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第36話 観測者との出会い

ナンバーズでの慰安旅行は無事に終わり、AT学園に帰ってきた後、俺は明楽と共にショッピングモールを訪れた。

まぁ男二人でショッピングというのも珍しいかもしれないが、内容は別に普通だ。

あくまでAT学園の購買部で買えないものを買いに来ただけだしな。

衣服とかそういうの。


「やっぱりないか」

「そりゃ零亜のサイズの靴は中々ないんじゃない?30でしょ」

「あぁ。はぁ…事実上の靴屋出禁か」

「なんで?」

「だって行っても意味ないから」

「な、なるほど…」


初めて俺の身体が大きい事が嫌になった。

服は無い、靴も無い…挙句の果てには着れる服とかそういうのがあってもサイズ的に柄は選べない始末だし。

なんかこう、悲しくなる。


「そういえば今日の明楽の服装はちょっと女性っぽいな」

「えっ!?」

「あ、いや気に障ったのなら申し訳ないが…結構中性っぽい感じで普通に似合ってるしな」

「そ、そっか…」

「てか、明楽の買い物は?何かあるのか?」

「僕の方は殆ど買ったよ、零亜は?」

「うーん、後は医療品とか運動用のサポーターとかだな。おおよそのモノは購買部で買えるけど、こうやってショッピングモールに来たし買い溜めしておかないと」

「ARMOR’sは大変だね~」

「俺だけだろ、ARMORに乗ってて血を流してるの」

「それもそうか」


実際に個人で使っている救急キットの中身もかなりの速度で消費して行っている。

止血キット、テーピング、コールドスプレー等々…。

あとはもしもの時用でファフニールの中に個人のとは別で医療キットをしまっておきたい。

その医療キットが血まみれになる可能性もあるけどな。


「そろそろ昼頃か、どっかで食べるか?」

「お、いいね。何か食べたいものとかあるの?」

「何でもいいな…」


今、訪れているショッピングモール『レ・ゾーン』。

前のムカデとの戦闘で結構ボロボロになってしまったが、今じゃ見違えるほどきれいになっている。

それはそれとして…レ・ゾーンには衣服とか食事処など様々な物がある。お陰様で食える物の種類もいっぱいあるから迷う。

ハンバーガー、回転寿司、洋食屋…迷うねぇ。


「明楽は?」

「何でもいいよ、今日はこれを食べたい!みたいなのもないし」

「話が一生平行になりそうだ…」

「そうだねぇ…じゃんけん?」

「二種類でも何でもないからじゃんけんじゃ決まらないんじゃないか?」

「…くじ?」

「そうしよう」


厳正な審議の元、くじで決めることになり、その結果…回転寿司になった。


「美味しいな」

「だね」


タッチパネルで注文して、受け取って食べる。

その繰り返しとはいえ、本当に美味い。

しかも寿司だけじゃなくてラーメンやうどん、更にはデザートと種類は豊富。

まぁ寿司しか食ってねぇけど。


「そういえば零亜」

「ん?どうした?」

「こんなご飯を食べているときで申し訳ないけど、ファフニールの新装備について話してもいい?」

「んぐっ!?ごほっごほっ!?」


あまりにも急な話に驚き、思いっきりむせてしまった。


「ご、ごめん…大丈夫」

「だ、大丈夫だ。驚いたのもそうだが寿司の事とか一気にどうでもよくなった」

「そんなに気になるの?」

「新装備ってだけで心がわくわくするし、明楽が作ってくれたんだろ?そりゃ気になる」

「そ、そっか…!あはは、嬉しいかも」


何て言いながら明楽は懐からタブレットを取り出して画面を操作して、何かの設計図をこちらに見せてくる。


「むぐ…おぉ銃か、しかも短刀も」

「ファフニールの機体をいじるのは流石に諦めたよ。これ以上、追加のスラスターを付けたら零亜がGに耐えきれなくなっちゃうし、機動力を底上げしたら耐久面も不安になっちゃう。そうなると機体の改造は無理だから、追加の武装にシフトしたの」

