第35話 慰安旅行と偶然の遭遇?
数回に渡って日が沈んだり、登ったりを繰り返しているうちに件の慰安旅行の日となり荷物をある程度にまとめて、パイロット科の校舎の前に向かうとすでにソフィー生徒会長に八神さんにアウローラさんも居て、俺が来たのを確認したと同時に両腕を拘束され、連れていかれた。
何でもソフィー生徒会長が滅茶滅茶楽しみにしていたようで…二人もその熱に感化されて、こうなったとのこと。
別に拘束しなくても全然普通に付いていくつもりだったんだが…。
そんなわけで慰安旅行として連れてこられたのは綺麗な浜辺のコテージ。
海水浴やバーベキューに様々なアクティビティがあり、嫌でも飽きないだろうし、何より楽しい慰安旅行になりそうだ。
ついでに何故急に慰安旅行に行くことにしたのかソフィー生徒会長に聞いたところ…パイロット科かつARMOR”s専用の制度を使ったとの事。
任務を完遂あるいはある程度の戦歴を刻んだパイロットには褒美があり…まぁいわゆる休暇だな。ARMOR”sではあるが同時に学生でもある。
二足の草鞋を履いて生活するにはそれ相応の褒美が無いといけない…とかそういうのでこの制度が増えたとか何とか。
んで、今回のは俺の任務の完遂でこうなったらしい。
「貴方はまだ褒美の使い方を知らないでしょうからいい例として、ですわ」
とソフィー生徒会長は言っていた。
細かいことを気にしちゃ負けだなと思いながら砂浜に腰を下ろす。
勿論、こんな海に来たんだ。水着は来ておかないとな。
「あちぃ…」
日差しがじりじりと肌を焼いていく。
本当に暑い。
一応、海というわけで他の客はいるにはいるが殆どがコテージを借りている人のみなので、普段の海水浴場に比べたら人数はやや少なめといった所。
海で泳ぐ人、浜辺で料理を楽しむ人と様々だ。
「…」
静かに海の先に広がる地平線を眺める。
綺麗だ。こういった海を生で見るのは初めてだ。
白い砂浜、青い海…あぁ美しい。
「こういう所に来るのは初めてか、鴉羽」
「八神さん」
静かに待っていると後ろから八神さんが話しかけてきた。
小麦色の肌に深い紫色の水着、何というか大人っぽい。
「初めてですね、海も生で見るのは初めてです」
「そうか」
と言いながら八神さんは俺の隣に座った。
「八神さんは?」
「かなり前にな…」
「?」
そういいながら八神さんは遠くを見据え始めた。
「…私もソフィーと同じってことだ」
「!」
その言葉には…重みがあった。
何というか色々な想いが込められている。
「私は…彼女が居たんだ」
「彼女?」
「意外か?私は女なのに」
「別に珍しい話じゃないですし、俺には人の恋に土足で踏み込む様な外道じゃないですよ」
「そうか…まぁその彼女と海に来たんだよ。その翌日に黒龍に全てを根こそぎ刈り取られたんだがな」
「…」
「月下の下でよく語り明かした物だ、彼女とはな…」
八神さんも…色々あったんだな。
ただ、それだけの言葉だけで何があったのかは見当が付く。
「鴉羽は何か思い出したりするのか?」
「全く…ですが、記憶の断片として俺も黒い龍に関係するようです」
「お前もなのか」
「ただ、どういう形で関係するのかは全くの不明です」
「…そうか」
ザザーンと波の音と他の客が遊んでいる声が耳に届く。
「私たちは似た者同士かもしれないな」
「似たもの?」
「ナンバーズ全員は黒龍に関係し、新参者の鴉羽ですら関係していて尚且つ強い。似た者だろう?」
「そう、なんですかね」
「そういう物だ」
と言いながら俺に笑いかけている。
すると
「随分と仲良しになったんですね」
「えぇ、そうですわね」
「普通だろ」
アウローラさんとソフィー生徒会長が一緒に来た。
うん…何というか二人とも綺麗だな。
てか、この三人とも顔面偏差値高めぼっきゅんぼんで…って何考えてんだ俺は。
はぁ、邪は発想は不必要だというのに。
「鴉羽零亜はその黒い輪は外さないんですの?」
「外せないんですよ、俺の身体の一部かのように張り付いているので」
「なるほど…禁忌機体に乗るという事はそういうデメリットもあるということですわね」
「ファフニールだけかもしれませんが」
なんて会話しているが、ふと思ったことがある。
ナンバーズの慰安旅行だが女子3に男子1だ。
何というか、居心地がアレだな。
「あと、鴉羽って結構いい体してますね。筋肉粒々で男性らしい身体です」
「そうですかね」
整備科の頃からトレーニングはしてたし、ファフニールの為に筋トレやらなんやらやってたから勝手に筋肉が付いていた。
自分で言えた口じゃないが、腹筋も綺麗に6つに割れてるし割と良い体になっていると思うぞ。
よく血を流すがな!
