
このまま拳を叩きこめばコックピット内にいるパイロットはぐちゃぐちゃになってしまう。
流石に人は殺さんよ。
その代わり何だが…その面を拝ませろ。
ファフニールの手を開き、叩きつけた不明機のハッチを掴み、引きちぎる。
――バキャアッ!!
綺麗にコックピットのハッチは引きちぎれた。
さて…お前は何処のどいつだ?と思いカメラアイで中を覗く。
そこにいたのは
「は?」
両腕がよぼよぼの老人のような人だった。
操作レバーを握っていないし、頭部にガジェットのようなものが付けられていて…コックピットに縛り付けられているかのようにも見える。
何だこれ…?
「ソフィー生徒会長」
『どうしました?』
「2機の無力化は完了しました」
『えぇ、見ていました』
「しましたが…」
『しましたが…?』
「パイロットはよぼよぼの老人です。生きているかどうかすら分からない、そんな感じの…」
『何ですって…?』
「保護しても?」
『分かりました。私たちも向かいます』
一旦、ソフィー生徒会長に報告してからファフニールの膝を曲げて、コックピットのハッチを開ける。
「どうしたの?」
「ちょっとな」
少女に心配されつつも、不明機のコックピットに飛び移る。
中身は普通のコックピットなのだが…何故こんな老人が戦場に?
色々と疑問に思いつつも、俺は老人の手に触れる。
すると
「!!?」
その肌の感触は、酷く冷たいものだった。
すぐさま手首当たりに指を押して脈をはかるが…やはり。
(死んでいるのか…)
一瞬、さっきの攻撃で即死したのかと思ったが…いきなり即死してこんな一気に冷たくなるのかと疑問に思いつつ、老人の頭につけられている機器を見る。
ぱっと見は脳波とかそういうのを測りそうな装置だが、絶対に違うだろう。
(この表情は…相当惨いことをされたんだな)
頭の装置を外すと、老人の顔が映った。
その顔は…見ていられないほど酷いモノだった。
顔をゆがめ、何かに懇願するような…そんな顔だ。
「鴉羽零亜、どうでしたか?」
「見てられないです…」
「これは…!?」
ソフィー生徒会長もこのコックピットに飛び移り、この惨状を目の当たりにする。
「なんてひどいことを…」
「起動ログを…見てみます」
「えぇ、任せましたわ。私はAT学園医療班の要請と学園長に今回の事を報告しますわ。八神、アウローラ。周囲の警戒と不明機の鎮圧を他のARMOR’sに伝達しなさい」
『わかった』
『畏まりました』
ソフィー生徒会長が各々に指示を出す。
俺もこのARMORの起動ログを確認する。
通信端末からコードを引き出し、ARMORのコックピットの操作盤に突き刺しログを再生。
最後の起動は18分前、パイロットのバイタルサインは…この時点で事切れている。
じゃあ何で動くんだ…!?18分前に起動しているのにパイロットはくたばってるんだぞ!?
パイロットが生きていないのならそもそもARMOR動かないはずじゃ…と思ったが、一つ予想が生まれる。
パイロットが居なくても動く機体に心当たりがある。
ということは
(まさか、この機体…!?)
そう思い、俺は老人のうなじを確認する。
(あ、ある!?)
そこには黒い機器と管がコックピット内と繋がれている。
ってことは…これはドラゴンスローンシステムだ。
人と機体を繋ぐ装置…それがこのARMORにも載せられている。
「ソフィー生徒会長…」
「どうしました?」
「これは…禁忌機体の可能性があります」
「ファフニールと同じですの?」
「はい…俺の四肢と首につけられている物と同じものがこの老人のうなじにつけられていて、管が繋がっています」
「なるほど…これは想像以上な問題になりそうですわね」
ソフィー生徒会長がまじまじと老人のうなじを見ている。
すると
「お兄ちゃん?」
「あ、来ちゃったのか」
先程の少女も此方のコックピットに飛び移っていた。
「この子が先程の?」
「はい」
「特徴的な肌ですわね。それにこの白い結晶は…」
とソフィー生徒会長が先程の少女を見ていると、少女は恥ずかしくなったのかはたまた怖くなったのか俺の後ろに隠れた。
「あぁ、ごめんなさい。まじまじと見てしまって」
「お兄ちゃん、この人、誰?」
「俺の仲間。いい人だよ」
「いい人?」
「そう、いい人」
「…私に針を刺したりしない?」
「しないよ、絶対に」
そんなことする奴が居たらぶっ飛ばしてやる。
「それより鴉羽零亜、この子のお兄ちゃんなのですか?」
「それが、わからないんです」
「…それもそうですわね、貴方は記憶喪失ですから」
俺はこの少女にお兄ちゃんと呼ばれているが、実際仮の名前なのかマジで兄なのかわからない。それっぽい過去も、今は見つかっていないしな。
それよりも…まずはこの機体だ。
何故永眠している老人が乗り込んでいるのか、何故ドラゴンスローンシステムがあるのか。
色々と知らない事と知りたいことが多すぎる。
そう思い、俺は老人のドラゴンスローンシステムに触れようとした。
次の瞬間。
『二人とも!今すぐそこから離れろ!』
先程のARMOR”sの声が俺たちの耳に響く。
「どうし」
『どうしたもこうしたもねぇ!!さっきの不明機が…凄い量が来てるぞ!』
「何ですって…具体的には」
『おおよそ…20機!』
「はぁっ!?」
その言葉が信じられず、俺はファフニールに問う。
この不明機が20機来てるのかと。その答えは…本当だった。
マジで20機の不明機がこっちに向かってきている。
「ソフィー生徒会長…」
「くっ…!撤退ですわ、これ以上の戦闘を続ければ私たちの機体のエネルギーが持ちません」
「…」
俺としても確かにこの機体の事は気になる。
気になる点しかないが…これ以上の戦闘は避けたい。
ファフニールのエネルギーはまだあるが、それ以上に問題なのは…俺の元に少女がいる。
この子を巻き込むわけにはいかない。
けど…このままこの子を連れて逃げれば…別の問題が。
そう思っていたら
『それと鴉羽零亜!』
先程のARMOR”sからの通信。
『その少女を連れて逃げていい!不明機が接近していて、ナンバーズもこれ以上の戦闘は厳しいという理由でARMOR’sで少女の単独の避難を了承した!』
「りょ、了解です!」
『あとは…そっちに任せる!』
それは…ありがたい!