「なるほどな…この銃の弾はエネルギー弾?それとも実弾?」

「エネルギーだよ、最初は実弾で考えてたんだけどマガジンとかそういうのを装備すると機動力が低下しちゃうし、かさばっちゃう。ただでさえ近接主体のARMORなのにね」

「流石、俺の専属整備。わかってるな?」

「零亜だってわかってるくせに~」


と、元々整備科だったもの同士の会話を繰り広げる。


「それで銃の種類なんだけど、最初はロングレンジのスナイパーライフルか、近接主体だからこそのショットガンにしようかなって思ってたけど…ミドルレンジのアサルトタイプにしたよ。それならある程度の距離が空いていても戦えるでしょ?」

「そうだなぁ…」


直近の戦いとしてムカデと蟷螂が思い浮かぶ。

うん、殆どが超近接でブレードで殴ってたし、何とかして距離を詰めないとっていう考えの元、戦ってたしな。

これでアサルトライフルが増えるのなら戦略の幅が広がるぞ。


「それで短刀に関してはもしもの時用だね。蟷螂との戦いのデータを見たときに大型ブレードが弾かれてアームで殴りかかってたでしょ?」

「そうだな…確かに殴った」

「だからこその隠しの刃。大剣が使えない時でも追加の選択肢があれば戦いやすいと思う」

「本当、明楽は最高だ」

「お気に召したようで何より」


お互いに茶をすすりながら、そう言い合う。

てか…寿司を食いながらARMORの話をするって何というか凄い光景だ。


「オールイーター、か」

「今、思い出したけど学園長から聞いたよ。ムカデと蟷螂の話、消滅したんだよね」

「あぁ…本来は活動停止状態になったオールイーターは近づけない孤島に破棄して、再生しても動けない状態にするけど、アイツらは消えたんだよな」


一定のダメージを与え、再生の為に活動停止状態になったオールイーターはある孤島の地に破棄される。地面しかない場所で破棄されたオールイーターは周囲から再生のためのエネルギーを確保することもできず、再生も出来ないのでまた活動を停止するしかないという無限ループに陥らせる。

これが本来のオールイーターの破棄のしかたなのだが、あの二匹は塵となって消滅した。

今になっても…意味が分からない。


「零亜はどう思ったの?」

「どうも思えなかった…考えれば考えるほど答えが得られないって分かったし」

「確かに…答えは闇の中だね」

「そうだな…むぐむぐ」

「新装備は学園に戻ったら詳しく聞いてよ?」

「勿論」


一旦、話はここで切り上げてまた寿司を食べる時間に戻る。


「ネギトロを二貫、頼も」

「あ、俺も食べる」

「なら三貫にするね」


ーーー


そんなわけで昼飯も食べ切り、店を出た。

あ、お金は俺の奢りで払ったぞ。任務の報酬金が…うん、結構な額があるから。

無駄使いは絶対にしないけど、こういう親友の為とかなら許してほしい。


「あ、ごめん…ちょっとお手洗い行ってもいい?」

「あぁ、いいぞ。この辺で待っておく」


店から出た後、明楽がお手洗いに行きたいそうなので行かせた。

付いていくべきかもしれないが…前についていこうかって言ったときに


『あ、いや…その』


ちょっと嫌そうだったから付いていかないようにした。


「ん”んー!あーっ…」


背を思いっ切り伸ばしてから、息を吐く。


(ここで、戦ったんだよな…俺)


仲がよさそうに歩く家族連れ、カップルといった様々な人が練り歩いている。

この場所を、俺は…守ったんだよな。

今までは現実味がなかったが、こうやって守った場所を見るとほんの少しだけ自信が持てる。


(頑張らないとな、これからも)


右手首につけられている黒い輪を見てそう思う。

すると


「…かぁっ!?」


一瞬、頭がズキッと痛くなる。

この感覚は…!?


(こんなタイミングでオールイーターが目覚めたのか!?)