「さて…では泳ぎましょうか」
「はい!」
「そうするか…鴉羽は泳げるのか?」
「ある程度は泳げますよ」
「なら気にせず泳ぐとしよう」
そんなわけで慰安旅行海水浴編がスタートした。
早速、海に飛び込む。
(あぁ…気持ちがいいな)
常夏の気温の中に、全身に伝播する海の冷たさ。
全身の身体を抜いてぷかーッと浮かぶ。
(何気に海に入るのも初めてか)
プールとは違う感覚を実感する。
あとしょっぱい。
(…む?)
海水の冷たさに体が慣れてきたのか、先程の気持ちいい感覚が一瞬で消えていった。
えぇ…こんなに早くなれる物なのか?まぁ人によるだろうから何も言えないけど。
海から沖に上がり、顔についた海水を手でふき取り、砂浜に腰を下ろしてから身体を伸ばす。
「ん”んー!あぁ…最高だ」
こういった旅もたまには悪くない。
今後、任務完遂で貰える褒美で旅行を貰うのも悪くないなと一瞬思ったが…本格的な旅行は世界が平和になってからだな。
ARMOR”sとしてはオールイーターと戦う事が本来のやるべきことだし。
けど、一日くらいは羽を伸ばさせてくれ。
俺達だって人間なんだからな。
「海水浴は十分ですの?」
「ちょっと休憩です。初めての海水浴ですから」
静かに休んでいるとソフィー生徒会長が海から上がってきて、此方に向かって歩いてきた。
「初めて?昔のそういった記憶も…」
「残念ながらさっぱりです。断片すらも得られないってことは俺の過去に海は関係してないってことだと思います」
「そうですか…」
何て話しているとソフィー生徒会長は小さく呟き始めた。
「鴉羽零亜…もし貴方が欲する過去が予想通りのモノじゃなければどうするつもりですか?」
「え?」
「私たちナンバーズや他にいる人たちにも壮絶な過去があります。そんな過去を忘れ、思い出したとき…惨い記憶だったら」
「…」
「…失敬、何を聞いているのでしょう私は」
「大丈夫です、そういう質問は初めてだったので少し驚きました」
ソフィー生徒会長のいう通りだ。
確かに俺は過去を取り戻したい。俺がどんな人間で、どんな奴だったのかを。
でも、ソフィー生徒会長のいう通り俺が…想像以上のクズだったら?
その時が訪れたらどうなるかわからないが、俺はその過去を受け入れるつもりだ。
俺が想像以上のクズだったら自害も考えるが。
「とりあえずは俺は記憶を欲します。俺はどういう人間なのか知りたいですし…それに記憶喪失も楽じゃないんですから」
「楽じゃない?」
「感覚だけで言うなら…無理やり『鴉羽零亜』という人間の肉体を借りているような感じです。肉体は俺の物なのに、記憶がないせいで無理やり身体を借りている感じがして」
「…それは辛いでしょうね」
「はい。勿論、他にも理由はありますが一番は俺を知りたいからこそですね」
記憶喪失になったことがある奴しかわからない感覚だろう。
いわば他人の鎧を無理やり着ているようなものだ。自分は何なのか、何だったのかを考えれば考えるほど、『俺』という奴が何なのかわからない。
故に…鴉羽零亜という肉体を借りているかのような感覚がある。
「戻るといいですわね」
「そうですね…」
そういいながら海を見ながら黄昏る。
すると
「…私、実は鴉羽零亜の記憶喪失を羨ましく思いました」
「え?」
ソフィー生徒会長が口を開く。
俺の記憶喪失を…?