心の中でそのARMOR”sに感謝を告げたのち、俺は少女を抱えてファフニールのコックピットに飛び移る。
「一緒に撤退するぞ!」
「え、何処に…?」
「俺の…家だ!あんな施設じゃない!」
「本当!」
「本当だ!」
「やったぁ!」
そう話し合ってから俺は少女を膝の上にのせてハッチを閉め、操作レバーを握りしめて網膜投影を開始し、空へと飛ぶ。
(流石に…圧巻だな。あの量は無理だ)
そして空に舞い、初めて20機の不明機を目の当たりにした。
まるで…軍隊だ。列を成して並のようにこちらへと走ってきている。
あの量と戦うのは流石に無理だ。質は良くても量で押し切られる。
それに…あの軍隊と戦うのなら俺は
『鴉羽零亜?』
「…」
『どうした鴉羽?』
「―――。」
本気で…?
(待て、今俺は何を考えた?)
一瞬、思考回路に靄がかかったかのような感覚があった。
疲労の影響か…?
「どうしたの?」
網膜投影をしている間に少女から話しかけられた。
流石に網膜投影を一瞬解除してから話してやりたいが…今は空に居るし姿勢制御はきちんと行わないといけない。
このままで話すか。
「何でもないよ」
「その…捕まってたのダメだった?」
「ダメじゃない、しっかり捕まっててくれ」
「うん!」
「ごめんなさい、ぼーっとしてました」
『まぁ単騎で動いていましたから、流石の鴉羽君も疲労が溜まったのでしょう。帰ったらゆっくり休みましょう』
『そうですわね』
そうして俺たちナンバーズは戦闘領域から離脱し、少女を連れてAT学園へと帰還していった。
◇◇◇
「クソ…クソ…!!まさか実験サンプルを失い…挙句の果てにモルモットすらも…!」
ナンバーズがAT学園に戻ってから、騒いで居た医療スタッフ達は人気のない避難所の裏で話し合っていた。
「どうしますか?このまま黒龍教の奴らにばれたら」
「分かっている。それよりも問題なのは…『黒龍』のサンプルが破壊されたことと、『モルモット』に逃げられたことだ。この問題が露見すれば…!」
「私たちに殺されるから、ですか?」
その医療スタッフの話を聞いていた黒いヘルメットを着け、淡い緑色の髪を露出した女性がサプレッサー付きの銃の銃口をスタッフに向けていた。
「!!」
「な、何だお前は!?」
「貴方たちがバレてはいけないと必死になっていた企業のモノですよ」
「こ、黒龍教の執行者か…!?」
「…とにかく貴方たちはヘマをした。その代償は払ってもらいます」
「ま、待っ」
と医療スタッフの片方が言い切る前に、眉間から血が噴き出しその場で倒れる。
どくどくと血があふれ始め、地面と生えていた草が真っ赤に染まっていく。
「ひ、ひぃっ!?」
「貴方も、送りますよ?」
「ま、待ってくれ!せめて実験で分かったことを教えるから見逃してくれ!」
「…」
へっぴり腰になりながらも、生き残った医療スタッフは話す。
「黒龍のサンプルを用いた『人型のオールイーターの作成』は成功した…しかも能力も付いていたんだ!あのモルモットが居れば黒龍教の理想だって叶えられる。少女なら…オールイーターの『序列』から逸脱したあの少女なら…進化の使途にもなりうる」
「そうですか。勝手にしゃべってくれてありがとうございます」
「えっ」
そういい、執行者は何のためらいもなく生き残った医療スタッフの眉間に風穴を開けた。
「本当、疲れるわね…」
「主」
執行者の後ろから目元を黒い布で覆われた…『観測者』が話しかける。
「死体は如何なさいますか?」
「処分していいわ。この世のクズが居なくなるのならそれでいいの」
「分かりました」
「それで…情報は?」
「はい。まず言及者、傍聴者により少女を作成した医療スタッフは処理済み。得られた情報としてはその少女は鴉羽零亜が連れて行ったという事です」
「好調ね、それで他の関係者たちは?」
「情報の伝達はおろか、そもそも少女自体がバレていないかと」
「いいニュースね」
「ですが…」
観測者は主に対し、自身が感じ取った悪いニュースを口にする。
「―――。」
「…それ、本当なの?」
「はい、鴉羽零亜が撃破した機体にそのような施しが」
「黒龍教に潜んでいるとはいえ、そろそろ鴉羽の助けが必要かもね」
「難しいかと思われます。彼は今、別の問題も抱えています」
「…考えましょうか、どうやって内側から潰すのかを。とりあえず、任せたわ」
「わかりました、主」
そういい、執行者はその場を後にした。
医療スタッフの亡骸が二つ、観測者が一人。
観測者は今は亡き医療スタッフの一人の首と腰を掴んで、持ち上げる。
そうして、観測者は舌なめずりをしてから死んだ医療スタッフの腰に
齧り付いた。
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超絶不定期更新ですがご了承ください…