一気に心拍数が上がり、通信端末を取り出しナンバーズに通信チャンネルに接続しようとしたが


「ダメです」

「は?」


通信端末を取り出したタイミングでその端末を握る手に添えられる手。

急な出来事に頭が追い付かないまま、顔を上げると…。


「こんにちは、探していましたよ?」

「は…え?」


そこに居たのは…目元を黒い布のようなもので覆っている女性だった。

ベージュの髪色にやや赤みがかったメッシュが入った髪にシスターのような服装をしている。あと…何というか凄い悩殺ボディー?っていえばいいのか。

そういう身体つきだ。

一瞬、コスプレイヤーか?と疑問が浮かぶがどうやらそういうわけじゃないらしい。

てか、探していたって何…!?


「ん?」


すると、その女性の後ろから何人かの男性が付いてきた。

ナンパか?いや、こういう格好しているからカメラマンとかそういうのか?

なんて疑問に思っていたら、後ろから付いてきていた男性たちは俺を見ると一目散に散って行った。


「ふふっ、貴方を見るのは久々です。元気にしていましたか?」

「久々…?」

「おや、覚えていないのですか?」

「お、俺を知っているのか!?」


この女性は…俺を見るのを『久々』と言った。

ってことは、前の『俺』を知っているってことだ。


「えぇ、知っていますよ。そのことを語りたいのですが…一度、確認させてください」


そういいながらその女性は俺の右腕の枷に触れる。


――カシュッ。


(う、動いた…!?何故!?)


枷が動き、隙間から赤黒い光と黒い粒子が溢れ始めた。

それに驚くと同時に


「ぐうぅっ!?」


右腕から痛みが一気に身体へ伝わる。

何だ…これは!?ドラゴンスローン…!?

違う…!これは、何だ!?

俺の知らない情報…いや違う!?


「『意識』…が!?」


左手で右腕につけられている枷を握りしめる。

意識を刈り取られるな!何とか、繋ぎ留めろ…!


「…なるほど、貴方の選択はソレなのですね」


そう言いながらその女性は、再度右腕の枷に触れた。


――ピピッ。


「大丈夫です、呼吸を整えて」

「はあっ…はぁっ…!」


言われた通りに呼吸を整える。

徐々に痛みが消えていき、意識が刈り取られかけたが…何とか正気を取り戻すことが出来た。


「落ち着きましたか?」

「落ち着きはしたが…お前、何者だ…!?」


この女性…何者だ。

何故、枷を動かすことが出来る!?

何故、俺を知っている…!?