「言っていませんでしたが、私は黒い龍に家族と家を…根こそぎ奪われましたの」
「根こそぎ…」
「母を失い、父は目の前でオールイーターになり…故郷はボロボロになってしまい、そこからは孤児として生きていました」
これがソフィー生徒会長の過去…あの黒い龍に故郷と家族を奪われ、弧児となってしまった。
今でもよく聞く話だ。オールイーターに故郷を食われ、家族を喰われ…ただ一人で生きることになってしまった子供や大人。
ただそれに関しては政府が色々と対策をしている。
その子供たち専用の施設や制度、大人も含めてな。本当に先を考えた政策だと思う。
現状維持を繰り返すのではなく、変化を加えながらよりよく進化する。
「それでも私はオールイーターに対する憎悪を糧にして、勉学に励み…この場に立っています」
「AT学園の最強の椅子にですよね」
「勿論それもですわ。けどそれ以上に思ったのは…これ以上、オールイーターに世界を食われてはいけない事。そして私のような人を増やさない」
「!」
「もう…あんな思いはしたくありませんもの」
そのソフィー生徒会長の言葉には『重み』と『想い』があった。
目の前で家族を失った辛さを知った重みと犠牲を増やさせない想い。
「…それに八神が言っていたナンバーズは似ているという事、ある意味そっくりなんですわ」
「え?」
「元々八神とアウローラと私は全員、家族や恋人を失い孤独になってしまい施設で生活するようになりました。そんな時に会って三人で意気投合してナンバーズになりましたから」
「あの二人も…」
八神さんは恋人を失ったとさっき聞いたが、アウローラさんもそうなのか。
いや、前に過去に色々あって多重人格になったという話を聞いた。
そうなると過去にオールイーターのせいで家族や恋人を失い多重人格になった…という考えにたどり着く。
「施設で出会ったんですね」
「えぇ…懐かしいですわ、よく三人で一緒に寝ましたし、お互いの事を話し合ったことも」
「…」
「…このあたりで暗い話は終わりにしましょうか。今は慰安旅行中ですわ、楽しみましょう?」
「はい」
そうして俺はもう一度、海へと飛び込んだ。
ーーー
アレから遊びまくった。
海水浴、ビーチフラッグ、スイカ割り…いやアレは割りだったのか?
目隠しした八神さんが木の棒の一振りが見事にスイカを捕え、割れるはずだったのだが…綺麗に真っ二つに切れた。
それはもう綺麗に。
『えぇ…?』
『た、ただの木の枝ですわよね?』
『剣豪は物をえり好みしない。刀でも打刀でも太刀でも木の枝でも』
『???』
と八神さんは謎の持論を話していたがマジで理解が出来ぬまま、スイカを食べた。
しゃくしゃくとした食感にほんのりと感じる甘みが美味しさを引き立てていたという感想が今でも残っている。
まぁ…そんなわけで日も沈んでいき、念願のバーベキュータイムになった。
肉、野菜、魚介等を焼いて各々で食べる。
「美味しいですわね」
「そうですね…あ、タレは入りますか?」
「私はいい。とりあえず今は塩で十分だ、後でたれは使う。鴉羽は?」
「むぐむぐ…俺もタレはまだいいです。あと野菜も…」
「バーベキューなのに野菜も食べるのは健康的なのか、何というか」
外のお陰なのか、複数人で食べているからなのかいつもよりもおいしく感じる。
他の場所を見ると家族でワイワイと食べている所もあれば、お酒を飲みながら食べている所もある。
非常に楽しそうだ。
かという俺も食事を楽しんでいる。前からもそうだ、飯の時間はまさに祝福そのもの。
「鴉羽零亜、リスみたいになってますわよ」
「もっもっ…す、すみません」
「いいえ、食い意地が張っているというよりお腹が空いていますのね?」
「…はい」
ソフィー生徒会長のいう通り、お腹はかなり空いている。
いやまぁアレだけ海で遊びまくればお腹も減る。
「アレだけ遊べばな」
「そうですね…あ、鴉羽君。トウモロコシの串焼きが出来ましたけど食べますか」
「食べます…」
すっごい餌付けされている感じがあった複雑な気持ちなんだが…食べるけど。
とトウモロコシの串焼きも食べて、空いた鉄串を一つにまとめていたら
「おっと…」
集めていた矢先、一本落としてしまった。
元々付いていたタレのせいで少し、滑りやすくなっていたようだ。
少々めんどくさくなるが場所を借りてバーベキューをさせていただいているのできちんと綺麗にしないと、そう思い鉄串に手を伸ばす。
すると
「大丈夫ですか?」
俺たちの後ろでバーベキューをしていたであろう団体の方が落とした鉄串を拾ってくれた。
「あぁすみませ…ん!?」
「か、鴉羽君!?」
「阿達さん、どうし…え、鴉羽君!?」
何か聞いたことのある声だなと思ったら、串を拾ってくれたのはなんと阿達さん。
それだけじゃない。阿達さんの後ろから愛染さんが顔を出し、他の関係者の皆さんも此方を見て居た。
「どうしましたの、鴉羽零亜?」
「あぁ…えっと愛染さんが居て」
「せ、生徒会長も?」
「あら?奇遇ですわね、愛染珊瑚」
「それはそうなんですが…」
いや奇遇なのはいいが、こんなところで会うか普通!?
道でばったりじゃなくて、公共施設で会うとは。
「鴉羽君たちは何故ここに?」
「慰安旅行ですね…色々あって。阿達さん達は?」
「前のライブの打ち上げよ。本当はライブ後を予定していたけど…愛染の親の事や騒ぎにならないように色々と根回しもしていて、気が付いたら愛染も夏休みに入ってたらからじゃあ行こうってなったの…そしたら」
「俺たちと会ったと」
「そういうわけね」
ライブの打ち上げか。
確かにライブが行われてからかなりの時間が経った。その打ち上げが今行われたという事は…結構忙しかったのだろう。愛染さんも阿達さん達も。
「鴉羽零亜」
「はい?」
急にソフィー生徒会長に話しかけられる。
「前の依頼の件もあるでしょう、少し話してきては?」
「お、お言葉に甘えて…」
そんなわけで少しだけ愛染さん達のバーベキューのグループに参加した。
積もる話は…十分あるだろう。関係者の何人かはお酒を飲んで夢の世界へとおさらばしている。
んで、何で愛染さんはしれッと俺の横に来る?
「鴉羽君も色々あったようね」
「そうですね…とはいっても前に言った通り記憶が戻ってないので帰る場所も無いので他の人に比べれば忙しくないですが」
「やっぱり記憶はまだ?」
「それっぽいものは見つけてはいますが、肝心なことは何一つです…もぐもぐ」
元々、ナンバーズの方で焼いておいた肉が刺さった串を食べる。
あの戦闘からこれといった記憶の欠片も見つけていない。
何かのフラグ?みたいなのがあれば良いんだが…。
「良い食べっぷりね、お腹が空いていたの?」
「結構海で遊んだのでお腹は空いてました、美味しいです」
「リスみたいね」
「さっきも言われたんですけど…」
そんなリスっぽいか俺、と心の中で文句を言いながら野菜を頬張る。
さてと…いい加減、次の問題を解決するか。
そう思いながら俺は視線を左に向ける。
そこには愛染さんが俺の服の裾を小さく握りながら俺を見ている。
まるで小動物を震えあがらせる睨みの効いた目線を俺に向けている。
何故そんな目を俺に向ける…!?
「愛染さん」
「…なに?」
「何故俺を見てくるんです」
「べっつにぃ?」
何故横っ腹をつねる…!!?
「愛染、貴方の気持ちは理解してるけど鴉羽君に当たるのは止めなさい」
「だってぇ…」
「愛染さんの気持ち?」
「あぁ気にしないで」
「は、はい」
愛染さんが何でそんな行動をするのか分からないまま横っ腹をつねられ、定期的に口の中に肉をねじ込まれるという謎な現象が発生しつつもバーベキューは楽しんでいた。
すると
「か、鴉羽君…?」
「鴉羽、くくっ…ちょっといいか?」
「アウローラさんに八神さん?」
やや申し訳なさそうな表情をしているアウローラさんと笑いをこらえている八神さんが俺と阿達さん達のスペースにきた。
「どうしました?」
「そろそろ良い時間だし、残った食材の話をどうするかって話をしていたんだが…アウローラが『残り少ないですし、一つの串に付けちゃいましょう』って言い始めてな」
「はい」
「その結果が…これです」
そういってアウローラさんは懐に隠していた件の串を見せてくる。
それを見て一言。
「デッカ…」
バーベキューでの串は肉と野菜が一緒に刺さっている物がてっぱんだと思われる。
アウローラさんが見せた奴もそうだ、野菜、肉、野菜、肉とバランスよく刺さっているが…問題はその大きさだ。
塊肉、ピーマン丸ごと、塊肉、トウモロコシ大きめが見事に突き刺さっていて焦げ目の付いた良い焼き色をしているのだが…あまりにも大きすぎる。
良く刺さったなという感想しか出てこない。
「そ、その…鴉羽君?」
「はい」
「まだ食べられます?」
「まぁ行けますが…」
「これもお願いします…元はと言えば私のせいですが、正直お腹がいっぱいで」
「言っておくが私もだからな。ソフィーも今じゃコテージでゆっくり休んでいるぞ」
「なら責任もって食べます」
と言いながらアウローラさんの作ったぶっとい野菜と塊肉の串を手に取り、食べる。
――ブチブチブチッ!!