「本来の名を告げても、きっと貴方はわからないでしょう…なので、もう一つの名を告げます。私は『観測者』です」

「観測者…?」

「えぇ、私はアナタを見たことがあり、貴方を知っている。同時に貴方が過去を覚えていないという事は…私たちの主の決断は間違いではなかった」


この女性は『観測者』というらしい。

俺の事を知っていると同時に、この観測者の主の決断が俺にも関係しているようだ。

その決断の影響で、俺は過去を失ったと分かる。


「…」

「ですが、忘れられたというのはとても悲しいです。涙を流せないのも辛いですね」

「教えてくれ、俺は何者なんだ」

「教えることは可能ですが、教えてしまうと主の命に背くことになります。同時に貴方の選択すらも」

「俺の選択も…?」


ダメだ、理解が出来ない。

けど、これは俺の記憶に関する良い情報かもしれない。

俺は観測者を知っており、同時に観測者の主の決断と俺自身の選択で、俺は…記憶を失った。

そして、俺の記憶は黒龍とファフニールに関係し、何処かの科学者と俺を撃った緑色の髪の女性と観測者に関係している。

何というか、何一つとして結びつきが無くて混乱する…。


「俺の選択ってどういう」

「言えません。ですが、そうですね…一度、聞きたいのですが貴方は何をしているのですか?」

「AT学園でARMORに乗って戦ってる」

「ARMOR…となるとファフニールですか」

「知ってるんだな」

「えぇ、枷も付いていますから」


ファフニールも…知っているのか。


「それで何故ARMORに乗っているのですか?」

「世界を平和にしたいのと、記憶を取り戻したい」

「!」


一瞬、観測者は驚いたようにビクッと身体を強張らせた。


「…」

「マズいのか?」

「いいえ、そういうわけではありません。貴方は貴方の選択を信じて行動してください」

「わ、わかった」


そういいながら俺の右手を両手で包み込むように握る観測者。


「…そろそろ時間ですね。では私はこの辺りで」

「ちょっと待ってくれ、連絡先を教えて」

「大丈夫です。いつでも会えますから」

「は、は?」


念のため、連絡先を交換してほしいと言おうとしたが止められ、いつでも会えると言われてしまった。

い、いつでも会えるのか…?と疑問に思っていたら


「それと、私たちの主から貴方に伝言があります」

「伝言?」

「では失礼します」

「へ?」


首に腕を回され、抱き着かれるかのような体勢になる。


「お、おい…!?」

「信じるな」

「は?」


観測者は俺の耳元で話し始める。


「今の世界を信じるな。

同時に大きな欲望を持つ人間が、世界を喰らおうとしている。

貴方はこの喰らわれる世界で、敵にも味方にもなる。

だからこそ、貴方は自分自身を信じ、行動せよ。

そして…いつか、私たちと会う事になる。

信じられない世界でも私だけは信じてほしい。」


そういい、観測者は俺から離れた。


「それでは…また会いましょう」

「あ、あぁ…」


そして、観測者は何処かへと歩いていった。


(どういうこと何だ?)


観測者の主からの伝言を頭の中で考える。

今ある世界を信じてはいけない…信じられるのは俺の選択と観測者たちだけ。

それはいいが、問題なのはそこじゃない。


(同時に大きな欲望を持つ人間が、世界を喰らおうとしている…貴方はこの喰らわれる世界で、敵にも味方にもなる)


その伝言をそのまま受け取るなら…大きな欲望を持つ人間が世界を喰らおうとしているという話はオールイーターの事だが、オールイーターは人間ではない。

勿論、コアは喰われた人間だが…そういう話ではないと思う。


「頭が痛くなる伝言だ…」


とりあえず、伝言はそのまま俺の頭の片隅に入れておこう。


「ごめん、お待たせ…ってどうしたの?」

「何でもない。とりあえず買い物の続きに行こうぜ」

「分かった」


色々と考えていたら明楽が帰ってきていた。

とりあえずは観測者の事は明楽には伝えず、そのまま買い物に戻った。

それでも…俺はずっと考えっぱなしだ。

伝言、過去、観測者、主…。

そんなことを考えているうちに、先程の頭痛は…いつの間にか頭から消え去っていた。


◇◇◇


『どうだった…?』

「予想通り、でした。記憶もなく人らしい生活をしており、ファフニールに乗っていました」

『そっか』


観測者は歩きながら、耳元につけられたデバイスで『主』と会話する。


『なら、傍聴者と言及者も動いていいと伝えて』

「かしこまりました」

『私も準備を進めないと』

「えぇ…主、一つ聞きたいことが」

『何かしら?』

「敵対意識の無いオールイーターが目覚めたようです」

『…それ本当?』

「はい、彼の枷から一部の情報を得ました。その中に、ソレがありました」

『想定よりも早いみたいね…そのことについて、彼は?』

「探す…ようです」

『本当…いい子になったのね。とりあえず観測者、傍聴者、言及者は情報収集と彼…今は鴉羽零亜だったね。その鴉羽を気にかけてあげて』

「分かりました、主」


そういって観測者は通信を切る。


「信じています、鴉羽零亜」


両手を組み、天へ祈りを送りながら路地裏へと入っていく。

そんな中、彼女の後ろを付けている男性が数名。

全員、懐に…凶器や注射器のようなものを忍ばせていた。


「さて、では計画通りに…該当する人間を殺害しましょうか」


そういい、観測者は襲い掛かって来た人間を一方的に蹂躙した。

身体を素手で貫き、頭を吹き飛ばし、命を刈り取っていった。


◇◇◇


「ん?」


明楽との買い物を終えて、部屋でゆっくりしていると変な悪寒がした。

誰かに見られているような…?


「気のせい、か」


と思い、身体を伸ばしてからARMORに関する情報を集めていった。

これにてARMOR”sの第一部が終了です。

とてつもない時間がかかりましたが…これからも完結までがんばっていきますのでよろしくお願いします!

そして、いつもあとがきに書いている通り、誤字脱字、語彙力がほぼ皆無に等しいのでミス等がありましたらご報告お願いします。

同時に感想も待っていますので気軽にどうぞ!

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