「むぐむぐ…おいひいでふね、かみほはへはふふんへ」
特別意訳『美味しいですね、噛み応え抜群で』
「本当にごめんなさい…」
「いいぞ鴉羽、その調子で食え!」
「はーい」
もっきゅもっきゅと塊肉に齧り付き、喰い千切り咀嚼して飲み込む、その繰り返し。
別に味に飽きるとかそういうのもなく普通に美味しいし、きちんと中まで火が通っているのが分かる。
まず一つ目の塊肉は攻略完了。
次にピーマン、これに関しては
――シャキッ!パキ、パキ…。
一口で丸ごと口の中へ。
「鴉羽君、結構口が大きいのね。ピーマン丸ごと口の中に入るって中々ないと思うけど」
「シャク、シャク…ほうへふは?」
特別意訳『そうですか?』
「さっきみたいにリスになっているぞ鴉羽」
もうリスでも何でもいいや、美味しいし。
ピーマンもしっかり咀嚼してから飲み込んで、次の塊肉に行こうと思ったが…どうせならトウモロコシも一緒に食べたい。
なので
「かぁっ…!」
口を大きく開いて下にあるトウモロコシに齧り付き、そのまま上へと引き抜く。
そうすると自然に上にあった塊肉も同時に串から引き抜かれるのでそれもそのまま口の中に。
「んぐ、んぐ…こっひもおいひいでふね」
特別意訳『こっちも美味しいですね』
「本当によく入るな…」
トウモロコシの甘みと肉の旨味が混ざりあう。
この旋律はなんだ…?静かなるピアノの旋律の中に、はきはきとしたリズムを刻む裏拍子…これは、見事な味のハーモニーか。
「ふぅ…ご馳走様です」
何もなくなった串を人差し指と中指の間に挟んで、両手を合わせて挨拶をする。
ご馳走様でした、命を頂いたことに感謝を。
「ありがとうございます、鴉羽君」
「よく食い切ったな」
「まぁ男子ですし」
「確かにそうかもな。こっちのスペースじゃ基本的に鴉羽が食っていたし」
「す、すみません」
「責めてるわけじゃない。ただ、食材の殆どは貰いもので送り返すのもアレだったからな。正直助かった」
全部貰いものなのか。
あんな量の野菜と肉をプレゼントされたのか…凄いな、色んな意味で。
「それじゃあ私たちは先にコテージに戻ってますね」
「わかりました」
「鴉羽もある程度、話してからで良いからな。慰安旅行だし多少は羽を伸ばせ」
「ありがとうございます」
「それでは」
そういってアウローラさんと八神さんは俺たちナンバーズが借りているコテージに戻っていった。
二人を見送ったと同時に
「か、鴉羽君!」
愛染さんが声を上げた。
「ん?」
「ナンバーズの三人と同じコテージなの!?」
「あ、あぁ…それが?」
「それがって…同じ屋根の下で男女が寝泊まりだよ!?」
「確かにそうだな」
「え、えぇ…?」
言われてみれば確かに同じ屋根の下で男女が寝泊まりだな。
ただ、別にそんな騒ぐほどの問題か?って感じてしまう。
いや問題は問題だが、三人とも気にしてないようだし俺の気になっていない。
三人に対して何らかの劣情があるわけでもないし、そこまで飢えてるわけじゃない。
まぁ一緒に寝るわけでもないしな。
「むーっ…」
「なんで腕をつねる…」
「ずるい」
「なんでぇ!?」
と理不尽な怒りを愛染さんに向けられる。
「ずるい、私も鴉羽君とお泊りしたい」
「無理に決まってるだろうが」
「何で」
「世間体…貴方、アイドル。俺、一般男性…じゃなくても男性。OK?」
「――もん」
「へ?」
「知らないもん!」
「何でだよ!?」
そこからはとにかく愛染さんの機嫌取りタイム。
何でこんなに不機嫌なのか分からないまま、色々と話し合った。
その結果としてお互いの名前を下の名前で呼ぶことで何とか締結した。
「じゃあ、これからもよろしくね。零亜君?」
「あ、あぁ…愛染さ」
「ん?」
「…珊瑚さん」
「うん、それでよし」
なんかもう、勝てる気がしねぇ。
誤字脱字、語彙力がほぼ皆無に等しいのでミス等がありましたらご報告お願いします
感想も待っていますので気軽にどうぞ!
超絶不定期更新ですがご了承ください…




